介護記録を効率化してより良い介護ケアを。現役介護職が書き方のポイントを紹介

介護記録の効率化が多くの介護現場で課題となっています。「介護業務が忙しくて記録をする時間がない」「書き方が決まってないため文章を考えるのに時間がかかる」などの課題があり、時間外業務も増える一方です。前述のような悩みを持つ介護リーダーや管理職の方も多いでしょう。
本コラムでは、介護経験16年・リーダーや管理職などのマネジメント経験もある筆者が、介護記録を書くときのポイントや効率化するための具体的な対策を解説していきます。

介護記録を書くときのポイントとは?

まずは介護記録を書くときのポイントを整理していきましょう。
今から紹介する5つを意識するだけでも、介護記録の効率化につながります。

(1)5W1Hを意識する

1つ目は、5W1Hを意識することです。
5W1Hとは?

  • When(いつ)
  • Where(どこで)
  • Who(誰が)
  • What(何を)
  • Why(なぜ)
  • How(どのように)

上記に当てはめて記録するだけでも、伝わりやすくまとまった文章になります。

特に事故報告書を書く際は、5W1Hがハッキリしてないと原因の追求や対策の検討に影響します。また「誰が」という点が曖昧になることが多いため、主語が何かをハッキリさせることが大切です。

(2)曖昧な表現は避ける

2つ目は、曖昧な表現は避けることです。
例えば「Aさんはトイレに行きベッドに戻ったが、少し経つとまたトイレに行かれた」という内容だと、具体的な時間が分かりません。

この場合は「Aさんは夜中1時にトイレに行きその後ベッドに戻ったが、15分ほどすると再びトイレに行かれた」と具体的な数字で記録すると、見ている人に伝わりやすくなります。

(3)客観的事実を書く

3つ目は、客観的事実を書くことです。
介護記録の目的は、事実をありのままに伝えることです。そのため、職員の感想や憶測を含むことは適していません。あくまであったことを情報として共有することが重要です。

現場でよくある内容が「Bさんは喜んで体操を元気よくされていた」という内容です。この場合、「喜んで」「元気よく」などは職員の主観であり、本当は嫌がっていた可能性も考えられます。
例としては「穏やかな表情で自ら体を動かし体操をされていた」などがいいでしょう。職員が感じたことではなく、実際に見た客観的事実を記録することが大切です。

また客観的事実を書くことで、介護サービスを提供した証拠にもなります。万が一事故やトラブルなどで訴訟問題に発展した場合でも、確実にありのままの事実が書かれていれば、施設や職員を守ることにもつながります。

(4)「〜だ・である調」で書く

4つ目は「〜だ・である調」で文末を統一することです。
「です・ます調」でも間違いではありませんが、介護記録は公的文書となるため「〜だ・である調」が望ましいと言えます。
文章をコンパクトにするためにも「です・ます調」は避けたほうがいいでしょう。

例えば「トイレに行かれました」より「トイレに行かれた」のほうが、わずかですが短くなります。
どうしても丁寧に書こうと思うあまり「です・ます調」を使いがちですが、介護記録の場合は不適切であると理解することが重要です。

(5)簡潔に書く

5つ目は、できるだけ簡潔に書くことです。
具体的には5W1Hを活用し、まずは「誰が何をしたのか」という結論を最初に記録しましょう。その後、理由や例文を付け加えることで簡潔で伝わりやすい文章になります。

ここではPREP法という記録方法をお伝えします。
PREP法とは?

