5つの事例から見る社内コミュニケーションの活性化施策
公開:2020年08月19日
IT化が進み、業務を行う環境が大きく変化した現在。在宅勤務やフレックスタイム制度などの導入も進み、働き方も多様化していますが、あなたの会社は社内コミュニケーションが活発でしょうか?もしかしたら、昔ほど従業員同士のコミュニケーションが活発ではなくなったな・・・と感じている方も、多いのかもしれません。
部署や課の垣根を越えた従業員同士のつながりが生まれると、社内の情報共有の促進や職場全体の生産性向上効果が期待されるほか、「縦割り」の組織では生まれなかった新しい事業アイデアも生まれやすくなると言われています。
そこで今回は、職場に活気をもたらす「社内コミュニケーション施策」について、実際に企業で行われた施策事例をもとに、自社で取り入れる際のポイントをご紹介します。
社内コミュニケーションはなぜ重要か
そもそも「社内コミュニケーション」とは、なんでしょうか。
社内コミュニケーションとは、従業員同士の関係性を深め相互理解を促進するために、交流や情報の共有を行うことです。社内コミュニケーションが円滑で活性化されると、「風通しの良い職場」が生まれます。従業員同士の信頼関係が築かれるだけでなく、全ての従業員に企業の目標やビジョン、必要な情報が展開されるようになります。その結果、業務の効率化や生産性向上、離職防止や利益にも繋がると言えるのです。
反対に社内コミュニケーションが不足し職場の人間関係が希薄になると、相談がしづらいと感じる人が多くなり、精神的なストレスを抱えてしまうことがあります。すると、結果的に離職率が上がるといったことが考えられます。また、企業としてどのような方向に進もうとしているかが共有されない、部門間の業務内容が共有されないなど、閉塞的な状況になってしまい、結果として業績低下に繋がることも考えられます。
健全な経営へと進まなくなる可能性がある社内コミュニケーション不足ですが、多くの企業ではどのように感じているのでしょうか。
HR総研(ProFuture株式会社)が2020年1月末~2月初旬に調査した『「社内コミュニケーション」に関するアンケート調査』結果によると、社内コミュニケーションの現状に課題を感じる企業はなんと8割近く、また社員間のコミュニケーション不足が業務の障害になると感じる企業は9割を超えています。しかし、危機感を強く感じつつも課題解決に向けた取組を積極的に行っているとは言えない状況であることも、同調査結果で浮き彫りとなりました。コミュニケーションという目には見えない課題に対してどのように効果的な施策を打てば良いのか、模索している企業が多いことが伺えます。
顔を合せずとも業務連絡や指示ができてしまう今だからこそ、社内コミュニケーションの重要性について考える時期が来ているのではないでしょうか。
社内コミュニケーション施策5つの事例
社内コミュニケーションには、いくつかの種類があります。例えば、社内全社で「一体感」を生み出すためのコミュニケーション、階層や年代間における「縦」のコミュニケーション、事業所と部門間、職種間、本社・事業部間における「横」のコミュニケーションなどです。以下では、実際の会社で開催されている社内コミュニケーション事例をご紹介します。
(1)社内SNS
企業が行うSNSと聞くと、不特定多数のユーザーに向けて情報を発信したりユーザーコミュニティーの場として運営されたりすることが一般的ですが、社内用に限定したSNSの利用が進んでいます。
アプリやサイト運営を行っているA社では、社内コミュニケーションを活性化させる目的で、社内SNSを立ち上げました。導入当初は否定的な考えをもつ従業員も多かったそうですが、気軽に利用してもらうために業務上の内容だけでなくプライベートな内容を書き込むことも可能にしました。その結果、趣味のグループができるなどSNS内に活気が生まれたそうです。
今では日々の業務に関する情報発信や、仕事に役立つ小ネタなどを発信するなど良いサイクルが生まれており、従業員がお互いを「知り」そして「つながる」を促進してくれているようです。
(2)フリーアドレス
オフィスの座席を固定しない「フリーアドレス」制は、決まった席を設けず好きな席に座って仕事をするスタイルです。普段は交流しない従業員とも隣り合って仕事をすることで、ちょっとした会話からアイデアが生まれたり、誰がどんな仕事をしているかを知ったりすることができるため、オフィスそのものの風通しをよくすることが可能です。
eコマース事業を手掛けるB社では、全フロアがフリーアドレス。仕切りはほとんどなく、曲線の大きなデスクを置き椅子をジグザグに配置するなど、視界の先には誰かがいるような設計にしました。フリーアドレスになったことで、「今日打ち合わせをする人の近くに座ろう」や「今日はこの仕事を完成させたいから関わっているエンジニアの隣に行こう」など、仕事をする環境を自分で選ぶ動きが見られるようになったそうです。また、これまでには見られなかった別部署同士のグループも見かけるようになりました。
イノベーションを起こすためには多くの人との交流が大切だという考えから生まれたこのオフィスからは、新たなサービスがどんどん作り出されているそうです。
