「Society 5.0」とは?私達の暮らしや仕事はどう変わるのか?
公開:2019年03月19日
突然ですが、「Society 5.0(ソサエティ5.0)」という言葉をご存知ですか?2016年1月に内閣府から発表された第5期科学技術基本計画のひとつであり、アベノミクス第三の矢「成長戦略」で重要な役割を担っているものです。
しかし、それだけ大きな役割を持っていながら、認知度は余り高くないというのが現状であり、発表から3年が経った今でも「結局どんな政策なの?」「企業は何をすればいいの?」という意見もあります。
Society 5.0が私たちの生活にどう影響し、企業は日本経済を支える一員としてどのような施策を展開していけば良いのでしょうか。「そもそもSociety 5.0って何?」という根本的な疑問についても答えながら、解説していきたいと思います。
Society 5.0とは
そもそも「Society 5.0」とは何なのでしょうか?内閣府はSociety 5.0を、
『サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会(Society)』
と定義しています。
私たち人類の社会は、「狩猟社会(Society 1.0)」「農耕社会(Society 2.0)」「工業社会(Society 3.0)」「情報社会(Society 4.0)」と発展していっており、今回提唱された「Society 5.0」はこれらの社会に続く“新たな社会=超スマート社会”の実現に向けた取組であるとされているのです。
これまでの変遷を見ると、「人類の社会の歩み」といった壮大なテーマであるかのように見えます。しかし、難しく考えるのではなく、ひとつ前の情報社会(Society 4.0)では実現できなかった「知識や情報の共有」を推進することで、一人一人が快適で活躍できる社会、少子高齢化や地方の過疎化等の課題を克服する社会が、「Society 5.0」であると考えると理解しやすいかもしれません。
この、知識や情報を共有する手段には、「IoT(Internet of Things)」と「AI(人工知能)」の活用が不可欠であるとされています。
IoTはモノをネットにつなげ、様々な知識や情報を収集し共有する、AIは集約されたビックデータを解析し、必要な情報を必要な時に提供できるようにする役目を担います。
そして、人に新たな価値をフィードバックするための役割を、ロボットや自動走行車などの技術が担うこととなります。
事例で見るSociety 5.0
「Society 5.0」が提唱された背景には、これまでの情報社会(Society 4.0)では、たくさんの情報から必要な情報だけをピックアップし分析するのは人であったため、人の力や能力だけでは難しい、という問題がありました。ほかに、「年齢や障害などによる行動範囲の制約」なども情報社会(Society 4.0)の問題点でした。
その問題点を解決すべく、様々な分野におけるSociety 5.0の活用が検討されています。
家にいながら診療が受けられる
タブレット端末などを使い、主治医の診察がオンラインで受けられるような時代になります。わざわざ遠くの病院まで足を運ばなくてよいので、通院の手間を省くことができます。また、電子カルテを用いて患者さんの病状を医師同士が共有し合えれば、患者さんにとってベストな診断を下せるようになるでしょう。
これまで、通院できない人は医師の「往診」を受ける必要がありました。しかし、タブレット端末などを使った遠隔医療が普及すれば、医師が患者さんの家にわざわざ出向く必要がなくなり、医師にとっての負担も減らすことができます。
自動走行バスで“住民の足”を確保
住民の足であったバスが廃線に・・・。過疎地におけるそんなニュースを耳にすることもあろうかと思います。高齢者の場合、通院が難しくなったり、日々の食料品の買い物がしづらくなってしまった結果、家に引きこもりがちになるといった問題が生じます。また、高齢者による自動車事故の割合が増えていることも、社会問題となっています。
そんな中注目を集めているのが、「自動走行バス」の存在です。無人で走るこのバスは、「乗客数が少なく採算が取れない」といった理由で廃線になりにくいのが特徴。自動走行バスが導入されれば、時間帯を問わず、行きたい場所に今までよりも気軽に行けるようになるでしょう。また、運転手不足という課題を解決する存在としても、期待されています。
現在、地方都市では自動走行バスの試験運転が行われており、2020年までに限定地域におけるサービスの実現に向け、官民一体となった取組が行われています。
農業の人手不足を解消し、知識を未来へ継承する
農業の担い手の高齢化や人手不足、後継者不足が問題とされている農業。省力化と作業効率向上に一役買う存在として注目されているのが、無人トラクターやドローンの活用です。
GPSによって正確に把握された農地を、無人のトラクターが土起こしや種まきを行う。ドローンに搭載されたカメラが、農作物の生育状況を把握する。広大な農地を維持・管理するための取組として、既に実証実験も進められているそうです。
さらに、より良い農作物を生み出すために培われてきた知識や経験を未来へ繋げるための取組として、栽培や収穫の情報をデータ化し、ノウハウを可視化する取組も始まっています。例えば、海外や訪日客にも人気が高いブランド苺も、ビニールハウスの開閉から、スプリンクラーの作動、栄養を与えるタイミングなど熟練の経験が全てデータ化され、栽培に活かされています。
企業はSociety 5.0にどのように関わっていくべきか
Society 5.0の浸透によって、医療や物流、交通などさまざまな分野で代替サービスの登場が予測されます。このような社会が実現されれば、年齢、性別、地域、⾔語といった様々な違いを乗り越え、モノやサービスを必要なときに提供できるようになります。
こうした中で企業は、新しい技術を生み出す企業と連携することで、自社ビジネスを変革することができると言えるでしょう。
例えば「製造」「運輸」「卸売」「情報通信」と4種の業種がSociety 5.0の考えにおいて連携すれば、消費の動向を通じて製造や流通を最適化し、ドローンなどを用い商品を低コストで運ぶことが可能になります。ひとつの分野では解決できないことも、複数の業種が協力し合うことで、自社の発展はもちろんのこと、経済発展や社会的課題の解決にも役立てられることに繋がります。
まとめ
サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を融合させることで、これまで実現できなかった社会を実現しようという「Society 5.0」。これからも、各分野でさまざまな技術革新が起きることが予想されます。
自分たちだけでは実現が不可能と思われる技術やサービスであっても、組織間・企業間が連携することで、新たなイノベーションが生まれるでしょう。日本の強みである技術力・研究力、人財、良質な情報という資源をどう活用していくか、自社のビジネスを発展させるためにも、情報を継続的にキャッチアップしていきましょう。
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