2021年の注目すべきITトレンドまとめ&振り返り
2021年は新型コロナウイルス(COVID-19)の影響によるビジネス環境の変革を受けて、多くの企業がIT投資を進めた年となりました。
「デジタルレジリエンシー」という考え方も生まれ、企業は外部環境の変化にデジタル技術で対応し、かつ成長を続ける能力が求められています。経営層やマネジメント層がITトレンドに着目する重要性は、より増していると言えるでしょう。
今回は、2021年に注目を集めた6つのITトレンドについて紹介と振り返りを行い、2022年のITトレンド動向も解説します。
【目次】
- 押さえておきたい2021年のITトレンド6選(振り返り)
- 2021年のITトレンドの振り返り&2022年のITトレンド動向
- ITトレンドを踏まえた「これからの企業戦略」とは
- 2021年ITトレンドまとめ
押さえておきたい2021年のITトレンド6選(振り返り)
2021年のITトレンドは、業務のデジタルファースト・クラウドファーストに役立つデジタル技術が注目を集める傾向にありました。
計4回の緊急事態宣言による巣ごもり需要の増加で、デジタル化の波は個人の消費者にも広がっています。様々な産業分野において、デジタル技術の活用が企業の成長を左右する要素になると言えるでしょう。
ここでは2021年のITトレンドを6つ振り返り、それぞれの特徴やビジネスへの影響を解説します。
スーパーアプリ
1つ目のITトレンドは、スマートフォンで利用する「スーパーアプリ」です。
「スーパーアプリ」とは、ひとつのアプリの中で様々なアプリを統合、日常生活のあらゆるシーンで活用できる総合的なアプリのことです。例えば、メッセージのやり取り、決済や送金、飛行機や宿泊施設・飲食店の予約といったあらゆるサービスを、スーパーアプリをひとつインストールしておくだけで利用できるようになります。
中国やシンガポール、インドネシアなどでは日本でトレンドとなる前からスーパーアプリが利用されていました。そのなかで2019年11月、国内大手の情報・通信事業会社2社が経営統合を発表しました。ポータルサイトとして圧倒的なシェアを誇る企業と、同じくコミュニケーションアプリでシェアを誇る企業の統合は、多くの人に衝撃を与えました。
現在、両者が手を組んだことでスーパーアプリとして新たなプラットフォームが誕生するのではないかと期待されています。
DARQ
2つ目のITトレンドは、とある世界的経営コンサルティング会社が提唱した「DARQ(ダーク)」と呼ばれるテクノロジー群です。
「DARQ」とは、「Distributed Ledger Technology(分散型台帳技術)」、「Artificial Intelligence(人工知能)」、「Extended Reality(拡張/強化現実)」、「Quantum Computing(量子コンピューティング)」の4つを表したものです。
Distributed Ledger Technology (分散型台帳技術) |
ブロックチェーンとも呼ばれ、ビットコインをはじめとした暗号通貨に活用されており、金融市場を大きく変化させる技術として注目されている。 |
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Artificial Intelligence (人工知能) |
その名の通りAI技術を指し、画像認識や自然言語処理といった技術によってあらゆるビジネスに活用され、その規模は拡大し続けている。 |
Extended Reality (拡張/強化現実) |
xRと省略されることもあり、AR(拡張現実)、MR(複合現実)、VR(仮想現実)に代表される仮想と現実、人間と機械の間で補完されるすべての領域までを含む言葉。エンターテイメントや観光分野における体験型コンテンツにも応用できるため、今後のさらなる活用が期待されている。 |
Quantum Computing (量子コンピューティング) |
現在使われているコンピューターの計算処理速度をはるかに凌駕した計算原理です。まだ研究段階にあり、実用化も徐々に進められているような状況ですが、普及が進めばコンピューターの性能は飛躍的に向上していくでしょう。 |
DARQが初めて提唱されたのは、2019年です。それまでデジタル化推進の軸と言われていた「SMAC(Social、Mobile、Analytics、Cloudの4つを表したもの)」に代わる次世代のデジタル技術として提唱されました。これら4つの技術を自社の強みと融合させていかに活かしていくかが、今後のビジネスを成功に導く鍵となると言われています。
