社内向けビジネスチャットの事例から見る導入のメリットや効果とは

リモートワーク、フレックスタイム制、時短勤務・・・など、多様な働き方が受入れられるようになってきた現在において、社内コミュニケーションの在り方にも変化が訪れています。

具体的には、これまでメールや電話が中心となっていた対面以外での社内コミュニケーションについて、「ビジネスチャット」を取り入れる企業が増えてきました。そこで今回は、SNSのように従業員同士がメッセージを送り合うことができ、迅速な情報共有が可能になるビジネスチャットについてご紹介します。

ビジネスチャットを導入する企業が増えている

総務省の発表している「平成30年度版 情報通信白書」の「ビジネスICTツールの導入状況(国際比較)」によると、日本におけるビジネスシーンでのチャットツールの導入率は23.7%なので、5社に1社以上は導入している計算です。しかし、アメリカ(67.4%)やイギリス(55.9%)と比べると、日本の導入率はこれでもまだ低いと言えます。しかし、必要な情報をすぐ伝えられるチャットツールは、その利便性の高さから今後も導入する企業は着々と増えていくであろうことは予想されます。

その予想は市場規模にも表れています。民間の調査会社が発表した2017年のデータ(※)によると、ビジネスチャットの市場規模は2017年度では約60億円(見込)ですが、2021年度には130億円まで成長すると予測されています。

2019年に施行された働き方改革関連法では、多様な働き方や業務効率化、生産性向上の実現が目的とされています。「必要なことだけを」「いつでもどこでも伝えられる」ビジネスチャットは、従来の業務プロセスの見直しや、テレワークを導入した柔軟な働き方の実施にも大いに貢献できると期待されており、総務省が活用事例を取り上げるほど注目を集めているのです。

「株式会社富士キメラ総研:2017 コミュニケーション関連マーケティング調査総覧」プレスリリースより参照

ビジネスチャット導入の3つのメリット・効果

では、既に導入している企業はビジネスチャットのどのような点にメリットを感じ、導入を決めたのでしょうか。以下では、ビジネスチャット導入における3つのメリットをご紹介します。

(1)社内コミュニケーションを促進できる

同じ会社で働く同僚であっても、フロアが違ったり席が離れたりしていると、気軽にコミュニケーションが取りづらいということは、多くの人が感じていることかと思います。ちょっとしたことを聞きたい・話したいという場合において、「わざわざメールするほどのものではないかな」と、手間を感じて諦めてしまうこともあるでしょう。そんなときに活躍するのがビジネスチャットです。
というのも、ビジネスチャットの利点のひとつは、SNSに短文を投稿する感覚で使えるためコミュニケーションの垣根が低くなることだからです。メールで送るほどでもないと思っていたような何気ない発言から、仕事上の情報を共有できたり、新しいアイデアの創出につながる刺激を受けたりといった効果も期待できます。

また、ビジネスチャットの手軽さは、在宅勤務やフレックスタイムで働く人など、普段会社で顔を合わす機会がない、もしくは接点の少ない人とのコミュニケーションにも役立ちます。ネット環境さえあれば電話やメールよりも気軽に使うことができ、業務上の細かい問題も共有しやすいため、離れた場所で仕事をしていてもお互いの進捗状況を把握しやすいでしょう。また、ビジネスチャットの多くはスマートフォンでも使えるようになっているので、場所や端末を問わずコミュニケーションを取れる点もメリットです。

(2)迅速に用件を伝達できる

ビジネスチャットがここまで普及した背景には、チャットツールならではの「コミュニケーションの早さ」という利点も挙げられます。

ビジネスシーンにおけるコミュニケーションツールの代表格と言えばメールが挙がりますが、件名の設定や書き出しの文章などを含めることが求められるため、用件のみを伝えることには適していません。これらの文章はある程度定型化しており、「定型文」として設定することも可能です。しかし、送り先によって定型文を選択するのにも、ある程度手間がかかることは避けられないでしょう。
一方ビジネスチャットでは、必要なことだけを短いメッセージで送ることができます。メールで長々と文章を送るより、短い文章で要点だけ伝えられるビジネスチャットのほうが、送り主の意図も分かりやすく、従業員間で共通の認識を持つこともできるでしょう。

