背水の陣で臨む国内大手企業が連名で設立した半導体メーカー、製造DXで弱体化が進む製造業の活力を!

2022年8月に国産半導体メーカーとして国内大手企業8社の合弁会社設立が決定しました。その企業には、政府からの補助金700億円も支援されるということもあわせて発表されています。
国内製造業の中核でもある半導体メーカーの設立は喜ばしい反面、そこまでしなければならないほど、日本の製造業の弱体化が進んでいると、見ることもできます。
このニュースから具体的にはどのような製造業の懸念が見え隠れするのでしょうか。

国内トップ企業8社が参画した次世代半導体プロジェクト

政府と国内大手企業8社は、国内における半導体産業の再興を目標とした半導体メーカー「Rapidus(ラピダス)」の設立を発表しました。

設立にかかわった企業は、日本を代表する企業の面々です。さらに、この半導体メーカーの設立には日本政府も補助金を出すなどの資本面でのバックアップも行っており、国として全面的に支援する方向性を示しています。

日本の半導体産業は、1980年代、世界シェアで5割を占めていた全盛期から比較すると、その勢いは感じられません。昨今の半導体不足の状況もあり、日本の半導体産業の再興を狙った半導体メーカーの設立と言えます。

参画している大手企業は、今までは特定分野のみで十分な収益があった

参画しているそれぞれの大手企業8社は、主力分野では国内トップ企業ばかりです。
それぞれの分野で十分な収益をあげられそうに見えるのですが、なぜ新たに半導体メーカー設立への投資を行う必要があったのかを考える必要があります。

通信業界や銀行業界など国内需要を狙った企業は、日本の人口減少による慢性的な収入減に悩まされています。
自動車産業やIT製造業も、新興国や中国、欧米諸国とのし烈な競争に勝ち続けなければなりません。その際に半導体不足による影響もありますが、東南アジアなどの新興国との価格競争は、物価の安い新興国が有利になります。
こうした状況から、異業種である半導体産業に参入しなければ将来的な収益源がなくなる危険性があるということが推測できます。

政府の補助金を頼るのは、資金不足?

Rapidusは、日本を代表するような大手企業ばかりであり、政府からの補助金がなくとも、民間企業合弁でのプロジェクトとして半導体メーカーの設立を行うことも可能ではないかと思う人もいるでしょう。以前であれば国の力を借りることなく民間企業のプロジェクトとして発足していたかもしれません。
しかし、物価下落が続く不況の中で大手企業であっても、異業種に新たに企業を発足する大プロジェクトに資金提供できる資本には限界があると見ることができます。

政府も成長分野への投資として、国債発行の名目がつく補助金の提供には積極的です。それぞれの利害が一致したことで、政府と民間企業の合弁という形に落ち着いたと考えられます。
国と民間企業が一体となって半導体産業を盛り上げていくというと聞こえはいいですが、民間企業のみでは、大プロジェクトを立ち上げることができないほど大手企業であっても体力が落ちていると見ることもできます。

トップダウン型で成長を続ける海外企業

日本の製造業のDX化が遅れていて現場のシステムが旧態依然であるという事実は、ICT投資額の伸び悩みからも見てとれます。そして、設備投資の重要性は、冒頭でご紹介した半導体産業とも大きく関係しているのです。

世界初のファウンドリー企業であり半導体産業の中核を担っている台湾の企業は、超大型の設備投資を継続した結果、時価総額は約15兆6,000億台湾ドル(約63兆5,000億円、2021年6月時点)の巨大企業に成長しました。
一方で日系の半導体メーカーは資金調達などを含めて自前主義から抜け出せず、巨額投資を行うことができませんでした。
こうした巨額の設備投資は世界の製造業で行われており、内部留保だけを蓄えて危険な状況に備えてばかりの日本の製造業は完全に世界から取り残されてしまいました。

トップダウンによる設備投資、そして若くて優秀なエンジニアへの投資を継続的に行い、高度な微細加工技術を手に入れた台湾の企業。それに対し、大きな変革を求めない昔ながらのビジネスモデルで、ボトムアップ型の改善と現場力に頼りきりの日本の製造業。どちらが勝者となるかは、明白でしょう。

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製造業の現場でもさまざまな弱体化を実感

リスクを心配するあまり現状維持ばかりの日本の製造業は、世界の製造業と比較すると、その弱体化は深刻な問題です。そして、製造業の現場レベルでも、スピード感や開発力が弱ってきていると実感することが多くなりました。

かつては「安かろう・悪かろう」の代名詞だった中国製品ですが、2025年までに製造業で世界中位までランクをあげようという中国の国策である「中国製造2025」の影響は計り知れないものとなっています。
中国政府が製造業各社に多額の補助金を出して在庫管理や納期管理の先進的なシステムや、製造自動化システムといった、製造業のDXにかかわる分野を推進してきました。
その結果、以前は納期を確認しても不明瞭な回答が来るなど「中国企業だから仕方がない」というような形で片づけていたものが、現在は、より正確な納期回答や、個々の要望に合った仕様を正確に発注できるようになってきました。

