利用者・スタッフ・介護施設、三方良しの介護ロボット。誤解を解けば、生産性が上がる。

介護業界は厳しい人材不足という課題に直面しています。この課題を解決する一つの手段として、介護ロボットの活用が注目されています。しかし、介護ロボットの導入率は現状低い状況です。
本コラムではその原因と解決策を解説し、介護ロボット導入を推進するための具体的な方法を提案します。

介護ロボット導入の現状とその背景

介護ロボットの導入は、厚生労働省の補助金などの施策により緩やかに進んでいます。一方で、導入に積極的ではない施設がまだまだ多くあります。

第26回(2023年2月27日)社会保障審議会介護給付費分科会での配布資料「介護現場でのテクノロジー活用に関する調査研究事業(結果概要)」によると、介護ロボットの導入状況で10%を超えた回答項目は

  • 見守り支援機器(30.0%)
  • 入浴支援機器(11.1%)
  • 介護業務支援機器(10.2%)

の3つで、いずれも「入所・泊まり・居住系」の介護施設・事業所でした。

この調査結果では、介護ロボットを導入する介護施設・事業所は全体の半数以下とされており、介護ロボットの導入が未だに進んでいない状況が推察できます。

介護ロボットの導入が進まない背景として、公益財団法人介護労働安定センターが実施した「令和2年度 介護労働実態調査」内の「介護ロボットの導入や利用についての課題・問題」によると、施設系(入所型)における主な回答結果は以下のとおりとなりました。

  • 導入コストが高い(77.3%)
  • 技術的に使いこなせるか心配である(42.8%)
  • 誤作動の不安がある(37.4%)
  • 設備や保管等に場所をとられてしまう(33.7%)
  • 清掃や消耗品管理などの維持管理が大変である(32.4%)
  • 投資に見合うだけの効果がない(事業規模から考えて必要ない)(29.6%)
  • ケアに介護ロボットを活用することに違和感を覚える(24.1%)
  • どのような介護ロボットやICT機器・介護ソフトがあるかわからない(21.1%)
  • 介護現場の実態に適う介護ロボットやICT機器がない、現場の役に立つものがない(19.9%)

複数回答可能
[出典:公益財団法人 介護労働安定センター「令和2年度 介護労働実態調査」介護ロボットの導入や利用についての課題・問題(一部加工)]

経営的な目線では導入・管理コストが上位の課題とされているなかで、介護現場ではコスト面に加え、技術的な問題や誤作動に対する不安の声が挙がっていると考えられます。

実際、筆者の現場経験においても「自分が利用者に不利益を与えたり、覚えが悪いから同僚に迷惑をかけたりしそうで不安」というスタッフの声をよく耳にしていました。

人間の代わりではなく補完する存在としての介護ロボット

上記の調査結果でも伝えられているとおり、介護ロボットの導入には様々な意見があります。

そこで、まずは介護ロボットの役割を整理しましょう。介護現場でロボットが大きく力を発揮する場面は「人間が繰り返し行う作業や重労働」や「見守り等の補完」など、介護業務のサポートとして利用される場合です。

介護ロボットの業務サポートにより、介護スタッフは利用者に向けて“より人間らしいケア”を提供する時間を確保できます。人間が担うべき利用者の「心」のケアと、ロボットが担う「身体」のケアを適切に分担することで、提供するサービスの質を保ちつつ、業務の効率化を図ることができます。

つまり、介護ロボットは“人間の代わり”ではなく、“人間を補完する存在”であるという認識が重要です。

スタッフ・利用者・施設にもたらす良い効果

ここからは、介護ロボットがもたらす効果を「スタッフ」「利用者」「施設」それぞれの観点から深掘りします。

スタッフへの影響

介護ロボットは一定以上の体力を要する作業や単純作業に役立ち、業務負担を軽減させます。介護スタッフは、肉体的・精神的な負担を減らすことができるだけでなく、時間的な余裕も生まれます。

先に紹介した厚生労働省による「介護現場でのテクノロジー活用に関する調査研究事業(結果概要)」調査からも、見守り支援機器導入時に感じられた効果として「職員の精神的・肉体的負担軽減(69.7%)」「業務の効率化(57.2%)」が上位に挙げられることからも、介護ロボットの導入効果は期待できると考えられるでしょう。