(3)経営層との交流
企業によっては、従業員と経営層との接点がほとんどないというところもあるでしょう。経営層と従業員というタテのコミュニケーションは、実は冒頭でご紹介した『「社内コミュニケーション」に関するアンケート調査』の「課題があると認識されている関係」の第二位にランクインするほど、どの企業でも問題になっている関係性なのです。そんな経営層との間にある溝を埋めるべく行われているのが、「経営層との定期面談やミーティング」です。
モバイルゲーム事業を手掛けるC社では、月1回、従業員側から役員を指名し一緒にランチをすることができる制度を導入しています。ランチ費用も会社負担です。従業員が感じた会社をこう変えていきたい!という想いを直接伝えることができるだけでなく、会社の未来についてどう考えているのかを役員自らに聞くことができるとして好評です。
(4)社内部活動
企業によっては、部署や課を超えた交流が難しい場合もあります。こうした「横のつながり」を活性化するためには、社内で部活動を立ち上げることも有効です。部活動を介することで、さまざまな部署の従業員が自発的に交流する傾向が強まるだけでなく、共通の話題ができることで、上司・部下間の精神的な距離が縮まり、業務中でも積極的にコミュニケーションを取ることが可能になるのです。
グループウエアの開発・販売を手掛けるD社では、社内部活動を導入することで30%近かった離職率を4%程度まで下げることに成功しました。野球部やフットサル部など体育会系の部活から、ボードゲーム部やカフェ部など趣味が主体の部までと数多くの部活があり、趣味や興味を通して部署や地域という垣根も越えた横の繋がりが生まれたそうです。しかも、このD社では部活動の文化祭まで行っているそうで、従業員だけでなく従業員の家族との交流の場も設けています。D社が掲げる企業理念である「チームワークあふれる会社を創る」を実現するための取組として、部活動が役立っています。
(5)社内公募制度
「社内公募」とは人事異動制度のひとつです。上層部や人事部が指示する通常の異動とは異なり、企業がポストや職種を公開し、希望者を公募するのがこの制度の特徴です。また、従業員自ら希望部署に売り込む、若しくは他部署からのスカウトで異動する「社内FA制度」を導入している企業もあります。いずれも企業と従業員とが一定のルールのもとで、社内コミュニケーションを軸とした組織の活性化を図ることができるとして期待されています。
コンシューマー製品の開発・販売を手掛けるE社では、FA制度だけでなく社内兼業を可能としたキャリアプラス制度と、新しい経験を積むためのチャレンジ機会をサポートするキャリア登録制度を導入しています。個人の意見を尊重し主体的に職場を異動しキャリア構築できる制度として注目されています。大企業であるがゆえに、一旦配属をされてしまうと職種によっては他の部門を経験する機会が非常に少なかったのですが、この制度により部門を越えて幅広く経験を積むことができるようになっただけでなく、自分のキャリアアップのために上司と密なコミュニケーションを取れるようになったことが、従業員から評価されています。
社内コミュニケーション施策を行うにあたってのポイント
社内コミュニケーションを改善するためには、「自社に足りないコミュケーションは何か」という点を見極めることが必要です。
前述のように、社内のコミュニケーションは以下の3種類に分けられます。
- 企業全体のコミュニケーション
- 階層や年代間における縦のコミュニケーション
- 事業所と部門間、職種間、本社・事業部間における横のコミュニケーション
この3種類のうち、どの部分のコミュニケーションが自社に不足しているのかを見つけましょう。社内コミュニケーションの問題点を洗い出すためには、従業員へのアンケートやエンゲージメント調査(従業員の企業に対する帰属意識調査)を定期的に行うことをおすすめします。
その結果、従業員同士や企業と従業員間で知らない事が多いということがわかったのであれば、お互いを知るための施策を考えてみる、繋がりが薄いということがわかったのであれば交流しやすい環境を作ってみるなど、スモールスタートでも始めてみることが大切です。
新しい変化は、受け入れられるまで時間がかかる場合もあります。時には期待通りにならないこともあるでしょう。しかし、PDCAサイクルをなんども繰り返すことで、きっと自社に最適な社内コミュニケーション方法が見つかるはずです。
まとめ
企業がビジネスを成長させるためには、社内のコミュニケーションが欠かせません。従業員同士のつながりや企業と従業員間でのつながりは、離職率の低下やモチベーション維持、生産性の向上と大きく関係しています。
社内コミュニケーションを円滑にし、企業に活気を与えるには、どんなコミュニケーションが求められているかを知り、そのための施策を「適材適所」で行うことが大切です。立場、役職に関係なく、ひとりでも多くの従業員をコミュニケーションに巻き込めるよう、経営層から率先して輪に入っていかれてはいかがでしょうか。
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