QoSとは?代表的な2つの手法・基本モデル・設定時のポイント
公開:2022年04月28日
ウェブサイトの閲覧や動画、クラウドサービスなど、日々私たちは様々なネットワーク上のサービスを利用しています。そのネットワーク上の通信サービスの品質を意味するキーワードが、「QoS(Quality of Service)」です。
QoSは直訳すると「サービスの品質」を意味します。ITや通信においては、ネットワーク上のサービスを安定して使えるように、データを伝送する順番や帯域を調整する技術のことを指します。ストレスのないネットワーク環境が求められる現代で、Webアプリケーションを快適に使用するために欠かせない重要な技術です。
本コラムではQoSの基礎知識と、QoSを実現させる代表的な2つの手法や基本モデルなどを解説します。
このコラムを読んで分かること
- QoSの基礎知識と実現させるための「優先制御」と「帯域制御」について
- QoSの基本的な3つのモデルについて
【目次】
- QoSとは?ネットワーク上の意味を解説
- QoSを実現させる代表的な2つの手法
- QoSの基本的なモデル
- 自宅のWi-FiでもQoS設定はできる?
- まとめ
QoSとは?ネットワーク上の意味を解説
通信における「QoS(Quality of Service)」とは、ネットワーク機器が行うデータの伝送を制御し、重要なデータの通信に遅延を発生させない技術のことです。
近年はネットワーク上を流れるトラフィック(信号やデータなどの情報)の量が増加しており、音声遅延やアクセス集中などがIT活用における大きな課題となっています。
特にリアルタイム性が重要なWeb会議などでは、遅延によって多大な影響を受ける可能性が高いと考えられます。そんな時、アプリケーションなどの通信を快適に行うために使うのが、データの伝送を制御する技術であるQoSです。
では、QoSはどのような通信に適応しているのでしょうか。
音声トラフィックが発生するネットワーク通信
音声トラフィックとは、テレビ会議やIP電話などの音声通信時にやり取りする情報のことです。音声トラフィックには下記の特徴があります。
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FTPトラフィックが発生するネットワーク通信
FTPトラフィックとは、サーバーとクライアントの間でファイル転送を行う際に発生する情報のことです。FTP通信には下記の特徴があります。
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QoSの仕組み
ネットワークを通して通信を行うとき、通信データは一括で伝送されるわけではありません。大きいデータをそのまま送るのではなく、細かく分割(パケット)して、ネットワーク機器のキュー(記憶領域)に一時的に格納後、パケットごとに伝送されます。
ネットワーク機器のキューは基本「先入れ先出し型」の構造であり、通常はデータが格納された順番に伝送することが特徴です。つまり後から格納されたデータは、伝送の順番を待たなければなりません。
一方、QoSはデータをキューへと格納する方法や、データをキューから取り出す順番・量を制御する仕組みになっています。QoSの制御は、主に下記の流れで行われます。
(1)クラス分け データに含まれる情報を基に、受信したデータを分類する |
↓
(2)マーキング データに含まれる情報を基に、データに優先度を割り当てる |
↓
(3)キューイング データの優先度に応じて、データを対応するキューへと格納する |
↓
(4)スケジューリング 複数あるキューの優先度や帯域幅に従って、伝送の順番を決定する |
QoS適用・未適用の違い
QoSを適用した場合と未適用の場合では、それぞれどのような違いがあるのでしょうか。
ネットワーク上に音声トラフィックとFTPトラフィックが混在するケースで、QoS適用・未適用の違いを見てみましょう。
【QoSが未適用の場合】
QoSが未適用の場合は、FTPトラフィックが多くの帯域幅を使用しており、FTPトラフィックと音声トラフィックの大量のデータがネットワーク上で混在しています。そして、FTPトラフィックが優先されているのがわかります。一方、音声トラフィックの伝送は遅れてしまい、テレビ会議やIP電話は映像・音声の遅延により、正常な音声通話ができません。
【QoSを適用した場合】
QoSを用いて音声トラフィックを優先するように適用した場合は、FTPトラフィックと音声トラフィックの大量のデータがネットワーク上で混在しても、音声トラフィックが優先的に伝送されます。テレビ会議やIP電話の映像・音声に遅延が少なくなり、快適に音声通話が行えます。
