従業員・企業アカウント担当者が学んでおくべきSNS利用時のリスクと対策
公開:2020年05月12日
企業のSNSアカウントや、個人のアカウントによる不適切な投稿が「炎上」しているニュースを見たことはありませんか?SNSは情報収集・発信に便利なツールである一方、不適切な投稿をしてしまうと一気に炎上が起こり、企業イメージの損失にもつながるというリスクがあります。
このコラムでは、企業のPRにSNSの利用を検討している、若しくは既に利用している企業の従業員・企業アカウント担当者の方に向け、SNS利用時のリスクと炎上しないための取組についてご紹介します。SNSの利用が当たり前となっている今だからこそ、自身を守るための対策を知りましょう。
SNS利用のリスク
今日、SNS(Social Networking Service)の用途は個人間のコミュニケーションだけにとどまらず、企業の公式アカウントによる企業PRや、ファンとのコミュニケーション促進に利用されています。
実際、SNSの利用者は多くのメリットを感じています。
2018年に総務省が発表した「平成30年版情報通信白書」によれば、「ソーシャルメディアを利用して良かったと思えることがある」と答えた利用者は73.1%にも上りました。また、そう回答した人の多くがSNSを使うことで「社会や経済に関する最新ニュースを知ることができた」、「趣味や地域の話題など、興味のある情報を取得できた」と回答しており、ユーザーにとってSNSが情報収集のツールとして役立っていることが伺えます。一方、SNS利用のメリットとして「新しいつながり創出」ということを挙げた人は20%以下とまだ低いものの、SNSを通じて自分と異なる他者とのつながりを得ることの重要性は、今後高まっていくことが予想されます。
利用者にとって便利な面が多いように思われるSNSですが、情報発信側が使用する際は「情報漏洩」や「炎上」のリスクが潜んでいます。炎上とは、SNS上における失言やトラブルなどがもとで非難や批判が瞬く間に広がり、収拾がつかなくなってしまうことです。
炎上のきっかけとなる事例には、以下のようなケースが考えられます。
■企業アカウントを用いたSNS上での情報配信時<企業アカウントにおけるリスク>
- 企業の機密情報をうっかり漏えいしてしまった
- 配信した情報に不謹慎な内容があった
■従業員個人のアカウントを用いたSNS上での情報配信時<個人アカウントにおけるリスク>
- 公序良俗に反する投稿をした
- フェイクニュースを拡散した
この従業員個人が招いてしまった炎上から、企業に被害が及ぶこともあります。例えば、「批判を浴びた従業員の勤める企業が特定され、企業へのバッシングへと変わる」、「自社とは全く関係ない内容であったにも関わらず風評被害を受けてしまう」などです。また、店舗型のビジネスであれば、Googleやポータルサイトに掲載されている自店舗の「クチコミ」に、根拠のない誹謗中傷が書かれることもあるのです。
SNSは拡散力の高さから、一度炎上してしまうと収拾がつきにくいのが特徴です。結果的に企業が不利益を被ってしまうこともあります。SNSを企業活動の1つとして利用する際は、企業アカウントの担当者だけでなく従業員一人ひとりがSNSによるリスクについて理解し、対策をしておく必要があるでしょう。
企業が行うべきSNSリスク対策
個人アカウントによるSNS利用は、あくまで従業員のプライベートなものです。これを企業として強制的に監視したり制御したりすることは、プライバシーの侵害になってしまいます。しかし、上でご紹介したようなトラブルを未然に防ぐためには、企業として従業員に対し「学ぶ場」を設ける必要があります。また、企業の営業活動の1つとして個人アカウントでのSNS利用をお願いする場合、企業アカウントを運営する場合についても、同様の対策を行いましょう。
以下では、企業が行うべきSNSリスク対策をご紹介します。炎上を防ぎ、企業イメージを損なわないための対策として参考にしていただければ幸いです。
SNS運用のガイドライン(ソーシャルメディアポリシー/ガイドライン)を作成する
「ソーシャルメディアポリシー」あるいは「ソーシャルメディアガイドライン」とは、ソーシャルメディアを適切に運用・活用するためのルールや指針のことです。SNSによるトラブルから企業を守るためにも、作成しておきましょう。
ガイドラインには、大きく分けて2種類あります。
- 企業の公式アカウントルール
利用目的を明確に定め、発信する内容や管理・運用に関する権限について規定する - 従業員の個人アカウント利用ルール
個人の自己表現を尊重した上で、企業の一員であることを意識した利用や運用を定める
個人アカウントの利用については、以下のような最低限のルールを盛り込んでおくと良いでしょう。
従業員の個人アカウント利用ルールの具体例 |
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企業が従業員の個人アカウントを一つひとつ「監視」することは現実的ではありません。しかし、このようにガイドラインを作成しそれを周知・徹底しておくことで、炎上となるリスクを減らせることができます。
「炎上」を理解するための勉強会を開く
SNSでの炎上を防止するためには、社内で勉強会やセミナーを開き、SNSに関する共通認識を持つことも大切です。SNSは不特定多数の人へ影響力のあるメディアであるがゆえに、一度不適切な投稿をすると炎上の収拾がつかなくなるという意識を従業員一人ひとりが持つようにしましょう。
リスクが生まれる可能性があるという意識を持ってSNSに向き合うためにも、勉強会やセミナーなどで是非紹介しておくべき内容が、炎上の「プロセス」です。
炎上のプロセス | |
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Step.1 | 炎上のきっかけとなる事象(火種)が発生する |
Step.2 | 炎上の事象について当事者や第三者がSNSに投稿する |
Step.3 | 投稿を見たユーザーが炎上事象を話題にし、それが拡散される |
Step.4 | 炎上事象をインフルセンサーが話題にし、さらに拡散される |
Step.5 | ネットニュースなどで紹介される |
Step.6 | ネットニュースの記事を見たユーザーが話題にし、拡散される |
Step.7 | メディアに取り上げられ、世間に知られることとなる |
炎上の根本元となる投稿は、最初こそインターネット上で話題になりますが、炎上のプロセスが進むに従い、SNSを利用しない人の間にも広まります。その結果、企業のブランドイメージを大きく損なうことになるのです。
過去のSNS炎上事例には、以下のようなものがありました。
- IT企業の採用面接官が、面接者の名前や面接の状況を投稿
- 飲食店のアルバイト店員がアイスの冷蔵ケース内で寝転ぶ写真を投稿
- ホテル内の飲食店で働くアルバイトスタッフが有名人の来店を投稿
一度炎上してしまうと、投稿者の処分だけではすみません。経営トップの謝罪や投稿によって名誉を傷つけられた人に対して謝罪することはもちろん、裁判に発展することもあり得ます。そうならないためにも、まずは炎上のプロセスや炎上事例について知り、炎上の「火種」になるような事象について投稿しない、という意識を持つことが重要と言えるでしょう。
まとめ
多くの人が気軽に利用できるSNS。SNSは企業としても、情報発信やブランドの「ファン」獲得のために利用できる有効なツールの1つです。しかし、たったひとつの投稿が自社ブランドを傷つける可能性もあります。そのため、企業のアカウントとして発信する場合だけでなく、従業員の個人アカウントの運用についても事前にルールを定めておくことがSNSに潜むリスク、炎上を避けるためにも大切です。また、SNSに関する共通認識を持つための勉強会などを行いましょう。
このような取組の重要性を経営層が理解し、推進することが必要な時代になっているのではないでしょうか。
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