介護事業所の経営を支える!2025年に利用できる補助金・助成金の活用法
介護事業所の経営は、人材不足や物価上昇によるコスト増加などの課題に直面しており、持続可能な運営のためには戦略的な資金活用が欠かせません。
人材確保や施設整備、ICT導入などを後押しする補助金・助成金の活用によって、サービス向上と経営の安定化を図れます。
本記事では、2025年度に利用できる補助金・助成金の種類や特徴を紹介するとともに、申請の流れや活用のポイントについて詳しく解説します。適切な制度を活用し、事業の発展を目指しましょう。
介護事業所経営で補助金・助成金の活用は必要?

介護業界にはさまざまな課題があり、事業所運営を支援するために多くの補助金・助成金制度が設けられています。まずは、その背景や目的について触れます。
介護業界を取り巻く厳しい経営環境
現在、介護業界は高齢化の加速により、慢性的な人材不足となり多くの事業所が厳しい経営状況に置かれています。新たな人材の確保は容易でなく、最低賃金の上昇や雇用環境の改善に必要なコストが増える中で、経営者の悩みは尽きません。
国が推進するICTの導入やDX(デジタルトランスフォーメーション)は、業務効率化やサービス品質の改善・向上に大きく貢献する一方、機器導入時に必要な初期費用や運用コストが重荷となり、小規模事業者ほど負担が厳しくなっています。
こうした課題を乗り越えるためには、自社資金だけに頼らず、国や自治体による補助金や助成金を戦略的に活用することが現実的な選択肢です。
補助金・助成金の活用
介護事業所が活用できる補助金や助成金は、ICT機器の導入費用、業務効率化を実現するシステム開発、人材の採用・育成など多岐にわたります。補助金や助成金によって資金を確保して経営リスクを抑えつつ、サービスの質を落とさずに施設を運営できます。
2025年度には、介護事業所に向けてさまざまな支援制度が設けられました。それぞれに特徴や条件がある各種制度の概要を紹介しながら、補助金・助成金を有効に活用するポイントをお伝えします。
補助金・助成金の基礎知識
介護事業所の運営を後押しする補助金や助成金。まずは制度そのものについて、理解を深めましょう。申請から受給までの流れも説明します。
「補助金」と「助成金」の違い
「補助金」と「助成金」は似たような印象を持たれがちですが、実は仕組みや申請のハードルが異なります。
補助金は申請件数に対して採択件数が限られており、審査を通過する必要があります。つまり、要件を満たすだけでは不十分です。採択されるためには、計画書をはじめ、計画の実現性の高さが求められます。
一方で、助成金は定められた条件をクリアすれば基本的に受給できる制度です。ただし、条件設定が細かく、制度変更も頻繁に行われます。まずは事前にしっかりと情報収集し、適用条件を確認しましょう。
申請から受給までの一般的な流れ
補助金・助成金の活用には事前準備が欠かせません。ここからは、一般的な申請の流れを紹介します。
▼情報収集
厚生労働省や中小企業庁のほか、拠点を置く自治体の公式サイトをチェックしましょう。補助金関連のセミナーや業界団体の資料も有用です。
▼申請準備
対象となる制度の募集要項をしっかりと確認し、申請要件や必要書類(事業計画書、見積書、収支計画など)を揃えます。過去の採択事例を確認し、加点項目などのポイントを押さえて計画書を作成することが重要です。
▼申請
検討する補助金や助成金の活用を目指し、募集期間内に申請を完了させましょう。特に補助金は締切が厳しいため、余裕をもって準備を進めることが大切です。
▼事業実施
補助金の場合は、採択後に事業を実施します。計画通りに事業を進めながら、その経過や要した経費などを丁寧に記録しておく必要があります。
一方で、助成金は条件を満たした時点で申請できるものが多く、取り組みのタイミングに柔軟性があります。
▼実績報告
事業完了後、実績報告書や経費証明、成果報告書など各種書類を提出します。虚偽や記録ミスがないよう、丁寧な書類作成が求められます。
▼補助金・助成金の受給
審査で問題がないと判断されれば、指定の銀行口座に補助金や助成金が振り込まれます。
主な補助金・助成金(2025年度版)
ここからは、介護事業所にとって有用な2025年度の補助金や助成金をピックアップしてご紹介します。
介護事業所向けの補助金・助成金
介護テクノロジー導入支援事業
2023年度までの「介護ロボット導入支援事業・ICT導入支援事業」を発展的に見直した制度です。介護現場の業務負担軽減と職員定着率の向上を図る上で、即効性のある支援策といえます。
機器の導入にとどまらず、業務プロセスの改善と組み合わせて、業務効率を飛躍的に向上させることが目的です。
特に、小規模事業所に検討してほしい制度の一つです。
<支援対象>
介護事業所、及び介護ロボットやICT、またはそれらのパッケージ導入に係る経費
<補助内容>
職場環境の改善などに取り組む介護事業所における、テクノロジー導入時の経費補助

地域包括支援センター等におけるICT等導入支援事業
自治体・医療機関・介護事業所、それぞれの間のスムーズな情報共有を実現し、介護サービスの質の飛躍的な向上を目指します。これからの地域包括ケアの“土台”となり得る制度です。
<支援対象>
地域包括支援センターなど
<補助内容>
地域包括支援センターにおける、介護予防サービス計画を検証する目的でのデータ連携、総合相談支援事業の効果的な実施に要するデータ共有システムの構築経費を助成。

