組織の成長に有効なセンター・オブ・エクセレンス(CoE)とは?役割やメリットを紹介

企業の成長にとって欠かせない注目のワード、「センター・オブ・エクセレンス(CoE)」。CoEとは、目的や目標を達成するために企業に点在している優れた人材や技術、ノウハウなどを集めた組織やグループのことを指します。
本コラムでは、そもそもCoEとは何か、役割や導入するメリット・デメリット、導入企業の事例までまとめてお伝えします。企業のマネジメント層、経営層の方はぜひ参考にしてみてください。

このコラムを読んで分かること

  • CoEの概要と担う5つの役割
  • CoEを設置、導入するメリット・デメリット

【目次】

  • センター・オブ・エクセレンス(CoE)とは
  • センター・オブ・エクセレンス(CoE)の5つの役割
  • センター・オブ・エクセレンス(CoE)を設置・導入するメリット
  • センター・オブ・エクセレンス(CoE)を設置・導入するデメリット
  • 企業におけるセンター・オブ・エクセレンス(CoE)の設置・導入事例
  • CoEは今、DCoEやCCoEへ
  • まとめ

センター・オブ・エクセレンス(CoE)とは

CoEとは「Center of Excellence(センター・オブ・エクセレンス)」を略したもので、直訳すると「中核的研究拠点」となります。具体的には、企業に点在している優れた人材や技術、ノウハウ、設備などをひとつに集約した組織、グループのことを指します。
CoEを企業内に設置することで、組織を横断したプロジェクトや取組を行う際に、社内の情報や知識を共有・管理できます。また、業務の効率化や適切な運営を実施することができるようになります。

CoEが誕生したきっかけは、1940年代から1950年代のアメリカ・スタンフォード大学です。当時のスタンフォード大学では、卒業生の多くが東海岸へ流出し、優秀な人材が西海岸に残らないことを嘆いていました。そこで同大学の卒業生であるフレデリック・E・ターマン(Frederick Emmons Terman)が1946年に工学部長として戻ってきた際に、大学の地位を高める施策として、アメリカ全土から優秀な教授を招いたり、最新鋭の設備を導入したりと環境の充実を図りました。この施策によって創られた研究拠点がCoEの始まりです。同大学の周辺には産業クラスター(シリコンバレー)が出現。この事例をもとに、さまざまな大学や機関でCoEが推進されるようになりました。

CoEが今、企業経営に必要な理由

急速に進むデジタル化やリモートワークの普及など、変化の激しい現代社会において企業が生き残っていくには、DXの推進が必要不可欠になっています。
DX推進には、各部署で運用管理されている情報システムの一元化が必須です。しかし、企業では縦割り組織が一般的で、業務プロセスをはじめとした様々なシステム・データの連携がしづらいのが現状です。そのような連携が取れていない状態が、DXが思うように進まない理由のひとつです。

そこで、これらの課題に対応できるCoEが必要になってきます。
CoEを設置・導入することで、組織を横断して社内の情報やノウハウ、データを集約できるため、DX推進や社内の問題解決、業務効率化などにも期待できます。

センター・オブ・エクセレンス(CoE)の5つの役割

初めに押さえておきたいのが、CoEが果たす役割です。ここでは、CoEが果たす役割を大きく5つに分けて紹介します。

(1)社内情報の収集・整理

縦割り型の組織では、それぞれの部門が持つ情報やノウハウが共有されていないことがあります。そこで、CoEが果たす大きな役割の一つが、社内の情報やノウハウを1カ所に集約させることです。
CoEとして組織を横断し、社内に点在する情報やノウハウを収集、整理します。必要な情報やデータを収集、整理しておけば、企画や戦略の立案をする際に、適切な判断が可能になります。

(2)企画・戦略の立案

CoEには、企業の経営発展を後押しする企画や戦略を立案する役割があります。主にCoEが担う企画・戦略の立案には「組織機構の変革や事業所の統廃合」、「分社化や子会社化」、「販売網や営業力の強化」、「関連・協力企業との関係強化」などがあります。
そのほか、海外への展開や新製品、新サービスの展開、新技術や設備の導入などを行う際にもCoEは発展を後押しする大きな役割を果たします。

