【施行迫る!】令和3年度 電子帳簿保存法改正ポイントを解説

公開:2021年11月25日

更新:2022年01月25日

近年、ビジネスにおけるデジタル化・ペーパーレス化が推進され、政府もこの流れを後押ししています。代表的な例としては、2020年12月に閣議決定された「令和3年度税制改正大綱」でデジタル化に関する法律改正・税制改正が多く見られたことが挙げられるでしょう。

特に、2022年1月には「改正電子帳簿保存法」が施行されます。企業のペーパーレス化対応に関する要件が緩和されると、ビジネスにおけるデジタル化は一層加速すると考えられます。

本コラムでは、施行が迫る電子帳簿保存法改正の目的や今までの変遷、今回の改正ポイントについて解説します。電子帳簿を保存するシステムも併せてご紹介しておりますので、ぜひ導入の検討材料にしていただけたらと思います。

このコラムを読んで分かること

  • 今までの電子帳簿保存法改正の変遷
  • 2021年度の電子帳簿保存法の改正点
  • 電子帳簿保存法の導入方法と有効なシステム

電子帳簿保存法とは?

そもそも「電子帳簿保存法」とは、1998年の税制改正の一環として制定された法律です。この法律では、保存が義務付けられている国税関係帳簿や書類、例えば固定資産台帳や損益計算書、請求書・領収書などのうち、一定の条件を満たすものにデータでの保存や管理を認めています。

電子帳簿保存法では、紙から電子データへの保存だけではなく、電子的に授受した取引情報の保存についても定められており、電磁的記録による保存は大きく3種類に区分されています。

(1) 電子帳簿等保存

電子的に作成した帳簿や書類をデータのまま保存

  • 会計ソフト等で電子的に作成した帳簿
  • 電子的に作成した国税関係書類
(2) スキャナー保存

紙で受領・作成した書類を画像データで保存

  • 紙で受領した証憑書類をスキャナーでスキャン、あるいはスマホで撮影し画像データとして保存
(3) 電子取引

電子的に授受した取引情報をデータで保存

  • 電子メールで授受した請求書や領収書などの取引情報
  • EDIにより授受した契約書や請求書などの取引情報
  • ネット上からダウンロードした取引情報

電子帳簿保存法は今までに何度も改正が行われ、データで保存・管理する条件の緩和が進められたのですが、どのような背景・目的で改正が行われたのでしょうか。これまでの税制改正の変遷とポイントを見ていきましょう。

電子帳簿保存法改正の背景・目的

従来は、決算書や会計帳簿といった国税関係の書類は紙ベースでの保存が基本でした。しかし、1990年代にはパソコンなどの機器が普及したことから、効率化やコスト削減のために様々な書類の電子化が少しずつ進んできました。

このような時代の流れを受けて、1998年に創設された「電子帳簿保存法」により、法律で定められた要件を満たす一部の文書をデータで保存・管理できるようになりました。しかし、満たすべき要件が多かったために、紙文書のデータ化を本格的に行う企業はそれほど多くありませんでした。

こうした状況を打開し、業務効率化やコスト削減、ペーパーレス化などを促進するために、電子帳簿保存法は幾度となく改正され、要件の緩和が段階的に進められてきました。
それでは、電子帳簿保存法の制定から現在まで、どのような改正が行われてきたのでしょうか。

これまでの電子帳簿保存法改正の変遷とポイント

電子帳簿保存法は、今までに様々な改正を繰り返してきました。ここでは、今までに行われた大きな改正について紹介します。

電子帳簿保存法の今までの変遷と主な改正ポイント
制定・改正された年 主な改正点
1998年

電子データとして作られた国税関係帳簿の保存が可能に

  • 紙ベースの書類をスキャンして保存は不可
2005年

e-文書法が施行され、一部のスキャンデータが保存可能に

  • 電子署名が必要
  • 決算関係書類や領収書・請求書は3万円未満のみ
2015年 「電子署名不要」「領収書・請求書の金額上限撤廃」など、電子化の対象となる書類やスキャン関連の要件が大幅に緩和
2016年 デジタルカメラやスマートフォンによって撮影されたデータも保存可能に
2020年

