ビジネスマンなら身につけたいマーケティング思考とは
公開:2020年09月16日
「マーケティング」と聞くと、どのようなイメージが浮かんでくるでしょうか。
広報や宣伝など「販売促進を行うためのプロセスのひとつ」と考える方も、多いかもしれません。しかし、マーケティングに求められる考え方である「マーケティング思考」は、生産性の向上や日常の業務、営業活動などはもちろん、ビジネスマンとしての行動全体にもかかわる重要な考え方です。近年では、採用、人事、研究開発などの事業活動において取り入れられることも増えており、まさに現代のビジネスマンにとって必須となりつつあるスキルといっても過言ではありません。
そこでこのコラムでは、第一線で活躍するビジネスパーソンに求められているマーケティング思考についてご紹介します。決して難しい考え方ではなく読んだ直後から実践できる思考法ですので、ぜひ参考にしてみてください。
ビジネスパーソンの「必修科目」になりつつあるマーケティングの考え方
近年、ビジネスパーソンの必修科目ともいわれているマーケティング思考。そもそも、マーケティングの定義は人によって様々で、リサーチ、データ分析、広告宣伝などといった答えが出てくるでしょう。それらは決して間違っているわけではありませんが、どれもがマーケティングの一部分といえます。
マーケティングを大きな意味で捉えて簡単にいうと、「顧客が欲しいと思う状態を作ること」です。つまり「買ってください」と押し出さなくても、自然とお客様から選ばれるようにするということ。そのために必要なターゲットのニーズをリサーチし、ニーズを満たす商品を作り、商品の情報をターゲットに届けるという一連の流れは、すべてマーケティングの考えに則ったものなのです。
例えばマーケティング思考を営業活動に落とし込んで考えてみると、以下のような形に応用できるでしょう。
- 相手の求めているものを想定する(ニーズをリサーチ)
- 顧客ニーズを満たす商品を考えて作り、その商品の特長を熟知する(ニーズを満たす商品を作る)
- ターゲットに商品情報を紹介する(情報をターゲットに届ける)
様々な市場で競合が増えてきている中、「決まったものを売る」のではなく、相手にとって「Must Have(必要不可欠)」なサービスを提供するという考え方を持つことが今後ビジネスパーソンに求められる心構えです。
また、マーケティング思考は、経営者や人事マネージャーなど意思決定権をもつ役職者、商品やサービスを生み出す開発部門の担当者にも役立つ思考です。さらにマーケティング思考は、会議の場でも以下のように応用できます。
- 会議で求められているのはどのような情報かを考える(ニーズをリサーチ)
- 必要な情報を整理してわかりやすくまとめる(ニーズを満たす商品を作る)
- 会議の場で参加者に情報を発表する(情報をターゲットに届ける)
どんな部門・立場であっても、必ず業務にはその業務の成果を届ける(求めている)相手がいるはずです。マーケティング思考を応用し自身の業務に取り入れることで、ビジネスをスムーズに進めることや大きな結果を生み出すことも可能となるのではないでしょうか。
マーケティング思考に使われる主なフレームワーク
ここでは、マーケティングでよく用いられるフレームワークをシチュエーション別に紹介します。ご自身の役職や業務に合わせて各フレームワークを組み合わせながら活用すれば、マーケティング思考を取り入れやすくなるでしょう。
環境を分析し自社理解に使われるフレームワーク:3C分析
「3C分析」とは、「Customer(顧客・市場)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」、この3つのビジネス市場環境について分析する方法です。それぞれの頭文字であるCをとって名付けられました。客観的な視点に立ち、それぞれの要素を抽出することで、自社の強みや競争のなかで勝つための道筋を見出すことができます。3Cの各要素の詳細は以下の通りです。
● 顧客・市場(Customer)
最初に把握すべきなのが顧客や市場に関する要素です。主に分析するポイントは「市場規模」「市場規模推移」「顧客のニーズ」「顧客の購買行動・能力」です。
● 競合(Competitor)
次に分析するのが競合です。競合他社の商材はどのようなターゲットにどのような価値を提供しているのかなどを把握します。主に分析するポイントは「競合の特定」「競合があげた利益や成果」「競合が利益や成果をあげるために用いたリソース」「結果を出した仕組み」です。
● 自社(Company)
顧客と競合を分析したうえで自社の分析を始めることで、自社の強みや差別化できるポイントを見出せます。主に分析するポイントは「自社の経営理念や戦略」「強み・弱みや提供可能な価値」「利用可能なリソース」「リソースによってどのように結果を出すのか」です。
3C分析と聞くと少し難しそうな印象を受けるかもしれませんが、以下のように恋愛に当てはめるとイメージしやすいかもしれません。
- 気になっている相手の好みのタイプを分析:Customer
- ライバルになりそうな人はいるのかを分析:Competitor
- 自分は気になっている相手の好みに入っているのか、ライバルよりも秀でている点や特徴を分析:Company
3C分析のポイントは、事実を正確に情報収集することです。かといって情報収集に時間をかけ過ぎてしまうと市場が変化してしまう可能性もあるため、分析をするために必要と思われる情報のみに絞って調査しましょう。また、3C分析は自社分析だけでなく顧客となる企業を理解するためにも有効な手法ですので、活用してみましょう。
自社の環境を内部・外部両方から分析し戦略を策定するためのフレームワーク:SWOT分析