  • P:Point(結論)
  • R:Reason(理由)
  • E:Example(例)
  • P:Point(結論)

以上の順番で記録する方法です。

例えば「Aさんは朝食を全量食べた。なぜなら本人の好きなパンとハムだったから。パンは焼かずに柔らかいまま食べるのが好きで、コーヒーとともに「美味しいね」と言いながら召し上がった。」といった内容です。
すべての介護記録に当てはめる必要はありませんが、参考として覚えておくと良いでしょう。

介護記録が効率化されない現場の実情を紹介

筆者はこれまで8つの介護施設で働き、現場のリーダー職も経験してきました。その中で、介護記録が効率化されている施設は多くありませんでした。
最も多かった問題は、業務時間内で記録ができないため、現場の介護業務が終わってから記録している現状です。その上残業代の支給のない、いわゆるサービス残業で対応することも多くありました。

中にはいまだに手書きで記録している施設があり、時間がなく焦るせいか書いた本人が読めないほど字が雑だったという驚きの事例もありました。

以上のような経験から、多くの介護施設では介護記録の効率化が必要である現状が見えてきました。

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介護記録のNG例をケース別に紹介

続いては実際にあった介護記録のNG例を、ケース別に紹介していきます。
前述で解説した介護記録を書くときのポイントと照らし合わせながら見ると、より不適切であることが分かります。
ぜひ今後の介護記録に活かしてみてください。

食事の場面での介護記録NG例

  • NG例
    Aさんは「いらない」と言われ食事を中止した。
  • 改善策
    食事の記録は、ご利用者のその後の体調変化やADL(日常生活動作)の状況を見るときに重要になります。そのため、食事中の具体的様子や詳しい食事量の記録が必要です。

    自分で食べたのか、主食は何割で副食は何割食べたのか、水分はどれくらい飲んだのかなど、食事の様子と結果が分かるような内容が好ましいでしょう。

排泄の場面での介護記録NG例

  • NG例
    Bさんはお腹が痛いと言われトイレに行くと排便された。
  • 改善策
    排泄も食事同様に、ご利用者の健康状態を把握する重要なバロメーターです。そのため、ただ排便があったという記録ではなく、排便がどういった状態でどのくらいの量であったかを記録することが大切です。

    また、トイレでの動作は自分でどこまでできたのかも、ほかの職員が介助する上で参考になるので、確認できた場合は残すようにしましょう。

入浴の場面での介護記録NG例

  • NG例
    Cさんは入浴され満足された様子だった。
  • 改善策
    入浴時の介護記録のポイントは、着替えや洗身洗髪、浴槽に入るときの動作、入浴時の様子を具体的に記録することが大切です。例えば、頭と背中以外はご自分で洗った、浴槽に入る際は職員が手を持って支えたなど、実際にあったことをそのまま記録しましょう。

    介護記録の基本は、ありのままを客観的に書くことです。

移動の場面での介護記録NG例

  • NG例
    Dさんは車椅子を使ってご自分の部屋に戻られた。
  • 改善策
    移動時は何を使いどのように移動したか分かる内容にしましょう。上記の場合は、車椅子を使ったことは分かりますが、自分で操作したのか職員が介助したのかまでは分かりません。
    「Dさんはご自分で車椅子を操作しお部屋に戻られた。その際、手すりを使って上手く移動していた。」といった内容にすると分かりやすくなります。

レクリエーションの場面での介護記録NG例

  • NG例
    レクリエーションに参加し体操をしていた。
  • 改善策
    レクリエーション参加時の記録は、その方の趣味や嗜好を判断する上で役立ちます。ただレクリエーションに参加しただけでなく、どんなレクリエーションに対してどのような反応であったかを情報共有しましょう。

    また毎回のように寝ているようなら、記録に残すことでレクリエーションには参加せず、お部屋で休むなど支援の方法を効果的に変えることにつながります。

介護記録は効率化するべき!そのメリットとは?

介護記録の効率化は急務の課題と言えるでしょう。なぜなら、多くの介護現場は慢性的な人手不足であり、今以上の業務負担が増えることはマイナスでしかないからです。
ここでは、介護記録を効率化することによるメリットを5つ紹介していきます。

(1)情報共有がスムーズになる

1つ目のメリットは、情報共有がスムーズになることです。
私がリーダーをしていた施設では、書き方がバラバラで記録から誰が書いた文章か分かるくらいでした。職員によっては主観的な感想も多く含まれており、申し送りの際に要点が分かりにくい状況でした。