精神的・肉体的な負担が軽減すれば余裕がうまれ、スキルアップ研修への参加や、利用者との関係を深める時間(“心”の時間)を持つことも可能になります。

利用者への影響

介護ロボットの導入は、利用者にとっても大きなメリットがあります。例えば、リフト型の介護ロボットを使用すれば、移動支援がスムーズになり利用者の自立を支援します。

また、ロボットは常に一定の品質のサービスを提供でき、介護スタッフが利用者と向き合える時間の余裕を確保することでサービスの質が向上し、利用者は安心してサービスを受けられます。

先述した、厚生労働省「介護現場でのテクノロジー活用に関する調査研究事業(結果概要)」調査でも、見守り支援機器導入時に感じられた効果として「ヒヤリハット・介護事故の防止(66.2%)」「ケアの質の向上(45.6%)」が上位に回答されています。

施設への影響

介護ロボットの導入は、施設運営にも好影響をもたらします。スタッフの業務負担軽減は離職率を低下させ、人手不足の解決により職場環境の改善を実現できます。

施設全体のサービス品質や働きやすさの向上は施設の評価を高め、信頼性の向上にもつながります。新たな技術の導入により「施設が先進的」というイメージを打ち出せれば、新たな利用者の獲得にも寄与することでしょう。広告効果や採用費の軽減など、利益貢献につながる可能性も大いにあるといえます。

介護ロボット導入の代表的な課題

導入するメリットが少なくない介護ロボットですが、課題も少なくありません。ここでは、介護ロボット導入の代表的な課題や、課題を解消するためのアプローチについても考察します。

「ロボットの導入はコストがかかりすぎる」

公益財団法人介護労働安定センター実施の「令和2年度 介護労働実態調査」では、介護ロボットの導入に向けた課題として「導入コストが高い」という回答が最も多くなりました。

調査結果が示すように、介護ロボットの初期導入費用は高いと感じるかもしれません。そこで、介護ロボットの価値を長期的な視点で評価することをおすすめします。

先にも触れたとおり、ロボット導入の効果には「スタッフの離職率低下」「作業効率およびサービスの質の向上」「宣伝効果」などが挙げられ、長期的な視野に立てば導入費用を上回る経済効果を期待できます。

導入時には、国や地方自治体による補助金制度を利用することにより、初期投資を軽減することも可能です。補助金と長期的な効果を総合的に見ると、決してコストがかかりすぎるとは言えないのではないでしょうか。

介護ロボットの導入費用の助成制度をはじめ、導入後の運用費をサポートする制度など、利用できる補助金は多岐にわたります。補助金制度に関する詳細は、管轄の公的機関にお問い合わせください。

「ロボットは複雑で使いにくい」

新たな取り組みや技術的な課題を前に「ロボットは複雑で使いにくい」と、現場のスタッフからネガティブな声が出ることは、当然のことかもしれません。

しかし、多くの介護ロボットは直感的な操作が可能です。導入時に研修を受け、徐々に慣れていけば簡単に操作できるようになります。

例えば、スマートフォンが普及する過程でも、当初は「難しそう」と敬遠されていました。理解が深まり、心理的なハードルが下がることで利用者が増え、今では生活に欠かせないアイテムとして手放せなくなりました。

介護ロボットの導入を検討する際は、事前にスタッフの理解を深めていくことがポイントといえます。

「ロボットは冷たく、温もりがない」

介護ロボットは、人間が繰り返し行う作業や重労働、見守りなどの補完として利用される場合に大きな力を発揮します。

「物理的な支援」はロボットが提供し、「心のケア」は人間が担当する、という役割分担のもとで、介護スタッフが利用者とのコミュニケーションに多くの時間を割くことを可能にします。

ロボットは“冷たい存在”ではなく、むしろ「温もりある介護」を実現するためのツールとして認識し、理解を深めることが導入時の課題を解消する一歩となります。

介護ロボット導入の推進方法と現場での活用

介護ロボット導入の検討に役立つよう、ここからは実際の機器を例に挙げながら、介護ロボットの導入を進める流れや現場での活用ポイントを解説します。

現場業務に役立つ介護ロボットを紹介

介護ロボットを活用している施設・事業所では、「見守り機能」の役割をもつロボットが多く導入されています。ここでは、見守り機能を持つ介護ロボットを3つご紹介します。

Neos+Care(ネオスケア)

