テレワークの導入は、業務効率化・企業体質強化の鍵となるのか!?

「働き方改革関連法」が施行され、約半年が経過しました。労働基準法などの改正を受け、残業時間の削減や有給休暇の取得推進などに取り組まれている企業も、多いと思います。今回の法改正では、どうしても残業時間削減に目が行きがちですが、従業員の「ワーク・ライフ・バランス」の充実や、生産性の向上、業務効率化に向けた取組については、順調に進んでいるでしょうか。

今回は、「多様で柔軟な働き方」の実践例のひとつとして、場所や時間にとらわれない働き方ができる「テレワーク」についてご紹介します。テレワークのメリット・デメリットを踏まえ、導入前に抑えておくべきポイントについてもご紹介します。

テレワークとは

「テレワーク」とは、「情報通信技術(ICT)を利用した、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」を意味します。「ワーク・ライフ・バランス」と「多様で柔軟な働き方」という、働き方改革が掲げる目標を達成するための手段の1つとして挙げられている、注目すべき働き方です。
テレワークは、働く場所によって「在宅勤務(自宅利用型テレワーク)」「モバイルワーク」「サテライトオフィス勤務(施設利用型テレワーク)」の3種類に分けられます。

■テレワークの3つの種類

在宅勤務自宅を就業場所とする。インターネット、電話、ファックスを活用し、会社と連絡を取る働き方。
モバイルワーク交通機関の車内などの移動中、もしくは顧客先、カフェなどでパソコンやモバイル端末を使って働く。
サテライトオフィス勤務勤務先以外の、通勤や業務に便利な場所にオフィスやワーキングスペースを設け、パソコンなどを利用した働き方。
(利用するスペースの種類:例)
  • 一社専用で社内LANがつながるスポットオフィス
  • 専用サテライト
  • 数社による共同サテライト
  • レンタルオフィス など

以下では、企業と従業員両方の立場から見た、テレワークのメリットとデメリットを紹介します。

企業側から見たテレワークのメリット

企業側には以下のようなメリットがあると考えられます。

  • 妊娠、出産、育児や介護、ケガなどで通勤が難しい人も働けるようになる
  • 「柔軟で働きやすい環境」を提供することで、従業員の満足度向上、企業のイメージアップに繋がる
  • 災害など非常時でも事業を継続できる(BCP)
  • 通勤、交通費や電気代などオフィスコストの削減

このように、雇用の継続や優秀な人材の確保に繋がる効果だけでなく、環境負荷の軽減といったメリットも考えられます。
さらに、総務省が公表している「平成28年通信利用動向調査」によると、テレワークを利活用している企業の方が利活用していない企業に比べ、1社あたりの労働生産性が1.6倍も高いという結果が出ています。企業として生産性向上は重要な課題であるため、この結果は注目すべき点と言えるでしょう。

企業側から見たテレワークのデメリット

逆に企業側にとってのデメリットとしては、以下の項目が挙げられます。

  • 働く人の労働実態が把握しづらい
  • 過重労働やメンタルヘルスなど安全衛生関連の措置や対策がしづらい
  • セキュリティー対策を十分に行う必要がある

離れたところで働いている以上、社内にいる従業員より労務管理が難しくなるのは否めません。そのため、次のような対応方法があります。

  • パソコンのログオン、ログオフ情報からパソコンの利用状況を確認できるツールを導入する
  • パソコンでどんなアプリケーションを操作したか等を取得・記録するシステムを利用する
  • 健康診断やストレスチェックなど、従業員の健康を確保するための措置を講じる

このように労働時間を把握し、体と心の健康を保持するための対策を行う必要があります。

また、セキュリティー対策という点では、パソコンがウイルスに感染していないか、情報漏洩のリスクはないかなど、さまざまなリスク対策を進めることが大切です。在宅勤務中には、ペットや幼児がパソコンに誤って触れたことでデータを消失してしまうなどのトラブルにつながる可能性もあるので、バックアップ対策も行いましょう。業務で使用するスマートフォンやタブレット端末などのセキュリティー管理も、忘れてはなりません。

従業員から見たテレワークのメリット

「会社に出社しなくても働くことができる」というのは、従業員の立場から見ると様々なメリットが考えられます。実際、国土交通省が発表した「平成30年度 テレワーク人口実態調査」によると、テレワーク制度を設けている企業でテレワーカーとして働く人の約70.0%が「プラスの効果があった」と回答しています。内容としては、

