5Gの次は6G!次世代通信「6G」とは

2019年にプレサービスが始まり、2020年から本格導入された「5G(第5世代移動通信システム)」。高速・大容量・低遅延・多数端末との接続を実現する5Gは、世界のテクノロジーをより発展させていく効果が見込まれています。しかし、未来を見据える研究者や企業の目線の先には、5Gからさらに進化した「6G(第6世代移動通信システム)」が既にいるのです。
6Gは、2030年からの本格導入が期待されています。まだ少し先の話ではありますが、開発中の最先端の通信システムがどのようなものなのか、気になる方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、6Gがどのようなシステムで、実現することで世界にどのような影響を与える可能性があるのかをご紹介します。

6Gとは

6Gとは、現在世界中の通信業界が開発を進めている最新の無線通信システムです。2020年現在の見立てでは、2030年以降の商用利用が見込まれています。5Gが本格運用されて間もない今、なぜ既に6Gの開発が進められているのでしょうか。

その理由は、5Gの機能にあります。
5Gの導入によって、4K/8Kといった高精細な映像表現はもちろん、自動車の自動運転などの実現も期待されており、産業やサービスを1つ上のレベルに押し上げると期待されています。しかし、そんな大容量・低遅延の通信を処理できる5Gであっても限界はあります。近年ではIoT製品が浸透しつつあり、人々の生活の中や自動車・生産現場・建設・医療など様々な分野での利用も進んでいます。今後、さらに高性能な製品も普及するでしょう。そうすると、取り扱うデータ量は膨大なものとなり、ネットワークの負担増大が懸念されるのです。

こうした懸念を解消してくれる存在となり得るのが、6Gです。通信速度のみをとっても5Gの10倍を目指すものとされ、この通信超高速化により「生活におけるサイバーとフィジカルの融合」がもたらされるとされています。つまり、現実世界とバーチャルの世界をストレスなくつなぐ、神経のような役割を担うことも期待されているようです。
6Gによって人間の視覚、聴覚、触覚へ遅延のない情報伝達が果たされることで、世界中のどこにいてもリアルな感覚で人・モノ・情報にアクセスできるようになると予想されます。
さらに6Gは「超カバレッジ拡張」と呼ばれる通信領域の拡張を果たし、海、空、果ては宇宙までをもカバーできるようになることが期待されています。実現すれば、船舶や宇宙ステーションでも超高速の通信サービスを利用できるのではないでしょうか。

6Gによって変わる世界

2020年から本格的に導入された5Gは、働き方改革の1つであるテレワークの推進に貢献したと言えるのではないでしょうか。また、IoTを活用したさまざまな遠隔操作の導入により、地方創生・少子高齢化・労働力不足といった日本が抱えている課題も、ある程度は解決できるはずです。そして、より高性能な6Gが本格運用されれば、世界を変えられるほどの大きな効果が期待されています。

6Gは、3D映像をリアルタイムで送信できるようになると予測されています。高解像度の3D映像を触覚情報などと合わせてリアルタイムで送受信できるようになれば、医療業界における遠隔治療・診察の導入、教育業界ではリモート授業の実施など、これまでなら非現実的と考えられていた試みが、実現に向けて動き始めるでしょう。
また、オンラインゲームなどの娯楽においても、革新的な変化が訪れます。通信の高速化・安定化によって、オンラインゲーム中の「(タイム)ラグ」が発生しなくなるでしょうし、よりリアルな仮想世界を体験できるようになるはずです。また、スポーツ観戦においても、XR(VR, AR, MRなど)デバイスのさらなる進化によって、家にいながら自分がまるでスタジアムに足を運んでいるかのような体験が楽しめるでしょう。