(3)効果測定・フィードバック

CoEは、導入したシステムなどの効果測定、フィードバックも役割のひとつです。
例えば、新しい社内システムを取り入れた場合、システム導入によって得られた効果や生産性などを調査する必要があります。実施した調査によって得られた結果を各部門にフィードバックすることで、さらなる業務改善や効率化を促進します。
尚、フィードバックは、やりがいを高める動機づけとなるような内容であることが望ましいとされています。

(4)業務プロセスの構築

思い描く企業戦略を実行するために、CoEは組織全体の業務改善も手がけます。
横断的に各部門を見渡し、マニュアルの整備や不要な業務・分担の見直し、業務の見える化などを実施します。必要に応じて、システム化まで含めた業務プロセスそのものの構築も担当します。

そのほか、組織ごとに異なる業務工程の標準化を図ることもCoEの任務です。業務工程が標準化されれば、顧客に提供するサービスの品質が統一され、企業としての信頼感や安心感の獲得にもつなげることができます。

(5)社内イノベーションの促進

CoEは、社内イノベーションの促進にも大きな役割を果たします。
現在多くの企業では縦割り組織が一般的です。縦割り組織は、業務内容などによって組織を細分化させているため、専門性を極めやすいというメリットがあります。しかし、視野が狭くなり新しい物事を生み出すクリエイティブな発想ができなくなるというデメリットもあります。
そこで近年は、特定の分野の深い基礎知識を持ちながらも、他分野にも幅広い知識を持った横断型人材が求められています。

そこで、CoEを活用しさまざまな部門で働くことで横断型人材を育成できれば、幅広い業務知識を習得できるだけでなく人脈も育めます。部門間の連携もとりやすくなり、結果として社内イノベーションの促進につながります。

なお、横断型人材を社内で育成するには戦略的に部署や職務異動を行う「ジョブローテーション」が有効です。

センター・オブ・エクセレンス(CoE)を設置・導入するメリット

社内の連携を強化したり、課題解決を後押ししてくれたりとさまざまなメリットのあるCoE。ここでは設置・導入するメリットを紹介します。

社内の連携を強化できる

CoEでは、部門や事業を横断した情報共有、コミュニケーションが生まれるため、部門間の連携を強化することが可能になります。また、複数の部門や事業で共通しているコストの一元化や、スキル・ナレッジの共有、さまざまな商品・サービスのコラボレーション企画が生まれるなど、大きなメリットを生み出します。

複雑な課題を解決できる

CoEでは、横断的な組織が構築され、情報・知識を集約できるため、問題解決がしやすくなります。
従来であれば、自部門が持つ技術や知識の中で解決していた問題も、各プロジェクトや部門が持つノウハウや問題の解決策などを共有することで、より効果的な対策や早期解決が可能になります。

センター・オブ・エクセレンス(CoE)を設置・導入するデメリット

メリットと併せてデメリットも知っておくと、設置・導入する際にリスクヘッジができます。ここではCoEを設置・導入するデメリットを紹介します。

特定の従業員に負担が偏る

CoEに配属された従業員は、通常業務と並行しながらCoEとしての活動を進めるのが一般的です。そのため、CoEに任命された従業員の業務量は増加してしまう傾向が高く、労働時間の超過や心身的な負担がかかってしまうリスクがあります。

役割がうまく機能しない恐れがある

全従業員にCoEの役割や位置づけが正しく理解されていない場合、単純な「困ったときの相談先」として捉えられてしまう恐れがあります。CoEの本来の役割は、さまざまなリソースを1カ所に集約し、業務プロセスを構築したり、また業務改善に必要な情報を適宜各部門にフィードバックしたりすることです。

企業を発展させるための組織であるCoEが、単なる相談の問い合わせ先となってしまっては本末転倒です。そうしたリスクを阻止するためにも、CoE の設置と同時に、すべての従業員がCoEの役割を正しく理解できるような説明の機会を設けることも重要です。

