人間関係や仕事を円滑に進めるための重要なスキル「質問力」とは?

仕事をしていくうえでは、さまざまなスキルが求められますが、なかでもコミュニケーション力は、人間関係や仕事を円滑に進めるための重要なスキルです。その一要素である「質問」は、クライアントとの商談時や部下の育成などの場で必ずと言ってよいほど使われます。そこで今回は、「質問力」にフォーカスしてみましょう。

「質問」の種類

「質問」の定義は、「分からないことや疑問点などを尋ね、説明を求めること。また、その内容」。つまり、質問とは人との関係を深めたい時などに役立つコミュニケーションの一要素です。さまざまなシーンでの活用が可能なため、目的別にどんな種類があるのかみていきましょう。

◆話の始まりやきっかけを作る

「最近の調子はいかがですか?」(英語の「How are you?」にあたる)など

◆自分の疑問を解消

「◯◯は、いついただけますか?」など

◆相手に自分の意見を考えさせる

「△△について、どう思いますか?」など

◆相手に問い詰める

「このミスは、どうして起こったのですか?」など

◆相手の知識や理解度を試す

「今の仕事において重要なポイントはどんなところですか?」

◆相手に命令として強制する

「明日提出してくれますよね?」

会話の主題や相手によって内容や言い回しは多種多様ですが、目的を明確にすることで、どのタイプの「質問」がその場に適切か分かりやすくなります。

「質問」をするための準備

質問をしたならば、「答え」を得たいものです。しかし、誰もが快く答え、こちらが望んだ回答をしてくれるとは限りません。そのため、相手が答えやすいように事前に準備しておくことも、質問力には欠かせないといえるでしょう。
それには、最終的に相手とどのような状況や状態にしたいかといった「理想の光景」を決めておくとベターです。つまり、このコミュニケーションタイムのゴール(最終到着地点)を決めておくのです。
例えば、商談時なら、「商談を成立させ、お互いにハッピーになった状態」、「クライアントと親しくなった状態」などが挙げられるでしょう。また、部下のミスに関して質問をするなら、「部下がきちんと反省し、再びやる気が出た状態」などが考えられます。次に、その理想の光景に近づくために質問する相手の視点や現状を掴み、どのような質問が効果的かを検討しておきましょう。もし、次回の訪問で「商談を成立させ、お互いにハッピーになった状態」という理想の光景があるとしたら、自社の製品やサービスがどのように先方に役立ち、気に入ってもらえるかを説明するだけではなく、先方が自ら答えを見つけ出せるような質問をしてみましょう。質問に答えるというプロセスを経ることで、先方も自分自身が決めて購入したというスタンスになり、お互い気持ちよく商談がまとまるでしょう。

「質問」をする時のポイント

では、実際のコミュニケーションタイムにおいて、質問をするときに注意したいポイントもみてみましょう。

相手に興味を持つ

人は、自分に興味を持ってくれていると感じると話しやすくなるものです。コミュニケーション時には相手の方に体ごと向け、「なるほど」「そうですか」などと相づちを打ったり、うなずいたりなど、話に興味を持って聞いている姿勢を示すことが重要です。そして、相手の話を聞き終えて、一呼吸おいてから質問をします。「話が終わらないうちに質問を切り出してしまう場合」というのは、質問をする人自身の意識が「あの質問をしよう」ということに向けられているため、相手の話に集中していない状態だと言えます。こうした意識は、相手に見抜かれていることもあるので注意しましょう。

相手の話をしっかり聞く

話をきちんと聞くと、相手の気持ちや意見などを理解でき、質問するタイミングやポイントが見えてきます。また、相手の感情なども知ることができるため、真に相手を理解できるともいえます。すると、あらかじめ想定していた質問にはない新たな展開にも、瞬時に適切な受け答えや対応が可能となり、コミュニケーションの発展にもつながります。

相手から適切な答えを得るために、またお互いにとって有意義なコミュニケーションタイムになるよう、これらの点に心がけてみてください。

基本となる「質問」の方法

ここでは、基本となる質問の方法を見ていきましょう。

【1】5W2H

全ての基本といってもよい5W2H(When:いつ/Where:どこで/Who:誰が/What:何を/Why:なぜ/How:どのように/How many・How Much:どれくらい・いくら)。
会話を広げる、情報を整理する時にたいへん便利です。質問の骨組みとして活用すると簡潔明瞭な質問ができるでしょう。