一方で、日本の製造業の現場では、DX推進を目標に掲げているにもかかわらず、いまださまざまなシステムが前時代的で、他部門との協調もうまく取れていないところが多いです。筆者の実体験をもとに、日本の製造業の現場における実態について触れていきます。

工場の在庫管理がアナログ的

中国の工場では先進的な在庫管理システムが導入され始めていますが、日本の工場ではまだまだ発展途上と言えます。
工場の資材調達部門で調達された物品を管理するシステムが、旧来のシステムを踏襲しているなどの関係から非常にアナログ的である場合が多いため、次のようなさまざまな問題が発生しています。

  • 年一回の棚卸しまで正確な在庫数を誰も把握していない
  • すぐに対応しなければならない突発案件が発生したという理由で、勝手に在庫状態となっていた物品が使われており、代替発注が行われている
  • 棚卸しを行うと在庫数が合わない

在庫管理がアナログ的であると現状との差異が発生するため、リアルタイムでの在庫管理ができなくなります。その結果、製品納期の問い合わせなどに迅速に対応ができない、問い合わせに間違った回答をするなどの弊害が発生します。
製造業における業務のスピード感と正確さを持たせるためには、より正確な在庫管理システムが必要です

設計部門と製造部門の協調不足

営業部門などからの要求に対して技術的な知見から、対応の可否を判断し、製造部門へ量産化の検討を依頼する「設計部門」と、実際に製造を行う「製造部門」との協調不足も深刻な問題です。

営業部門と設計部門では合意が取れている仕様の製品でも、量産化を検討した場合に長納期部品が含まれていたなどの理由から量産化が難しいといったものもあります。
その場合、営業部門と設計部門との再協議が必要となるなど、無駄が多くなります。

この協調不足の問題は、トップダウン型の目標が掲げられておらず各部門が同じ方向を見ていない、部門間の風通しが悪い、製造部門のIT化が遅れているなどの原因も考えられます。

業務改善という名の新たな業務

半導体メーカー設立にも関わっている大手自動車メーカーが世界に向けて「カイゼン(Kaizen)」を発信したことで、日本の製造業の強みは現場レベルの業務改善力だと言われていた時代が長く続きました。
しかし、業務改善を行う必要もない業務であっても、年一回の業務改善発表のために名目上でも取り組む必要が出る事態に陥っている製造業の現場もあります。

業務改善の施策は、多忙なため、通常業務時間では行うことができず、残業時間を使って改善を検討するということも行われています。
業務改善による勤務時間の短縮なども目的の一つとなっているのに、業務改善で残業をするという本末転倒な事態も製造業の現場では起きているのです。

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日本の製造業の難局にこそ活路を

世界の先進国や中国、韓国などの賃金は伸びているのに、日本だけがずっと賃金が上がっていないと指摘されるようになりました。
これは、日本経済がそれだけ他国と比較しても成長していないことを語るのに十分すぎる証拠です。

諸外国では中国の「中国製造2025」やドイツの「インダストリー4.0」など次世代製造業を目指したIT機器によるDXや完全自動化システムなど業務効率化に取り組んでいます。

しかし、個別の製造現場の実情からもわかるように、日本の製造業は旧態依然とした状態からいまだに抜け出せずにいます。
一方で、これからは日本でも本格的な経営の改革していかなければ立ちいかない製造業も多く出てくるでしょう。ピンチのように見えますが、今までのような現状維持の動かない製造業から変わる絶好のチャンスともいえます。

日本の製造業のブレイクスルーにはDX対応が欠かせない

今の日本の製造業に最も不足しているものが、業務のスピード感です。
さまざまなチェックを人の手で行っているため、人が増えれば回答が遅くなり、納期や見積提出といった顧客が必要とする情報の掲示に時間がかかります。

しかし、これらの問題はDX化で解決するものも多く、DX化は海外の製造業への反撃の狼煙ともいえるでしょう。
そのためには、無駄のない工程管理や現場データの集計、リアルタイムの品質データなど、早くて正確なデータを収集する必要があります。

製造業DXシステム「HYPERSOLシリーズ」では、現場の業務効率化を支援するさまざまなソリューション(品質管理システム/倉庫管理システム/工程管理システムなど)があります。
そのほかにも、生産ダッシュボードを活用することでリアルタイムの製造ラインの状況や納期状況、品質状況などのデータを見やすい状態で表示できます。データを用いることで生産会議や経営会議をより有意義で素早い意思決定を行うことが可能になるでしょう。

日本の製造業の凋落が叫ばれて、長すぎる期間が過ぎてしまっていますが、そのような状況に陥るのには、それなりの理由があります。理由があるということは、状況を挽回することができる対策もあると言うことです。その対策として、製造業におけるDX化や業務革新は、非常に有効な手段となっていくでしょう。

著者プロフィール

名前:西海 登
肩書き:電気技術者・ライター

ビルメンテナンス業界から産業用機器の電気設計職へ移り、設備関連の保守点検から構築に関する業務を経験する技術者。近年ではIoT関連の業務にも携わる。本業の技術職の傍ら、webライターとして活動中。

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