企業におけるセンター・オブ・エクセレンス(CoE)の設置・導入事例

ビジネス感度の高い企業や人材を中心に広がりつつある、CoEの認知。業界や企業、分野によってもCoEの役割は多種多様ですが、既に経営戦略としてCoEを導入した企業があります。ここではCoEを導入した企業の事例をご紹介しますので、参考にしてみてください。

化粧品メーカー

日本のとある化粧品メーカーでは、世界に通用するブランドの育成を目標に掲げ、フレグランス、スキンケア、デジタル、メーキャップと4つの事業でCoEを設立しています。このCoEを設置するエリアを変えたのが、このメーカーの独自戦略です。

スキンケアに関する事業は日本、メーキャップやデジタル事業は米州、フレグランス事業は欧州というように、事業ごとにCoEの設置拠点が異なっています。その理由は、各事業や分野において、世界的な影響力を持つ最先端のエリアをピックアップし、最新の情報・スキルを入手できるようにするためです。

この取組により各国の強みを活かしたマーケティング戦略が進められており、世界に通用するブランドへの進化を続けています。

通信事業グループ

大手通信事業グループでは、AIやIoTなど先端技術7分野において、CoEを設立。世界を横断する知識を集約し、訓練、技術支援、知的財産の提供など、グローバル横断でデジタルビジネス拡大を支援するための活動をしています。

特にIoTにおけるCoEでは、ドイツなどの9カ国に拠点を設置。製造業や社会インフラ整備に関する先進的な取組を日本や世界で展開することを目指しています。
これまでもIoTデバイスによるデータ収集、分析というノウハウを持っていましたが、この知識を製造業だけでなく、物流やサービスなどの業界に展開することが狙いです。
日本にとらわれないグローバルな視点で顧客のDXに貢献していく取組が進んでいます。

CoEは今、DCoEやCCoEへ

最近ではクラウド活用や、デジタル化によるイノベーションを起こす解決策としてCoEを用いることが増えています。
冒頭にてご紹介した「CoEが今、企業経営に必要な理由」でも触れていますが、DX推進のために企業の組織・文化を変革するハブ的役割として期待されているのがCoEなのです。また、DX推進にはクラウドの活用が重要な手段となっており、クラウドを活かし効果を上げるためには牽引役となる組織、すなわちCoEが必要だとされています。

そのため、最近では「デジタル・センター・オブ・エクセレンス(DCoE)」や「クラウド・センター・オブ・エクセレンス(CCoE)」と呼ばれる組織が増えており、クラウド活用やDX化に成功している企業の多くが、DCoEやCCoEを設置しているという事実もあります。

クラウド導入やDX化には、高い確率で障壁がそびえ立ちます。社内ルールの整備から、セキュリティーなどのリスク管理、企業価値としてどう結びつけていくのか…。これらを分断された組織単位で行うには限界があります。また、ビジネスモデルの変革という本来の目的まで到達せずに、気づけば終息してしまうこともあるでしょう。
企業全体でクラウド化、DX化に取組むためのベクトルを示す、そんな強いリーダーシップがCoEには求められているのです。

まとめ

ここまでセンターオブエクセレンス(CoE)について解説してきました。今回の内容を改めてまとめます。

<このコラムのPOINT>

  • センター・オブ・エクセレンス(CoE)とは、組織を横断するプロジェクト、取り組みなどを行う際に統制する、優秀な組織のこと
  • 企業にCoEを設置することで、社内の連携を強化できたり、複雑な課題を解決できたりと、縦割り型組織のさまざまな課題を解決してくれるメリットがある
  • 現在では、通信業界、アパレル業界、製造業界などさまざまな業界で設置されている

クラウド化やDX推進など、企業におけるCoEの重要性は今後もさらに増していくことが予想されます。しかし、はじめから大規模な体制を作ろうと思っても、一歩目で躓いてしまう可能性もあるでしょう。SIerなど外部の力も使いながら、知識やノウハウを習得するのも手です。

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