コンセプチュアルスキルとは?概要とスキルの高め方を学ぶ
公開:2019年10月23日
マネージャー以上の職位にいる方であれば、「現場をまとめるためには、どんな施策や考え方が必要か」という問題について常に考えているのではないでしょうか。そうした方なら、「コンセプチュアルスキル」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。コンセプチュアルスキルとは、「正解のない」問題に直面したときに、問題の本質を見極め、周囲が納得できる最適解を導き出す能力のことです。
このコラムでは、コンセプチュアルスキルの概要をご紹介しながら、コンセプチュアルスキルを20~30代の若手社員に向けた研修として取り入れることのメリットについても解説します。自身のスキルアップに役立てたい方も、研修として取り入れることを検討している人事総務部門の方も、是非参考にしてください。
コンセプチュアルスキルとは

「コンセプチュアルスキル」とは「概念化能力」とも呼ばれ、物事の本質を見極めることで、個人や組織の可能性を最大限まで高めることができる能力のことです。コンセプチュアルスキルを身につけると、あいまいで抽象的な「正解のない」問題に直面した場合でも、物事を理論的・創造的に考えることで、周囲の人が納得できる答えを導き出したうえで、「問題を解決するためにこれから何をすればいいか」という計画を立てることも可能になります。なお、コンセプチュアルスキルとはアメリカの経済学者が提唱した、「管理者に求められる3つのスキル」のひとつとしても知られています。
管理者に求められる3つのスキル | |
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テクニカルスキル | 職務を遂行するために必要な専門知識や技術。 |
ヒューマンスキル | 周囲と良好な関係を築き、維持するために必要な能力と技術。 |
コンセプチュアルスキル | 物事を理論的・創造的に考え、その本質を見極めることで、個人や組織の可能性を最大限まで高める能力。 |
提唱した経済学者は、管理者を「トップ・マネジメント(経営者層)」「ミドル・マネジメント(管理者層)」「ローワー・マネジメント(監督者層)」に分け、管理者としての責任が高まれば高まるほど、コンセプチュアルスキルを高める必要がある、と説いています。
コンセプチュアルスキルを構成する14個の要素とは?
社会には特別なトレーニングを受けなくても、コンセプチュアルスキルを元から持っている人が一定数います。
- 普段から物事を理論的・創造的に考えることができる
- 正解のない問題に直面しても、物事の本質を見極めることで、皆が納得できる解決策を導き出せる
という人が、その例に挙げられるでしょう。
しかし、上記のような考え方が現時点でできない人でも、コンセプチュアルスキルの構成要素をしっかり理解したうえで考え方のトレーニングをすれば、スキルを身につけることが可能です。
以下は、コンセプチュアルスキルを構成する14個の要素を一覧表にしたものです。自身が「どのスキルを身につけていて、どのスキルを身につけられていないのか」を洗い出すための参考としてください。
コンセプチュアルスキルの構成要素 | |
---|---|
1.ロジカルシンキング | 物事を主観的にではなく、冷静かつ論理的に考える能力。 |
2.ラテラルシンキング | 経験や常識に縛られず、自由な発想ができる能力。「水平思考」とも呼ばれる。 |
3.クリティカルシンキング | 「批判的思考」を意味する。現状に満足せず、組織の問題や周囲の気づいていない組織内の悪習を認識し、批判的に分析して解決策を見つける能力。 |
4.多面的視野 | 目の前の物事にとらわれず、会社の歴史にもこだわり過ぎず、目の前の事象を複眼的に見る能力。 |
5.柔軟性 | 時代や社会的ニーズに適応し、物事に対し臨機応変にアプローチする能力。 |
6.受容性 | 未知の価値観に直面したとき、それを拒絶せずに受け入れる能力。 |
7.知的好奇心 | 新しいものを拒絶せず、楽しみながら取り入れる能力。 |
8.探求心 | タスクを完了させる際に妥協点を見出すのではなく、「どうしてこの結果になるのか」を常に考えながら研究・分析を行う能力。 |
