IT活用で医療情報開示・共有が進む

最近では、医師が手書きのカルテではなくパソコンに入力する「電子カルテ」を使用することが多くなりました。X線やMRI(磁気共鳴画像装置)など、高度な医療用機器で撮影された「医用画像」による診断も身近なものになり、IT技術が病院医療での根幹を支えていると言っても過言ではありません。

電子カルテや医用画像は、これまで病院内だけで活用されてきました。しかし、病気を患者自身が把握できるようにと電子カルテを開示したり、医用画像を病院間で共有して迅速な診断や治療に活用する動きが進んでいます。

自分のカルテ内容を見ることができるサービス

医療データ分析企業が新事業として、病院で保管されている電子カルテのデータの一部を患者が閲覧できるサービスを開始しました。ネットを介して病名や検査結果、投薬履歴などをいつでも見られるサービスです。
このサービスを導入している病院で閲覧を希望すると、個人IDカードが発行され、専用サイトに入ることができます。受診歴がカレンダー形式で掲載され、投薬履歴や検査結果などカルテに書かれた内容を、患者はいつでも見ることができます。また、薬の簡単な説明も調べることができるので、自分がどんな薬をどの症状のために飲んでいるのかが明確になります。
さらに、このサービスは出張や旅行先で急に体調を崩した時にもとても便利です。このサイトを使えば、旅先の病院でも過去の診断履歴や病状を医師に正確に説明しやすくなります。
自身の体の管理だけでなく、高齢者の患者の場合は、その家族が体の状態を知ることができるので「病状を理解しやすくなった」との声がサービスを導入した病院に寄せられています。

脳血管疾患の専門医をスマホでつないで迅速に治療開始

脳梗塞などの脳血管疾患治療は、発症からできるだけ早く、適切な治療を開始することで後遺症が軽減できます。そのため、緊急時に遠隔地にいる医師同士でチーム医療を提供するためのアプリが作られ、実際に稼働しています。
このアプリでは、CT(コンピューター断層撮影装置)やMRI、心電図などの医用画像や手術室内の映像をリアルタイムに共有でき、チャット機能も持っています。あらかじめ登録した医療関係者がSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のような感覚で情報をやり取りできるようになっているのです。
脳梗塞を発症した患者が搬送された病院に専門医がいない時など、検査画像を撮影しておき、このアプリを介してつながった別の専門医にスマホで閲覧してもらうことができます。つながった専門医によってリアルタイムで治療のアドバイスを受けられることで、発症後の迅速かつ適切な処置が可能になり、治療後の経過が良くなる方向へと導くことができます。

まとめ

脳梗塞などの脳血管疾患治療で専門医につなげるアプリは、医療機器に付属していない単体の医療用ソフトウエアとしては日本で初めて、2016年4月から保険診療の中で使用できることになりました。
IT技術が医療の付加サービスから医療行為そのものに活用される流れが、すでに生まれているのです。

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