アサーション(3)ービジネスシーンでの実践ー
公開:2017年10月03日
前回はアサーションを含めた「三つのタイプの自己表現」を紹介しました。職場での会話を想定したうえでそれぞれの特徴を挙げて説明し、それをふまえてアサーションを実践するヒントを紹介しました。
今回はビジネスシーンでアサーションを実践している具体例を紹介します。具体例では、ある場面に対してAとBの返答があります。どちらの返答がアサーションを実践しているでしょうか。
若い社員のうっかりミスを指摘する
A:「実はこの部分だけど、先日も同じミスをしていたね。そのために今回も周りの人が対応をしてくれていたよ。以前のミスから何か対策を考えたかな?まだ考えていないなら、ちょっと考えてみてくれる?そうして一緒に、対策を考えてみよう。」
B:「いや、大したことではないんだよ。でもこの間も同じミスをしていたよね。ちょっと気をつけた方がいいと思うんだ。慣れるまで大変だと思うけれどね。」
この場合はAの返答がよりアサーションを実践しているといえるでしょう。若い社員は仕事に慣れていないため同じミスを繰り返しやすく、何度も指摘をする方もされる方も良い気分にはなれません。しかし若い社員を育てることは大切ですので「指摘をする」ことは必要です。Aの場合は「どこが間違っているのか」を指摘して、そのうえで「ミスの影響」を説明しています。さらに「具体的な対策」について話を引き出し、「一緒に考える」と共感をしています。一方、Bは「大したことではない」「いいと思う」「大変だと思うけれど」と、どちらかと言うと対応がパッシブ(受身型)になり、相手に遠慮をしすぎてミスを指摘した事実が伝わらない可能性があります。
今は「上司が部下を褒めることも、叱ることも難しい時代」と言われています。ではより良く若い社員を育てるポイントは何かというと「共感すること」なのです。今の時代のビジネスシーンに必要な「共感」は、アサーションの「お互いを尊敬する」ことにあてはまります。
普段は無口な上司から、前回の仕事の結果を褒められた
A:「ありがとうございます、嬉しいです。次も頑張りますので、ご指導をお願いします。」
B:「すみません。でも他の人も手伝ってくれました。だから結果が出せたのだと思います。」
Aの返答がよりアサーションを実践しています。この場面では上司は部下を「喜ばせたい」という気持ちをもって褒めているのです。Aは自分の嬉しいことを表現し、今後についての考えも示しています。Bの場合は周囲の顔色を見ていて、どちらかと言えばパッシブ(受身型)な対応です。例えば「すみません」は、謝っていると勘違いされる可能性があります。また上司はBを褒めているので他の人のことよりも、まずは素直に喜びと感謝を表しましょう。
「ありがとう」と「すみません」は正確に使いましょう。日本語では感謝の意味で「すみません」と使う人もいますが、本来は謝罪の言葉です。褒められた時は素直に「ありがとうございます」と言いましょう。謝罪をする時には「申し訳ございません(申し訳ありません)」を使いましょう。
色違いの洋服を見比べているお客様に対して
A:「お客様、どちらの色もよくお似合いですね。両方とも今年の流行の色ですので、よく売れています。お買い上げになられるなら、お早い方が良いですよ。」
B:「お客様、どちらの色もとてもお似合いです。両方とも今年の流行の色ですよ。確認しましたら、2、3日ならお取り置きが可能です。ゆっくりとお考えくださいね。」
この場合はBの返答がよりアサーションを実践しています。お客様の立場なら、両方の色を買うか、どちらの色だけ買うか楽しみながら考えている場面の可能性が考えられます。Aの場合は親切心からとはいえ、Aの都合や見方を前面に押し出している面からアグレッシブ(攻撃型)の対応となります。この場合、お客様がゆっくりと買い物を楽しみたい気分をそぐ可能性もあります。Bのように確認したうえで「取り置きもできる」と伝えれば、お客様も時間をかけても良いという心の余裕をもって、買い物を楽しんでいただけます。
まとめ
アサーションという言葉に慣れていなくても、会話の中で「お互いにとって心地良い結果にたどり着くようにする」ことを心がけていれば、少しずつアサーティブな関係を持つことができるようになります。アサーションを実践して心地良いコミュニケーションができるように心掛けていきたいですね。
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