生き残りをかけた薬局経営とは?事例とともにご紹介!
今、薬局の経営は大きな転換期を迎えています。2022年度診療報酬改定による調剤報酬見直しや様々な制度の変更に加え、システム面では医療介護分野のICT化が整備されつつあります。
さらに、大手ドラッグストアチェーンの台頭やコロナ禍による受診控え増加といった経営環境の変化も無視できません。これら大きな変化の波を、薬局はどのように乗り越えて行けばよいのでしょうか。
本コラムでは、これからの薬局経営をスムーズに進めるうえで注目すべきポイントや薬局経営の成功事例などについて解説します。
【目次】
- 薬局経営を取り巻く環境の変化とは
- 薬局経営を見直すヒント
- これからの薬局経営に必要な姿勢とは
- 薬局経営の成功事例2選
- 薬局経営のまとめ
- おすすめ商品
薬局経営を取り巻く環境の変化とは
団塊の世代が75歳を超える2025年に向けて、近年では地域包括ケアシステムの整備が進んでおり、その一環として2016年(平成28年)に「健康サポート薬局」が始まりました。
「健康サポート薬局」とは、かかりつけ薬局機能と、市販薬や介護用品などに関する相談にも応じる健康サポート機能を併せ持っています。
健康サポート薬局の運営には「土日いずれかの営業」「相談しやすい空間づくり」などの条件が定められており、認定を得るためにはクリアすべき点も多いでしょう。しかし、薬のことだけでなく健康相談や介護用品などに関する相談にも応じてくれる「健康サポート薬局」は、患者さん獲得の機会を増やす上では有効です。そのため、今後は処方してもらった薬を受け取るだけの調剤薬局から、様々なサポートが受けられる健康サポート薬局への転換が進むことが予想されます。
また、薬局経営においては定期的に改定される制度をチェックし、どのような環境の変化が考えられるのか・制度改定によりどういった点に気を付けなければならないのかを検討することも欠かせません。
特に、2022年度診療報酬改定によるリフィル処方箋の導入は、薬局経営に大きな影響を与えることが予想されます。
リフィル処方箋は、一定期間内であれば複数回利用できる処方箋です。処方のたびに医師の診察を受ける必要がなくなるため、通院回数が減り患者さんの負担軽減に役立つだけでなく、必要なときに必要な分だけ処方できるため残薬が出にくい点がメリットです。その一方で、医師による経過観察の機会が減るため、患者さんの体調や処方箋をチェックする薬剤師の責任が大きくなるでしょう。
今後、薬局がリフィル処方箋に対応しつつ健康サポート薬局としての運営を目指す場合、対人業務の重要性が増すと予想されます。人件費や薬剤師の業務負担を減らしつつサービスの質を保つためには、ICTなどを活用した負担軽減が鍵となるでしょう。
薬局経営を見直すヒント
今後の薬局経営を成功させるためには、国を挙げて積極的に取り組まれている「地域包括ケアシステム」で求められている薬局のあり方に沿って、薬局経営ができているかどうかを確認する必要があるでしょう。
そもそも地域包括ケアシステムとは、高齢者が要介護状態となっても、住み慣れた地域で最期まで自分らしい生活を送ることができるよう、各地域の実情に沿った医療・介護を一体的に提供する体制のことです。
地域包括ケアシステムの運用に際して薬局・薬剤師に求められる主な機能は、次の通りです。
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効果的かつ安全な薬物治療を行うためには、患者さんがかかっている医療機関や服用薬などを漏れなく把握する必要があります。しかし高齢者などの場合は、処方薬が多くなりすぎて自力で管理しにくくなることもしばしばです。かかりつけ医への聞き取りやお薬手帳の電子化などを通じて過去の服薬情報を一元管理することが、薬局・薬剤師には求められています。
また、これからの薬局経営においては、在宅医療への対応も避けて通れません。
厚生労働省のデータにおける2017年の在宅医療患者数は約18万人(※)でしたが、団塊の世代が75歳を超える2025年には大きく増加する見込みです。
薬剤師が在宅医療に参加する意義は非常に大きく、安心・安全な薬物治療を確保するだけでなく、医師や介護士の負担軽減など、安全で安心なシームレスな医療提供体制の一役を担っています。
今後、在宅医療ニーズはさらに増加するでしょう。在宅訪問業務に対応できる薬局運営、薬剤師の育成が薬局経営のポイントとなっていくでしょう。
薬局の利用機会が少ない層へのPR
土日の薬局営業対応や、健康サポート薬局機能を備えるといった薬局経営の見直しによってメリットを得られる人は、地域の高齢者や在宅医療の患者さんだけではありません。例えば、仕事などで忙しい現役世代や、薬局の利用機会が少ない層が、薬局を利用する鍵となるでしょう。
しかし、「従来の処方箋を持っていって病院で処方してもらった薬を受け取るだけの場所」という薬局のイメージを払拭することが重要になりそうです。
内閣府が行った「令和2年度 薬局の利用に関する世論調査」によると、薬局・薬剤師への相談内容(複数回答可)の主な回答結果は次の通りでした。
回答結果 | 割合 |
---|---|
病院や診療所の処方薬について | 49.1% |
薬の飲み合わせについて | 45.2% |
市販薬について | 17.2% |
病気や体調について | 16.2% |
サプリメントについて | 8.6% |
薬代について | 5.5% |