地域医療介護総合確保基金(介護施設等の整備に関する事業分)
介護サービスの質を設備面から支える制度です。入所施設では利用者の尊厳や快適性がより重視される傾向にあり、今後もその流れは続くでしょう。
安全面の強化はもちろん、個室の増設など、介護サービスの質を高める長期的な視点での投資として、大いに活用価値があります。
<支援対象>
介護事業所
<助成内容>
地域密着型サービス施設などの整備に要する助成、介護施設の開設準備経費や特養多床室のプライバシー保護を目的とした改修など、介護サービスの改善を支援。

地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金
災害リスクの高まりに対応した「介護BCP(事業継続計画)」の実現に不可欠な制度です。事故発生時のリスクを抑え、家族からの信頼獲得につながります。施設の価値を守るために不可欠な投資です。
<支援対象>
既存高齢者施設等のスプリンクラー設備などの整備、認知症高齢者グループホームなどの防災改修、高齢者施設などの非常用自家発電・給水設備整備事業・水害対策強化
<助成内容>
高齢者施設において、地震・火災発生時に避難することが困難な高齢者が利用している際に利用者の安全を確保し、その機能を維持する必要がある。助成により、防災・減災対策に取り組む施設における設備の整備を推進する。

訪問介護等サービス提供体制確保支援事業(新設)
慢性的な人材不足に悩む訪問介護事業所にとって、新人介護士の教育体制の充実は利用者満足度に直結します。また、地域の介護事業所が相互に協力し合う仕組みづくりのきっかけとしての活用も期待されています。
<支援対象>
訪問介護事業所
<助成内容>
人材確保体制構築支援事業:まだ経験が十分でないヘルパーも安心して介護業務に従事できるように研修体系の構築を図り、キャリアアップを支援。他事業所と連携した取り組みも支援する。
経営改善支援事業:経営改善の専門家の活用、ホームページのリニューアルや広告の作成など人材及び利用者確保に向けた広報、事業の協働化・大規模化に向けた取り組みに要する経費を支援。

その他業種共通で活用できる補助金・助成金
IT導入補助金2025
中小企業や小規模事業者における労働生産性の向上を目的に、ITツールの導入を支援します。2025年度は最低賃金引き上げに対応すべく、事業者の補助率を増加するとともに、IT導入後の活用支援の対象化、セキュリティー対策支援の強化を図ります。
<支援対象>
中⼩企業・⼩規模事業者など
<補助内容>
デジタル化 やDX等に向けたITツールの導⼊を⽀援する。通常枠では最大450万円に対して1/2、最低賃金近傍の事業者は2/3を補助する。
参考:中小企業庁「サービス等生産性向上IT導入支援事業『IT導入補助金2025』の概要」
業務改善助成金
事業場内最低賃金を30円以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資を実施した場合に、設備投資に要する費用の一部を助成します。
<支援対象>
中小企業・小規模事業者
<助成内容>
設備投資や人材育成と最低賃金引上げを支援する。生産性向上に資する設備費・研修費等を最大600万円助成する。
参考:厚生労働省「令和7年度業務改善助成金のご案内」
働き方改革推進支援助成金
生産性向上及び労働時間の削減、年次有給休暇の取得推進に向け、生産性向上に取り組む中小企業の事業者を支援します。
<支援対象>
(サービス業では)常時雇用100人以下の事業者
<助成内容>
労働時間の見直しや職場環境改善を支援する。就業規則作成、労務管理ツール導入費を助成する。
参考:厚生労働省「令和7年度「働き方改革推進支援助成金」労働時間短縮・年休促進支援コースのご案内」
キャリアアップ助成金
有期雇用労働者や派遣労働者、短時間労働者といった非正規雇用労働者の企業内におけるキャリアアップを促進。正社員化、処遇改善に取り組む事業主への助成制度です。
<支援対象>
雇用保険適用事業所の事業主
<助成内容>
非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、 処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度。規定に基づき有期雇用労働者等を正社員化した場合、中小企業では1人当たり最大80万円が助成される。
参考:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度版)」
人材開発支援助成金
事業主が労働者に対して、対象となる訓練を実施した場合の訓練経費、訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。
<支援対象>
雇用保険適用事業所、訓練を受けさせる労働者が雇用保険の被保険者であること。
<助成内容>
事業主等が雇用する労働者に対して、職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合等に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する。
参考:厚生労働省「人材開発支援助成金を利用しやすくするため令和7年4月1日から制度の見直しを行いました」
まとめ
補助金・助成金は、単なる経費の補填ではなく、「攻めの経営」を実現するための資金源と捉えることができます。
ICT化やDX、職場環境の改善、人材の定着といった将来を見据えた投資は、事業所の安定やサービス向上に直結します。
補助金・助成金の制度は毎年変化するため、最新情報を把握し、戦略的に対象サービスを活用することが重要です。導入支援や補助対象となっているICTツールの中には、現場の声から生まれた実用的なシステムや業務効率を大幅に向上させる製品も増えています。
さまざまな補助金・助成金を活用することで、こうしたツールの導入にかかる初期投資を抑えられます。
下記にご紹介する製品ページでは、補助金の対象となる業務支援ツールについてご案内しています。自事業所の状況と照らし合わせながら、ぜひ導入の参考にしてみてください。
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著者プロフィール

梅木 駿太
合同会社Re-FREE 代表/経営パートナー/医療経営・管理学修士(MHA)
理学療法士として医療・介護の現場を経験したのち、管理職として部門運営を経験。その後、複数の介護事業所を有する医療法人の事務長として医療介護経営に従事。現在は特に50床以下の小規模病院・クリニック・介護事業所を中心に、経営支援を行っている。長期的な戦略に基づいた、実効性の高い支援内容に定評がある。
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