緊急時に備える!BCP訓練の種類と机上訓練のポイントについて

公開:2018年10月31日

BCPとはBusiness Continuity Planの略で、災害や事故、テロなどが起きた時に重要な業務が中断しないようにする、またもし中断となった場合でも可能な限り早急に機能を復活させるための「事業継続計画」のことを指します。2018年、地震や台風などの自然災害が続いたこともあり、自社のBCPについて改めて見直している企業も少なくないのではないでしょうか。

そこで今回は、BCPがより有効に活用されるために必要な訓練について、重要性や種類、訓練のポイントについて解説します。

策定したBCPをテストするには訓練が必要

BCP策定における最も重要なポイントは、BCPは計画して終わりではなく、いざというときに計画通りに行動できるか、またその計画が本当に緊急時に使えるものかどうかを評価する必要があるということです。なぜなら、頭で理解し策定したことと、実際に行動してみる、具体的にシミュレーションを行うなどした結果では、少なからず不備や欠陥が生まれることがあるからです。

計画を評価するためには、BCP訓練を実施することが非常に有効です。いざ緊急事態になった時に慌てないためにも、予行演習をしておくと良いでしょう。また、BCPが発動したときに正確・迅速に行動できるよう、作業に携わる人を訓練することも大切です。

BCP訓練の種類について

BCP訓練の方法には「机上訓練」「電話連絡網・緊急時通報診断」「代替施設への移動訓練」「バックアップしているデータを取り出す訓練」「総合訓練」の5つがあります。
それぞれの訓練内容について、ご紹介します(※)。

中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針 BCP訓練の実施」を参考に作成
【1】机上訓練

作成したBCPの手順に従い部署やメンバーごとの役割を確認し、計画通りに実際に行動できるかどうかを議論形式で検討するものです。計画書を印刷して時系列に各メンバーがすべきことの意識合わせをしていきます。計画の手順に矛盾がないか、優先順位は正しいかなどを関係者全員で確認することができます。

【2】電話連絡網・緊急時通報診断

緊急事態が発生した際に、速やかに従業員に連絡が行くかどうかを確認する訓練です。あらかじめ連絡網を作成し、実際に連絡することで確認します。事業継続計画のためだけでなく、自然災害時の安否確認の手段としても緊急連絡網を整備しておくことは重要です。訓練することで、連絡が漏れなく行き渡るか、連絡先が最新かをチェックできます。

【3】代替施設への移動訓練

バックアップの工場や事業所を準備している場合に行う訓練です。復旧にあたる要員の一部を実際にバックアップの拠点に移動させ、その場所で計画通りに事業を復旧させられるかどうかを確認します。

【4】バックアップしているデータを取り出す訓練

バックアップしている電子データや書類を迅速に取り出すことができるか確認する訓練です。情報システムを利用している場合は、稼動しているシステムの被災に備えて代替システムを用意し、問題なく起動させられるかどうかも確認しましょう。この訓練を行うためには、日頃から定期的にバックアップを行っていることが必要となります。平常時のバックアップ計画も事業継続の前提としてBCPに含めるべき項目です。

【5】BCP全体を通して行う総合訓練

BCPが発動したときの行動を始めから終わりまで通して行います。

ここまでご紹介した中で、初めて訓練を行うのであれば簡単に実践できる「机上訓練」がおすすめです。机上訓練は、実際に人員を移動させたりデータを取り出したりの作業を行わないため、時間や費用の負担を最小限に抑えることができます。可能なら総合訓練を実施したほうが良いのはもちろんですが、机上訓練でもポイントを押さえて実施すればBCPをよりブラッシュアップすることが可能です。BCP机上訓練の簡単な流れとポイントを以下にまとめました。

BCP机上訓練の流れ・ポイント

机上訓練の実施は「計画」「実施」「評価」の3段階に分かれています。計画段階では、なるべく具体的な被害想定を立てることで、訓練対象者も状況を具体的にシミュレーションすることができます。「自然災害が起きた場合」という漠然とした想定ではなく「○○地方で大地震が起き、A事業所が停電」と具体的に設定したほうが効果的です。

訓練におけるポイントは2点あります。まず1点目は訓練対象者へ目的や内容の説明を入念に行うことです。
この作業は何のために行っているのかが分かるとBCPの内容が定着しやすくなります。作業の手順だけでなく、その作業の目的が分かるように適宜説明を挟むと良いでしょう。
また、机上訓練の目的はBCPが実態に即して計画されているかを確認することなので、疑問点や改善点があれば積極的に発言してもらいたい旨も伝えておきましょう。

もう1点のポイントは、机上訓練はBCPの実効性を評価するために行うので、最後の「評価」段階が最も重要であるということです。机上訓練を実施して終わるのではなく、課題や不明点・懸念点などを訓練対象者で洗い出して評価し、改善策を検討しましょう。改善策は机上訓練に反映させることで、より実効性のあるBCPにブラッシュアップされます。
したがって、一度机上訓練をすれば安心というわけではありません。事業の内容も時間が経てば変化しますので、定期的に訓練を実施し、BCPを最新の状態に保つようにしましょう。

まとめ

事業活動における訓練は、社内で働いている社員に安心感を与える効果もあります。
当然ですが、どこでどのような災害が起こるのかという予測は非常に困難です。そのため、いざというときに事業や社員を守るためにも、可能な限りあらゆるケースに対応できるようなBCPを策定することが望ましいです。
そして質の高いBCPを策定・維持するためには訓練を繰り返す必要があります。率先して経営トップを始めとする全社員がBCPに対し考える機会を設け、積極的に関わることが、事業を継続させるために重要なことではないでしょうか。

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