賞与支払届の書き方|5日過ぎたら? 70歳以上も必要? 担当者の疑問を解説

企業が従業員に賞与を支給する際には、年金事務所や健康保険組合へ賞与支払届の提出が義務付けられています。

賞与支払届は、従業員が受け取る賞与の金額を明記し、所定の期限までに提出する必要があります。ただし、提出までの期限が短く、かつ従業員の年齢や雇用状況などにより異なる対応が求められるため、手続きを進める際には細心の注意が必要です。

本コラムでは、賞与支払届の基本的な書き方に加え、さまざまなケースでの対応方法を詳しく解説します。

【目次】

  • 賞与支払届とは
  • 賞与支払届の対象となる賞与とは
  • 賞与支払届の基本的な書き方
  • 賞与支払届の提出期限
  • 電子媒体による申請
  • 賞与支払届の手続きで注意すべきポイント
  • まとめ

賞与支払届とは

賞与支払届とは、年金事務所や健康保険組合が社会保険料を算出するために必要な書類です。賞与支払届を提出することで社会保険料が計算され、納付書が作成されます。

また、会社員の年金額は厚生年金保険料の納付額を基に算出されるため、賞与支払届の提出は従業員が将来に受け取る年金額にも影響します。

賞与を支払った場合は、必ず賞与支払届を提出しましょう。

賞与支払届の対象となる賞与とは

日本年金機構では、賞与支払届の対象となる賞与を以下のように定義しています。

「賃金、給与、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対価として受け取るもののうち、年3回以下で支給されるもの」

引用:日本年金機構「従業員に賞与を支給したときの手続き

つまり名称を問わず、毎月支給する給与のほかに「労働の対価として賞与などを年3回以下支給」した場合は、賞与支払届が必要となります。

ただし、年4回以上賞与を支給する場合は、社会保険料の算定基準となる標準報酬月額の対象として扱われるため、賞与支払届の提出は不要です。

前年の7月から当年の6月までに4回以上の賞与が支払われた場合は、毎年7月に行う定時決定(算定基礎届)の手続き時に、賞与額を12ヶ月で割った額を各月の報酬に加え、報酬月額を算出する必要があります。

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賞与支払届の基本的な書き方

賞与支払届は、従業員一人ひとりの基本情報や賞与額を記載する必要があります。この項では、賞与支払届の基本的な書き方を以下の図に沿って解説します。

健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届
【出典:日本年金機構「健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届」(一部加工)】

1.被保険者整理番号

被保険者整理番号とは、従業員が健康保険や厚生年金保険に加入したときに付与される番号のことです。

協会けんぽ(全国健康保険協会)に加入している場合は、年金事務所で健康保険と厚生年金保険が一括管理されているため、被保険者番号を共通で使用します。

一方、健康保険組合に加入している場合は、厚生年金保険と異なる番号が付与されます。健康保険組合の加入企業は、賞与支払届を健康保険用と厚生年金保険用に計2枚作成し、それぞれ提出が必要です。

2.生年月日

生年月日欄には、従業員の生年月日を和暦で記入します。元号は以下のとおり番号で記入するため、間違わないように注意しましょう。

  • 明治:1
  • 大正:3
  • 昭和:5
  • 平成:7
  • 令和:9

たとえば、従業員の生年月日が「昭和60年4月30日」の場合は「5-600430」と記入します。

3.賞与支払年月日

賞与を支払った年月日は「賞与支払年月日(共通)」欄に記入します。また、特定の従業員に賞与を異なる年月日に支払った場合は、「賞与年月日」欄に記入します。

「賞与支払年月日(共通)」と支払年月日が同じ場合には記入不要です。

4.賞与支払額と賞与額

「賞与支払額」欄には実際に支払った金額を記入し、「賞与額」欄には賞与支払額の千円未満を切り捨てた額を記入します。

たとえば、賞与支払額が500,500円だった場合は、賞与額欄に記載する金額は500,000円になります。切り捨てとなる理由は、賞与に関わる社会保険料が、賞与支払額の千円未満を切り捨てた額に保険料率を掛けて算出されるためです。

