コロナ禍・テレワーク時代におけるBtoB営業の在り方
2020年は新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大によって私たちの生活は一変し、あらゆる場面でその影響を受けることとなりました。従来は顧客先へ訪問し対面で行なっていたBtoB営業も、人との接触を避けるためにオンライン上で行われる機会が急激に、また急速に増加しました。オンライン主流の営業活動は今後も続くと考えられ、従来の営業スタイルから脱却した「新たな営業スタイル」の確立が求められています。
そこで今回は、コロナ禍・ニューノーマル時代においても成果を上げる強いBtoB営業を確立するためのポイントをご紹介。企業として求められている新たな仕組みについても解説します。特に経営層やマネジメント層の方、そしてBtoB営業ご担当者の方は今後の営業活動における参考にしてみてください。
営業の現場がオフラインからオンラインへ
2020年は、営業手法の主流が従来の「オフライン」から「オンライン」へと急速に移行することとなった年でした。
これまでもオンラインによる営業活動はありましたが、その多くはメールや電話などにより確度の高い見込み客を見つける「インサイドセールス」によるものでした。その後、商談化の見込が高いと判断した顧客に対して提案・クロージングを行うというプロセスになりますが、その活動の多くはやはり対面による営業活動「フィールドセールス」が主流です。
この一連の営業活動は、あくまでも営業プロセスの一部分がオンライン化されたものであり、一貫したオンライン営業とは異なるものといえます。
多くの日本企業では、新規のお客様やお得意様に関わらず、フィールドセールスがその企業の代表として関わっていることが一般的で、売るという活動だけではなく、導入後のフォローまでをカバーしているような営業スタイルが多いのではないでしょうか。特に扱っている商品が高額になれば、当然商談期間は長くなります。また、お客様企業独自の複雑な意思決定ルールにも対応していかなければならないため、お客様との信頼関係を築くためにも対面である必要があったと考えられます。
しかし、ニューノーマル時代のこれからは、顧客へのファーストアプローチはもちろん、クロージングに至るまで全てがオンラインで完結する商談も大いに増えてくる可能性があります。対面が叶わない状況下でもお客様の信頼を得る「新しいBtoB営業戦略」が必要とされる時代を迎え、企業として新しい営業スタイルを模索しながら「オンライン営業」の組織を整えるタイミングがきているとも言えるでしょう。
オンライン営業におけるポイント
コロナ禍においてBtoB営業の場がオフラインからオンライン環境へ移行したことにより、従来の営業活動と比較するとどのような点が変わったのでしょうか。変化に対して求められる営業のポイントも併せて解説します。
自分を知ってもらう工夫を
対面式の営業では、顧客先を訪問してから商談を始めるまでの間に交わされる雑談や世間話から信頼関係を構築するのも、大切な営業プロセスの一つでした。しかし、オンライン環境では開始と同時に画面で向かい合うことになってしまうため、雑談や世間話が生まれるようなチャンスが減ってしまいます。
そこで、自社を紹介する資料に合わせて簡単な自己紹介を兼ねた資料を用意してみましょう。雑談や世間話に代わって人となりを知ってもらう工夫をすれば、信頼関係の構築における一助とすることができます。
また、自分が発言する際は、表情やリアクションをいつもより少しオーバーにしてみましょう。明るい印象を与えることができますし、相手にも熱意が伝わるはずです。
双方向のコミュニケーションを意識する
オンライン商談では対面で話すのに比べて相手の表情や視線がわかりにくく、コミュニケーションがとりにくいと感じることも多いでしょう。画面上に相手の顔が映っていればまだ反応を伺うこともできますが、商談開始から終了まで顧客が顔を映してくれなかった…というケースもあるかもしれません。
対面でも同じですが、オンラインの場合はより意識してコミュニケーションを取ることが重要です。そこで、説明の合間に相手の理解度を小まめに確認することを心がけてみましょう。「○○様、ここまでで何かご不明点などはありますか?」と促すことで、相手が積極的に発言しやすい場面を作れます。相手が話をしている際は、適度に相槌を打つことも忘れずに。ただし相手の話を遮ることのないようにタイミングは注意しましょう。
また、商談の開始と終了時にはお顔を拝見しながらご挨拶がしたいので…と商談前に申し入れておいても良いかもしれません。当然ながら身だしなみは清潔さがポイントです。
スピーディーでかつ顧客のニーズに合わせたプレゼン
