ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の意味や企業の推進方法

「ダイバーシティ」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。
多様性を意味するこの言葉は、昨今、一般生活だけでなく企業経営においても大切な価値観として認識されています。ダイバーシティが重要視される背景には、働き方改革の推進による私達のワークスタイルの変化があります。また、LGBTQ(性的少数者)への関心の高まりや、女性に対する問題発言が取り沙汰されるなどの要因も後押ししているといえるでしょう。

加えて、経済産業省においても2019年9月に「ダイバーシティ2.0」という、多様な属性を生かして人材の能力を最大限に引き出す経営上の取組を策定しました。さらに、ある調査会社が実施した「働きがいのある会社ランキング」で1位に選出された企業の経営指針にも、ダイバーシティが含まれています。つまり、働く個人の能力を引き出して、全社的な成果を上げるためのカギのひとつに「ダイバーシティ」が含まれていると考えてよいでしょう。

このコラムでは、企業のダイバーシティ経営において欠かせない指標である「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」について解説します。概要からメリット、企業における推進方法までご紹介いたしますので、ぜひ参考にしてみてください。

このコラムを読んで分かること

  • D&Iの概要
  • 企業がD&Iに取り組むことで期待できる4つの効果
  • D&Iの推進に有効な取組

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)とは

「ダイバーシティ」とは、直訳すると「多様性」、「相違点」、「多種多様性」といった意味があります。これを人間社会の中で考えた場合は、「人と人、または集団の間にある様々な違い」と言い換えることができます。この「違い」とは、例えば性別や年代、国籍、身体的特徴だけでなく、生活スタイル、宗教、価値観など、その人を構成するあらゆる要素が含まれます。

次に「インクルージョン」とは、「受け入れる」、「組み入れる」という意味をもつ言葉です。
そして、これらを合わせた「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」とは、多様性を認識するだけではなく、一人ひとりが受け入れ、尊重することによって個人の力が発揮できる環境を整備したり、働きかけたりしていく、という考え方です。

ビジネスの場面に当てはめて考えると、例えば「男性は外回りの営業、女性は事務作業」などと性別で一括りに区別するのではなく、「コミュニケーションが得意な人には営業を、細かい事務作業が得意な人にはバックオフィス業務」というように、性別を問わず能力を活かしてもらう環境を整備する取組が、D&Iの1つといえるのではないでしょうか。

このような経営を行うことを「ダイバーシティ経営」とも呼びます。
多様性を活かし企業の成長や発展を促すマネジメント手法であることから、D&Iの考え方と共通する部分が非常に多い言葉であるといえるでしょう。D&Iを企業経営の中で用いる場合は、一体化を目指していく点や、従業員の幸福や成長にも繋がる点が含まれるといった違いがあると考えられています。

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)が重要な理由とメリット

D&Iは国内外問わず様々な企業において注目されています。すでに社会全体にダイバーシティという言葉が浸透し、企業イメージ向上のために取り組まなければならないという理由もありますが、それ以上に様々な点で企業にとってのメリットがあるためです。
では、具体的にビジネスのどのような場面でD&Iの取り組みが効果を発揮するのか、4つのポイントをもとに解説します。

(1) 優秀な人材の確保
働きがいのある企業として選ばれる多くは、D&Iに積極的に取り組んでいます。
優秀な人材の多くは、自分のスキルを最大限活かせる環境、より良い労働条件を求めて企業を吟味しています。そのため、D&Iへの取り組みを含めた働き方改革を実現し、従業員にとって働きやすい環境を実現することは人材獲得競争を勝ち抜く上でも有効な手段となるでしょう。

(2) 離職率の低下・従業員満足度の向上
企業で働く従業員にとっての満足度を左右するのは、待遇面以外にも働きやすい職場であるか、やりがいのある仕事を任されているか、といった項目も重要になってきます。
個人の能力や適正に見合わない仕事を担当し続けていると、結果が出ずに「自分はこの仕事に向いていないのではないか」と悩む従業員も出てくるでしょう。D&Iの考え方も活用して個人の適正に合った仕事に従事させることができれば、仕事にやりがいを感じ、離職率の低下や満足度の向上を図れるため、人材が定着しやすくなるでしょう。