また、保険料率を掛ける基準となる額を「標準賞与額」といいます。

5.個人番号(基礎年金番号)

「個人番号」の欄は、70歳以上の従業員のみ記入が必要になります。

70歳以上の従業員に賞与を支給した場合は、個人番号(マイナンバー)または基礎年金番号を記入しましょう。

6.備考

備考欄にある「1.70歳以上被用者」「2.二以上勤務」「3.同一月内の賞与合算」のいずれかに該当する場合は、該当項目を丸で囲みます。

各項目の詳細は以下のとおりです。

  • 70歳以上被用者:70歳以上で社会保険の加入要件を満たしている場合
  • 二以上勤務:2ヵ所以上の適用事業所に勤務している場合
  • 同一月内の賞与合算:同じ月内に2回以上の賞与を支払った場合

賞与支払届の提出期限

賞与支払届の提出期限は、賞与支給日より5日以内と定められています。賞与支給日より前には提出できません。

なお、実務上は5日を過ぎた場合でも受け付けてもらえます。数日遅れたとしてもペナルティはありませんが、注意を受ける場合があるため早急に提出しましょう。

また、健康保険組合に加入している場合は、健康保険組合と年金事務所に賞与支払届を提出する必要があるため、書類作成を終えるまでに時間がかかる場合があります。提出までの期限が短いため、賞与計算が終わり次第賞与支払届を作成し、速やかに提出できるように事前に用意しておくとよいでしょう。

もし届出を忘れた場合は、賞与支払予定日の翌々月に年金事務所から催告状が送られてきます。催告状が届いたら、ただちに賞与支払届を提出し、期日までに保険料を納付しましょう。

出典:従業員に賞与を支給したときの手続き(日本年金機構)

電子媒体による申請

賞与支払届は、CDやDVDなどの電子媒体による作成・届出が可能です。この項では、電子媒体による申請を解説します。

電子媒体申請とは

電子媒体申請とは、社会保険手続きに必要な情報をCDやDVDに書き込み、年金事務所や健康保険組合に申請する方法です。

データで従業員情報を管理でき、効率的に労務管理を進められます。

電子媒体申請の方法

電子媒体による申請時には所定の形式に合わせたCSVデータを作成し、CDやDVDに書き込む必要があります。

データの作成方法は、主に「自社で導入している給与システムの利用」もしくは「日本年金機構が提供するパソコンソフトの利用」の2つです。

電子媒体用のデータを作成できる給与システムを導入している場合は、システムからデータを作成できます。もし、給与システムを導入していない場合は、日本年金機構が提供するパソコンソフトを利用すればデータの作成が可能です。

なお、届出の際には作成したデータをCDやDVDに書き込んだうえで「電子媒体届書総括票」の作成が必要です。電子媒体届書総括票には、識別情報・事業所記号・データ件数などの必要事項を記入します。

作成した電子媒体届書総括票にCDやDVDを添付し、年金事務所や健康保険組合に届け出れば申請完了です。

電子媒体申請のメリット

電子媒体申請のメリットは、効率的に書類を作成できることです。また、人事・給与システムと連動されていれば、最新の個人データを活用して容易に届出書が作成できます。

特に賞与支払届を数多く作成する際には、大幅な作業効率化が図れるでしょう。

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賞与支払届の手続きで注意すべきポイント

賞与支払届は、従業員の状況に合わせてさまざまな形での手続きが想定されます。

ここからは、以下の場合ごとに注意すべきポイントを解説します。

A) 70歳以上の従業員に賞与を支給した場合
B) 2ヵ所以上の企業で社会保険に加入している場合
C) 同月に2回以上賞与を支給した場合
D) 退職した従業員に賞与が支払われた場合
E) 産休・育休中の従業員に賞与を支払われた場合
F) 賞与支払届を提出後に修正する場合
G) 予定通りに賞与を支給しなかった場合