事例としては、2019年11月、アメリカ大手スーパーマーケットチェーンのカナダ部門が、分散型台帳技術を用いたブロックチェーンソリューションを導入。カナダ国内店舗へ商品を配送する業者の輸送や決済に関する情報をデータ化、データをリアルタイムで照合できるため、ネットワーク上で輸送完了時にその場での請求・支払い・決済までを可能にしました。パートナー企業との間の透明性、事業全体の業務効率化とコスト削減、それによる商品価格の抑制など、企業として多くのメリットを得ています。
また、日本の大規模旅行情報サイトが量子コンピューターを採用したことで、季節、地域、ユーザー属性、宿泊施設など数多の組み合わせの中から、利用者ごとに検索結果を最適化する仕組みを構築。検索結果における表示順序の改善により、サービス向上を実現しました。
DARQを事業に取り入れた成功事例が徐々に増えており、今後もより多くの企業が事業の革新を果たすためにDARQの実用化を進めることが予想されます。
IoB
3つ目のITトレンドは「IoB」です。IoBは「Internet of Behavior」の略称で、「挙動・行動のインターネット」とも呼ばれています。
IoBの身近な例である「流動人口(人流)データ」は、スマートフォンの位置情報を活用したビッグデータが用いられており、新型コロナウイルスの影響もあって注目されました。さらに応用が進んでいけば、個人の行動特性に合わせてパーソナライズされた情報やサービスを提供することも可能になるでしょう。
例えば、アメリカでは自動車を運転する頻度や運転習慣をIoBで把握し、それをもとに保険料を算定するなどのサービスが実際に提供されています。IoT(モノのインターネット)からさらに進化して個人の生活を豊かにし得るIoBは、ウイルス感染症対策の観点も含めて注目されています。
TX(トータル・エクスペリエンス)
4つ目のITトレンドは、「TX(トータル・エクスペリエンス)」です。
2019年に大手ITマーケティング・リサーチ会社が、ARやVRといった技術を活用した体験を「マルチ・エクスペリエンス」と称し、これをユーザー・エクスペリエンスと結びつける戦略として「TX(トータル・エクスペリエンス)」が提唱されました。
マルチ・エクスペリエンスやトータル・エクスペリエンスの分野は、新型コロナウイルスの影響もあり、接触リスクを抑え、自宅にいながら実体験に近いサービスを提供できるとされています。
例えば、VR技術を用いて自宅にいながら服の試着から購入まで行える、化粧品を買う際に商品を熟知した店員のアドバイスを聞きながら検討から購入まで行える、といった顧客の満足度に対し高い価値が発揮できると期待されています。
Anywhere Operations
5つ目のITトレンドは、「Anywhere Operations」です。
「場所を問わないオペレーション」と訳すことができる「Anywhere Operations」は、まさにどこにいても運用体制を確保することができるITオペレーティング・モデルを指します。昨今普及が進むテレワークやクラウドシステムの活用など、今後の働き方にも大きく関わるため注目を浴びています。
場所を問わないオペレーションとは、従業員がどこからでも働くことができる環境を作ることだけでなく、従業員がどこにいても顧客をサポートできることが重要となります。つまり、従業員にも顧客に対しても付加価値の高い体験を提供するためのIT運用モデルとも言えます。上述のTX(トータル・エクスペリエンス)とも密接にかかわるトレンドと言えるでしょう。
大手ITマーケティング・リサーチ会社は、2023年末までに40%の企業が「Anywhere Operations」の運用体制を確保し、関連するサービスやシステムがシェアを伸ばすと予想しており、国際的な注目度の高さもうかがえます。
ローカル5G
6つ目のITトレンドは、独自に通信システムを構築して5G を使用可能にする「ローカル5G」です。
第5世代の無線通信規格として、「大容量の高速通信」「通信の低遅延化と高信頼性」「多数同時接続の向上」などの特徴をもつ5G。通常、5GはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルに対して電波が割り当てられ、使用可能になります。しかし、ローカル5Gは局所的なネットワーク内という条件のもとで、自治体や企業が独自の5G通信システムを構築して自営使用できるようになります。
ローカル5Gには、「高速通信」「Wi-Fiよりも広範囲をカバーできる」「災害時などの通信障害を受けにくくなる」「外部ネットワーク遮断による高いセキュリティー性」などの特長があります。通常のパブリック5Gよりもセキュリティー面で安全かつ通信障害リスクも低いことから、多くの人があつまる公共施設(スタジアムや体育館など)、テレワークを行うシェアオフィス、さらに町や村全体といった広範囲での活用が期待されています。