オンライン営業は移動の手間を省け、時間の確保も比較的容易であるため、商談や打合せがしやすい傾向にあります。しかし裏を返せば、競合が増えることを想定しなくてはなりません。また、対面とは異なる手軽さゆえに、顧客側は商談や契約を断りやすくなる側面があるのも事実です。
そこで、相手が何を知りたいと思っているのか、事前に顧客のニーズを引き出せるようにヒアリングシートを作ってみましょう。ヒアリングシートには、課題やニーズを引き出せるような項目を用意しますが、ひとつひとつに回答をするのは顧客にとっては時間と手間がかかるものです。できる限り「はい」か「いいえ」の2択などで答えられるような項目にする、設問はできるだけ数を減らすなどの工夫をするのがおすすめです。ニーズにあった提案資料を準備できるだけでなく、想定される質問の回答も用意できるため、合理的でスピーディーな提案が可能です。商談中もヒアリングシートを活用することで、顧客の課題やニーズをさらに深く掘り下げるなど、会話を広げる要素にもなり得るでしょう。
プレゼン資料もオンライン商談向けにカスタマイズ
オンライン商談では、Web会議システムを通して資料を画面共有することが一般的です。そのため、従来使っていたプレゼン資料では見にくい点があるかもしれません。そこで、オンライン商談で使う資料は、シンプルで分かりやすい表現に見直しましょう。図やグラフは大きくする、文字フォント・サイズを見直す、画面で見やすい色を意識すると良いです。また、オンライン商談に与えられているプレゼン時間は、対面式の場合より短くなっている傾向があります。そのため、説明は簡潔で分かりやすく、ページ数も多すぎないようにするなどの工夫もしておきましょう。
機器やツールなどの環境整備と下準備
オンライン商談中に音声が途切れてしまった、画面がフリーズしてしまった…これでは伝えたいことも伝わりません。顧客先の通信環境などにも依存することではありますが、自社の環境は安定して商談ができる状態であることが望ましいです。音声に関してはイヤホンマイクを使うなど、音声が聞き取りやすい・聞こえやすい状態を作ることも大切です。
さらに、付属カメラで映された自分がどのように見えているのか、声は聞き取りやすいのか、映ってはいけない情報が背景や画面共有時に映り込まないかなどを事前に確認しましょう。チーム内で協力し事前練習を行うことで、印象はぐっと良くなるはずです。
マーケティング部門との強固な連携の必要性
対面営業では、営業担当者が顧客との窓口となっていたため、営業担当者のコミュニケーションスキルや提案力、プレゼン力によって、その場で顧客が抱えている課題やニーズを引き出せる場面も多かったはずです。しかし、オンライン営業へ移行していくと、提案や商談などの前に顧客の要望を引き出す力が必要となり、どの対象顧客にどのような切り口でファーストアプローチをかけるかなども俯瞰的に判断しなければなりません。また、顧客側も以前のように気軽に展示会などに赴いて情報収集するといったことができません。Webで自分の欲しい情報を検索し、ある程度検討を進めてからでないと問い合わせをしてくれないことも多く、新規顧客との接点が限られてしまうといった問題もあります。
そこで重要になってくるのが、マーケティング部門と連携した組織的な営業です。
例えば、ウェビナー参加者へのメールでのアプローチ、Web広告やSEOを活用したWebマーケティングなど、さまざまな方法が考えられます。「新規顧客の開拓や商品・サービスの販売は営業部門の仕事」といった従来の概念を取り払い、オンライン営業が主流となるこれからの時代に適応した営業戦略を企業全体で構築していくことが大切になるでしょう。
まとめ
新型コロナウイルスによって世の中は激変し、様々な活動が急速にオンライン環境へと移行しています。テレワークを導入する企業が増え、BtoB営業においても顧客が合理的でスピーディーな提案を求める傾向が強くなってきており、オンラインでの客先訪問や商談も今後は当たり前になってくるはずです。
オンラインで行う営業スタイルは、わかりやすい資料で簡潔に話をすること、また顧客のニーズを的確に理解し必要な情報を提供することが重要です。そして、マーケティング部門・インサイドセールス部門と連携した組織的なアプローチを行うことにより、顧客の見込度合いを見極めた上で営業が商談するといった一連の流れを作り上げることが、企業に求められています。
オフラインでもオンラインでも、顧客が取引先に求めている本質は変わらないはずです。ニューノーマル時代となった今、顧客の変化をマイナスに捉えず常に新しい営業の形を模索していくことが大切ではないでしょうか。
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