「SWOT分析」とは、「Strengths(強み)」「Weaknesses(弱み)」「Opportunities(機会)」「Threats(脅威)」の4つの要素を分析していく方法です。今後の経営戦略や事業計画を策定する際に役立ちます。SWOT分析の各要素の詳細は以下の通りです。
● 強み(Strengths)
売り出したい製品やサービスだけでなく、技術力や人材など、自社にとってプラスとなる内部環境での強みについて洗い出します。価格・スピード・ノウハウなど、俯瞰的に見て他社にはないオリジナルの強みを見出していきます。
● 弱み(Weaknesses)
「他社には備わっているが自社にはないもの」や「自社が苦手としているもの」などの弱い部分を挙げていきます。客観的かつ冷静に、自社がコントロール可能な要素の中から苦手と思われることを抽出していきます。
● 機会(Opportunities)
市場や景気、社会の情勢などのうち、自社にとってプラスとなる外部環境について洗い出します。法律の改正、流行、テクノロジーの革新など、あらゆるポイントがビジネスチャンスとなる可能性があります。環境変化における競合他社の動きについても分析するなど、幅広い視点から見つけましょう。
● 脅威(Threats)
ビジネスにおいて障害となり得る外部環境の変化を把握します。例えば大手企業の参入、テクノロジーの発展による業界全体の革新などが挙げられます。「機会」と同様に、あらゆるポイントが脅威になることもあるので、しっかりと環境の変化を把握しておくことが重要です。
SWOT分析を行う際は、分析を行う目的をまず明確にしましょう。そして、外部環境である機会(O)と脅威(T)から分析することをおすすめします。理由は、内部環境である強み(S)と弱み(W)を分析する際に外部環境を加味して考えたほうが主観的にならないためです。
4つの要素の洗い出しができたら、「クロスSWOT分析」を行いましょう。クロスSWOT分析は4要素を掛け合わせ、「強み×機会」「強み×脅威」「弱み×機会」「弱み×脅威」という組み合わせで分析する手法です。この結果を元に戦略を立てていくという流れになります。
また、先程ご紹介した3C分析で調べた情報がSWOT分析に活かせますので、ぜひ活用しましょう。
市場を細分化しどの市場を狙うかを見極めるためのフレームワーク:STP分析
「STP分析」とは、「Segmentation(セグメンテーション)」「Targeting(ターゲティング)」「Positioning(ポジショニング)」の3点を分析する方法です。市場や顧客のニーズを分類分けし、どの市場にどのサービスを提供していくかを決める際に活用することが可能で、主に競合他社との差別化要因を見極めるために用います。分析を行う要素の詳細は以下の3点になります。
● セグメンテーション(Segmentation)
セグメンテーションとは「市場の細分化」を意味する言葉です。住んでいる地域、年齢、性別、ライフスタイル、購買時期など、数値的なデータをもとにして市場や顧客ニーズを細かくグループ分けします。
● ターゲティング(Targeting)
細分化した市場の中から今後の市場の成長性や規模を考慮した上で、自社の製品・サービスの強みを活かせる市場はどこかを見極め、狙いを定めていきます。競争相手のいない未開拓市場を狙うのか、はたまた競争は激しいが今後も成長が見込める市場を狙うのか、あるいは敢えてセグメントを無視し様々な市場にPRするのか…など様々な戦略の立て方がある中から、「今回はこれでいこう!」と決めていきます。
● ポジショニング(Positioning)
ターゲティングした市場に対して、自社がどのようなポジションでマーケティング施策を実行するのかを分析します。自社の優位性や他にはない強みを徹底的に分析し、競合よりも魅力的に見えるような打ち出し方を考えて立ち位置を決めていきます。この際、縦軸と横軸からなる2次元の座標に価格やメリットなどの要素を挙げて各商品の関係性を表現する「ポジショニングマップ」を作成すると、情報が視覚的に整理されるので、おすすめです。
STP分析を行うことで、リソースを無駄に消費することなく販促活動を行うことができるだけでなく、競合他社との無駄な戦いを回避することもできるはずです。
ポイントは視点を変えること
マーケティング思考を取り入れるうえで重要なことは、「視点を変えること」です。商品や自分自身を売り込むことは、相手にいかに受け入れてもらうかということ。つまり、どうしたら相手が受け入れてくれるのかという相手側の視点に立って考えることが、成功への近道になります。もちろん、マーケティング思考を取り入れるためには、「相手と自分」だけでなく競合や業界内の動きから世情まで、幅広くあらゆる視点に立つこともポイントです。
また、マーケティング思考で物事を考えていく際には、思い込みを排除することから始めましょう。幅広い視点をもつことや、変化を受け入れる柔軟な姿勢をもつことが、マーケティング思考の第一歩といえます。
まとめ
相手の立場になり、相手の視点で物事を捉えることで顧客満足度を向上させることを考えるマーケティング思考は、企業のマーケティングを担当する人だけでなく、ビジネスにおける行動全体に効果を発揮します。そのためマーケティング思考はあらゆる職種・分野で役立てることができ、ビジネスパーソンにとっては非常に大切なスキルといえるでしょう。
マーケティング思考に使われるフレームワークは、物事を多角的に捉える視点をもち、考えをめぐらせることで鍛えられます。ビジネススキルをさらに向上させるためにも、日ごろから様々な情報を入手し、固定概念をできるだけ外して物事を考えてみる癖をつけてみてはいかがでしょうか。
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