組織開発に有効なピープルアナリティクス、活用事例も交えて解説

デジタルシフトやITツールの導入などを進める企業が増えている中、社内に蓄積されるデータや情報を人事に関する決定に有効活用する「ピープルアナリティクス」が注目されています。ピープルアナリティクスは、人材の適切な活用・企業課題の解決・業務の効率化・成果の向上など、企業が向き合うべき事柄に非常に有効です。

GoogleやMicrosoftなどアメリカの先進企業より始まったこの取組は日本にも波及し、有名企業における活用事例も複数見られるようになりました。本コラムでは、ピープルアナリティクスの概要や重要性、活用するメリットなどについて解説します。
ピープルアナリティクスに関心がある方や取組を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

このコラムを読んで分かること

  • ピープルアナリティクスの概要
  • ピープルアナリティクス活用で得られる3つのメリット
  • ピープルアナリティクスを活用する際の注意点

ピープルアナリティクスとは

「ピープルアナリティクス」とは、組織や従業員に関する様々なデータを分析し、人事に関する意思決定に活かす取組を指します。採用や評価、人材育成などを客観的なデータに基づき行うことが特長です。

分析に使用するデータは、大きく分けて以下の4つがあります。

● 従業員データ

従業員データとは、年齢や性別、職位など従業員に関する基本情報です。目的により勤怠や評価、保有スキルなども分析対象となります。ピープルアナリティクスの主軸となるデータです。

● 行動データ

行動データとは、従業員がオフィスでどのような行動を取っているのかを把握するための情報です。執務室や会議室の滞在時間、休憩時間などを、カレンダー機能を活用して把握します。オフィス以外の行動は、社用携帯電話の位置情報にて認識することもできます。

● デジタルデータ

社用PCやデバイスの使用状況を示すデータです。電話やメールなどの通信履歴、インターネットの閲覧履歴などが該当します。どのような相手と頻繁にやり取りをし、それが仕事のパフォーマンスにどう影響を与えるのかといった相関を測ることを目的として活用します。

● オフィスデータ

会議室や休憩室の利用時間、複合機の使用頻度など、オフィスにおける設備の利用状況をまとめたデータを指します。従業員のコミュニケーションや行動パターンを、間接的に測ることが目的です。

ピープルアナリティクスは現在、新しい分析技術やより効率的な運用方法などが続々とあらわれている状況です。人事の基盤になりえる可能性を秘めたこの取組は、今後さらに進化していくことが予想されています。

ピープルアナリティクスを活用する3つのメリット

従来、企業は「優秀な従業員が何故辞めてしまうのか」や、「重要なプロジェクトのリーダーを誰にすべきか」といった課題に対しては、担当者の直感に頼っていたり、責任者・管理者の意見を交えながら解決方法を模索してきました。しかし、この方法では答えがでるまでに多くの時間を要することもあり、また公平な評価が下されるとは言い切れない部分もあるでしょう。
一方で、ピープルアナリティクスはデータに基づいた予測により、公正な解決策を出せるというメリットがあります。また、迅速な意思決定ができるため、業務が停滞することも少ないとされています。

ここからは、ピープルアナリティクスを活用することによりもたらされる3つのメリットを、細かく見てみましょう。

メリット1:人事が公正化される

人事に関する判断を、人事担当者あるいは管理者の経験や直感に任せている企業は少なからずあります。経験を積んだ担当者が下す判断は失敗が少ないものの、主観が入ってしまえば公正さに欠け、不満を生む原因となるでしょう。また、属人化してしまうことで、担当が変わった際に判断軸がぶれる可能性も否めません。
しかし、ピープルアナリティクスを用いれば、従業員のスキルや経験を定量化できるため、わかりやすく公正な判断が可能です。客観的な数字を示し決定するため、従業員側も納得感を得ることができます。

メリット2:採用活動が効率化される

人事にとって大きな業務の1つである「採用活動」においてピープルアナリティクスを用いるメリットは大きく、現在自社内で活躍している従業員がどのような人材であるかを分析し、応募者の経歴や属性、面接時のデータなどの情報と比較すれば、自社への適性がある人材を選別することが可能です。
また、自社の弱みを分析し、その弱みを補ってくれるような人材を探すといった活用もできるでしょう。さらには、転職サービスに登録している求職者の中より、応募条件にマッチする人材を機械的に抽出し、スカウトするといった方法もあります。
このようにピープルアナリティクスを用いることで採用活動が効率化されるため、人事部門の生産性を向上させることができるだけでなく、求人コストを下げられる点もメリットと言えるでしょう。

メリット3:人材育成・配属が最適化される

ピープルアナリティクスは、人材育成やキャリア形成にも役立ちます。例えば、従業員それぞれが保有するスキルや性格といったデータを基に、今後キャリアアップするために必要な育成カリキュラムを組むことが可能です。また、優秀な従業員がどのような能力・スキルを持っているかを分析し、その能力・スキルを他の従業員にも身につけてもらうよう研修を行うといったデータ活用方法もあります。
さらに、配属や配置転換の際にもデータを活用することが可能です。能力に応じた部署に配属できるだけでなく、誰と誰をメンバーにしたらチームの能力が十分に発揮できるかといったように、チーム編成における最適化を考える際の材料にもなるでしょう。