【2】クローズドクエスチョン/オープンクエスチョン

クローズドクエスチョンは、「はい」または「いいえ」と二者択一の回答を求める時に使用します。相手の意思をハッキリと確認したい場合に有効です。また、初対面の方に質問する状況などでも、相手が答えやすいため利用しやすいです。
オープンクエスチョンは、相手のニーズや情報を引き出したい時に使用します。この場合には「5W2H」を活用しましょう。例えば、「あなたの目標は何ですか」「どのようにこの問題に取り組んでいますか」というようにです。

【3】相手の本音を聴くための質問

本音を引き出したい時は、アドバイスを求める質問をしてみましょう。「あなたならどう思いますか」と相手の考えを問うことで、意外な本音を聞くことができます。

状況別「質問」のポイント

ビジネスにおいて質問するシーンは多種多様です。そこで、商談時と部下の育成時を取り上げ、ポイントをご紹介します。前提として、質問は投げかけ続けず「一問一答」を心がけましょう。

商談時

どんな状況でも製品やサービスを売りたい気持ちを抑え、お客様とのコミュニケーションを確立していくことが大切です。相手の立場に立って質問をすると先方が話しやすくなります。

相手のことを知るための質問や、相手の立場に立って考え、質問をする

いきなり自分本位の質問をせず答えやすい質問から始め、徐々に具体的な情報を引き出すような質問へとシフトしてみてください。

真のニーズを引き出す質問をするとともに、ここぞというチャンスでは徹底的に掘り下げる質問をする

例えば「Aという製品が欲しい」とお客様から言われた場合、製品の説明だけで終わらず「なぜその商品を必要としているのだろう」と考え、「A製品に興味を持っていただけた理由」を質問してみましょう。「御社の課題は何ですか」と直球に問うよりも素直に答えてくれる人が多いため、真のニーズや課題を引き出すことができるでしょう。
また、お客様が抱えている課題を話したいという機会はそう多くはありません。本音を話してくれていると感じた時には、掘り下げた質問をしてみましょう。お客様自身も気づいていなかった課題が見えてくるかもしれません。

製品を使用している光景やメリットを想像させるような質問をする

あるべき姿や理想となる姿を想像できるような質問をしてみましょう。人は論理だけを伝えてもなかなか動きません。お客様の「欲しい」という感情を揺さぶり、共感してもらうことが購入への最後のひと押しとなるでしょう。

部下の育成時

部下のやる気を育て、自ら動くことができるよう成長させるためには、どのような質問をしたら良いでしょうか。具体的に見ていきましょう。

目的を明確にした質問をする

例えば、「頼んである資料はどうなっている」では「まだ終わっていません」という回答しか得られないかもしれません。回答として何を得たいかを考え、「頼んである資料だが、完成まであと何日かかるか」「資料作成で困っている点はないか」などと質問しましょう。

部下のためになる質問をする

たとえ部下がミスをした場合だとしても叱責や追求をする質問を投げかけるのではなく、「本人の成長に繋がるのか」と自らに問いかけ、質問をしてみてください。このような場合には、部下がリラックスして考えや気持ちを話せるよう心がけ、「なぜ」という詰問口調は避けましょう。

自分の問題点、改善ポイントを自ら見つけだせる質問をする

問題点を引き出す方法の1つめは、「上司:原因は何だと思うか」「部下:Aだと思います」「上司:では、Aを引き起こした原因は何だと思うか」と掘り下げていく方法。もう1つは、Aだと思うと部下が答えた後に「他にも原因はあるか」と問いかける方法です。
両方を組み合わせることで、部下自らが全体像を探っていくことができます。また、「これからどうしていきたいか」と尋ねることで、問題解決への意欲も引き出すことができるでしょう。

まとめ

質問力を高めることはビジネスシーンで結果を出すだけでなく、良好な人間関係を築くことにも繋がるでしょう。方法やテクニックだけにとらわれず、「相手とのよい時間を持つ」ことを意識して、適切な質問を心がけてみてください。

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