戦略的学習力(ラーニングストラテジー)とは?未来に必要なスキルを身につける方法

突然ですが、「2030年に仕事で必要なスキル」1位に選ばれた「戦略的学習力(ラーニングストラテジー)」をご存知でしょうか。「戦略的学習力」は、今後のビジネススキル取得やキャリアアップを決める上で参考になる考え方となっており、現在注目が高まっています。

2019年以降から流行している新型コロナウイルスの影響で、様々な業種業態の企業がかつてないほどの働き方の変化を求められました。また、多くのビジネスパーソンも、いつまで続くかわからないこの時代の中で、どのように自身のキャリア形成をしようかと模索された方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「戦略的学習力」は、先行きが見えず将来の予測が困難な状態、まさに今のような状況を生きるビジネスパーソンに求められる重要なビジネススキルでもあります。

このコラムでは、戦略的学習力とは何なのか、また戦略的学習力の重要性を紹介するとともに、戦略的学習力を身につけるための方法についても解説します。ぜひ参考にして下さい。

このコラムを読んで分かること

  • VUCA時代に求められる戦略的学習力について
  • 戦略的学習力を身につけることで得られるメリット
  • 戦略的学習力を身につけるための2ステップ

戦略的学習力(ラーニングストラテジー)とは

「戦略的学習力(ラーニングストラテジー)」とは、オックスフォード大学のマイケル・オズボーン教授によって提唱された概念です。意味としては、以下の通りです。

新しいことを学ぶ際に、状況に応じて最適な学習内容や学習方法を選択し、実践できる力・スキル

この戦略的学習力というキーワードは、オズボーン氏が2017年に発表した「スキルの未来」という論文の中で登場しました。2030年の雇用に求められる、なんと120もあるスキルをランキングした中で、戦略的学習力が1位になったことで注目が集まりました。

しかし、言葉の定義や意味だけでは戦略的学習力がどのようなものか、よくわからないという方も多いのではないでしょうか。
例えば、スキルアップのために何かを新しく学ぼうと考えた際、参考書や問題集をベースに学習する方法、スクールに通う方法など、様々な学習方法が存在します。
この時、自分自身に最適な学習内容や学習方法は何かを客観的に分析し、効率的に知識習得を目指すための力、そして新しく学ぶ“何か”を見定める力こそが、戦略的学習力と言えるのです。

2030年に必要なスキル ~ 戦略的学習力 ~ の重要性

なぜ、2030年に仕事で必要となるスキルの1位が戦略的学習力だったのでしょうか?
そこには、今の時代背景が関係していると考えられます。ここからは、戦略的学習力が必要とされる理由や重要性について詳しく解説します。

AIに代替されないスキルであること

これまで人類が辿ってきた歴史を振り返ってみても、時代とともに求められるスキルや能力は変化してきました。例えば、かつての製造現場では、手先が器用で多くの仕事量をこなせる職人が求められていましたが、自動化が進んだ現在では生産機械がその仕事を行なっています。

では、現在、そしてこれからの未来はどうなっていくのでしょうか。

現代は、あらゆるものを取り巻く環境の変化が激しく、将来の予測が困難な状態や社会情勢である「VUCA時代」と言われており、このVUCA時代には、「想定外の出来事が次々と起こる」、「ビジネスの概念を覆すような画期的なサービスが生まれる」とされています。例えば、サブスクリプションによるビジネスモデルや、スマホ決済なども最近登場した画期的なサービスのひとつではないでしょうか。
しかし一方では、「AIによって仕事が減る、またはなくなる」という指摘もあります。身近な一例としては、有人対応が基本であったカスタマーサポートがチャットボットに置き換わるなど、すでに変化の兆しは現れはじめています。

先程ご紹介したオズボーン氏は、同論文の中で「2030年に必要とされなくなるスキル」も記載しており、1位に「操作の正確さ」、2位に「手作業の素早さ」が挙げられています。いずれもAIやロボットで代替可能なスキルという点で共通しています。

戦略的学習力は、コミュニケーション能力や発想力などと同じ、ソフトスキルに分類される能力です。そして、ソフトスキルはAIが代替しにくいスキルと言われています。
つまり、戦略的学習力はAIやIoTに取って変わることが難しく、今後新たなビジネスが登場したとしても必要とされるスキルであると言えるでしょう。

限られた時間で効率的に学ぶ有用性

専門的なスキルを身につけたいと考えたとき、仮に何も考えずに学習を開始し100時間を費やして身につけられる方法と、10時間は戦略立案をする必要があるものの、その後50時間で身につけられる方法があった場合、後者のほうが合理的であることは明白です。