(3) イノベーションの拡大
持続的な成長を実現するために、新規事業の創出に取り組んでいる企業も多いはずです。これまで社内で蓄積してきたノウハウを組み合わせることで新たなイノベーションが生まれることもあれば、まったく異なる視点が求められるケースもあります。D&Iの方針によって多様なバックグラウンドや価値観をもつ人材が社内に多く在籍していると、これまでは出なかったアイデアが出され、新規事業創出のヒントにつながる可能性もあるでしょう。

(4) 効果的なマーケティング
既存事業の売上や利益を拡大するためには、効果的なマーケティング戦略が欠かせません。例えば、情報感度が高い若年層に対してどのようなアプローチが効果的なのかは、当事者である若年層の意見を参考にするのが有効な方法でしょう。D&Iによって社内に多様な人材が在籍していれば、当事者の意見としてヒアリングができ、効果的なマーケティング戦略の参考にすることが可能になります。

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進方法

企業としてD&Iを推進する場合、どのような流れで取り組むべきなのでしょうか。D&Iを推進する際の流れを紹介します。

● ダイバーシティの状況を把握
はじめに、在籍している従業員の状況を把握します。従業員の性別や年代はもちろんですが、例えば新卒採用と中途採用の比率、管理職における男女比および年代構成、離職率、介護や子育てを両立している従業員の数など、あらゆる側面から統計を取り、数値化しておくと良いでしょう。
仮に、若年層や子育て世代の離職率が高い傾向が見られた場合には、当事者にとって効果的な対策や取るべき施策も見えてくるはずです。

● 従業員に対するビジョンの共有
D&Iを推進していく場合、従業員にとってはこれまでの企業文化や働き方が大きく変化する可能性があり、戸惑うケースも出てくると考えられます。そのため、具体的なアクションを起こす前に従業員に対して丁寧な説明を行うことが重要です。
D&Iが重要な理由とメリットの部分でも紹介したように、なぜD&Iに取り組むべきなのかを具体的に説明した上で、企業として今後どのような姿を目指すのか、ビジョンを共有しておきましょう。

● 従業員との面談・アンケート
従業員に対してビジョンが正しく共有できたか、企業としての方針をどの程度理解してもらえたかを把握するために、面談やアンケートを行いましょう。
従業員それぞれ立場や環境が違うことは当然であり、そのため、様々な不安や悩みを抱えているケースがあります。例えば、「親の介護のために休暇を取得したいが、なかなか取りづらい」と不安を感じている人がいるかもしれません。そのような意見を踏まえながら、休暇制度の新設を検討するなど、企業は具体的な施策や制度作りに活かす必要があります。

● 具体的な施策の計画・実行
ダイバーシティの状況を把握し、従業員との面談やアンケートによって意見が集約されたら、自社にとってD&Iを実現するために必要な施策を計画し実行します。

例えば、子育て世代から「育児休暇が取得しにくい」という不満があった場合には、育児休暇に関する人事制度を拡充することはもちろんですが、経営トップから育児休暇取得を促進するようなメッセージを出すことも有効でしょう。

D&Iに積極的に取り組んでいる企業の中には、シニアおよび障がい者の積極的な雇用や、D&Iの啓発研修の定期実施、部門の垣根を超えた交流会開催など例もあります。

まとめ

本コラムでご紹介したダイバーシティ&インクルージョン(D&I)ついて、あらためて振り返ってみましょう。

  • D&Iとは、多様性を認識するだけではなく、一人ひとりが受け入れ、尊重することによって個人の力が発揮できる環境を整備していくという考え方
  • 企業にとってD&Iへの取組は、優秀な人材確保や従業員満足度の向上、イノベーションの拡大、効果的なマーケティング戦略など、様々なメリットがある
  • D&Iを効果的に推進していくためには、自社の状況を把握した上で従業員へビジョンを共有し、具体的な施策を検討し実行していく必要がある

多様な価値観を理解し認め合うことが求められる今、社会的に見てもD&Iの注目度および関心は極めて高いと言えます。単に企業イメージを向上させるというメリットばかりではなく、D&Iの推進は企業の持続的な成長に向けても不可欠な要素になっていくと予想されます。

意識の改革には、当然時間もかかるでしょう。しかし、企業としてD&Iに取り組むことは、多様な視点という「強み」を得られるチャンスとも言えます。従業員ひとりひとりに共通の認識を持ってもらえるよう、全従業員に向けてビジョンを共有しながら、D&Iを進めていくことが何よりも重要ではないでしょうか。

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