2026年以降の労働基準法改正案を徹底解説!準備すべき労務管理対策とは

厚生労働省の「労働基準関係法制研究会」は、2025年1月8日に労働基準法の見直しに関する報告書(労働基準関係法制研究会報告書)を公表しました。今後は労働政策審議会で議論が行われる見通しです。

報告書によると、連続勤務の上限規制や勤務間インターバル制度の義務化など、企業の労務管理に大きな影響を及ぼす可能性のある改正内容が検討されており、企業は早期の情報収集と準備が重要となります。

本記事では、報告書で示された改正の方向性や主要な論点を分かりやすく解説し、企業が今から取り組むべき実務対応のポイントを紹介します。

※本記事は、2025年12月23日現在の情報に基づいて作成しています。

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【目次】

  • 労働基準法改正が議論されている背景
  • 2026年以降の労働基準法改正に向けて議論されている主な内容
  • 労働基準法改正に備えた実務対応
  • まとめ

労働基準法改正が議論されている背景

近年、日本においては多様な働き方や健康経営など、労働に関わる複数の目標を並行して実現することが求められています。その実現に向けた施策は、努力義務や運用解釈に頼る制度設計が中心でした。

また、デジタル化が進むにつれて「勤務時間外の連絡」「業務範囲の拡張」「境界線の不明確化」といった新たな課題が顕在化しています。

このように、社会構造や働き方が変化する中、改めて労働基準法の制度設計を見直す必要性が高まっています。

2026年以降の労働基準法改正に向けて議論されている主な内容

労働基準関係法制研究会の報告書では、2026年以降の労働基準法の改正に向けて、主に以下のような事項が検討されていることが公表されています。

  • 連続勤務の上限規制(連続14日以上の勤務の禁止)
  • 法定休日の特定義務
  • 年次有給休暇取得時の賃金算定の原則化
  • 勤務間インターバルの義務化
  • つながらない権利(指針・ガイドライン策定の検討)
  • 法定労働時間週44時間の特例措置の廃止
  • 副業・兼業者の割増賃金算定における労働時間通算ルールの見直し
  • 時間単位の年次有給休暇日数の拡大

出典:厚生労働省「労働基準関係法制研究会報告書(別窓で開く)

ここからは、各項目について解説します。

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連続勤務の上限規制(連続14日以上の勤務の禁止)

現行法では「4週間で4日の休日」の法定休日を確保すれば問題はなく、さらに変形休日制を活用すれば、最長で24日連続での勤務が可能とされています。

しかし、上述した報告書では精神疾患の労災認定基準の中に「連続2週間勤務」が判断要素とされていることを踏まえ、14日以上の連続勤務を禁止する案が検討されています。

この法改正が実現すると、特にシフト勤務を採用する事業場では「2週間に少なくとも2日の休日を必ず配置するシフト設計」が不可欠となります。

加えて現行法では、36協定を締結して割増賃金を支払うことで法定休日の労働が法的に可能です。つまり36協定が締結され、割増賃金が支払われる場合は、理論上無制限に連続勤務を命じることができます。

そうした状況を踏まえ、報告書では「36協定が締結されている場合であっても、長期間にわたる連続勤務は労働者の健康を著しく損なう可能性がある」として、「望ましくない」と指摘しています。

そのため、時間外労働に上限が設けられているのと同様に、休日労働についても一定の制限を設けるべきだという見解が示されています。ただし、「災害復旧などやむを得ない事情がある場合には、労使間の合意に基づき代替措置を設け、例外とすることも検討すべきである」と提言されています。

法定休日の特定義務

現行法では、法定休日を曜日で指定して明記する義務はありません。上述の報告書では、使用者が就業規則で法定休日を特定しても、法律上では規律されていないため「法的な予見可能性に問題がある」との見解が示されています。

そのため、「週◯曜日」といった形で法定休日を明確に特定し、就業規則や勤務表に記載すること、さらに法定休日の振替手続きや期限を定めることが義務化する法改正が検討されています。

そのねらいは、「いつが法定休日か」が曖昧なままに運用されていた現行運用の是正です。

年次有給休暇取得時の賃金算定の原則化

現在、年次有給休暇を取得した際の賃金算定には、以下3点の賃金方式の中から選択して運用することが求められています。

  • 通常賃金
  • 平均賃金
  • 健康保険法の標準報酬日額

しかし、選択した賃金方式によっては、従業員にとって不利益を生むケースもあるため、改正案では「所定労働時間に対する通常賃金方式による支払い」を原則化する案が提示されています。