FTPトラフィックの伝送は後回しになるものの、データのやり取りに多少の遅延が発生するのみであり、大きな影響はありません。
QoSを実現させる代表的な2つの手法
QoSを実現させるためには、ネットワーク機器に搭載されているQoS機能の設定が必要です。ネットワーク機器のQoS機能は製造元によって手法に違いがありますが、代表的なQoS機能の手法は「優先制御」「帯域制御」の2つです。
ここからは、QoSを実現させる代表的な手法の「優先制御」「帯域制御」について解説します。
優先制御
「優先制御」とは、優先度が高い順にデータを伝送する制御手法のことです。データの優先度は、QoSのマーキング・キューイング時に割り当てられます。
QoSの優先制御は、優先度が高いデータを早く伝送できることがメリットです。ネットワーク上に混在するデータを優先度が高い・低いで分けて、重要なアプリケーションの通信を安定させることができます。
帯域制御
「帯域制御」とは、特定の通信が利用する帯域幅を指定する制御手法のことです。帯域制御の具体的な手法には、「帯域保証」「帯域制限」の2つが存在し、それぞれ下記の通りに帯域幅を指定します。
帯域保証 | 帯域幅の下限値を指定する |
---|---|
帯域制限 | 帯域幅の上限値を指定する |
帯域保証は、遅延を避けたい重要な通信に対して設定します。対して帯域制限は、帯域幅の占有を避けたい通信に対して使用する手法です。
~ちょこっとメモ:「シェービング」と「ポリシング」~
帯域制限で上限値を超過したトラフィックのデータについては、「シェービング」と「ポリシング」の処理方法が存在します。
● シェービングとは
超過したデータをバッファに蓄積して、順番に伝送する処理方法です。データの遅延は発生しやすいものの、データのロスを抑えられます。
● ポリシングとは
超過したデータを破棄する処理方法です。超過したデータを伝送する必要がないため、遅延の発生を防げます。ただし、データのロスが発生しやすいことはデメリットです。
QoSの基本的なモデル
ネットワーク機器に適用するQoSの基本的なモデルは、下記の3つが挙げられます。
モデルの名称 | 概要 |
---|---|
IntServ (Integrated Services) |
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DiffServ (Differentiated Services) |
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Best Effort |
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3つのモデルの中では、DiffServがもっとも一般的なモデルです。QoSを設定するときは、DiffServのモデルを念頭におくとよいでしょう。
自宅のWi-FiでもQoS設定はできる?
QoS設定に対応しているWi-Fiルーターである必要はありますが、自宅のWi-FiでもQoS設定を行うことが可能です。自宅のWi-FiでQoS設定を行うべきシーンをいくつかご紹介します。
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QoSの設定方法によっては、かえって遅延が発生しやすくなる場合もあります。Wi-FiのQoS設定をすでに行なっているものの、うまく適用されていないと感じたときは、QoS設定の見直しもおすすめです。
まとめ
ここまで、QoSの基礎知識と、QoSを実現させる代表的な2つの手法や基本モデルなどについて解説してきました。改めて、今回のポイントをまとめます。
<このコラムのPOINT>
- QoSはデータを伝送する順番や量を調整する技術である
- QoSを適用すると、重要なデータを遅延させずに伝送できる
- QoSの手法には優先制御と帯域制御があり、優先制御のモデルであるDiffServが一般的に採用されている
新型コロナ感染拡大以降、テレワークを導入した企業も多く、トラフィック量が増加傾向にあります。業務におけるコミュニケーション遅延が発生しないよう、通信の品質を保つことは重要になっています。そういった意味でも、QoSは今まで以上に注目されている技術ではないでしょうか。
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