世界の製造業に影響を与える新たなビジネストレンド「EaaS」とは?

突然ですが、「EaaS」という言葉を耳にしたことはありますでしょうか。
EaaSは「Equipment as a Service」の略語で、企業が事業で使用する機器を借り定期的に使用料金を支払うことを意味する言葉です。ガートナーが世界の製造業に影響を与えるビジネストレンドに挙げたことで注目を集めています。
本コラムでは、「世界の製造業におけるビジネストレンド」のトップ5と、その中でも注目されているEaaSとは何かを、わかりやすく解説します。
また、昨今はSaaSやIaaSなど、〇aaSという略語を耳にする機会も増えてきました。様々なクラウドサービスを現す「〇aaS(XaaS)」のの中から代表的なもの10種類もご紹介しますので、言葉の意味を改めて確認しましょう。

このコラムを読んで分かること

  • 世界の製造業におけるビジネストレンドとEaaS(Equipment as a Service)について
  • 混同されやすいほかのEaaSと「〇aaS(XaaS)」の種類、意味

【2021年】「世界の製造業におけるビジネストレンド」をおさらい

世界有数のリサーチ&アドバイザリ企業であるガートナーは、2021年7月29日に「世界の製造業におけるビジネストレンド」のトップ5を発表しました。ガードナーのアナリストは、この発表について「製造業のCIO(最高情報責任者)がビジネスにおける将来の破壊的イノベーションに備え、新しい市場・製品ラインへの参入、財務的な苦境などの課題を改善する上で、このトレンドが役立つ」と述べています。

さて、ではガートナーが発表した「世界の製造業におけるビジネストレンド」のトップ5とは何か、具体的に見てみましょう。

トレンド1:デジタル+プロダクト・エクスペリエンス

「デジタル+プロダクト・エクスペリエンス」とは、B2Bの顧客や消費者にユニークで価値ある製品を提供するために、物理的な「プロダクト」と「デジタルサービス」を組み合わせたものを指します。
メーカーはプロダクトの販売後も、魅力的なプラットフォームを提供することで顧客とのつながりを維持できる「新しいビジネスモデル」を意味しています。

トレンド2:トータル・エクスペリエンス

VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)といった技術により、現実世界では体験できないような経験をデジタル世界上で得られる仕組みである「マルチエクスペリエンス」と、「カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)」、「エンプロイーエクスペリエンス(従業員の経験)」、「ユーザーエクスペリエンス(ユーザー体験)」を組み合わせて、総合的な体験を生み出すことを、「トータル・エクスペリエンス」と言います。
これにより、顧客、パートナー、従業員を結び付ける適切なプラットフォームを特定できるとされています。

トータル・エクスペリエンスをはじめとする「2021年の注目すべきITインフラトレンドまとめ」はこちらのコラムで詳しくご紹介しております!

「2021年の注目すべきITインフラトレンドまとめ」を読む

トレンド3:エコシステム・パートナーシップ

「エコシステム・パートナーシップ」とは、複数の企業がパートナー契約を交わすことで、各企業の技術力や資本を活かしながら環境問題やSDGsの面での取組を進めていくことです。
製造業がエコシステム・パートナーシップを活用することで、地球に優しいパッケージングや、開発途上地域への支援、リモートワークによるCO2排出削減など、あらゆる種類の取り組みが可能になります。

トレンド4:データ・マネタイゼーション

製造業で進むデジタル化により集まった、大量のデータ。この有益な情報を活用することで、収益を生み出すという考え方を「データ・マネタイゼーション(収益化)」と言います。
蓄積した情報をエコシステム全体で共有し資産として活用することで、新たなサービスを生み出したり、新事業に参入できるとされています。

トレンド5:サービスとしての機器(EaaS:Equipment as a Service)

サービスとしての機器(EaaS)は、企業が事業で使用する機器を購入するのではなく、借りることで定期的な運用料金を支払う新しいビジネスモデルのことです。

これまでご紹介したトレンドの中でも、近年になって登場したEaaSは注目すべきビジネストレンドです。次の段落で、EaaSについてより詳しく解説します。

EaaSとは?

