クラウドとは?定義や仕組み・効果・導入事例を詳しく解説

「○○クラウド」や「クラウド○○」など、クラウドという名称がつくシステムやサービスが多く存在している現在。自身が気づいていないところで実はクラウドを利用していた、という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

クラウドは、自社内で情報システムを保有し自社設備内で運用する、という従来当たり前だった考え方を大きく変えた概念です。
そこで本コラムでは、クラウドの定義や仕組み、また、得られる効果や導入事例をご紹介します。このコラムを通して、「クラウドとは?」を、学びましょう。

【目次】

  • クラウドとは
  • クラウドは安全?
  • クラウドを導入するメリット
  • クラウドの課題
  • クラウドの導入事例
  • まとめ:クラウドを導入して業務効率をあげよう

クラウドとは

クラウドとは、インターネットを通じてアクセス可能なコンピューティングリソースの集合体を指します。具体的にはサーバーやストレージ、データベース、ネットワーク、ソフトウェア、アプリケーションなどが含まれ、ユーザーは必要な時にそれらのサービスを利用できるという考え方です。

インターネットを利用して遠隔地にあるリソースをどこからでも利用できるため、ユーザーから見ると物理的な実体が無いように見えます。そのため「雲(cloud)」の中に様々なリソースが隠れているようなイメージから、「クラウド」と表現されています。

クラウドは、ビジネスの効率化と拡大を可能にする強力なツールです。例えば、新しいアプリケーションを開発する際、企業はクラウドから必要なリソースを取り出して使用し、開発が終わればそれらのリソースを戻すことができます。つまり、企業は大規模な初期投資をせずに、必要なときに必要なだけリソースを利用することができるのです。
また、クラウドは地理的な制約がなく、どこからでもアクセス可能な環境を提供できます。これにより、リモートワークやグローバルなビジネス展開が容易になります。

クラウドは、ビジネスの可能性を広げ、企業の競争力を高めるための重要な要素となっています。

クラウドが誕生した背景

クラウドは、IT投資コストの削減と、ITリソースの効率的な利用を求めるニーズから生まれました。
歴史を辿ると、多くのコンピューターが普及した1990年後半頃にまで遡ります。
クラウドが登場する前は、自社内でサーバーやストレージを設置し管理する必要がありました。しかし、システムコストや管理コストが高額になってしまうだけでなく、せっかく用意したリソースが常にフル活用されるわけではありませんでした。

このような背景もあり、必要な時に必要なリソースだけを利用し、使った分の料金を支払うといった新しい考え方、「クラウド」が誕生しました。
現在では、クラウドから得られる多くの利点が評価され、企業での導入や個人利用が進められています。

クラウドの基本的な5つの特徴

NIST(米国国立標準技術研究所)におけるクラウドコンピューティングの定義には「クラウドモデルは5つの基本的な特徴と3つのサービスモデル、および4つの実装モデルによって構成される。」と記載されています。
ここからは、「5つの基本的な特徴」について見ていきましょう。

オンデマンド
自己サービス
ユーザーが自分で必要な時にサービスを利用でき、追加のストレージやサーバーが必要な時、自分で簡単に手配できる
広範なネットワーク
アクセス
インターネットがつながる場所ならどこからでもかつ、端末を選ばずにサービスにアクセスできる
リソースの共用 サービス提供者が複数のユーザーに対して、共有のリソース(ストレージや処理能力など)を提供し、ユーザーは自分が必要な分だけを利用し、他の部分は他のユーザーが利用する
スピーディな
拡張性
必要に応じてサービスを拡大・縮小できる
測定可能な
サービス
利用した分だけ課金されるため、無駄なコストを抑えることができるだけでなく、利用状況を把握することでリソースの適切な管理が可能

これらの特徴を備えていることで、ユーザーは快適にかつ自由にクラウドを利用できるといえます。

クラウドの3つのサービスモデル

クラウドが提供するサービスには、3つの提供形態があります。

サービスモデル 特徴
SaaS
(Software as a Service)
  • アプリケーションソフトウェアを提供
  • 例:Webメール、顧客管理ソフトなど
PaaS
(Platform as a Service)
  • OSやデータベース、開発ツールなどのプラットフォームを提供
  • 例:Webアプリケーション開発・運用プラットフォーム
IaaS
(Infrastructure as a Service)
  • 自由にシステムを構築・管理できる基本的なコンピューティングリソース(サーバー、ストレージ、ネットワーク)を提供
  • 例:仮想マシン

クラウド上でどんなことをしたいのか?を意識してサービスを選定すると良いでしょう。

【関連コラムのご紹介】

3つのサービスモデルについて詳しく知りたい方は、コラム「SaaSとは?PaaSやIaaSとの違いや特徴をご紹介」をご覧ください。

クラウドの4つの実装モデル

クラウドは、利用するユーザーの視点から4つに分類できます。

実装モデル 特徴
パブリッククラウド 不特定多数のユーザーが利用できる。特定のユーザーに対してカスタマイズすることは基本的にない。
プライベートクラウド 特定の企業や組織の中だけで独自に利用できる。企業・組織のニーズに合わせて環境をカスタマイズできる。
コミュニティクラウド 同じ業界の複数の組織など特定のコミュニティが共有する。管理とメンテナンスのコストをコミュニティに属する組織で分担。
ハイブリッドクラウド 上記3つの実装モデルの特性を組み合わせて構築したクラウドサービスのこと。柔軟性とバランスが特徴。

まずは基本である、この4つの実装モデルを理解しておくと良いでしょう。

クラウドは安全?

