2022年10月より社会保険適用が拡大!企業に求められる対応と役立つ支援とは?

2022年10月から、パート・アルバイトなど短期労働者の社会保険適用範囲が拡大されました。さらに、企業規模により段階的に拡大されることが決まっており、社会保険料の増加が見込まれます。
そこで本コラムでは、社会保険適用拡大が求められる理由や対象となる労働者の条件をはじめ、社内準備の流れなども併せて解説します。人事労務の業務を担当される方をはじめ、気になる方はぜひチェックしてみてください。

このコラムを読んで分かること

  • 社会保険適用拡大について
  • 社会保険適用拡大の対象となる企業や労働者について
  • 社会保険適用拡大に備えた社内準備と役立つ制度について

【目次】

  • 社会保険適用拡大とは?対象企業や労働者の条件
  • 社会保険適用拡大に伴う社内準備の流れ
  • 社会保険適用拡大に役立つ支援制度
  • まとめ

社会保険適用拡大とは?対象企業や労働者の条件

2016年の法改正により、社会保険の適用範囲が拡大され、パート・アルバイトなど短時間労働者が社会保険に加入しやすくなりました。そして、2022年10月から適用対象となる従業員の要件が変更になっただけでなく、対象となる企業規模が段階的に拡大されます。なぜ、社会保険適用拡大が必要なのでしょうか?

社会保険適用拡大が必要な理由

社会保険適用拡大が必要な理由のひとつに、昨今の時代背景があります。
総務省が発表している「労働力調査(令和4年度)」によると、非正規の職員・従業員数は2,084万人(2期連続で増加)となっており、役員を除いた全雇用者(5,701万人)の約4割を占めています。

非正規雇用が増えた背景には、バブル崩壊後に企業が人件費の削減を図るため、正規雇用を抑制し、非正規雇用を進めた影響が考えられます。また昨今では、女性や高年齢者の社会進出のほか、コロナ禍の影響もあり、多様な働き方を望む人が多く、これらの様々な要因により、非正規雇用者が増えています。
しかし、非正規雇用の場合、待遇面で正規雇用とさまざまな差が生じるケースがあり、特に影響が大きいのが社会保険加入へのハードルです。

社会保険適用拡大は、非正規雇用者が正規雇用者と同様の社会保障が受けられていないという状況を改善し、より多くの労働者の社会保障を手厚くするために必要なのです。

社会保険適用拡大の対象となる「企業」と「労働者」

◆社会保険適用拡大の対象となる企業とは
2016年の法改正により、従業員数501人以上の企業では既に社会保険の適用が開始されています。今回の法改正では、2022年10月から従業員数101人以上、2024年10月からは従業員数51人以上と、対象となる企業が段階的に拡大されます。

◆社会保険加入の対象となる労働者とは
非正規雇用者のうち、以下の条件を全て満たす場合、社会保険加入の対象となります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満であること(週所定労働時間が40時間の企業の場合)
  • 給料が月額8.8万円以上であること
  • 継続して2ヵ月以上の雇用期間が見込まれること
  • 学生ではないこと

4つある要件のうち、雇用期間の要件が正規雇用者と同じ「継続して2ヵ月以上」に変更されました。

社会保険適用拡大の対象となる「企業」と「労働者」について、以下にまとめていますので、改めてご確認ください。

2016年10月〜(現行) 2022年10月〜 2024年10月〜
対象企業 従業員501人以上 従業員101人~500人 従業員51人~100人
労働時間 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満(※1) 同左 同左
賃金 月額8.8万円以上 同左 同左
雇用期間 継続して1年以上の雇用期間が見込まれること 継続して2ヵ月以上の雇用期間が見込まれること 同左(2022年10月~と同じ)
適用除外 学生ではないこと 同左 同左
  1. ※1.週所定労働時間が40時間の企業の場合

社会保険適用拡大に伴う社内準備の流れ

社会保険適用拡大に備えるにあたって、社内準備の流れを知っておくと安心です。ここでは、社会保険適用拡大に伴う社内準備の流れと、役立つ情報を併せてご紹介します。

社会保険加入対象者の把握

まずは、社内準備の流れの一つとして「新たに社会保険加入の対象となるパート・アルバイトの従業員を把握」しておく必要があります。条件としては、労働時間や賃金、雇用期間などがあり、詳しくは上述した表にまとめてありますので確認してみてください。

条件に該当するパート・アルバイトの人数が把握できたら、実際に社会保険料がどれくらい変わるのか試算しましょう。厚生労働省の「社会保険料かんたんシミュレーター」を使うことで、社会保険料の事業主負担分(年間)の概算が簡単に分かりますので、ぜひ活用してみてください。

社内周知

新たに社会保険加入の対象となるパート・アルバイトに対しては、加入対象となることを周知する必要があります。法改正の内容が確実に伝わるように、社内イントラやメールなどを活用して、できるだけ早めに周知するようにしましょう。その際には、厚生労働省が用意した資料「動画・チラシ・ガイドブック | 社会保険適用拡大 特設サイト|厚生労働省」の活用もおすすめです。

従業員とのコミュニケーション

パート・アルバイトの中には、配偶者の扶養内での勤務を希望する人もいます。そのため、社内周知後には説明会や個人面談などを実施し、社会保険加入への意思確認を行います。説明するポイントは以下の通りです。