  • 自由に使える時間が増えた
  • 通勤時間、移動時間が減った
  • 業務の効率が上がった

と回答した方が約50%弱と多く、プライベートを確保できたことにより心に余裕が生まれ、その結果、生産性の向上やスキルの向上へと繋がったと考えられます。

また、育児や介護をしながらでも仕事を続けられるという点では、育児や介護のスケジュールだけでなく仕事のスケジュールも調整しなければならないのではないか、自身の業務スキルを維持できないのではないか、共に働く仲間に迷惑をかけてしまうのではないか、など、育児や介護をしながら働いた経験のある方なら感じたことのある、不安やストレスを軽減できます。

従業員から見たテレワークのデメリット

在宅勤務の場合、仕事のON/OFFの切り替えが難しいというデメリットがあります。自宅に自室や書斎などがない人の場合は、「仕事モードに入りにくい」ということもあるでしょう。また、家事や育児、介護に追われ、仕事に長時間集中しづらい点も、テレワークの課題です。ON/OFFの切り替えという点で言えば、場所や時間にとらわれずに仕事ができてしまう反面、帰宅しても仕事から解放されないのでは?という不安もあるでしょう。
さらに、

  • 上司や同僚とのコミュニケーションが取りにくくなるため、困った時に気軽に相談できない
  • 自己管理を怠ってしまうと、長時間労働を助長しプライベートを保てなくなる

など、生産性が悪くなってしまう危険もあります。
また、自分がどのように働いているかを直接見てもらうことができないため、成果を客観的に説明できる働き方を心がけることが求められます。

テレワークの導入・活用事例

現在、テレワークは企業に少しずつ浸透しており、総務省が公表している「平成30年通信利用動向調査」によると、従業員300人以上の企業では29.3%(昨年:23.0%)、300人未満の企業では14.5%(昨年:10.2%)という結果でした。規模の大きい企業に比べると中堅中小企業での導入はまだ少ないという見方もありますが、以下ではそんななかでもテレワークを積極的に導入している中小企業・小規模事業者によるテレワークの導入・活用事例を紹介します。自社でテレワークを導入する際のイメージに是非お役立てください。

システム開発会社(A社)の場合

A社では、育児休暇を終えた社員からの「保育施設が不足している」「通勤時間が長い」という相談をきかっけにテレワーク導入を検討し、社内規定にテレワークを入れることにしました。導入初期時点では、テレワーク利用者がいる部門の管理職から「今すぐやってもらいたい仕事に対し適切に指示を出せるのか」など、コミュニケーションへの不安も挙がっていました。しかし、電話やメール、グループウエアなどを使うことで、問題なく業務を進めることができています。
テレワークを開始した社員の中には、通常4時間かかる通勤時間を短縮できたことで、その時間を有効活用できるようになった方もいます。実際の業務については、インターネット通話サービスを活用して数名の社員と打合せをすることで、問題なくこなしているそうです。
また、テレワークを導入したことで、「働き方改革に積極的に取り組んでいる企業」として社外から信頼を得るに至り、仕事の依頼が増えるなどの反響を得ました。

ソフトウエア開発会社(B社)の場合

B社では創業当時から技術者を中心にテレワークを取り入れていましたが、2011年3月11日に発生した東日本大震災をきっかけに、社員の安全確保、事業継続のために全社でテレワークを導入しました。社員にはパソコンやタブレットを配布し、リモートでも作業できる環境を整えました。普段テレワークをしていない社員に対しても、猛暑や台風、大雪などの気象条件によってはテレワークを推奨する内容のメールを管理部門が送信することで、テレワークを利用しやすい環境を提供しています。

B社ではテレワークを全社に導入した結果、通勤にかかる時間や労力を削減することに成功しました。開発部門を中心に「より創造的な業務に取り組めるようになった」と好評です。また、子供を持つ社員にとっては、育児など家庭の事情に合わせてテレワークを利用でき、高評価を得ています。
さらに、外国籍社員はテレワークを利用することで、年末などの大型連休日の前に自国に帰省し、規定の休日までの間はテレワークで業務を行う、といったことが可能になりました。大型連休の前は航空券が高くなる、または航空券を確保できない、その他にも交通混雑に巻き込まれるといった問題がありましたが、テレワークを導入することで大型連休を快適に過ごすことが可能になり、社員の満足度向上にも寄与しています。

テレワーク導入のポイント3点

テレワークは、環境の整備や運用管理といった「技術面と労務面の課題」を解決しないまま導入してしまうと、かえって生産性を落としてしまう可能性もあります。ここでは、テレワークをスムーズに導入するための3つのポイントをご紹介します。

