ビジネスエコシステムとは?具体例・導入メリット・構築のポイントを紹介
加速するビジネス環境の変化を生き抜く戦略として、多くの企業で取り組み始めている「ビジネスエコシステム」。ビジネスエコシステムは、複数の企業がパートナーとなって共存共栄を目指す仕組みです。
今回は現代で構築すべきビジネスエコシステムについて解説します。ビジネスエコシステムの用語が持つ意味や重要性、具体例やメリットも紹介するため、これからの企業経営や事業運営の参考にぜひご一読ください。
このコラムを読んで分かること
- ビジネスエコシステムの意味と具体例
- ビジネスエコシステム構築のメリットとポイント
ビジネスエコシステムとは
「ビジネスエコシステム」とは、ビジネス・事業において企業間でパートナーシップを結び、それぞれの企業が持つ技術や知識といった強みを活かしながら、共存共栄を図る仕組みのことを指します。
本来「エコシステム(生態系)」は、生物や植物の分野で用いられる用語です。各生物・植物がお互いに関わり合い、助け合いながら生きている様子をエコシステムと表現していました。
ビジネスエコシステムは、生物・植物が生存のために生態系を形成するように、業種や業界といった垣根を越え、共に成長するために企業同士を結びつける試みです。1990年代に「共に成長する企業群」を意味する用語として登場したビジネスエコシステムは、現在では消費者や社会をも内包した、多彩な意味合いを持っています。
ビジネスエコシステムの重要性
では、なぜ今、ビジネスエコシステムが重要となっているのでしょうか。その背景には、主に以下のような理由があります。
ビジネス環境のめまぐるしい変化
IT・ICT技術が発展し、ネットワークがグローバルに整備された現在。企業を取り巻く環境は、劇的に変化しました。例えば、メディア環境ひとつをとっても、従来はテレビや新聞のマスメディアが主流でしたが、現在はスマートフォンを中心としたパーソナルメディアが主流となっているなど、以前とは格段の変化があります。
環境や社会が変化したことに伴い、企業が提供するサービス内容や形も多様化している今、ひとつの企業だけでサービスやコンテンツを形成することは至難の技となっています。
そのため、複数の企業が協同し、お互いを補完しあうような形でひとつの生態系(エコシステム)を築き、サービスやコンテンツを作り上げていく必要があると言えます。
イノベーションの難しさ
環境の変化に柔軟に対応し、消費者のニーズを満たすサービスを提供するためには、様々な分野の技術やノウハウ、経験や知識が必要です。また、SDGs、ESG投資といった新たな動きにも対応しなければなりません。
しかし、ひとつの企業だけでイノベーションの創造に必要な経験や技術、知識を持っていることはなかなか難しいでしょう。しかも、企業を取り巻く環境が変化する勢いは、落ちつくどころか加速しています。
こうした状況を乗り越えていくためには、従来のビジネスや経営の考え方を超え、消費者をも含めた複数のプレーヤーにより相互依存的な結びつきを築くビジネスエコシステムの発想が必要だと言えます。
ビジネスエコシステムの具体例
ビジネスエコシステムの考え方は現在、多くの企業で採用されています。とりわけ、世界的なインターネット関連サービス事業では顕著です。
そこで、有名企業ではどのようなかたちでビジネスエコシステムを導入しているか、具体例とともに解説します。
ハード面だけでなくソフト面でもエコシステムを形成するA社
ビジネスエコシステムを成功している代表例である企業が、デジタルデバイスの設計・製造・販売やデジタルコンテンツプラットフォームを提供するグローバル企業のA社です。
A社の主力商品であるスマートフォンやノートパソコンには、液晶パネルやマイクロプロセッサー、CPUやメモリなど多くの部品が使用されています。その部品の製造及び組立には、複数の企業の存在が欠かせません。
また、A社が提供するアプリや音楽のダウンロードサービスには、アプリや音楽などのコンテンツを提供する企業が参加しています。
A社はハード面ならびにソフト面において様々な企業と連携し、相互的に発展している企業なのです。
プラットホームフォームを強化し生態系全体を成長させているB社
世界最大級の電子商取引サイトを運営するテクノロジー企業のB社では、ECモールやスマートスピーカーなど複数の分野でビジネスエコシステムを形成しています。
特に、B社が運営する世界的なECモールは、プラットフォーマーであるB社と出店者、購入者がひとつの生態系(エコシステム)となっている典型例です。B社はプラットフォームをさらに強化することで出店者を呼び込み、生態系をより大きく充実させている点が特長です。
また、B社が提供するスマートスピーカーは、製造に複数のIoT関連企業が連携しており、スマートスピーカーを中心にエコシステムが形成されています。
参加するそれぞれがメリットを得られる生態系を形成したC社