A)70歳以上の従業員に賞与を支給した場合

70歳以上の従業員は厚生年金保険の資格を喪失しているため、厚生年金保険料は徴収されません。

しかし、給与や賞与の金額に応じた在職年金制度があるため、賞与支払届の提出が必要です。提出された賞与支払届の内容に合わせて、年金額が調整される可能性があります。

なお、賞与支払届に記入する際には、「個人番号」欄に個人番号(マイナンバー)または基礎年金番号を記入したうえで、備考の「70歳以上被用者」を丸で囲む必要があります。

B)2ヵ所以上の企業で社会保険に加入している場合

従業員によって、自社ではフルタイムのパートとして働きながら、複業で企業の代表取締役を務めているなど、2ヵ所以上の企業で社会保険に加入している場合があります。

2ヵ所以上の企業で社会保険に加入する従業員に賞与を支給した場合は、備考欄の「二以上勤務」に丸を囲みましょう。

なお、2ヵ所以上勤務しているかの確認は、従業員本人の手続きによって「二以上事業所勤務被保険者標準報酬決定通知書」が企業に届くため、通知書にて確認ができます。

出典:従業員に賞与を支給したときの手続き(日本年金機構)

C)同月に2回以上賞与を支給した場合

月内に2回以上賞与を支給した従業員の賞与支払届には、最後に賞与を支払った日を賞与支払年月日として記入し、合算した賞与額を記載するのが原則です。

最終的には、合算した賞与額の千円未満を切り捨てた額に、料率を掛けて算出した額が納付する保険料となります。

賞与支払届には、備考欄に記載されている「同一月内の賞与合算」に丸をつけ、括弧内には初回支払日を記入します。

なお、すでに1回目の賞与支払届を提出した場合は、2回目の賞与を支給する際に2回目の賞与額だけを記載し提出しましょう。

用紙の余白などに「1回目の賞与〇月〇日支給済」と記載しておくと、年金事務所の担当者が理解しやすくなります。

出典:従業員に賞与を支給したときの手続き(日本年金機構)

D)退職した従業員に賞与が支払われた場合

退職した従業員に賞与を支給した場合も、退職前に賞与が支給されている場合は賞与支払届の提出が必要です。

ここでは、いくつか具体例を紹介します。

例1:12月10日に賞与を支給した従業員が12月31日に退職した場合

退職前に賞与を支払っているため、賞与支払届の提出が必要です。

なお、従業員が12月31日に退職した場合、社会保険の資格喪失日は1月1日となるため、賞与から社会保険料を控除します。

例2:12月10日に賞与を支給した従業員が12月15日に退職した場合

この場合も退職前に賞与を支払っているため、賞与支払届の提出が必要です。しかし、社会保険の資格喪失日は12月16日となるため、賞与から社会保険料は控除しません。

なお、社会保険料を控除しない従業員でも賞与支払届を提出する理由は、再就職先で同じ健保に加入した際に、年間の賞与累計額を算出する場合があるためです。

例3:12月10日に賞与を支給したが、12月5日に従業員が退職をしていた場合

賞与支給日にすでに退職しているため、賞与支払届の提出は必要ありません。また、社会保険の資格喪失日は12月6日となるため、賞与からの社会保険料控除も不要です。

なお、12月6日に定年再雇用などで同日得喪(従業員が退職後1日の空白もなく継続して再雇用された場合に認められる特例)がある場合には、再雇用後に賞与支給日を迎えているため、新しい被保険者整理番号で賞与支払届を提出する必要があります。

