グロースマインドセットとは?個人の成長やビジネススキルで注目される思考の活用法と育み方を解説

昨今、キャリアアップや生産性向上のためのビジネススキルとして、「マーケティング思考」や「クリティカルシンキング」など様々なビジネススキルが注目されています。中でも、特に注目されているスキルが「グロースマインドセット」です。

グロースマインドセットは、国際的なオンライン学習サービスが2020年に発表したレポートにおいて、リーダーシップやコミュニケーションなど、個人の特性に関連するスキルであるソフトスキルの第一位にも選ばれました。
本コラムでは「グロースマインドセット」の概要や、対となる「フィックストマインドセット」との違い、すぐに取り組める実践的なポイントを紹介します。

このコラムを読んで分かること

  • グロースマインドセットの概要と得られるメリット
  • グロースマインドセットの具体的な考え方
  • 個人や企業としてのグロースマインドセットの育み方

グロースマインドセット(成長型マインドセット)とは

「グロースマインドセット」とは、スタンフォード大学で心理学の教授として活躍するキャロル・ドゥエックによって提唱された概念で、自らのスキルを自発的に高めることができる考え方を指します。また、自らの経験や努力によって自身の成長を促進させることから、「成長型マインドセット」とも呼ばれています。

そもそもマインドセットとは、「各自が持っている物事に対する基本的な思考パターン」のことです。仮に同じ出来事が起きたとしても、マインドセットが異なれば人それぞれ捉え方や解釈に差が生じるというものです。グロースマインドセットを持っていると、何事にも常に前向きに取り組むことができ、自分が関わる出来事を成長の機会として捉え、スキルを高めることが可能となります。

グロースマインドセットのメリット

グロースマインドセットは、その前向きな思考が自分自身だけでなく、周囲に対してもポジティブな影響を与えると言われています。ここでは、グロースマインドセットによって得られる主なメリットや見込まれる効果について、詳しく見ていきましょう。

自分自身へのメリット
  • 仕事やプライベートで抱える課題が解決できる
  • 継続的なスキルアップが可能
  • 生産性が高まり気持ちに余裕が持てる
  • 仕事にやりがいを見出しやすくなる
  • 成長することで自分に自信が持てる
周囲へのメリット
  • チームやグループの生産性が高まる
  • 有用なアドバイスが得られる
  • ポジティブなコミュニケーションにつながる
  • 職場のストレス低減や離職の予防につながる

グロースマインドセットはビジネススキルとしてだけでなく、子どもの「思考の教育」にも有効活用できると注目されています。親や教育者が子どもと関わる際に、子どもがグロースマインドセットを持てるように心がけながら接すると、自発的な成長をサポートできるとされています。

グロースマインドセットとフィックストマインドセットの違い

さて、マインドセットはご紹介した「グロースマインドセット」と、グロースマインドセットとは対象的な「フィックストマインドセット」の2つに分けられます。グロースマインドセットは「やり方や努力によって状況を変えられる」という思考であるのに対し、フィックストマインドセットは「才能や能力は決められているため、変えられる状況に限界がある」という思考です。

ここからは、2つのマインドセットを比較しながら両者の考え方の違いを見ていきましょう。

考え方 グロースマインドセット フィックストマインドセット
スキルや知識に関する考え方 新たなスキルや知識を必要に応じて習得できると考える すでにある知識やスキルがすべてで、新たに身につけることはできないと考える
評価に対する考え方 自分が定めた目標に対する達成度や、自分なりの成長を重視する 他者からの評価を重視する
目標達成に対する考え方 目標達成に向けた取り組みにおいて、プロセスや仕組みを重視する 結果のみがすべてで、過程には注意が向けられない
努力に対する考え方 努力は自身の成長や目標達成に必要不可欠だと考える 努力はやっても無駄なこと、うまくいかなかった場合に取り組むことと考える
挑戦や困難な課題への向かい方 挑戦や困難な課題を成長の機会ととらえ、より高い目標に向けて挑戦する 困難な課題は回避するべき障害と捉える
失敗の捉え方 失敗も成功の糧と考える 失敗は可能な限り避けるべきことと考える
他者の成功に対する考え方 他社の成功から刺激を受け、自らのモチベーションにつなげられる 他者の成功は、自身への脅威や嫉妬の対象として捉える
他者からのフィードバック 他者からのフィードバックを積極的に聞き、自身のスキルアップに活かす フィードバックを聞いたときに自分が否定されているように感じたり、反論したくなったりする

両者を比較すると、グロースマインドセットのほうが望ましい思考であることがわかります。
ですが、多くの人はグロースマインドセットとフィックストマインドセットの両方を持ち合わせているとされています。グロースマインドセットのみを持っているような完璧な人は、ほぼいないということです。
マインドセットは、自身が置かれた状況などによって変わることもありますが、反対に自分の意思でマインドセットを変えることも可能です。そのため、マインドセットをできるだけグロースマインドセットに変換させることがポイントです。