クラウドは、適切に管理されていれば、非常に安全に利用できるツールです。
しかし、クラウドが登場した当初はハッキングやデータ漏洩などの脅威に対する防御策が十分に整っていなかったことや、物理的なサーバーではなくなるという不安感から、安全性が懸念されていました。
ですが、これらの懸念は時間とともに、大部分が解消されました。

一方で、クラウドサービスを提供するプロバイダーによりセキュリティー対策が強化され、厳格なプライバシー規定を遵守するようになったとしても、すべてのサービスが同じレベルであるとは限りません。また、利用する私達が適切に管理・運用しなければ安全とは言えないのです。

つまり、クラウドの安全性は、利用するプロバイダーの適切な選択と、我々がどう利用するかによって左右されると言って良いでしょう。

クラウドを導入するメリット

クラウドを導入すると、どのような効果がもたらされるか詳しく解説します。

1.コスト削減

クラウドを導入すると、物理的なサーバーやデータセンターの設置・維持にかかるコストを大幅に削減できます。
また、必要なリソースだけを利用することができるため、無駄な支出を抑えることが可能です。

2.拡張性が高い

ビジネスの成長や変化に合わせて、必要なリソースを迅速に増減させることができます。つまり、企業のその時々のビジネスの大きさに合わせて、コンピューターのリソースを必要なだけ調整できるということです。
これにより、ビジネスの拡大や縮小に柔軟に対応することが可能となります。

3. 利便性が高まる

インターネットが接続できる環境であれば、どこからでもデータやアプリケーションにアクセスすることができます。これにより、場所にとらわれないフレキシブルな働き方を実現することができます。
例えば、営業担当者は外出先からでもスマートフォンやタブレットを使って自社の顧客データにアクセスしたり、最新の売上報告を確認したりすることが可能になるでしょう。
利便性の向上は災害時などの事業継続性も向上させられるため、BCP対策にも寄与します。

クラウドの課題

クラウドの導入を検討する上で、課題も把握しておきましょう。

1.適切なセキュリティー対策

前章の「クラウドは安全?」にてご紹介した通り、安全性は高まっていますが、完璧ではありません。そのため、クラウドサービスを提供するプロバイダーが適切なセキュリティー対策を講じているか確認する必要があります。
また、利用する側としての対策も必要です。例えば、データの暗号化や二要素認証の導入、セキュリティーポリシーの策定などに取組みましょう。

2.互換性や移行時のリスク

既存のシステムからクラウドへのデータ移行を行う際、互換性の問題により移行できない可能性もあります。また、移行中のデータ損失や、大量のデータを扱う場合には時間とコストがかかることもあるでしょう。
これらを解決するためには、事前の移行計画の立案やテスト、バックアップの取得などが必要です。

クラウドの導入事例

ここではクラウドを導入し、業務効率化を実現した企業の事例をご紹介します。

クラウドを利用してFAX業務を改革

ある大手銀行では、本社機能の集約を期に日々大量に行われていたFAX業務の変革に取組みました。具体的には、従来のFAX専用機の利用をやめ、プライベートクラウドサービス上にFAXエンジンとアーカイブのためのストレージを構築。FAXを受信したことをメールが教えてくれるため、従業員は自身のPCからサービスにログインすればデータを確認することができるようになりました。
また、FAXが届いた時点でPDF化されてストレージに自動保管もされるため、アーカイブの手間も最小化。トータルで約7割のFAX機を削減することにも成功し、コストも大幅に削減できました。
さらにBCP対策としての効果や、文書の残置や紛失といった心配がなくなり、セキュリティー強化にもつながっています。

今後はクラウド型FAXシステムの適用拡大を図り、さらなるビジネススタイルの変革を推進していくそうです。

まとめ:クラウドを導入して業務効率をあげよう

ここまで、改めて基本に立ち返り、「クラウド」とは何か?についてご紹介してきました。

<このコラムのPOINT>

  • クラウドの定義は、インターネットを通じてアクセスできるコンピューティングリソースの集合体のこと
  • 適切に管理されていれば、クラウドは安全に利用できるツールである
  • クラウドを利用することでビジネススタイルの変革を実現するなど、様々なメリットがある

クラウドは、私たちの働き方や企業の運営を根本から変える力を持っています。しかし、クラウドの恩恵を享受するためには、正しい知識と適切なセキュリティー対策が重要です。
今後も、クラウドは技術的な進化を遂げ、様々なサービスが登場するでしょう。
ぜひこの機会にクラウドへの理解を深め、その力を最大限に活用しましょう。

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