  • 自身が社会保険加入の対象であること
  • 社会保険に加入することのメリットとデメリット
  • 配偶者の社会保険の扶養から外れること

これらを説明した上で、今後どうするかを決めていくことになります。
また、以下についても話し合いを行います。

  • 今後の労働時間について
  • 社会保険へ加入するかどうかの意思確認

対象となる従業員が配偶者の扶養内での勤務を希望する場合は、働き方の見直しが求められます。一方、腰を据えて働きたい場合、社会保険加入を機に、契約社員や正社員への転換を提案するのも選択肢の一つです。
加入対象となるパート・アルバイトが納得する選択ができるよう、コミュニケーションを密にとりましょう。それぞれ家庭の事情や希望する働き方があるため、一人ひとりに寄り添った対応を心がけるようにしてください。

書類の作成・届出

適用拡大の対象となる企業は、資格取得届の届出が必要です。「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」に必要事項を記入して、日本年金機構へすみやかに届出ましょう。同書類には、被保険者となるパート・アルバイトの氏名・生年月日・住所をはじめ、マイナンバーや基礎年金番号などの記入が求められます。書類の届出は、郵送だけでなくオンラインでも可能ですので、自社に適した方法で行いましょう。

当社が提供している社会保険労務システム「ARDIO(アルディオ)」の電子申請システムを使えば、社会保険、雇用保険の電子申請がスムーズに行えますので、社会保険適用拡大に関する業務を効率化したい企業のご担当者様は、ぜひ確認してみてください。

社会保険適用拡大に役立つ支援制度

最後に、社会保険適用拡大への対応にあたって、活用できる各種支援制度についてご紹介します。

専門家活用支援事業(無料)

専門家活用支援事業では、年金事務所を通じて、知識やノウハウが豊富な社会保険労務士を無料で派遣してもらえます。適用拡大への対応方針の検討や対象者への説明サポート、手続きに関連するアドバイスなどが受けられます。詳しくは「社会保険適用拡大特設サイト」をご覧ください。

よろず支援拠点(無料)

よろず支援拠点とは、中小企業や小規模事業者の売上拡大などの経営に関する悩みを解決するために、国が全国に設置している経営相談所です。
経営課題を解決するために、専門的な提案を無料で実施していますので、経営に関する困りごとがある場合、活用してみてはいかがでしょうか。詳しくは「よろず支援拠点」をご覧ください。

中小企業生産性革命推進事業

中小企業・小規模事業者は、ここ数年、被用者保険の適用拡大だけではなく、賃上げやインボイス導入など、様々な制度変更への対応が必要となっています。また、補助金などの支援を優先的に受けるためには、賃上げや選択的適用拡大に取り組む必要もあります。
「中小企業生産性革命推進事業」とは、中小企業がこうした制度変更に対応できるように、複数年にわたって中小企業の生産性向上を継続的に支援します。申請は「中小企業生産性革命推進事業」より行えます。

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金とは、パート・アルバイトなどの短時間労働者のキャリアアップを促進するために、正社員化や処遇改善の取組を行った事業主に対して助成する制度のことです。今回の社会保険適用拡大に関しては、選択的適用拡大を行った場合や短時間労働者の労働時間を延長した場合などに助成金の申請ができます。
助成金には以下のようなコースがあり、それぞれのコースの要件を満たせば、助成金が支払われる仕組みとなっています。

  • 短期間労働者労働時間延長コース
  • 選択的適用拡大導入時処遇改善コース
  • 正社員化コース

支給申請までの流れや申請様式のダウンロードは厚生労働省のHPより確認できますので、詳しくは「キャリアアップ助成金」をご覧ください。

まとめ

今回は、社会保険適用拡大について解説してきました。
本コラムのポイントを以下にまとめます。

<このコラムのPOINT>

  • 社会保険適用拡大の対象となる企業は、従業員数101人以上(2022年10月~)、従業員数51人以上(2024年10月~)
  • 社会保険適用拡大の対象となる労働者の条件は現行と大きく変わっていないが、「見込まれる継続雇用期間」が1年から2ヵ月に変更された
  • 社会保険適用拡大に伴い「加入対象者の把握」、「社内周知」、「社内コミュニケーション」、「書類の作成・届出」などを行い、社内準備を進める必要がある
  • 社会保険の適用をスムーズに進めるためには、時間・費用・労力が必要なため「専門家活用支援事業」「よろず支援拠点」「中小企業生産性革命推進事業」など、自社に合った支援制度を活用するのがおすすめ

従業員数101人以上、51人以上の企業では、社会保険適用拡大に伴って企業負担が増えるため、できるだけ早めに準備しておく必要があります。まずは社会保険加入対象者の把握からはじめ、必要があれば今回紹介した社会保険適用拡大に役立つ支援制度も活用しながら、対応を進めてみてはいかがでしょうか。

資格取得届の電子申請ができる、社会保険労務システム ARDIO

新たに社会保険加入となった方の資格取得届を作成し、年金事務所へ届け出るのは手間も時間も掛かります。当社が開発・販売する社会保険労務システム「ARDIO(アルディオ)」の電子申請システムをお使いいただくと、入力した従業員の情報から資格取得届の申請データを作成できます。印刷した書類を持って年金事務所へ出向く必要はなく、会社はもちろんテレワークからでも電子申請で手続きが完了します。
ぜひこの機会に、社会保険手続きの効率化を検討されてはいかがでしょうか。

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