離職票(離職証明書)の書き方 | 期限や提出方法、作成時の注意点を解説

従業員の退職時には、さまざまな書類の発行が必要です。なかでも離職票は退職者が失業給付を受給するために必要で、企業の労務担当者が作成します。

そのため、労務担当者は離職票の書き方やスケジュール、提出方法を必ず知っておかなければいけません。

そこで本コラムでは、離職票の基本的な書き方や作成時の注意点など、担当者が知っておくべきポイントを詳しく解説します。

【目次】

  • 離職票とは
  • 離職票の交付条件
  • 離職票(離職証明書)の書き方
  • 離職票の発行手続き
  • 離職票の提出方法
  • 離職票作成時の注意点
  • まとめ

離職票とは

退職者が失業給付(基本手当)を受給する際に必要になる離職票。企業は、従業員の退職日の翌々日から10日以内に離職票を発行するための手続きを行う義務があります。

例:3月31日退職・・・4月11日までに提出
  4月20日退職・・・5月1日までに提出

まずは、退職時に必要となる、離職証明書や退職証明書との違いを理解しておきましょう。

離職証明書との違い

離職証明書とは、企業がハローワークから離職票の交付を受けるために必要な書類です。

離職証明書は3枚複写になっており、1枚目は事業主(企業)用の離職証明書、2枚目はハローワーク用の離職証明書、そして3枚目は退職者が受け取る離職票です。つまり、離職証明書を作成すれば離職票も自ずと作成できます。

そのため、一般的に企業担当者間では「離職証明書の作成 = 離職票の作成」と認識されています。

退職証明書との違い

退職証明書は、企業が従業員の退職を証明する書類です。退職者が再就職先へ提出したり、国民健康保険や国民年金の加入時に使用したりと、退職後早い段階で必要になります。

退職証明書は、退職者から申請を求められた際に発行が義務付けられており、決まった様式はありません。

一方、離職票は失業給付を受給する書類であるため、退職証明書とは役割が異なります。そのため、失業給付の申請時に退職証明書を離職票の代わりとして使用することは認められていません。

出典:労働基準法第22条 但し書き(厚生労働省)

離職票の交付条件

雇用保険に加入する従業員が退職した際に作成する離職票は、退職者本人が希望すれば必ず渡さなければならないとされています。退職者が離職票の発行を希望したにもかかわらず、発行しない場合には雇用保険法に違反しますので注意しましょう。

ただし、退職者本人が発行を希望しない場合や死亡した場合は作成する必要はありません。

また、従業員が退職時に59歳以上の場合は原則的に発行する必要があります。

出典:雇用保険事務手続きの手引き(東京労働局職業安定部)
出典:会社が離職票を交付してくれない(埼玉県庁)

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離職票(離職証明書)の書き方

失業給付は、退職者の賃金や退職理由を基準として給付額や給付期間が決まります。そのため、労務担当者は書類の作成時に必要な情報を収集し、正確に記載しなければなりません。

離職票(離職証明書)の書き方は以下のとおりです。

  1. 氏名・住所を記入する
  2. 被保険者番号・事業所番号・離職年月日を記入する
  3. 算定対象期間と賃金支払基礎日数を算出する
  4. 賃金支払期間と基礎日数を算出する
  5. 賃金額を記入する
  6. 退職理由を記入する

順を追って解説します。

【出典:ハローワークインターネットサービス「記入例:雇用保険被保険者離職票-2」を一部加工】

1.氏名・住所を記入する

まずは、退職者の氏名と住所を記入しましょう。記入する住所は原則として退職時の住所を記入しますが、退職者が退職後すぐに帰省するなどの事情がある場合は、本人の希望により退職後の住所を記入することも可能です。

もし退職後の住所がわからない場合は退職時の住所を記入し、退職者本人に管轄のハローワークで「受給資格者住所変更届」を提出するように通知しましょう。

2.被保険者番号・事業所番号・離職年月日を記入する

雇用保険の被保険者番号や自社の事業所番号は、それぞれ割り振られている番号を記入しましょう。

また、離職年月日には退職日を記入します。たとえば、令和5年3月31日が退職日だった場合は、令和5年3月31日が離職年月日となります。

3.算定対象期間と賃金支払基礎日数を算出する

失業給付の受給資格は、原則として賃金支払基礎日数が11日以上(または労働時間数が80時間以上)ある月が、算定対象期間に通算12ヶ月以上あることが条件です。

算定対象期間と賃金支払基礎日数はそれぞれ以下の意味を持ちます。

  • 算定対象期間:離職日から遡った2年間
  • 賃金支払基礎日数:出勤日や有休取得日など賃金の支払対象となる日数

労務担当者は退職者の過去の勤怠を確認し、算定対象期間における賃金支払基礎日数を算出する必要があります。

なお、賃金支払基礎日数が11日に満たない月が複数ある場合は、離職票が1枚で足りなくなる場合があります。
その場合は「続紙」として、もう1セット離職票の用紙を用意し、11日以上ある月が12ヶ月分になるまで遡って記入しましょう。

また、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月分ないなど、失業給付の条件を満たさない場合でも離職票は提出しなければなりません。

4.賃金支払対象期間と基礎日数を算出する

賃金支払対象期間とは賃金の締日を意味しています。当月の締日翌日から次月の締日までを1ヶ月として、賃金支払の基礎日数を算出しましょう。

失業給付は退職前6ヶ月間の平均賃金をもとに計算されるため、記入する賃金支払対象期間は6ヶ月分あれば十分です。

ただし、算定対象期間と同様に基礎日数が11日以上ある月が対象となるため、11日以上ある月が6ヶ月分になるまで遡って記載する必要があります。

5.賃金額を記入する

賃金額は、月給制の場合はA欄、日給や時給制の場合はB欄に記入します。

なお、離職票に記入する賃金は、「労働の対価として支払われた賃金」が対象です。「臨時に支払われた賃金(結婚祝い金など)」や「3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与)」は除かれます。