「EaaS(Equipment as a Service)」とは、製造業者が産業機器メーカーから借りた機器を使い自社製品を生み出していく、そして、定期的に運用料金を支払うという商取引モデルです。イメージとしては、製造機器のサブスクリプションと言えます。

設備機器を購入するには、決して少なくはない費用が発生します。そのため、最新の設備機器を導入したくても難しいこともあるでしょう。しかし、このEaaSの仕組みであれば、高額で購入を断念せざるを得なかった機器を、毎月の運用料金として支払うだけで導入することができるのです。
EaaSによって、中小企業でも新しい機器の導入が進むと期待されています。

反対に、産業機器メーカー側はどうでしょうか。
EaaSでは、ただ単に機器を貸し出すのではなく、IoT(モノのインターネット)の活用により機器から稼働状況などのデータを収集し、予測的メンテナンスを可能とすることこそが重要であると提唱しています。
つまり、産業機器メーカーは機器が故障したら買い換えてもらうか、定期点検の際に修理をするかといった従来の流れから脱却し、遠隔地から機器の状況を診断し予測に基づくメンテナンスを行うといったビジネスモデルの展開が期待できるのです。

この新しい考え方は、有効に稼働していない機器(資産)に対する解決策になるだけでなく、機器を利用する側の製造業にとっては、運用コストの削減や機器の稼働時間の改善が見込めるとされています。
ガートナーは、「2023年までに産業機器メーカーの20%が産業用IoTのリモート機能を付帯したEaaSをサポートする」と見ています。

製造業の業務改革では、IoTを活用したデジタル化がポイントです。しかし、製造業のデジタル化を進めるために新システムを導入したくても、費用対効果や財務的負担など、様々な課題もあります。しかしEaaSは、そういった負担を抑えながらデジタル化を進められる方法と言えるのではないでしょうか。

混同されやすいほかの「EaaS」について

さて、ここまで解説したEaaS(Equipment as a Service)とは別に、ほかの意味を持つEaaSもいくつか存在します。混同されやすいEaaSについても、少しご紹介しましょう。

Everything as a Service 「○aaS」や「XaaS」などとった情報システムの構築・運用に必要な資源を、ネットワーク経由でサービスとして提供する仕組みの総称。
Exploit Pack as a Service サイバー攻撃を行うためのツールを提供するサービスのこと。
Energy as a Service 電力・ガスといったエネルギーを単体ではなく、ほかのサービスと組み合わせて提供すること。

こんな意味だった!「〇aaS(XaaS)」の種類10選

EaaSのように、「〇aaS(〇〇〇 as a Service)」と表記される略語は数多くあります。〇aaSは「XaaS」とも呼ばれており、Xとは未知の値を示すときの慣例的な表現です。ここからは、〇aaS(XaaS)の代表的な10種類を参考までにご紹介します。

1 SaaS
(Software as a Service)
インターネット経由でソフトウェアを提供するサービス
2 PaaS
(Platform as a Service)
アプリケーションの構築・稼働に必要なプラットフォームを提供するサービス
3 IaaS
(Infrastructure as a Service)
仮想サーバやネットワークなどのITインフラをクラウド上で提供するサービス
4 AaaS
(Analytics as a Service)
クラウド上でデータの解析や分析を行えるサービス
5 BaaS
(Backend as a Service)
モバイルアプリにおけるユーザー認証や登録・管理など、バックエンドの処理に必要なサーバ機能を提供するクラウドサービス
6 DaaS
(Desktop as a Service)
クラウド上で仮想デスクトップ環境を構築できるサービス
7 NaaS
(Network as a Service)
ルータなどがなくてもネットワーク環境を構築できる、仮想ネットワーク技術を提供するサービス
8 HaaS
(Hardware as a Service)
システム構築に必要なサーバ・ストレージなどのハードウェアをネットワーク経由で提供するサービス
9 DBaaS
(Database as a Service)
ネットワーク経由でデータベースを提供するクラウドサービス
10 GaaS
(Gaming as a Service)
クラウド上にゲームサーバを構築し、ストリーミング配信するサービス

〇aaSと表記される言葉は、今後も増えていくことが予測されます。また、EaaSのように、ひとつの略語で複数の意味を持つものも出てくるでしょう。ビジネスシーンで「〇aaS」を使うときは、何の略語か、意味は何かを理解し、伝える相手と認識がずれないようにしましょう。

まとめ

ここまで、世界の製造業におけるビジネストレンドと、ビジネスモデルを根本から変える可能性がある「EaaS」について、また「〇aaS(XaaS)」の種類と意味について解説してきました。改めて、今回のポイントをまとめます

<このコラムのPOINT>

  • EaaS(Equipment as a Service)とは、産業機器メーカーから機器を借り、製造業者が自社製品を作り出すビジネスモデルを指す
  • EaaSはガートナーの「世界の製造業におけるビジネストレンド」のトップ5に挙げられた
  • 略語のEaaSはほかの意味を指すこともあるため、使う際は気をつけると良い

今回ご紹介したガートナーの「世界の製造業におけるビジネストレンド」のトップ5に共通して言えることは、「つながり」であるとも言えます。その接点をどう作るか、誰と・何と繋がるか、繋がった先に何を見出すか、そこに製造業の将来を照らすヒントがあるように思います。

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