また、5Gの低遅延化や多数同時接続などの特長により、工場で活用した場合、導入機器やロボットなどの動きや映像が途切れず、スマート工場化も促進されるでしょう。
2021年のITトレンドの振り返り&2022年のITトレンド動向
当記事は、2022年3月に一部を加筆修正したものです。
2021年は、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響からの回復、そして成長への転換が企業でも見られる年となりました。
行政においてはIT化やDXなどを推進する機関としてデジタル庁が発足し、デジタル化に向けた体制を整えようとしています。また、SDGsへの取り組みにも関心が高まり、電力・労働力などの資源を有効活用できるエッジコンピューティングやキャッシュレス化が進められました。
IT業界では、メタバースに注力する動きが出てきています。メタバースとは、「メタ(Meta)」と「ユニバース(Universe)」の略称で、いわゆる「現実世界とは異なる仮想空間、または仮想空間のサービス」のことです。DARQの中でも拡張/強化現実の分野やIoB、TXの技術が注目を集めており、メタバース市場には日本企業も相次いで参入しています。
また、2021年は日本において5Gのミリ波サービスを提供する携帯電話会社が増加し、通信容量の大きいミリ波を活用しやすくなりました。さらに企業や自治体が独自の通信システムを構築して、よりセキュリティー性の高いローカル5Gを自営使用できるようになり、クラウドサービスの拡大、大規模企業を中心としたHRテックの導入も進められています。
対して、スーパーアプリやAnywhere Operationsは、期待されたほど大きなトレンドとはなりませんでした。
2022年のITトレンドは、回復を抜けた先にある成長に貢献できる技術が重視されると目されています。紹介した2021年のITトレンドの中でもDARQ・IoB・TX・5Gなどは、継続して2022年のトレンドとなる可能性が高いでしょう。
ITトレンドを踏まえた「これからの企業戦略」とは
新型コロナウイルス感染拡大を受け、ライフスタイルや価値観は大きく変わりました。また、働き方も大きく変革し、今後もこの流れは続くと予想されます。そんな時代を企業が生き抜いていく上で注目するビジネスモデルとなるのが、「インテリジェント・コンポーザブル・ビジネス」です。
「インテリジェント・コンポーザブル・ビジネス」とは、変化する世の中の仕組みや潮流に沿って、柔軟に対応できる「コンポーザブル(選択や組み立てができること)」なビジネスモデルであり、これによって困難に直面したとしても迅速に事業を立て直せることを意味しています。
インテリジェント・コンポーザブル・ビジネスを実現するためには、ITトレンドを含む市場環境の変化に適応しながら再構築できる組織を作ると同時に、企業にとって有益な情報にどこからでも安全にアクセスできるIT基盤の導入が重要となります。
変化に対応できるIT基盤を整えることで、新たなビジネスモデルを実現するだけでなく、柔軟性がある企業戦略を構築することが可能となるでしょう。
2021年ITトレンドまとめ
ここまで2021年に注目を集めた6つのITトレンド紹介と振り返り、2022年のITトレンド動向を解説してきました。改めて、今回のポイントをまとめます。
<このコラムのPOINT>
- 業務のデジタル化を促進する技術が主な2021年ITトレンドとして登場した
- デジタルファーストやクラウドファーストの流れに伴い、ローカル5Gやエッジコンピューティングの技術に関心が高まっている
- 企業と顧客の結び付きを強めるメタバースやIoB、TXなどの技術も注目を集めた
注目を集めるITトレンドを押さえることで、これからの生活や企業として求められる姿を見据えることも可能です。
今後、ニューノーマルは徐々にノーマルへと変わっていくでしょう。そして、その先に訪れるだろうネクストノーマル時代では、デジタルやデータの利活用は当たり前となり、その上で革新的なサービスの提供やビジネスモデルの構築を求められることが予想されます。
当社、三菱電機ITソリューションズでは、お客様のニーズに応じた各種ソリューションをご提供しています。人事労務管理を中核とするソリューションや、製造事業、流通・ヘルスケア事業、そしてクラウド・仮想化・情報セキュリティー等のIT基盤を支援するインフラ事業など、多様な業種・業務の効率化を安全にサポートすることができます。
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