離職票に記載する賃金は、賃金台帳や給与明細書で項目を確認しながら、月ごとの合計額を算出しましょう。

6.退職理由を記入する

退職理由には「自己都合退職」や「契約期間満了」「定年退職」など、さまざまな理由があります。

退職の経緯を確認の上、離職票に書かれた離職理由を参考に該当する理由を記載しましょう。

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離職票の発行手続き

離職票の発行手続きの際には、管轄のハローワークに以下4点を提出する必要があります。

  • 離職票(離職証明書)
  • 雇用保険被保険者喪失届
  • 賃金台帳・出勤簿(一定条件で省略可能)
  • 退職理由を証明する書類

まずは、離職票とあわせて「雇用保険被保険者資格喪失届」の提出が必要です。

雇用保険被保険者資格喪失届は、雇用保険の加入手続きをした際にハローワークから交付されていますが、もし紛失した場合はインターネットからダウンロードも可能です。離職票と同様に、離職年月日や退職理由を記載して提出しましょう。

なお、賃金台帳や出勤簿は「確認書類の照合省略に係る申出書」をハローワークに提出し、照合省略の認可を受けた場合は提出する必要がありません。

退職理由を証明する書類は、退職理由によって提出する書類が異なります。事前に確認の上、提出しましょう。

出典:確認書類の照合省略に係る申出書(東京労働局)

離職票の提出方法

離職票の提出方法は、主に以下の3つです。

  • ハローワークに持参
  • 郵送
  • 電子申請

いずれの方法も退職日の翌々日から10日以内に行う必要があります。手続きが終わると、ハローワークから「離職票-1」と「離職票-2」が発行されるので、それらを退職者本人に渡しましょう。

なお、郵送で手続きを行う場合は、返信用封筒の同封が必要です。

離職票作成時の注意点

離職票を作成する際には以下の2点に注意しましょう。

  • 退職理由は必ず確認する
  • できるだけ早めに発行する

それぞれを詳しく解説します。

退職理由は必ず確認する

離職票に関する最も多いトラブルが、企業側と退職者の退職理由の不一致です。失業保険は退職理由によって受給できる期間が変動するため、理由をよく確認してから記入しましょう。

たとえば「自己都合退職」の場合、一定期間失業給付が受給できない「給付制限」が設けられています。もし、会社都合退職にもかかわらず自己都合退職と記入した場合は、退職者の生活に影響が出る可能性があります。

また会社都合退職でも、退職勧奨よって本人が合意して退職したのであれば「退職勧奨による退職」になりますが、本人が合意せずに退職したのであれば「解雇」になる可能性が高いでしょう。
離職票作成の際には、退職者本人に退職の経緯を事前確認するなど、退職者と退職理由を共有した上で手続きを進めることが大切です。

もし、退職者から退職理由に関する異議の申し立てがあった場合には、ハローワークから退職理由の確認が求められます。事実を確認した上で修正がある場合は「雇用保険被保険者離職票記載内容補正願」を提出するとともに必要書類を提出しなければいけません。

できるだけ早めに発行する

失業給付は、退職者本人のもとに離職票が届き、退職者がハローワークに離職票を提出することで給付手続きが開始されます。

企業担当者の手続きが遅れるほど、退職者の失業給付の受給も遅れることになります。そのため、退職者にはできるだけ早く離職票を交付できるよう、事前準備が欠かせません。

事前準備ができるものとしては、基礎日数の算出や賃金計算、退職理由の証明書などがあります。さらに基礎日数や賃金を算出した後は、書類の作成や社内の捺印申請も必要になるため、ハローワークに申請できるまでに数日かかる場合もあるでしょう。

また、書き損じが多くなると社内で保有している離職票の原本がなくなり、直接ハローワークに取りに行く手間もかかってしまいます。

空いた時間にできることを進め、なるべく早めに退職者の手元に届けるよう準備することが大切です。

電子申請がおすすめ

手書きでの書類作成は書き損じる場合があり、時間を要することもあります。また、書類を郵送すると郵送時間がかかるため、手続きが完了するまでさらに時間を要してしまいます。

そのため、離職票の手続きはスムーズに書類を作成し、送付できる電子申請がおすすめです。スピーディに手続きを進められれば、担当者と退職者双方にメリットがあります。

三菱電機ITソリューションズが開発した電子申請システム「ARDIO」は社会保険の手続きにかかわる時間と手間を大幅に削減できるシステムです。

既存の人事給与システムから「ARDIO」へ社員情報や賃金情報を取り込むことで、複数人の離職票を一括作成できます。

また、作成した離職票をオンラインでまとめて送信し、申請後に返戻される離職票を従業員へメールで一括配信する機能も搭載されています。

離職票の発行を含めた社会保険業務の効率化に、ぜひ導入をご検討ください。

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まとめ

離職票は、退職者が失業給付を受給するための重要な書類です。労務担当者は、正確な情報を記載するとともに、退職者がなるべく早く失業給付を受給できるよう前もって準備を進めることが大切です。

労務担当者の負担軽減と退職者の円滑な失業給付を実現するために、電子申請や申請をサポートする「ARDIO」のようなシステムの導入をご検討してみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール

北 光太郎
社会保険労務士

中小企業から上場企業まで様々な企業で労務に従事。勤務社労士として計10年の労務経験を経て「きた社労士事務所」を設立。独立後は労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人・個人問わずWebメディアの記事執筆・監修を行いながら、自身でも労務情報サイトを運営している。

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