労働人口が減少する中、企業の人的資源をどう効果的に活用するか、企業の成長に直結するピープルアナリティクスは、時代に則した有効な取組と言えるでしょう。

ピープルアナリティクスの活用事例

続いて、ピープルアナリティクスが企業においてどのように活用されているのか、いくつか事例を紹介します。

● 動画面接の評価にAIを活用
某大手通信企業では、早くからピープルアナリティクスの専門チームを立ち上げ、採用活動に最先端テクノロジーを取り入れています。具体的には、新卒採用における動画面接の評価を、人事担当者に代わりAI(人工知能)が行うことです。
AI専門企業と共同開発した動画解析システムには、以前から行っていたインターンシップ参加者選考時の動画面接情報と採用担当者が行っていた評価基準などを学習させました。その学習結果を基に、設定された基準を満たした新卒採用面接動画のみ「合格」と判断します。AIが不合格と判定した動画は、担当が確認したうえで最終的な合否を決めており、エラーや公平性を欠かないようにしています。

データを活用することで、応募者を客観的かつ統一された軸で評価できるようになり、さらに選考作業にかかる時間を約70%削減することに成功しています。

● 人材育成データを活用した個別教育システム
某インターネット広告企業では、10年以上前から従業員データを蓄積し、ピープルアナリティクスを人材育成に活用しています。具体的には、一人ひとりに適した人材育成教育プログラムの提供です。
まず、新卒内定者にはキャリアシュミレーションと呼ばれる独自の個別育成計画を提供しています。入社後は、新卒者のスキル・個性に合わせて集合研修とは別に個別トレーニングの機会を設けていることも特長的です。
また、入社時から蓄積してきたデータを基に、従業員個々のキャリア予測を行っています。漠然としがちなキャリアプランもデータを使って具体的に示されることで、中長期的なキャリア展望が持てるように。モチベーションUPや生産性向上といった効果も出ているそうです。

● データ分析を駆使した健康増進プログラム
光ファイバーや通信システムの製作を手がける某老舗企業は、健康経営の概念が普及するよりもずっと前から元気に働ける環境づくりに着手した企業です。それは、グローバル化や新規事業を展開するうえで必要なことを考える中で、「まず大事なのは従業員が元気であること」という結論に至ったからでした。
まず同社は、従業員の同意のもと社内に計測器を設置し、体重や体脂肪率だけでなく心電図、脳波などを計測できるようにしました。そのデータや従業員へのアンケート、外部の統計資料なども検討した結果、「活動量不足が生産性低下を招く要因になっている」ことを発見。
そこで考えたのが、すぐに、そして簡単に始められる運動である「歩くこと」を推進する取組です。具体的にはウォーキングを促す歩数イベントや、歩く質を高めるノルディックウォーキングイベントなどの開催です。これらの取組を繰り返すことで運動を習慣化させることができただけでなく、従業員側からスタンディングデスクにしたいとの声が上がるなど、社内の健康リテラシーも向上したそうです。

ピープルアナリティクスを活用する際の注意点

最後に、ピープルアナリティクスを企業で導入・活用する際の注意点について解説します。

ピープルアナリティクスは人材採用や配属、育成、評価など幅広く活用できるものの、データの取り扱いには十分に注意しなければなりません。
従業員のデータであっても、人事に関わるセンシティブな個人情報が含まれます。そのため、ピープルアナリティクスを社内で取り入れる際には、データの利用目的や内容をきちんと説明し、同意してもらう必要があるでしょう。データを扱う事ができる担当者は限定する、利用目的の範囲を超えることはしないなど、データを扱う立場としてのガイドラインを設けるなども必要でしょう。
また、コンサルティング企業などデータを第三者に渡す際は、個人を特定できないように情報を加工するなどの対応も必要です。

そして、分析に使用するデータの情報精度にも注意しましょう。主観的なデータや抜け漏れがあるデータは信頼性に関わります。ピープルアナリティクスは、客観的なデータの使用が大前提です。

まとめ

従業員の基本情報やデジタルデータなど、様々な客観的データを分析し、人事全般の意思決定に活かす取組を指す「ピープルアナリティクス」。公平性があり、かつ効率的に人事施策を導き出せる有効な取組といえるでしょう。
しかし、導入にあたっては、機密情報や個人情報が含まれるため、データの取扱には細心の注意が必要となります。また、導入を進めるためには、従業員からの理解を得ることが何よりも大切でしょう。
今は見えていない人事や組織の課題を明らかにし、人事面からの経営改善に取り組んでいきたいと感じているのであれば、人材を活かすための取組のひとつとして検討されてはいかがでしょうか。

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