Neos+Care(ネオスケア)」の特長は、従来の見守りカメラとは異なり、三次元電子マットを用いることで実現した、極めて精度の高い“次世代予測型見守りシステム”であることです。

高性能のカメラが利用者の危険な動きを検知し、転倒・転落事故の防止に役立ちます。

▼製品情報詳細はこちら:次世代予測型見守りシステム Neos+Care(ネオスケア)

kizkia-Knight(きづきあ-ないと)

kizkia-Knight(きづきあ-ないと)」の特長は、映像解析ソリューション「kizkia」とサーマルダイオード赤外線センサ「MelDIR(メルダー) 」の連携・AI解析による、リアルタイムの見守りです。

居室だけではなくトイレにも設置でき、スマートフォンなどとの連携により常時遠隔での見守りが可能です。映像をAIでリアルタイムに解析することにより、滞在時間が想定時間より長くなった場合や転倒などの事象が発生した際に通知します。

映像はリアル映像モードとプライバシーモードに切り替え可能で、利用者のプライバシーにも配慮しながら、質の高いケアの実現を支援します。

▼製品情報詳細はこちら:AI×見守りサービス kizkia-Knight(きづきあ-ないと)

aams(アアムス)

マット型の見守り支援介護ロボット「aams(アアムス)」は、マットレスの下に敷くだけで、心拍・呼吸・体温・離着床・睡眠の状態をリアルタイムで検知します。

そのため、離床や心拍・呼吸の異常、体動の有無などを確認でき、異変があった際にはいち早く駆けつけることが可能です。

▼製品情報詳細はこちら:見守り介護ロボット aams(アアムス)

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いずれの機器にも共通する特長は、スタッフが利用者の居室を訪れて確認する機会を大幅に削減できることです。

その結果、優先度の高い作業に専念することができ、作業効率の向上および負担の軽減、サービスの質向上を実現します。

体験会の開催

現場での作業に役立つ介護ロボットですが、機能や特長をパンフレットや口頭で伝えても、スタッフが現場で活用できる実感を持つことは難しいものです。

介護ロボットの導入を検討されている際には現場で体験会を開き、介護ロボットの有用性を肌で感じる機会を設けましょう。

体験会によってスタッフの理解が深まり、介護ロボットへの抵抗感を減らせれば、介護ロボットを積極的に利用するイメージが高まり、導入へと一歩近づきます。

現場での活用ポイント

最後に、介護ロボットの具体的な導入方法について解説します。ポイントは「トレーニング」「タイミング」「心得」の3つです。

介護ロボットの導入時には初期トレーニングが行われます。しかし、機能を十分理解していないままに操作しているスタッフもいます。導入後も定期的にトレーニングの機会を設けることが欠かせません。

次に、ロボットを使うタイミングです。タイミングを考えずにただ導入してしまうと、むしろ作業が増える結果になり、本末転倒になる場合もあります。しっかりとワークフロー(作業工程)を書き出し、導入するロボットをどの場面で活用するのかを明確にしておくと、作業効率が高まります。

最後に心得です。本記事で繰り返しお話ししたとおり、介護ロボットの活用には「物理的な作業はロボット、心は人間」という役割分担が重要です。

ロボットの導入の目的は業務効率の向上、そしてあくまでもサービスの質の向上です。ロボットを活用しながら、利用者の心に寄り添うケアをスタッフと共に作り上げていきましょう。

まとめ

介護ロボットの導入はスタッフを支え、利用者に最適なケアを提供することで、やがて施設全体に良い影響をもたらします。

体力を必要とする作業や単純作業の軽減により、スタッフの心身に余裕が生まれれば、利用者はより質の高いケアを安心して受けることができるようになります。

そして、施設全体としては「職場環境の改善」「新たな利用者の獲得」「サービスの品質保持・向上」といった面で大きなメリットを享受します。

スタッフ・利用者・施設にとって“三方良し”のサービスを実現できる介護ロボットのメリットを踏まえて、導入を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール

梅木 駿太
合同会社Re-FREE 代表/経営パートナー/医療経営・管理学修士(MHA)

理学療法士として医療・介護の現場を経験したのち、管理職として部門運営を経験。その後、複数の介護事業所を有する医療法人の事務長として医療介護経営に従事。現在は特に50床以下の小規模病院・クリニック・介護事業所を中心に、経営支援を行っている。長期的な戦略に基づいた、実効性の高い支援内容に定評がある。

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