勤務間インターバルの義務化

現行法では、終業から翌日の始業までに一定の休息時間を設ける「勤務間インターバル制度」について努力義務が課せられています。

報告書では、「現行法や労働時間等設定改善指針では概念的な内容にとどまり、勤務間インターバルの時間数や対象者、その他導入に当たっての留意事項等は法令上示されていない」と述べられています。

そのような状況を受け、勤務間インターバルについても義務化する方向が検討されています。具体的には、原則11時間以上のインターバル確保を基軸に、柔軟運用や代替措置を認める規定も議論されています。

今後は「代替休息時間の確保」や「繁忙期における柔軟運用」など、例外的な措置をどう設計するかが論点となりそうです。

つながらない権利(指針・ガイドライン策定の検討)

メール・チャット・電話などでの勤務時間外の連絡禁止や制限を「つながらない権利」として位置づける方向で、ガイドラインの策定や指針の整備が検討されています。

「つながらない権利」の導入目的は、単に「時間外の連絡を禁止する」ことではなく、労働者の私生活を尊重して精神的な負担を軽減することにあります。

実務上は、「緊急連絡の定義」「連絡可能時間帯」「上司・部下間のルール」などを企業ごとに整理する必要があると予想されます。制度を形骸化させないために、管理職への教育と意識改革が欠かせないでしょう。

法定労働時間週44時間の特例措置の廃止

週44時間特例措置とは、特定の業種・規模の事業場において、法定労働時間を週40時間から44時間に延長できる制度です。

しかし、厚生労働省の調査では、現行法で認められている企業の87.2%が特例措置を使っていないことが明らかになりました。この状況を鑑み、週44時間特例措置の廃止が検討されています。

報告書では「業種による違いを把握しつつ検討すべきである」とされています。ただし、今後の議論によっては、全ての事業場の労働時間の上限が週40時間に統一される可能性があります。

出典:厚生労働省「労働条件分科会(第193回)参考資料 No.3 参考資料 P13 (別窓で開く)

副業・兼業者の割増賃金算定における労働時間通算ルールの見直し

現行の副業・兼業者の割増賃金算定では、労働基準法第38条を受けた通達に基づき、「事業主が異なる場合でも労働時間を通算して割増賃金を支払う」としています。しかし、通達に基づいた運用では「他社の労働者雇用を困難にする一因だ」という声もあります。

こうした現状を踏まえ、上述の報告書では「(労働者の健康確保のための)労働時間の通算管理は維持しつつ、割増賃金の支払いについては労働時間通算を不要とする法制度の整備に取り組むことが考えられる」としています。

時間単位の年次有給休暇日数の拡大

労働政策審議会では、時間単位の年次有給休暇の取得上限について見直しが議論されています。現行法の年5日の制限に対し、今後は付与日数の50%まで拡大する案が審議されており、通院や育児・介護、自己研鑽など多様なニーズに対応できるとされています。

実務においては、時季指定義務(5日)と時間単位の年次有給休暇の関係や、残日数を可視化する仕組みなどの運用ルール再設計が必要となるでしょう。

出典:内閣府規制改革推進室(内閣府ホームページ)「規制改革実施計画(別窓で開く)

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労働基準法改正に備えた実務対応

労働基準法の改正議論を踏まえ、企業は法改正の施行を見据えた実務対応を早期に開始する必要があります。対応は多岐にわたりますが、特に以下4点が重要となるでしょう。

  • 就業規則・雇用契約書の見直しの検討
  • 労務管理体制の整備
  • 従業員への周知準備
  • 勤怠管理・給与計算システムの改修

それぞれの項目について解説します。

就業規則・雇用契約書の見直しの検討

今回の改正議論で示された内容は、企業の根本ルールである就業規則や個別の雇用契約書に直接影響します。特に「法定休日の特定」 が義務化されれば、就業規則において「毎週日曜日を法定休日とする」といった具体的な曜日を明記する必要があります。

また、「勤務間インターバル」 の導入に向けては、休息時間の具体的な時間数を定める条文の新設が求められるでしょう。さらに、「年次有給休暇取得時の賃金算定」が通常賃金に原則化されることに伴い、就業規則や賃金規程の計算根拠を見直す必要も生じます。