例4:12月10日に賞与を支給したが、12月10日に従業員が退職をしていた場合

賞与支給日と退職日が同日の場合は、資格喪失日が12月11日となり、喪失日以前に賞与が支給されているため、賞与支払届の提出が必要です。

一方、退職日が12月9日で喪失日が12月10日の場合は、賞与支給日に資格を喪失しているため、賞与支払届は必要ありません。

なお、賞与からの社会保険料控除は月の途中で資格を喪失しているため、控除不要です。

例5:同月得喪者に賞与を支給した場合

同月に資格を取得・喪失(同月得喪)した場合は、原則当月分の社会保険料が発生します。

しかし、賞与を支給した場合は、喪失日によって対応が異なるため注意が必要です。たとえば、12月1日に資格を取得し、12月10日に賞与が支給された後、12月11日に資格喪失した場合は、社会保険料を控除します。

また、資格喪失日前に賞与が支給されているため、賞与支払届を提出する必要があります。

なお、12月1日に資格を取得後、12月9日に資格喪失し、12月10日に賞与が支給された場合には社会保険料の控除は不要です。

資格喪失日後に賞与が支給されている場合は、賞与支払届を提出する必要はありません。

E)産休・育休中の従業員に賞与が支払われた場合

法律上、産休や育休中は社会保険料が免除されるため、休業期間中に支払われた賞与から社会保険料は控除しません。

しかし、健康保険料の年度累計額を算出する関係から、賞与支払届の提出は必要ですので、忘れずに届出ましょう。

出典:従業員に賞与を支給したときの手続き(日本年金機構)

F)賞与支払届を提出後に修正する場合

賞与支払届の提出後、記載内容に誤りが発覚した場合は訂正が必要です。

訂正するには、賞与支払届の余白に「訂正届」と赤字で記入したうえで、誤った金額を赤、正しい金額を黒で記入した書類を提出します。

被保険者賞与支払届 70歳以上被用者賞与支払届(日本年金機構)
【出典:日本年金機構「被保険者賞与支払届 70歳以上被用者賞与支払届」(一部加工)】

ただし、誤った内容によっては対応が異なる場合があるため、事前に年金事務所や健康保険組合に確認したうえで作成しましょう。

G)予定通りに賞与を支給しなかった場合

賞与支払予定月は、基本的に「新規適用届」や「事業所関係変更(訂正)届」を提出した際に登録されています。

登録されている場合は、賞与支払予定月の前月に年金事務所から賞与支払届などの書類が一式送付されます。

もし登録月に予定通り賞与を支給しなかった場合は、「賞与不支給報告書」の提出が必要です。

報告書の提出がない場合は、後日「提出勧奨のお知らせ」が年金事務所から送付されてくるため、賞与を支給しなかった場合には必ず提出しましょう。

まとめ

賞与支払届は、年金事務所や健康保険組合が社会保険料を算出するための必要書類です。賞与の支払日から5日以内に提出が義務付けられており、タイトなスケジュールのなかで作成を進める必要があります。

従業員一人ひとりの書類を手書きで作成するには手間がかかりますし、健康保険組合に加入する企業では書類を2枚作成しなければいけません。

社会保険関連の手続きを円滑に進める電子申請システム「ARDIO」を用いれば、パソコンからいつでも申請ができ、提出までの時間と手間を軽減することができます。また、既存の給与計算システムなどで作成した届出データを「ARDIO」から電子申請することも可能です。

健康保険組合への電子申請に必要となるマイナポータルAPIにも対応しておりますので、社会保険関連の業務効率化を検討されている企業さまは、ぜひ「ARDIO」の導入をご検討ください。

なお、電子申請に未対応の健康保険組合もありますので、事前のご確認をお願いいたします。

著者プロフィール

北 光太郎
社会保険労務士

中小企業から上場企業まで様々な企業で労務に従事。勤務社労士として計10年の労務経験を経て「きた社労士事務所」を設立。独立後は労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人・個人問わずWebメディアの記事執筆・監修を行いながら、自身でも労務情報サイトを運営している。

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