9.応用力 | 技術や能力を工夫し、別の物事に役立てる能力。 |
10.洞察力 | 物事の本質を見極め、将来の展望についても分析する能力。 |
11.直観力 | 直観的なひらめきを活用し、瞬時に対応する能力。 |
12.チャレンジ精神 | 未経験の分野に、失敗を恐れず挑戦する能力。 |
13.俯瞰力 | 広い視点で物事を捉え、進行中の業務が全体のプロセスにおいてどの位置にあるか把握する能力。 |
14.先見性 | 目先のことだけではなく、数年後、数十年後における社会ニーズの推移を予測できる能力。 |
コンセプチュアル思考を高めるコツ
ここまでコンセプチュアルスキルの概要や構成要素について見てきましたが、実際に「コンセプチュアルスキルを活用した考え方、すなわち「コンセプチュアル思考」とはどのようなものなのでしょうか。簡単に説明すると、コンセプチュアル思考は「目の前にある物事を、概念化・抽象化する」考え方と言えます。
ここからは、コンセプチュアル思考を高めるコツをステップ毎にご紹介します。一般的にコンセプチュアルスキルは管理職に求められる能力と考えられていますが、実は20~30代の若手会社員にも身につけることをお勧めしたいスキルです。
もしあなたが営業であったなら、お客様の業務の中に隠れた問題を発見し、解決策を提案することができるようになるでしょうし、もしあなたが開発プロジェクトの一員で、そのプロジェクト内で複数の問題が起こったとしても、問題の本質を見極め、根本的な解決案を導き出すことができるようになるでしょう。現場での対応力がある若手社員を育成するためにも、キャリア形成期における教育の一環として取り入れることをおすすめします。
ステップ1:物事を抽象化する
物事の抽象化とは、さまざまな経験や事象から「物事がうまくいく本質」や「物事がうまく進まない場合の共通性」を見出すことを指します。日々仕事をする中で、「今回はなぜうまくいかないのか」、「今度の挑戦はうまく進んだ」と感じることは多々あります。若手であればあるほど、この傾向は強いでしょう。そうした事象の中から、物事がうまく進んだときの要素、うまく進まなかったときの要素を分析することで、成功を導くための本質的な要素を見出すことができるのです。
ステップ2:物事を定義する
成功・失敗における本質や共通性を見出すと、今度は「成功とはこういうものだ」「失敗はこうして起きる」といった「定義」をすることができます。成功と失敗、両方について自分の言葉で表現することで、物事の認識をより深めることができるでしょう。20~30代の若手社員が自身の能力について具体的に考えたいときや、理想の自己像を構築する際にこの考え方は有効と言えます。
ステップ3:物事を具体化する
物事の本質・共通性を見出すことができると、今度は、
- 成功や失敗にいたる法則や原理を見出せる
- 成功や失敗例をパターンに分けることができる
- 成功や失敗のサイクルを構造的に捉えることができる
ようになります。
このように成功・失敗の全体像を捉えることができれば、ここまでに得た情報を基に現実で活用する段階に移せます。例えば、「成功するための秘訣」や「失敗しないために注意すること」などを掲げ、新しいプロジェクトや業務の中で具体的に行動してみましょう。こうした考え方は、若手社員がこれからキャリアを構築していくにあたり、これまでの経験をどう活かしていくか計画を立てる際にも役立つでしょう。
まとめ
物事の本質を見極めることは、決して容易なことではありません。しかし、正解のない事象から逃げることなく向き合い、広い視野で多面的に物事を捉え、誰にでも分かりやすいように可視化し、具体的な行動に落とし込む。これを繰り返すこと、そして自分の考えや行動を省みることが大切であり、積み重ねていくことで、ビジネスマンとしての価値を高めることができるでしょう。
コンセプチュアルスキルは、管理者の立場にいる方はもちろん、若手であっても身につけておくと有効なスキルです。ビジネスマンとして成長するためにも、周囲の人材をまとめてスムーズに業務を進めるためにも、コンセプチュアルスキルを取得してみてはいかがでしょうか。
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