(1)労働時間を適正に把握するためのしくみづくり

企業は、会社から離れた場所で働くテレワーク社員であっても、労働時間を正確に把握する義務があります。そのため、労働条件や時間管理に関してしっかりとルールを決めましょう。
テレワークにおいては、メールを使用して始業・終業報告を行う方法が、最も多く利用されています。メールでの報告は、業務報告を兼ねて同一部署内のメンバーにも一括して送ることができるなど、メリットがあります。ほかに、会社とテレワーク社員の自宅をWeb会議システムで常時接続し、お互いの様子を常に映像で確認できるようにするといった方法もあります。
また、始業・終業報告を管理できる勤怠管理ツールやシステムを用いるという方法もあります。出退勤の情報がデータとして残るため、労務管理や給与計算にも活用できるほか、今日どんな業務をしたかを記録することで、作業工数の管理も可能です。

(2)インフラ面の整備とセキュリティーの確保

テレワークで働く従業員は、他の従業員と直接相談し合い問題点を共有する機会が、会社に出社して働く場合よりも少なくなると懸念されがちです。そのため「労働生産性が落ちてしまうのでは?」と不安に感じる経営者の方も多いようです。しかし、作業の進捗状況を確認し合えるツールやWeb会議システム、インターネット通話サービスなどを活用することで、従業員同士のコミュニケーション不足は解決できます。また、リモートデスクトップや仮想デスクトップ、クラウドサービスなどを活用することで、いつでもどこでも会社と同じ環境で働けるようになるため、労働生産性が落ちる心配は少なくなるでしょう。

しかし、利便性だけを考えた結果ウイルスやマルウエアに感染し、業務継続が不可能になってしまっては本末転倒です。従業員がテレワーク時に使用するパソコンやモバイル端末には、入念にセキュリティー対策を行うことが必須です。ウイルスに感染しないようにすることはもちろん、紛失や盗難に遭った場合を考慮しハードディスクを暗号化するなどの対策も講じましょう。また、業務で使用するアプリケーションへのアクセスには本人認証や端末認証対策を講じる、安全なネットワーク回線を利用するなど、運用上のセキュリティー対策もしっかり行いましょう。

(3)テレワークを利用しやすい風土づくり

テレワークを導入するには、ポイント1、2でご紹介したようにルール作りやハード面の整備を行うことで、スタートすることはできます。しかし、テレワークを導入したとしても、「そもそもテレワークできる仕事が無いのでは?」、「テレワークで働く社員がちゃんと仕事をしているのか」、「テレワークを利用できる人が限られているのは不公平ではないか」という不安や不公平感が生まれがちです。また、テレワークを利用する側も、「肩身が狭い」、「迷惑になりたくないので、つい仕事をし過ぎてしまう」、「テレワークは出世に不利なのでは?」と不安を感じてしまい、結果としてテレワークの定着につながらない可能性もあります。
つまり、テレワークを定着させるためには、制度を利用しやすい「風土づくり」が重要と言えるでしょう。そして、会社と同じ仕事をテレワークでも行えるようにすれば、誰でも利用することができ、テレワーク利用者に対する不公平感も、テレワーク利用者自身が感じる「肩身の狭さ」も解消されるはずです。
「テレワークの利用者に予め出社日を提示し、直接顔を合わせることのできる日を定期的に設け、従業員同士の信頼や連携を深める」といったルールを作ることも、テレワークを上手に運用する手段の1つです。

いきなり全員がテレワークを利用できるようにすることは、難しいかもしれません。しかし、経営者を巻き込みながら「会社として推進していくのだ」という流れをつくり、企業戦略の1つとして一歩を踏み出すことが大切ではないでしょうか。

まとめ

テレワークは、ワーク・ライフ・バランスと多様で柔軟な働き方を実現し、生産性を向上するための手段の1つです。2017年から政府発動のプロジェクトとしてテレワーク導入が推進されており、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会期間中の、交通混雑回避の切り札としても注目されています。テレワーク導入にあたってはICT環境の整備などに少なからず費用がかかりますが、中小企業を支援するため、厚生労働省は「時間外労働等改善助成金(テレワークコース)」を設けています。こうした助成金を活用することで、初期費用を抑えることも可能です。
いきなり全社で導入するにはハードルが高い場合は、介護・育児中などのライフステージを踏まえて対象者を選定するなど小規模からスタートする、また、トライアルを実施するなども良いでしょう。従業員と企業のこれからを考え、働き方の選択肢の1つとしてテレワーク導入を検討されてはいかがでしょうか。

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