社会や技術が目まぐるしく変化したとしても、個人が対応できるキャパシティーやリソースには限界があります。様々な技術・情報・知識の中から“何を優先的に学ぶべきか”を考える上でも、戦略的学習力が重要となってくるのです。

正しく有益な情報や方法論を獲得できる

戦略的学習力を身につけると、正確な情報を取捨選択でき、誤った方法論を選ばずに済むというメリットもあります。
現在はインターネットが発達し、わからないことがあればあらゆる情報を手軽に調べられる時代です。しかし、情報過多な世の中においては、誤った情報や方法論を選択してしまうリスクもあります。良くも悪くも様々ある情報の中から正しいものを見極め、実践するためにも、戦略的学習力は有効な武器になります。

戦略的学習力を身につける方法

戦略的学習力は、もともと備わっている方もいますが、これから身につけることも十分可能です。ここでは、どのような方法、手順で戦略的学習力を鍛え、身につけられるかお伝えしていきます。

(1)「何を学ぶか」を見極める

戦略的学習力を身につける上でやるべきことは、「何を学ぶか」を見極めることです。

例えば、あなたがビジネススキルを向上させたい!と思ったとします。その時、こんな行動を取ったとしましょう。
「じゃあ“ビジネススキル ランキング”とググってみて、ヒットしたサイトの一番上に書かれていたスキルにしよう!」
これでは、自分にとって本当にそのスキルが必要なのか、見極めてはいませんよね。

戦略的学習力を高めたいならば、まず、自分自身が「将来こうなりたい」という姿をイメージし、その目標を達成するために足りない知識・スキルは何か?を考えましょう。また、「自身の適正・強み」と「社会からのニーズ」に照らし合わせて、何を学ぶかを考えるようにしましょう。

例えば、コミュニケーション力に自信があるが、論理的な思考や分析が苦手な方は、プレゼンスキルや営業力の強化を優先して行うことで、自分の強みをより伸ばしていけるはずです。このように、あえて苦手な分野や自分に適正がない分野を選ぶのではなく、強みを活かせる分野を伸ばしていく方が効率的にスキルや能力を身につけられます。
また、時代とともに社会的なニーズが低下し続けている分野を選ぶのではなく、これから成長が期待されていく分野を選ぶ視点を持つ点もポイントです。

(2)学び方を考える

学ぶべき内容が決まったら、効率的な学習方法を考えてみましょう。
参考書などを購入し独学で学習する方法は費用も抑えされますが、時間がかかる場合があります。短期間で集中的にスキルを身につけたいのであれば、例えばスクールに通ってみるなども選択肢の1つとして検討しましょう。
過去問を解いてからその部分の参考書を読み直す、周囲で知識のある人に教えを請うなど、手順や方法は様々です。よく検討して、自分にフィットした学び方を模索しましょう。

(3)トライアル・アンド・エラーを繰り返す

学んだ知識を吸収し自分のものにするためには、インプットだけではなくアウトプットを意識してみるのも重要です。
自分では身につけたと思っている知識やスキルでも、 “身につけたつもり”になっていることがあります。日々の業務の中で実践してみる、他の人に教えてみるなど、学んだ知識が使えるものになっているか確認しましょう。

挑戦してみた結果、まだ実践できるレベルでないと感じたら、先程の(2)に戻って学びなおしてみましょう。また、もしも最初に決めた自分の将来像に近づいていないと感じたのならば、もう一度(1)に立ち戻り、別の知識を学んでみることを検討しても良いでしょう。
将来こうなりたい自分への道は1つとは限りません。また、ご紹介した手順を繰り返すことが、戦略的学習力を身につけるためには重要だと思います。

まとめ

ここまでご紹介してきた戦略的学習力について、あらためて整理してまとめます。

<このコラムのPOINT>

  • 戦略的学習力とは、状況に応じて最適な学習内容や学習方法を選択できる力・スキルのこと
  • 戦略的学習力は「2030年に必要なスキル」の1位に位置づけられている
  • 自身の適正と強み、社会からのニーズと照らし合わせながら、学ぶべき内容を見極めよう
  • 効率的に理解でき、自分に合った学び方を考えよう

AIをはじめとしたテクノロジーの発達などにより、今後さらに変化の激しい時代が訪れることでしょう。また、10年後には今ある仕事の半分以上は、なくなる可能性があると言われています。

戦略的学習力は、これから様々なスキルを身につけるための根幹となる力でもあります。
このような時代だからこそ不可欠なスキルであると同時に、優先的に身につける価値があるビジネススキルとして、戦略的学習力の習得を検討されてはいかがでしょうか。

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