キャッシュレス決済では利用明細のデジタルデータを領収書代わりにすることが可能

  • 紙の領収書の保存が不要に

このように、テクノロジーの進化に伴い社会のデジタル化が進んだことも、電子帳簿保存法改正に反映されています。

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【ポイント別】2021年度「電子帳簿保存法」の改正点

改正電子帳簿保存法は、2022年1月に施行されます。今回はどのような点が改正されるのでしょうか。ここでは、財務省ホームページに掲載されている「令和3年度税制改正の概要」ならびに、国税庁が作成した「電子帳簿保存法が改正されました(令和3年5月)」をもとに、2021年度の電子帳簿保存法改正における主な5つの点について、改正前後を比較し詳しく解説します。

1.承認制度の廃止

電子帳簿保存法を利用して書類をデータで保存・管理するためには、希望する企業が税務署に事前に届け出をし、承認される必要がありました。今回の改正では、その承認制度が全面的に廃止されます。

改正前
導入希望時期の3カ月前までに税務署に届出が必要であった

改正後
国が定める基準を満たし、機器やシステムなど電子帳簿保存法に対応する準備ができている場合、すぐに電子化の導入が可能

2.タイムスタンプ要件の緩和

「タイムスタンプ」とは、電子データが存在していたことを日時によって証明する技術です。それ以降その電子データが改ざんなどの変更が加えられていないことを証明する技術でもあります。
今回の改正では、このタイムスタンプを付与するまでの期間が延長されました。これまでが「3営業日以内」と短い期間であった為、改正により担当者も余裕をもって対応できるようになるでしょう。
また、データの削除・修正に関するログが残せるシステムでは、タイムスタンプ付与自体が不要となります。

改正前
  • 受け取った書類のスキャナー読み取り後、受領者が署名をする必要がある
  • 受け取り後、3営業日以内にタイムスタンプを付与しなければならない

改正後
  • スキャナー読み取り時の署名不要(国税関係書類への自署不要)
  • タイムスタンプ付与の期日は最長約2か月と概ね7営業日以内
  • データの削除・修正に関するログが残せるシステム、あるいは訂正又は削除を行うことができないクラウド等に保存を行ったことを確認できる場合は、タイムスタンプ付与自体が不要

3.適正事務処理要件の緩和

電子帳簿保存法では、不正を防止するために、厳格なチェック体制の構築や定期的な確認を定めた社内ルールを設ける必要がありました。
しかし今回の改正では、その「適正事務処理要件」が緩和されました。これにより、電子化導入のハードルが下がることが期待できます。

改正前
  • 定期検査や相互けん制といった「適正事務処理要件」に対応する必要がある
  • 検査日まで原本を保存し続けなければならない
  • 事務処理担当者は2名以上必要

改正後
  • 定期検査や相互けん制といった適正事務処理要件が廃止
  • 原本はスキャン後すぐに破棄可能
  • 相互けん制の廃止により1名で事務処理を担当できる

4.検索要件の緩和

従来は、電子帳簿保存法に基づいてスキャナー保存したデータや電子取引データを保存する場合、閲覧したいタイミングで適切に検索できるような機能を確保する必要がありました。
今回の改正により、検索機能の要件がよりシンプルになりました。

改正前
  • 「取引年月日」「取引金額」「勘定科目」といった主な記録項目を検索条件として設定する必要がある
  • 日付および金額に関係する項目では範囲指定機能も必要
  • 2つ以上の項目を組み合わせ検索できる機能も必須

改正後
  • 必須となる検索条件は「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3つに削減
  • 国税庁の求めに応じて電子データのダウンロードが可能な場合、範囲指定機能や検索項目の組み合わせ検索機能の確保は不要

尚、電子取引に関しては、売上高が1,000万円以下の小規模事業者の場合、税務職員による「電磁的記録のダウンロードの求め」に対応できるようにしている場合は、検索要件のすべてが不要となりました。

5.不正行為におけるペナルティ

今回の改正により要件が大幅に緩和されることで、電子データ保存を導入する企業が多くなると予想されます。そこで要件を緩和する一方、適正な保存を担保する措置としてペナルティが追加されました。

スキャナー保存された電磁的記録に関連した不正があった場合、あるいは電子取引の情報に関するデータが隠蔽または仮装された事実があった場合は、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税が 10%加重されることになります。

