2050年、脱炭素社会の実現に向けた取組について

2015年に開催されたパリ協定以降、脱炭素社会の実現は世界的に取り組むべき重要な課題となっています。2017年にはアメリカのドナルド・トランプ元大統領がパリ協定からの脱退を表明しましたが、その後2021年1月になってジョー・バイデン新大統領が政策を転換し、復帰に署名。日本においても2020年10月に菅総理大臣が「2050年までに日本での脱炭素社会実現」を所信に掲げるなど、注目を集めています。また、日本では「2050年カーボンニュートラル」への挑戦に向けて、昨年末に「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が策定されました。
そこでこのコラムでは、脱炭素社会の実現に向けた取組内容や、製造業に及ぶと考えられる影響、また、今後企業として生き残るための取組などについて、詳しく解説します。

このコラムを読んで分かること

  • 国際的な「脱炭素社会実現」への取組概要
  • 日本で2020年末に策定された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」について
  • 脱炭素社会実現による製造業への影響と競争に生き残るためのポイント

脱炭素社会(カーボンニュートラル)実現への取り組み

そもそも、「パリ協定」や「脱炭素社会」とはどのような取り組みなのか、基本的な内容から解説します。

パリ協定とは、2020年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組みです。2015年にフランス・パリで開催された「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)」で合意されました。パリ協定は1997年に出された京都議定書の後継にあたるもので、以下のような長期目標を定めました。

  1. 世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する
  2. 出来る限り早期に世界の温室効果ガスの排出量をピークアウトし、今世紀後半に人為的な温室効果ガスの排出と吸収源による除去の均衡を達成する

このうち、2点目の目標にある「温室効果ガスの排出と(森林などによる)吸収源による除去の均衡を達成する」の部分については、生産活動などによって排出されるCO2の量と、森林などによってCO2が吸収される量を同等とすることを意味しており、「カーボンニュートラル」と言います。

パリ協定は途上国のほか、主要先進国が含まれており、アメリカやEU諸国、そして日本も対象国として協定に参画しています。なかでも、もっともCO2排出量が多い中国では、「2030年までに2005年比でGDPあたりの二酸化炭素排出を60~65%削減する」という目標を掲げています。また、中国に次いでCO2排出量の多いアメリカでは、「2025年までに26~28%削減に向けて取り組む」としています。

日本における「2050年カーボンニュートラル」と「グリーン成長戦略」

脱炭素社会の実現に向けて、日本は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。具体的には、「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」ことを目標として掲げています(2020年10月に菅総理が所信表明演説の中で、これまでの80%削減から目標を引き上げました)。
日本における2019年度のCO2排出量は12億1,300万トン(速報値)でした。2014年度以降6年連続で減少傾向にはありますが、現在のペースでは2050年までに排出量を目標値まで削減することは難しいため、何らかの対策を講じる必要があります。

そこで、日本は令和2年(2020年)末に「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しました。この中では、特にCO2排出量の多い従来型の石炭火力発電を削減する対策が示されています。
実は、日本の電源構成における石炭火力発電の割合(※下記グラフより)は全体の約80%程度を占めており、そこから脱却することによって大幅なCO2削減効果を見込んでいます。また、石炭火力発電の削減と合わせて再生可能エネルギーの普及や水素燃料の活用、二酸化炭素を燃料や化学製品にリサイクルする「カーボンリサイクル」といった技術も活用しながら、グリーン成長戦略に取り組み、カーボンニュートラルを実現しようとしています。

[出典:一般財団法人日本原子力文化財団「【1-2-7】 電源別発受電電力量の推移」]

脱炭素社会(カーボンニュートラル)実現による製造業への影響

脱炭素社会の実現によって、もっとも影響が及ぶと考えられるのが製造業です。2018年度の産業部門(工場等)における二酸化炭素排出量は、直接排出量シェアが全体の約25%、間接排出量シェアに至っては35.0%と他の部門の中でも一番多く排出していることがわかっています。
つまり、生産過程におけるCO2排出をいかに抑えるかだけでなく、エネルギー消費効率の改善や利用するエネルギーの選択、そして、排出削減に繋がる技術開発が求められています。

そこで、問題を解消するための対策として、製造業界ではファクトリー・オートメーション(FA)やロボットなどによる製造プロセスの自動化・見える化など、製造過程のエネルギー効率向上に向けた取り組みが検討されています。具体的には、ロボットやAIを活用し生産ラインを効率よく稼働させる、FA機器やセンサーによる数値の見える化により省エネ対策をすべき箇所の洗い出しを行うなどが挙げられます。

また、日本の主要産業ともいえる自動車産業においては、走行時にCO2を排出しない、または排出量削減につながる車種を開発・製造し市場に展開することで、自動車からのCO2排出量を大幅に抑えられると期待されています。さらに、自動車を作る素材自体を低炭素素材やリサイクル素材に変えるなど、ライフサイクル全体を通したCO2排出削減を目指しています。

製造業においては、脱炭素社会実現への取組を積極的に進めることによって、企業としての評価や企業間の競争力向上につながる可能性も高いと考えられています。これまでの日本は製造業が中心となって経済を支えてきた歴史がありますが、今後も国際的な競争に製造業界が打ち勝っていくためには、CO2排出量を削減し、これまで以上に環境に配慮した産業構造に転換していく必要があるのではないでしょうか。

脱炭素社会で企業として生き残るために

脱炭素社会の実現に向けて、製造業を始めとした企業は具体的にどのような取り組みを行っていくべきでしょうか。
重要なポイントのひとつに、ITシステム導入による製造過程の効率化が挙げられます。例えば、AIと組み合わせたIoTソリューションを活用することで、生産プロセスの最適化が実現できるだけでなく、省人化した上での生産性向上も期待できます。また、あらゆるモノの消費電力のデータを収集・見える化し分析することで、無駄な電力消費を抑えることが可能になります。

当然ながらCO2を排出しない新たな燃料として太陽光や水素、バイオマス燃料といったゼロエミッション電源を採用することも考える必要はあるでしょう。しかし燃料の部分に重きをおいてしまうと、本来重視すべき生産性向上という部分が置いていかれてしまう可能性があります。生産プロセスの最適化を実現し、環境に配慮した生産プロセスの在り方を導き出すことを同時に取り組んでいくことこそが、製造業に求められる脱炭素社会への進め方ではないでしょうか。

まとめ

脱炭素社会の実現は、日本のみならず世界の多くの国々が目指す共通のゴールです。そして、脱炭素社会を実現するためには、多くの企業が本気でCO2削減に取り組む必要があります。
日本でも、既に国や企業単位でカーボンニュートラルに向けた様々な取り組みが始まっていますが、一朝一夕で実現できるものでもありません。当然ながらCO2削減の効果を実感するには、中長期的な視点が必要となるでしょう。

将来、脱炭素社会が到来したとき、多くの企業では現在と比べてビジネスモデルが変革していることも予想され、それまでの過程において新たな時代に適応できない企業は競争力を失ってしまう可能性も考えられるでしょう。だからこそ、脱炭素社会に適応できるように、日々企業改革を推し進めていくことが重要だと言えます。
政府は「グリーン成長戦略」の進捗に合わせて、脱炭素社会実現に向けた様々な情報の開示や施策、支援を今後も行なっていくと予想されます。また、同時に各企業の取り組みなど、最新の動向や情報を追うことで、自社が優先的に行うべきことがみえてくるかもしれません。最新の情報に対して、常にアンテナを張って情報収集することを心がけておきましょう。

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