利用者が動画を気軽に投稿・視聴できるオンライン動画共有プラットフォームを提供するC社。このひとつのプラットフォーム上で、動画の配信者と視聴者、広告主が繋がっているビジネスエコシステムを形成しています。
動画配信者と視聴者、広告主それぞれにメリットのある環境を提供することにより、発展的で健全なビジネスエコシステムを構築しています。
ビジネスエコシステムを導入するメリット3選
ここからは、ビジネスエコシステムの導入で期待できるメリットについて、具体的にご紹介します。
商品・サービスの認知度が向上する
ビジネスエコシステムでは、商品・サービスの企画や製造、市場での展開など様々な面で多数の企業が参加します。参加した企業ごとに顧客を抱えているため、参加する企業が増えれば増えるほど多くの顧客に商品・サービスをPRできます。また、参加する企業の業種や業界が異なれば、今までPRしていなかった幅広い層への周知も可能です。
つまり、ビジネスエコシステムは、認知度を上げるための有効な手段ともいえるでしょう。
新たな市場創出の機会が生まれる
革新的な商品やサービスの構築を自社内だけで完結することは難しく、結果的に途中で諦めなければならない場合もあるでしょう。
しかし、ビジネスエコシステムを導入し複数の企業と連携・協業することで、自社だけでは困難だった商品やサービスの提供が可能となるでしょう。また、自社で構築したプラットフォームを解放し、多数の企業や個人を取り込むことで、新たな市場を創出できるチャンスが生まれる可能性もあります。
新たなビジネスモデル創出の機会が生まれる
ビジネスエコシステムを導入する場合、エコシステム内には企業内外から様々なアイデアや技術が集まります。これは、今まで自社だけでは築くことのできなかった新たなビジネスモデルを創出するよい機会です。
各企業が持つ技術やノウハウを相互作用させれば、自社の技術力だけでは出来なかったサービスを生み出すこともできます。また、他企業の持つ技術やノウハウを活用することで、構築に要する期間やコストを削減することも可能です。
さらに、ビジネスエコシステムに消費者(利用者)を取り込むと、より直接的に消費者のニーズを知る機会を得ることができます。その結果、即座にニーズに対応できるといったメリットも生まれるでしょう。
ビジネスエコシステムは、企業と消費者の双方にメリットのあるシステムと言えます。
ビジネスエコシステムの構築と企業の成長に大切なこと
これまでご紹介した通り、ビジネスエコシステムは企業に多くのメリットをもたらします。しかし、健全で価値あるビジネスエコシステムを構築し、そしてさらに成長させるためには、いくつかのポイントがあります。
まず、ビジネスエコシステムを構築する際は、市場における自社の立ち位置を確認しましょう。構築しようと考えているビジネスエコシステム内で自社が中心的役割を果たせるか、はたまたシステムの一構成員となるかで、自社が得られる恩恵が大きく異なってくるからです。
次に、ビジネスエコシステムの構築により自社にどのようなメリットがあるのかを確認しましょう。革新的な商品やサービスを生み出せたとしても、収益を得られるかの判断が必要です。認知度向上はどれほど期待できるか、かけるコストに見合うメリット・フィードバックがあるかなどを、シュミレーションすると良いでしょう。
また、ビジネスエコシステムを成長させるためには、パートナーとなる企業と明確なビジョンを共有することが大切です。関わる企業全ての成長のためには、当然ながら利益を追求することも必要です。しかし、時代の変化を見極め、社会や生活を良い方向に変えていくという想いがなければ、構築した生態系は崩れてしまうことでしょう。
ビジョンを共有することにより、もしもトラブルや問題に遭遇したとしても、決して崩れないビジネスエコシステムを作り上げることができるはずです。
まとめ
ここまで、ビジネスエコシステムについて用語が持つ意味や重要性、具体例やメリットなどについて解説してきました。改めて、今回のポイントをまとめます。
<このコラムのPOINT>
- ビジネスエコシステムは複数の企業が持つ技術、知識を活かしながら共存共栄を図る仕組み
- ビジネスエコシステムの導入により、認知度の向上や新たな市場の創出が見込める
- ビジネスエコシステムの構築・成長には自社の立ち位置の確認やビジョンの共有がカギ
ビジネスエコシステムは、めまぐるしく変化するビジネス環境に対応するために有効な仕組みです。自社が単独で取り組むには限界があったとしても、様々な企業と手を取り、技術やノウハウを存分に活用した先に、社会を変えられる可能性が秘められていることでしょう。
事業戦略の1つの手段として、取り入れることを検討する時代が今、来ているのかもしれません。
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