書き方をテンプレート化するなどして、情報にバラツキをなくし効率化することで、スムーズな情報共有につながるでしょう。

(2)介護記録に苦手意識が減る

2つ目は、介護記録に対する苦手意識が減ることです。
書く内容は頭に浮かんでいても文章にするのが苦手な職員は一定数います。(パソコンの操作が苦手な場合も含みます。)
介護業務をしているときはイキイキしている職員も、記録業務の時は憂鬱な顔でしている姿をよく見かけました。

定期的な介護記録の勉強会や、記録をする場所に例文を添えておくなどの工夫で、少しでも介護記録への苦手意識を減らす取り組みが必要と言えるでしょう。

(3)ご利用者とかかわる時間を増やせる

3つ目は、ご利用者とかかわる時間が増えることです。
介護記録は記録するだけでなく、文章の構成を考える必要があり多くの時間を必要とします。

ICT化の普及により介護記録のシステムを使うことで、記録業務を簡素化するなどの工夫が有効と言えます。私の働く施設でも独自の記録システムを導入後、iPadやiPhoneを利用し、こまめに記録できる環境ができたことで、介護記録を効率化できました。
そのおかげで、職員はご利用者と談笑しながら記録できるようになったことも、効率化の要因と言えるでしょう。

(4)残業の削減につながる

4つ目は、残業の削減です。
前述したとおり介護現場は忙しく、残業をしないと介護記録が書けない場合もあります。また、自主的に残って対応することもあり、残業代の支給がないこともあります。いわゆるサービス残業で対応しているのが現状です。
中には夜勤明けで、毎回のように1時間ほど記録をしている職員もいました。長時間勤務により疲れた状態で介護記録を書くことは、効率的とは言い難い状況です。

介護記録の効率化により業務時間内で対応することで、残業の削減はもちろん、職員の心身のストレスや疲労軽減も期待できるでしょう。

(5)業務全体の効率化になる

最後5つ目は、介護記録以外の業務の効率化にもつながることです。
例えば、介護記録の時間が短縮されることでほかの業務に充てる時間が増えます。また記録の効率化が内容の適正化にもつながり、情報共有がスムーズになるでしょう。

時間短縮や記録の適正化、職員の負担軽減による相乗効果で、職場全体の雰囲気が良くなることも期待できます。
実際に記録に対して苦手意識を持っていた職員が、記録の効率化により伸び伸びと仕事するようになった事例もあります。
介護記録の効率化は記録業務以外にも、介護現場に多くのメリットをもたらしてくれるでしょう。

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まとめ

今回は介護記録を書くときのポイントと、記録の効率化によるメリットを解説しました。
介護記録を書くときのポイントは以下の5つです。

  • 5W1Hを意識する
  • 曖昧な表現は避ける
  • 客観的事実を書く
  • 「〜だ・〜である」調で書く
  • 簡潔に書く

介護記録を効率化するメリットは以下の5つです。

  • 情報共有がスムーズになる
  • 介護記録に対する苦手意識が減る
  • ご利用者とかかわる時間を増やせる
  • 残業の削減につながる
  • 業務全体の効率化になる

介護記録の効率化は、職員の意識を変えるだけでは難しいのが現状です。解決方法の一つとして「介護AI入力予測ツール 記録NAVI(ナビ)」のようなツールを導入することもおすすめです。
「介護AI入力予測ツール 記録NAVI」では、簡単な操作でカテゴリーから記録内容を選ぶことができ、文例が表示されるため悩む時間を減らし効率化につながります。
このように、記録の方法を根本的に変えることが効果的な改善策と言えるでしょう。

著者プロフィール

津島 武志
介護系WEBライター

経歴・ご紹介:介護業界16年目の現役介護職。介護リーダーや管理職の経験もあり、現在は地方法人のグループホームに勤務。現役の介護職以外に、介護系のWEBメディアでライターとして活動したり、介護士さんを応援するメディア(介護士さんの働き方改革)の運営や、SNS(@otake_kaigo)で介護職の働き方について情報発信しています。主な保有資格は、介護福祉士、介護支援専門員、社会福祉士など。

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