6Gがもたらすとされている技術で世界がつながれば、場所や時間という条件が取り払われ、地方と都市の格差が埋まり、人々の暮らしがより豊かになると期待されています。

世界各国の6Gに向けた取組

現在、世界各国は6Gの導入に向けて様々な取組を行っています。ここでは、日本を含む各国がどのような取組をしているか、詳しく見ていきましょう。

日本の取組
総務省では5Gの次の世代を「Beyond 5G」と名付け、導入する際に予測されるニーズや技術進歩に対して政府としてどのような方針をとっていくかを議論する「Beyond 5G推進戦略懇談会」を立ち上げています。この懇談会の中では、超高齢社会へと進む日本がBeyond 5Gによりどのような社会へと変貌していくのかについて検討されています。
また、日本の大手通信メーカーでは、2020年にホワイトペーパー「5Gの高度化と6G」を公表。同業である他メーカーも、6Gの開発を大学や情報通信研究機構と共同で進めていると発表しています。
5Gの技術開発や商用化で出遅れてしまったと言われる日本の、巻き返しに向けた動きが始まっています。

アメリカの取組
世界的に名高いIT企業の本社が軒を並べるアメリカも、当然6Gの開発には積極的です。米大統領がSNSで6G導入の早期実現について言及しただけでなく、連邦通信委員会が将来6Gでの利用が考えられている「テラヘルツ波」と呼ばれる周波数帯を、研究向けに開放することを決定しています。
2019年に開催されたニューヨーク大学・次世代無線研究センターのプレゼンテーションによれば、6Gの実現によって無線でのロボット制御や大気質検知、セキュリティーボディースキャンなどが可能になると言及しています。
5Gでは中国に遅れを取った感のあるアメリカは、6Gでの主導権奪還を狙っているようです。

中国の取組
中国では、2019年に6Gの研究開発のスタートを発表。政府機関と民間機関の2つの組織によって研究が進められているようです。そのほか、5G技術で世界を牽引する大手通信機器メーカーも、6Gネットワークの研究をスタートさせています。

韓国の取組
世界屈指の電子製品メーカーが本拠地を置く韓国では、2019年に「6G研究センター」の設立を発表するなど、6Gを積極的に開発する姿勢を見せています。2020年に開催された「6Gオープンシンポジウム2020」では、当該企業を始めとする韓国の各企業が、6Gにおいて世界で主導権を握る認識を一致させているため、今後ますます研究が活発化するはずです。

フィンランドの取組
かつて携帯電話市場を席巻し、今は通信機器メーカーとなった大手起業の本社があるフィンランド。2018年に6G研究開発プロジェクトである「6Genesis」が国家研究資金プログラムに指定され、約300億円が投入されるなど、6G開発は積極的に進められています。2019年3月に「6G Wireless Summit」が開催された際にも、29カ国の産業界と学術界が参加しており、関心の高さは明らかです。

このように、6Gの導入に向けて各国は積極的な動きを見せていますが、開発においてはいくつかの課題もあります。例えば、人体への影響です。5Gで使用する周波数帯域の電波については、安全性が既に確認されていますが、より高い周波数帯域を用いる6Gの安全性を再検証する必要があります。また、今後実用化に向けた検証を進めるためには、衛星通信網との協調や相互互換性を確保しなければなりません。
こうした課題をどれだけ早くクリアできるかによって、6Gが本格導入される時期も変わってくることでしょう。

まとめ

2020年から5Gの本格的な導入が始まったにもかかわらず、各国の目は既に次の6Gへと向けられています。6Gの実用化にはまだまだ課題がありますが、各国が積極的に開発を進めており、そう遠くない未来に本格的な導入が開始されるでしょう。6Gが実現すれば、よりリアルタイムに近い通信サービスを利用できることは確実です。
少子高齢化が進み人手不足が深刻になっていく日本において、6Gは社会的課題の解決につながるとして、多くの業界から期待を集めています。今後広がっていく5Gの活用と経済発展とともに、6Gが生み出す全く新しい通信システム社会の実現に、ぜひ注目しましょう。

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