また、チャットワークのようなビジネスチャットでは、グループでメッセージをやり取りしていても、自分に当てたメッセージはアイコンや背景の色で、ひと目で分かります。そのため、連絡漏れのリスクも減らすことにつながります。
ビデオ通話機能を使えばオンライン会議も可能です。相手の顔を見ながら作業の進捗状況や問題点をリアルタイムで確認できるようにすれば、在宅で働く人ともオフィスで働くのに近い感覚で情報共有ができるようになるでしょう。働き方改革が推進される背景として「多様な働き方の実現」も挙げられていますが、オンライン会議が可能であれば、リモートワークやテレワークといった「多様な働き方」の実現にも活用することができます。

(3)セキュリティー面の高さ

ビジネスチャットの導入に躊躇している企業の中には、セキュリティー面での不安を挙げている企業も少なくありません。
社内コミュニケーションをビジネスチャットにした場合、やり取りされるメッセージの中には当然ながら社外秘扱いの情報が含まれることもあります。
そのため、ビジネスチャットの多くはセキュリティー機能を充実させています。管理者側でユーザーを一元管理できる機能や、不正アクセスの防止・監視機能を始め、データの暗号化機能も。ツールによっては、コンプライアンス面で役立つような、チャットログのエクスポート機能なども備えています。

セキュリティー面に厳しい傾向のある大手企業でもビジネスチャットの導入は進んでおり、ある民間企業が行った調査(※1)によると、2017年時点で既に30%近い国内の大手企業(※2)がビジネスチャットを導入しています。セキュリティー面での懸念がある場合は、高度なセキュリティー機能を持つビジネスチャットを検討されるのがおすすめです。

1.「伊藤忠テクノソリューションズ株式会社:大手企業のビジネスチャットツール導入実態調査」プレスリリースより参照
2.ここでは売上規模100億円以上、従業員数200名以上の企業を指しています。

ビジネスチャットを導入した企業の事例

ここからは、あるインターネット広告関連企業A社における、ビジネスチャットを導入した経緯や利用を決めた理由、導入後の効果などをご紹介します。

ビジネスチャットを導入するまで

A社では、広告の配信効果のレポーティングなど顧客とのやり取り回数が多いなかで、メールを使った顧客とのコミュニケーションが「スピーディーさに欠け効率が悪い」という課題感を持っていました。
そこで、業務の非効率性の問題を解決するため、ビジネスチャットの導入に踏み切りました。既に、別部門で部内メンバー間のコミュニケーション用に導入していたビジネスチャットを、営業職が多い事業部で試用し、最終的に全社での導入に至ったそうです。

社内でビジネスチャットを利用するにあたり、A社が留意したのは以下の3点でした。

  • 役員を巻き込んでビジネスチャットを全社に導入する
  • 業務プロセスをチャットで共有する
  • 顧客とのコミュニケーションを、メールからビジネスチャットに切り替える

こうした取組の結果、「コミュニケーションの活性化」や「レスポンス速度の向上」という効果が表れ、事業本部全体で1か月あたり2万5000時間以上の業務効率化に成功しました。また、関連子会社にも同じビジネスチャットツールを導入し、今後はAPIを活用して日々の広告効果レポートをチャットに毎朝自動投稿するなど、さらなる効率化のための仕組みを作っています。

まとめ

ビジネスチャットは、メールの代替として利用することで、「要点をピンポイントで伝えられる」、「業務をスピーディーに行える」、といった利点があります。その結果、前述のインターネット広告関連企業のように、大幅な業務時間短縮に成功した企業もあるのです。また、リモートワークやテレワークで働く人とも業務の進捗をリアルタイムで確認し合えるので、働き方改革の目指す「多様な働き方の実現」にも役立てられると言えます。

しかし、ビジネスチャットはその手軽さゆえ、「業務時間外にも使用できてしまう」というデメリットがあります。従業員のプライベートを充実させ、オンとオフの切り替えがきちんとできるようにするためには、使用ルールをしっかりと決める必要があるでしょう。
また、メールに慣れていた人がビジネスチャットを使うには、SNS感覚で要件を手早く伝える「チャット文化」に慣れる必要もあります。そのため、経営層から全社での一斉導入に難色を示されている場合には、使い方を習得し使用感を共有するためのスモールスタートとして、部署やチーム単位での導入からはじめるのもおすすめです。

ビジネスチャットを従業員全員が適切に使用できるようになれば、コミュニケーション不足の解決や、業務効率化にも役立てられます。「働き方改革」の第一歩としてビジネスチャットを活用してみてはいかかがでしょうか。

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