グロースマインドセットを育む方法

グロースマインドセットは、意識の持ち方を変えたり、環境を整えたりすることで育まれます。また、グロースマインドセットを詳しく知ることで、自分自身だけでなくビジネスシーンでも活用が可能で、例えば部下などに対してもグロースマインドセットを育むための働きかけが可能です。
ここでは、グロースマインドセットを育む具体的な方法について、個人における場合と企業の組織・チームにおける場合に分けてご紹介します。

個人としての育み方

日常生活において、常にポジティブな姿勢でチャレンジし続けられる状態が望ましいとはいえ、多くの方は、グロースマインドセットとフィックストマインドセットを併せ持った状態で日々過ごしています。
一般的には、日常のストレスや疲労の蓄積によってネガティブな気分が続くと、フィックストマインドセットに偏ってしまうことが多いとされています。また、好きなことに取り組んでいないときは、フィックストマインドセットに陥ってしまう傾向があります。つまり、どんなにポジティブな人でもフィックストマインドセットに傾いてしまう状況が、身の回りにあるということです。

しかし、ちょっとした意識の持ち方によって再びグロースマインドセットを取り戻すことができます。
そこでまずは、いま自分がどちらのマインドセットになっているか、自身に問いかけてみましょう。仮にフィックストマインドセットに偏っていると自覚したならば、「よし!考え方を変えよう!」と、意識しましょう。前向きになろう、変わろうと意識をするだけでも、グロースマインドセットを育てることができます。
「意識を変えよう!」と自分自身を鼓舞できたら、次は、どうしたらより良い方向に進めるか考えてみましょう。前向きな方向に考える“クセ“を付けることも、グロースマインドセットを育てるポイントです。
そして、こうしたい・こうなりたいと考えて目標を決めたら、実行に移しましょう。無理だからと諦めず、行動をし続けることが大切です。やり遂げた結果、仮に失敗してしまったとしても、その過程を振り返ることができます。行動した過程こそが、次の成長を促す財産になるでしょう。

マインドセットを急に変えようと頑張ってしまうと、それがストレスになってしまうため、焦らず少しずつ変えていってはいかがでしょうか。

企業の組織・チームとしての育み方

企業が成長し発展していくためには、従業員一人ひとりがグロースマインドセットを持つだけでなく、企業として自然とグロースマインドセットが育まれる環境作りが重要です。ここでは、組織・チームとしてグロースマインドセットを育むための3つの方法をご紹介します。

(1)上司は部下に対してグロースマインドセットの目線を持つ
上司が部下に対して「このメンバーは何を言っても努力しないな」と決めつけてコミュニケーションを取ってしまうと、部下はフィックストマインドセットの傾向を強めてしまうでしょう。
大切なことは、まずは上司が部下に対してグロースマインドセットの目線を持つことです。そして、部下の成長を信じて、小さな変化や成長を共に育てていけるように話をする、関係性を築いていきましょう。
具体的には、以下のようなことを意識してみると良いでしょう。

  • ミスを責めたり失敗を指摘したりするのではなく、成功するために必要なことを一緒に考えるように働きかける
  • 部下の成功体験はともに喜び、成功に至る要因となった部下のスキルアップや人間的な成長までをともに喜ぶ
  • 結果だけを見て部下を評価するのではなく、結果に至るまでの過程を重視して評価する

(2)誰もが気づいたことを自由に発言できる組織を作る
グロースマインドセットの育成には、周囲のメンバーとの関係性が影響を与えることがわかっています。そこで、上下関係なく、誰でも自由に、感じたこと・気づいたことを話し合えるチームや組織作りを進めましょう。
メンバーはそれぞれ、多様な価値観を持っています。お互いの価値観を認め合い、尊重しながら活発な議論ができれば、自然とグロースマインドセットが育まれていくことでしょう。

(3)グロースマインドセットを持っている分野を見つけて活かす
誰しも、得意・不得意な分野があります。そして、得意分野であればグロースマインドセットの傾向が高く、不得意分野の場合はフィックストマインドセットになりやすいはずです。
そこで、メンバーそれぞれがどの分野にグロースマインドセットを持っているかを把握して、その分野に合った業務を担当させましょう。得意分野で成功体験を積み重ねることで、グロースマインドセットになりやすい思考を育みやすくなるはずです。
失敗を経験して成長することももちろん大切ですが、フィックストマインドセットに陥る傾向が高いメンバーには、まずはできるクセを身につけさせてみましょう。

まとめ

ビジネススキルとして注目されている「グロースマインドセット」についてご紹介してきました。

  • グロースマインドセットは、スキルの向上やキャリアアップに役立つ考え方
  • まずはグロースマインドセットを意識することから始めてみよう
  • 上司は部下に対してグロースマインドセットの目線を持つことが大切である

グロースマインドセットはビジネススキルとしてだけでなく、生活の様々な場面でも有効に活用できる思考法です。日々の出来事を成長につなげ、日常生活をより充実させたい方は、グロースマインドセットを意識的に育んでみてはいかがでしょうか。

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