今後の働き方を踏まえたオフィスの縮小について考える

新型コロナウイルス(COVID-19)感染防止の観点からテレワークを導入する企業が増えていますが、一部企業ではオフィスの縮小やオフィスの多様化を目指す動きがみられています。
2020年7月には、国内大手のITベンダーがオフィスの床面積を今後3年かけて半減することを発表し、産業界に大きな衝撃を与えました。もちろん、すべての企業でオフィスの規模縮小が可能というわけではありませんが、ニューノーマル時代の働き方を踏まえたうえでオフィスの縮小に動き出す企業は、今後も増えていくことが予想されます。
そこで今回は、今注目を集めているオフィス縮小の背景や、オフィス縮小を行う際に考えておかなければいけないポイントなどについてご紹介します。

都心から広がるオフィス縮小の動き

働き方改革の一環として数年前からテレワークの導入が政府より推奨されていましたが、実際にテレワークを導入していた日本企業は多くありませんでした。総務省発表の「令和元年通信利用動向調査」の結果によると、平成30年(2018年)時点の日本企業におけるテレワークの導入率は19.1%、令和元年(2019年)時点では20.2%となっており、年々微増しているもののまだ2割程度に留まっていました。

しかし、新型コロナウイルスの流行や緊急事態宣言の発出をきっかけに、大小さまざまな企業がテレワークを導入し始めました。パーソル総合研究所が実施した 「第三回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」によると、テレワークの実施率が以下のように変化したことがわかっています。

期間(2020年) テレワーク実施率
3月9日~3月15日 13.2%
4月10日~4月12日
※7都道府県の緊急事態宣言後
27.9%
5月29日~6月2日
※緊急事態宣言解除後
25.7%

2020年4月10日~4月12日時点で実施率が27.9%、緊急事態宣言解除後の5月29日~6月2日では25.7%とやや下がったものの、新型コロナウイルス流行前と比較してみると大きく増加していることが分かります。

オフィス縮小の動きは、こうしたテレワークの増加とともに徐々に進んでいったと考えられます。では、テレワークの増加とオフィスの縮小にはどのような関係があるのでしょうか。

テレワークによりオフィス内の従業員が減少
テレワークの導入により従業員は自宅やコワーキングスペースなど、オフィス以外の場所で仕事を行うことが可能になります。すると、オフィスへ出勤する従業員が減少するため、広くて設備の整ったオフィスを構える必要がなくなります。

オフィスにかかるコスト
以前は、優秀な人材の確保や生産性向上のために、好立地で広く快適なオフィスを構えることが重要視されてきました。しかし、そういったオフィスは当然維持コストも高くなります。出社する従業員の数が減少するなかで、オフィス維持にかかるコストを削減しようと考えるのは不思議なことではありません。また、「経費の削減」の一環として「オフィス縮小」を検討している経営者がいることも要因のひとつです。

テレワークへの正しい理解
テレワーク中は従業員の働く姿を見ることができないため、「生産性が落ちるのではないか」、「サボるのではないか」と懸念される方も多いかもしれません。しかし、テレワークの導入によってワークライフバランスが充実し、生産性が落ちない、又は生産性が上がったケースは少なくありません。このように、テレワークの効果を実感することも、恒久的なテレワーク制度の採用やオフィスの縮小を考える一因になっているといえるでしょう。

オフィス縮小の壁となる4つの要素

テレワークの導入に伴って検討されるオフィス縮小は、コストの削減など企業のスマート化を図る上で様々なメリットがあります。しかし、実施するにあたっていくつかのリスクがあることも知っておかなければいけません。そこで、オフィスの縮小によって直面し得るリスクについていくつかご紹介します。

チームワークの弱体化
テレワークの導入や多様化した働き方の導入に伴いどこでも働くことが可能となる一方、従業員同士がオフィス内で顔を合わせる機会は減ってきます。このような場合、コミュニケーションツールなどを利用して従業員やメンバー間の意思疎通を図ることが一般的ですが、円滑で緻密なコミュニケーションをとることが難しいと感じる従業員も出てくることでしょう。
このような現場からの意見に対し意識的に対策を講じないと、相互理解を深める機会が減り、ほうれんそう(報告・連絡・相談)が少なくなってしまう可能性があります。その結果として、チームワークや組織の弱体化が起きる恐れも考えられるのです。チームワークの弱体化は生産性やモチベーション低下の原因となるため、注意が必要です。