食習慣について | 4.0% |
運動習慣について | 1.9% |
病院や診療所について | 1.6% |
その他 | 1.7% |
特にない | 22.1% |
この調査では、処方薬や薬の飲み合わせ以外の事柄について薬剤師に相談した人の割合は、2割以下にとどまっていることがわかります。
「病院へ行くほどではないが気になる症状がある」、「どの診療科を受診すべきかわからない」といった悩みを相談できる場として薬局が存在しているというPRが、今後の安定した薬局経営には重要と言えるでしょう。
これからの薬局経営に必要な姿勢とは
薬局再編の基本的な考え方は、「患者さん本位の医薬分業」です。これからの薬局経営においては、リフィル処方箋や健康相談に対応すべく薬剤師一人ひとりが処方薬やOTC医薬品について知識を深めることが欠かせません。また同時に、患者さんや医療従事者から「この薬局ならいつでも気軽に相談できる」と思ってもらえるようコミュニケーションスキルを磨くことも大切です。
地域包括ケアシステムにおいては、薬剤師と専門医療機関の連携を通じた高度薬学管理機能などが重視されつつあります。薬局が高度な薬学知識を活かして抗がん剤副作用のケアや抗HIV薬の選択支援などに携わることは、薬剤師のスキルアップや薬局の競争力向上を図るうえでも重要です。
薬局は地域密着型ビジネスであるため、地域の特性に合わせて経営戦略を練る必要があります。全国チェーンのドラッグストアなどとの差別化を図るためには、エリアマーケティングを通じて地域のニーズに即したサービスを提供することが重要です。また、近隣住民からの知名度を上げるために地元イベントなどを活用してもよいでしょう。
薬局経営の成功事例2選
地方の人口減少やドラッグストアの台頭、そして新型コロナウイルス感染拡大の影響などを受けて、多くの薬局が窮地に立たされています。その一方で、独自性を高める工夫やICTを駆使した業務効率化によって成功をおさめた薬局も少なくありません。
ここでは、薬剤師と医師による薬局経営の成功事例について解説します。
薬剤師の薬局経営事例
A氏の薬局では、調剤のほかにOTC・雑貨類などの販売を行っています。調剤業務にはレセコンと連動したPOSシステムを導入しており、会計・薬歴管理・服薬指導の一括管理が可能です。物販コーナーでは、小児科門前という立地や自身の育児経験を活かして育児中に使いやすいオーガニック製品を取り扱っています。患者さんにゆったり過ごしてもらえるよう待合室に木目調やグリーンを取り入れ、小さなキッズスペースも設けました。
また、処方箋受付やお薬相談などをオンライン化するためにメッセージアプリで公式アカウントを開設しました。処方箋受付専用アプリではなく広く普及しているアプリを使うことで患者さんの負担が軽減され、待ち時間の短縮や「3密」の回避などにも役立っています。
薬局の規模が小さいため当初はA氏夫妻だけでの運営も考えましたが、結局は合計3名の薬剤師と事務スタッフを採用しました。各スタッフが短時間だけ働くことでお互いの都合をすり合わせやすくなり、ICTによる業務効率化を実現したため、育児中のスタッフも無理なく働けるようになりました。
医師の薬局経営事例
医師免許と薬剤師資格を持つダブルライセンサーであるS氏は勤務医8年目で漢方医学に魅力を感じ、薬局経営者に転向しました。独立当初は今ほど在宅医療が普及しておらず、薬剤師が患者さんの体に触れることも一般的ではありませんでした。S氏はまず自社の薬剤師がスムーズに在宅医療へ対応できるよう勉強会や講習会を実施し、薬剤師のスキルアップとモチベーションアップを図りました。この試みが功を奏して徐々に新しい薬剤師が増え、店舗拡大に至りました。
店舗拡大後は全店舗で調剤・薬歴管理などのシステムを統一し、訪問先ではタブレット端末を活用して服薬指導や薬歴チェックを行っています。ある薬剤師は引っ越しのために別店舗へ異動しましたが、異動前と異動後の業務手順が同じだったため戸惑うことなく新しい環境になじむことができました。
薬局経営のまとめ
ここまで、薬局経営をスムーズに進めるうえで注目すべきポイントや、薬局経営の成功事例について解説してきました。改めて、今回のポイントをまとめます。
<このコラムのPOINT>
- 薬局再編の基本は患者さん本位の医薬分業であり、健康サポート薬局や在宅医療の普及に伴って薬剤師の対人業務が増える
- 今後の薬局経営においては、エリアマーケティングや独自サービスの提供などを通じて他店との差別化を図ることが重要
- 業務負担やコストを減らして効率化を図るためには、ICT活用が鍵となる
無駄を省いて収益を上げることは、資金繰りや安定した人員の確保、患者さんや医療機関との信頼関係の構築など、薬局経営の安定につながります。さらに業務をシステム化することで薬剤師は余裕を持って投薬に集中でき、患者さんに安心と安全、適切なアドバイスを提供できます。薬局経営の基盤をしっかりと支える仕組み作りも、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
おすすめ商品
弊社がご提供する薬品の在庫管理システム「MELSTOCK(メル・ストック)」は、発注から仕入れ、在庫管理業務を効率化するシステムです。チェーン店全体の適正在庫管理が可能なだけでなく、単店でもご利用いただけます。
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