また、これまで電子データで授受した取引情報については、その取引情報の電磁的記録を出力し書面で保存をすることが許されていましたが、この措置が廃止されました。つまり、電子メールで受け取った請求書を印刷し、紙として保存することはできなくなり、今後は電子データでの保存が必要となります(☆)。
さらに、受領したメールやPDFをそのままファイルサーバーなどに保存すれば良いわけでもありません。先程「検索要件の緩和」の段落でもご説明した通り、保存に関しては検索要件等を満たす必要があります。そして、この電子取引データの書面保存廃止については、電子取引をしている全ての企業において適用されるため、注意が必要です。

今回の改正を機にペーパーレス化対応を検討される企業は、要件の緩和に伴う対応だけでなく、不備や不正を防ぐための適切な措置もとれるよう配慮しましょう。

☆電子取引に関わる電子データの保存義務に猶予期間が設けられました
 (2022年1月20日 追記)

21年12月末に閣議決定された「令和4年度税制改正大綱」において、電子取引に関わる電子データの保存義務に猶予期間が設けられました。

具体的には以下の通りです。

  • 猶予期間は令和4年(2022年)1月1日から令和5年(2023年)12月31日までの2年間
  • 猶予が認められるのは以下の2つの条件をいずれも満たす場合のみ
    1. 所轄税務署長がやむを得ない事情があると認めること
    2. 税務職員の質問検査権に基づき、電子取引情報を書面により提示または提出することができること
  • ただし、条件である「やむを得ない事情」の認定について手続きは不要、また具体例は現時点で示されていない

当面は、これまで通り紙での保存でも対応できることにはなりましたが、猶予期間は2年です。また、改正電子帳簿保存法は施行済であるため、電子化に対応しなくても良いというわけではありません。

システムの選定や導入、運用面の整備等を考えると、稼働するまでには少なくても半年程度は必要でしょう。そのため、令和6(2024)年1月1日からの義務化スタートに向けて、しっかりと準備していくことをおすすめします。

電子帳簿保存法に基づくシステムの導入方法

今回の電子帳簿保存法改正で様々な要件が緩和されたため、電子帳簿保存法に基づくシステムの導入を考えている企業も多いのではないでしょうか。ここでは、電子帳簿導入法に基づくシステムを導入するためのステップを簡単に紹介します。

STEP1:課題の明確化・導入の検討

  • 電子帳簿保存法を導入する目的、例えばコスト削減・業務効率化などを明確にする
  • 電子帳簿保存法を導入した場合に、どの程度の効果が得られるかをチェックする

  1. 例:ファイリングの負担減、検索が容易、スペースの節約、セキュリティー性の向上(アクセス制限、定期的なバックアップ)など

STEP2:業務の整理とフロー設計

  • 業務を整理して、データ化したい書類をピックアップする

  1. 例:経理業務効率化を図りたいならば領収書や請求書等の電子化を進める、機密性を高めたいのならば契約書を対象とするなどを検討しましょう

  • 現在の業務フローを確認し、データ化後の業務フローを設計する

STEP3:システム検討

  • STEP2までで洗い出した項目と照らし合わせ、次のポイントをチェックしながら、自社に合ったデータ化システムを検討する

【ポイント】

  • 書類の対応範囲はどこまでか(自社が電子化したい書類を電子化することが可能かどうか)
  • 自社システムと連携可能か
  • 求める検索機能があるか
  • セキュリティー面は問題ないか
  • 費用は予算内か

2022年の改正電子帳簿保存法施行により、国税関係書類や経理業務のデジタル化・ペーパーレス化は進むことが予想されます。業務効率化の観点からも電子帳簿保存法への対応は有効であるため、この機会に電子帳簿保存法に対応したシステム導入を検討してはいかがでしょうか。

まとめ

今回は、電子帳簿保存法の概要や改正点を説明しました。

<このコラムのPOINT>

  • 1998年に創設された「電子帳簿保存法」は、現在に至るまで何度も改正を重ね、段階的に要件が緩和されてきた
  • 令和3年度の改正では「承認制度の廃止」「タイムスタンプ要件の緩和」「適正事務処理要件の緩和」「検索要件の緩和」などの変更がある
  • 情報テクノロジーの進歩に伴い、今後も電子帳簿保存法の要件緩和や、データ化における選択肢の増加が進むことが予想される

電子帳簿保存法は、2022年1月に施行されます。ここまでご紹介したように、改正により様々な変更点があるため、業務担当者はしっかりと確認しましょう。
今回の改正を機に、電子帳簿保存法に対応したシステムの導入もぜひご検討ください。

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