部署や業務内容によってテレワークが困難であることが発覚
業務内容やセキュリティの観点などから、部署によってはテレワークでの業務継続が難しいケースも十分に考えられます。そのような場合は、必然的にオフィスへ出勤しなければいけないため、オフィスの縮小によって快適な業務ができず従業員の満足度が下がってしまうリスクがあります。

業務の変更が難しくなるリスク
テレワークを基本にしてオフィスを縮小したが、業務の変更によって出勤が必要になった、新事業によって人員を増やす必要性が出た、というケースも少なくありません。この場合、オフィスが窮屈になってしまい快適さが損なわれてしまうことや、再びオフィス拡張のためにコストがかかる可能性があります。

自宅ではICT環境整備が不十分
自宅で働く在宅勤務を推奨しようと考えた場合、家庭の事情などによっては自宅を仕事場として利用できない従業員もいます。また、自宅のインターネット環境などが不十分でオフィスと同様の業務ができないという課題も考えられます。このような懸念材料があることで、オフィス縮小には賛成できかねるという声があがることもあるでしょう。

オフィス縮小をポジティブなものとして捉えてもらうために

オフィスの縮小によってコストカットを図れたとしても、従業員のモチベーションを下げてしまっては本末転倒です。場合によっては従業員に「ただのコストカットなのでは?」という印象を与えかねません。そこで、オフィス縮小を検討、成功させるためのポイントをしっかり押さえておきましょう。

(1)働き方の現状を把握する

オフィス縮小を考えるにあたって、まずは自社内のテレワーク頻度やテレワークにおける課題などをヒアリングあるいはアンケートなどで調査するなど、現状を把握しましょう。オフィスの利用頻度や利用している従業員の人数を把握しておくことで、オフィス縮小の妥当性や縮小後のオフィスに適切な広さなどを考えることができます。また課題があがったのであれば、どのようにしたら改善が見込めるか、何を見直すべきかをしっかり洗い出しましょう。

(2)事業の将来像や採用計画について考える

オフィスのプランニングは1年後、5年後、10年後の事業展開や採用計画を考えて行いましょう。将来的に多くの人員が必要となる事業展開を考えているのであれば、より慎重なオフィスプランニングが求められます。

(3)生産性を見極める

テレワークによって生産性が下がっている場合にオフィス縮小を決定してしまうと、「単なるコストカット」という印象が拭えません。そのため、オフィス縮小を行う前に、テレワークによる生産性の評価を行いましょう。「テレワークを導入しても生産性は変わらない」、「テレワークによって生産性が向上した」などテレワーク導入の効果が明らかになれば、働き方改革の一環としてのオフィス縮小をより納得感を持った上で進めることが可能となるでしょう。

オフィス縮小に伴い従業員の働き方も変わってくるはずです。そのため、従業員が今後どのような働き方を望んでいるか、企業として考える方向性と従業員の気持ちが同じ方向を向いているのか、以前と変わらないモチベーションでパフォーマンスを維持できるのかも、しっかりと見極めて計画していくことを意識すると良いでしょう。

まとめ

オフィス縮小というと、これまではネガティブなイメージが先行していたかもしれません。しかし、テレワークの導入が増えた昨今では、企業のスマート化を図るポジティブな動きとして評価されつつあります。ですが、ただオフィスを縮小するだけでは、結果的に不利益を被ってしまったり従業員のモチベーション低下を招いたりするリスクがあることも忘れてはいけません。
オフィス縮小を考える際は、「現状の働き方」、「未来の事業計画」、「テレワークによる生産性の変化」をしっかりと把握した上で最適なプランニングを行なっていく必要があります。まずは、従業員へのヒアリングや将来設計、テレワーク運用における課題整理などから始められてはいかがでしょうか。

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