自社の就業規則や36協定などの労使協定、個々の雇用契約書まで総点検し、法改正の施行に備える必要があるでしょう。

労務管理体制の整備

法改正が施行された場合、人事・総務部門や現場の管理職に求められるコンプライアンス管理の重要性が一層高まります。特に、現場での勤務実態の把握や法定休日の確保、勤務間インターバルの遵守状況の確認など、労務管理体制の整備が必要です。

また、「つながらない権利」 に関するガイドライン策定に備え、まずは自社における勤務時間外の連絡実態を調査し、社内ルールを策定する必要もあります。チャットやメールの運用ルール化、緊急連絡の定義づけなど、具体的な運用の検討が欠かせません。

従業員への周知準備

新しいルールを導入しても、従業員に浸透しなければコンプライアンス違反のリスクは防げません。制度や規程を整えるだけでなく、全従業員が改正内容を正しく理解し、実務で実践できるようにするためには制度の周知が不可欠です。

特に、労務管理を担う管理職に対しては、法改正の背景や目的から理解してもらう必要があります。シフト管理の方法や勤務間インターバルを意識した業務指示、「つながらない権利」を踏まえた勤務時間外の連絡ルールなど、管理職の意識改革が必須です。

また、従業員に対しても、拡大される可能性のある時間単位の年次有給休暇の取得方法や、インターバル制度を守るためのルールについて説明会やマニュアル配布などを通じて丁寧に周知する必要があります。

勤怠管理・給与計算システムの改修

法改正に対応するためには、勤怠管理・給与計算システムの改修も不可欠です。「勤務間インターバル」や「連続勤務の上限規制」「時間単位の年次有給休暇の拡大」などは勤怠管理システムの改修なしには対応が難しくなります。

また、給与計算システムにおいても「年次有給休暇取得時の賃金算定の原則化」や「割増賃金の算定見直し」などの対応も必要になる可能性があります。

システムの改修は、法改正への対応を効率的かつ正確に行うだけでなく、人事・総務担当者の集計作業の負担を大幅に軽減できます。自社の状況と法改正内容を把握し、システムの改修が必要か確認しましょう。

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まとめ

2026年以降に予定されている労働基準法改正は、連続勤務の制限や勤務間インターバルの義務化、「つながらない権利」の明確化など、働き方そのものに直結する内容が多く含まれています。

企業は就業規則や制度設計の見直しに加え、勤怠管理システムや給与計算システムの改修といった実務対応が不可欠となります。早期に現行ルールを棚卸しし、労使協議やシステム整備を進めることが、スムーズな法改正対応につながります。

※なお、本記事にて紹介した労働基準法改正法案は、当初念頭に置いていた2026年の通常国会への提出が見送られる見込みです。今後の動きについては、官公庁の発表などをご確認ください。


法改正への柔軟な対応と効率的な勤怠管理を実現するためには、システムの活用が有効です。

三菱電機デジタルイノベーションの就業システム「ALIVE SOLUTION TA」は、従業員の働き方を的確に把握し、法令遵守を支援できるシステムです。2026年以降の労働基準法改正案に関する以下の内容についても対応可能です。

●連続勤務の上限規制(連続14日以上の勤務の禁止)
連続勤務日数が上限に近づいている従業員を事前に抽出し、一覧で確認可能です。上限を超える前に本人や管理者へ一括でアラートメールを送付することで、法令違反を未然に防げます。

●法定休日の特定義務
法定休日と法定外休日を明確に分けて管理できます。

●勤務間インターバルの義務化
対象者を一覧表で確認できます。対象者向けに一括でアラートメールを送付することも可能です。インターバル時間の平均値も確認できます。

●時間単位の年次有給休暇日数の拡大
時間単位の年次有給休暇の取得限度を設定により変更可能です。また、時間単位の年次有給休暇の入力、残日数も可視化できます。さらに、従業員による有給休暇の時季指定やその取得状況(取得済/未取得)の管理にも対応しています。

法改正への柔軟な対応を図るためには、就業システムの早期導入・見直しの検討が肝要です。これを機に、法令遵守と業務効率化を両立する人事・総務業務の基盤づくりに踏み出してみてはいかがでしょうか。

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著者プロフィール

北 光太郎
社会保険労務士

中小企業から上場企業まで様々な企業で労務に従事。勤務社労士として計10年の労務経験を経て「きた社労士事務所」を設立。独立後は労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人・個人問わずWebメディアの記事執筆・監修を行いながら、自身でも労務情報サイトを運営している。

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