AI面接がもつ可能性と現状の課題について

ビジネスにAIを活用する分野や範囲が徐々に広がりを見せる中、ついに人材採用の場にAIが進出し始めました。
対面コミュニケーションによる面接が一般的である日本企業においてAIやロボットが採用を司るという考えは、企業側としても求職者側としてもどこまで受け入れられるか賛否が分かれるところだと思います。
今回は、採用活動のどの場面でAIの活用が始まったのか、最新の事例をご紹介するとともに、特に注目を集めそうな「AI面接」について掘り下げてみたいと思います。

採用現場におけるAIの活用事例

まずは採用現場におけるAIの活用事例を二つほどご紹介します。

まず1つ目は、「AIロボットによる面接」の事例です。
日本のスタートアップ企業が2017年10月に新卒採用向けAI面接サービスを開発し提供しました。サービスと連携したスマートフォンやロボットが求職者と面接を行います。

入社希望理由や自己PRなどの定番の質問から、回答内容によっては「もう少しその取組を詳しく教えてください」などの掘り下げる質問も。様々な質疑応答を通じて求職者の「柔軟性」や「バイタリティ」「ストレス耐性」など10以上の項目を評価するというサービスで、提供を開始してから1年弱で既に30社以上の企業で導入されているとのことです。

もう1つの事例は、「AIによるヘッドハンティングサービス」です。2018年8月にリリースされたこのサービスは、エンジニアと企業をマッチングさせることを目的としています。
最大の特徴としては、転職支援サービスでは当たり前とされていたユーザーの「サービス利用登録」と「履歴書の提出」というステップが不要であるという点です。個人ブログやSNS、技術情報共有サービス等により得られた情報からAIがその人のスキルや志向を客観的に分析します。さらに公開されている連絡先情報を通じてサービスを利用している企業がオファーを送ることができるサービスです。
現時点では積極的に転職活動をしているわけでない、いわゆる「転職潜在層」にもアプローチできるという特徴もあり、企業にとってもメリットの大きいサービスとして注目されています。

AI面接が生まれたきっかけ

ではここからは活用事例の1つ目でご紹介した「AI面接」について詳しく見ていきましょう。
まずは、なぜAI面接が誕生したのかについてご紹介します。
AI面接の先駆けとも言えるサービスが誕生したのは2004年。アメリカの大学に通う学生が開発しました。広大な面積を持つアメリカでは、学生が企業に出向くために多くの時間と費用がかかります。以前から電話でのインタビューやスカイプを利用したオンライン面接も利用されていましたが、インターネット環境が悪いと途中で会話が途切れてしまうなど不具合もありました。
そこで、質問に回答する動画を録画し送るシステムを開発。双方が時間の制約にとらわれず録画・視聴できることにより面接のための日程調整が不要であることから、またたく間に広がりました。
現在はライブでの面接も可能なうえ、AIによる選考支援機能を用いることで1次面接とほぼ同様の面接が行えるまでとなり、世界の著名企業600社以上に導入されています。

AI面接が普及することによるメリット

AI面接がもし普及した場合、企業側と求職者側それぞれに生まれるメリットはどのようなものでしょうか。

<企業側のメリット>
企業側のメリットは、「面接業務の省力化」と「社内評価基準(ノウハウ)の統一」の2つが挙げられます。

まず面接業務の省力化ですが、書類選考や1次面接をAIに任せるだけでも人的コストは大きく削減できるでしょう。仮に新卒採用で50人の学生と面接することになった際、1人あたり30分の面接時間として0.5時間 × 50人 = 25時間分の面接担当の工数を、本来の業務やほかの業務に回すことができるという計算となります。

また、どれだけ評価基準を明確化したとしても、人間が評価する以上は面接官の印象が含まれてしまうのを避けることは非常に難しいと言えます。つまり同じ求職者であっても、面接官によって評価にバラつきが生じてしまうという意味であり、AIに面接を任せることで「印象」という偏りを取り除いた公正な評価をしやすくなるという利点もあるでしょう。

<求職者側のメリット>
AI(ロボット)による面接はオンラインでも行うことができるため、場所や時間を選ぶことなく選考を進めることができるというメリットがあります。応募する側である求職者側にとってみれば、遠方の会社への面接は移動だけでも多くの時間を要します。
日程調整の手間も省け、スケジュールや距離の都合で断念せざるを得なかった企業にもエントリーができるという点で、求職者にとってはより広い選択肢の中から企業を探すことができる点がメリットです。

また、企業側のメリットとして挙げた「評価基準の統一化」は求職者側にとってもメリットとなり得ます。スキルや人格的に自社のニーズにマッチしていた可能性が高いはずの人材でも、面接官との相性次第では落とされてしまうこともあり得えます。
AI面接の場合、主観要素を取り除かれた形で過去の面接データを基に機械的に評価されるため、面接官との人間的な相性を心配する必要はまず無くなるでしょう。

現状のAI面接の課題とは

メリットも大きいとは言え、AI面接を導入するということは、これまで人間の領域とされていた「コミュニケーション」の部分を機械化するのと同義です。単純作業の自動化等とは違うため、「本当に大丈夫なのか」「AIでしっかりと判断できるのか」という不安の声も大きいのが現状です。

AI活用に共通する課題とも言えますが、AIは蓄積したデータを基に物事を判断するために「どのようなデータを学習させるか」が運用の精度に大きく関わります。評価基準を統一化することで、AIが画一的な人材ばかりを良しと判断し、結果としてタレントの多様性が失われかねないといったような懸念も指摘されているのです。

また、AIは結論を出すことはもちろんできますが、ではなぜAさんは合格でBさんは不合格であるのか理由を説明しない・できないというデメリットがあります。つまりAIが出した答えに対し合理性があるのかをAI自身が説明してくれないため、結局は人間による確認作業が発生してしまうことになります。

そのような背景もあり、現状では多くのエントリーがある大企業の書類選考やエントリー者の選考、1次面接のみに利用するなど補助的なツールとしての利用にとどまっています。
企業文化に合うかどうかなど、AIによる評価が難しい項目も加味されることが多いのが面接です。採用までの一連の面接をAIにすべて任せられるようになり、そのことを企業が受け入れるようになるまでにはまだ時間がかかることでしょう。

まとめ

今回はAI面接について、メリットや現状の課題などを挙げてきました。
注目が集まっている分野ではありますが、現時点ではAI面接はあくまで「選考活動を便利にする1ツール」という役割で捉えておきましょう。

時間はかかるかもしれませんが、将来的にAI面接が当たり前になる可能性も考えられます。出迎えてくれたロボットがそのまま面接官になる・・・そんな時代がすぐ近くまでやってきているのかもしれませんね。

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