クロステック(X-tech)とは?押さえておきたいITトレンド用語

公開:2020年12月02日

ニューノーマル時代の今覚えておくべきIT用語に、「クロステック(X-tech)」という言葉があります。クロステックとは既存ビジネスに最先端のIT技術を取り入れることで新しい価値や仕組みを提供する動きのことです。
このコラムでは、ウィズコロナ・アフターコロナ時代のITトレンドとして注目のビジネス用語・IT用語「クロステック」について、その概要や今後の考察をご紹介します。

注目が集まる言葉「クロステック(X-tech)」とはなにか

クロステックとは、既存のビジネスに最先端のIT技術を取り入れることで新しい価値や仕組みを提供したりすること、またITと既存産業の融合で生まれた新しいビジネスやサービスそのものを指します。現在クロステックは業種・業界を問わず様々な分野に広まっており、例としては、農業分野の技術革新「アグリテック(AgriTech)」、金融業界の技術革新「フィンテック(FinTech)」などが挙げられます。

また、オリンピック関連ニュースで「スポーツテック(SportsTech)」という単語を耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。スポーツテックも、スポーツ分野におけるクロステックの総称です。
既にクロステックが活用されている取組としては、金融分野におけるビッグデータの活用・連携を利用した業務効率化や、新しいサービスの開発、また、医療分野においては、紙で管理されているカルテを電子カルテに変更する、診察のWeb予約システムを導入するなどの取組があります。
クロステックはスタートアップ企業やベンチャー企業が技術の開発を担っていることが多く、当初はIT企業やデジタル分野に強い企業で活用されていた技術でした。しかし徐々に業界・業種問わず受け入れられ始めたことが、クロステック発展の背景にあります。

クロステックを駆使する企業は、新たにコアとなるシステムを提供する役割を持つため、「プラットフォーマー」と呼ばれています。クロステックを駆使する「プラットフォーマー」となる企業は、スタートアップ企業やベンチャー企業に限った話しではなく、既存産業がIT技術を活用し基板となるシステムを構築すれば、その企業もプラットフォーマーのひとつになります。1社だけで取り組むのではなく、ほかのIT企業と提携してクロステックを進める例もあり、クロステックはさらなる広がりをみせています。

クロステックで用いられるIT技術の例

クロステックを実現するために用いられているIT技術をご紹介します。これらの技術の進化も新たなクロステックが生み出されている原動力となっています。

IoT
IoTとは「Internet Of Things(インターネット・オブ・シングス)」の略称で、家電や自転車といった“モノ”に通信機能をもたせ、インターネットに接続することを指します。モノとインターネットが繋がったことで、モノの状態の把握や遠隔操作、モノ同士での通信が可能となりました。
IoT技術を駆使した例としては、外出先からスマートフォンアプリを操作して自宅のエアコンの温度を調整したり、工場内の生産設備の稼働状況を把握するなどが挙げられます。

クラウド
クラウドとは、ユーザーがサーバーやソフトウェアを持たなくてもインターネットに接続してサービスを利用できる技術のことです。「クラウド・コンピューティング」とも言います。クラウドの技術を用いたサービスは「クラウドサービス」と呼ばれており、代表例はメールサービスの「Outlook.com」、オンラインストレージサービスの「Googleドライブ」などです。

AI
AIとは、「Artificial Intelligence(アーティフィシャル・インテリジェンス)」の略称で、人工知能という意味です。AIはデータを用いて反復型の学習と発見を自動化することができ、具体的にはパターン認識や機械と人間の対話などを可能にします。身近なところでは、スポーツの試合の画像判定、ファッション通販サイトのレコメンド機能などにも活用されています。

ビッグデータ
ビッグデータとは、簡単に表すと様々な種類の膨大なデータという意味です。「記録や保管が難しい膨大なデータ群」という意味もあります。ビッグデータに明確な定義はなく、主にマーケティング用語として使われています。具体例としては「ソーシャルメディアに書き込まれたコメント」、「Webサーバーのログ」などがビッグデータにあたります。

VR
VRは「Virtual Reality(バーチャル・リアリティー)」の略称で仮想現実と訳されています。ゴーグルなど専用の機器を装着することで、物理的には目の前に存在しないものをあるものとして認識できるようになるのがVRです。スポーツ観戦、広告、医療分野、ゲームなどでその技術が用いられています。

様々な業界で進められる「クロステック」

クロステックの代表例をそれぞれの業界や分野ごとに紹介します。既存の作業にIT技術を掛け合わせたものから斬新な仕組みまで、様々な例があります。

■ 金融×IT技術の「フィンテック(FinTech)」
「フィンテック」は、「Finance(金融)」と「Technology」を掛け合わせた造語です。モバイル決済が代表例ですが、オンラインバンキングと連携し、口座の参照や振り込みが行われる会計サービス、ビッグデータ分析やAIを使って信用を評価するサービスなども誕生しています。
【主な事例】
 ・BitCoin(仮想通貨)
 ・LINE PayやPayPay(電子決済サービス)
 ・投資や資産運用のロボアドバイザー

■ 広告×IT技術の「アドテック(AdTech)」
「アドテック」は「Advertisement(広告)」と「Technology」を掛け合わせた造語で、インターネット広告に関する技術を指します。ポータルサイトのトップページなどに表示されるディスプレイ広告の配信やターゲティング(ユーザーの属性や地域情報を活用する)、広告管理や分析によって広告配信を最適化するサービスなど、その技術は日々進歩しています。
【主な事例】
 ・リスティング広告
 ・ディスプレイ広告

■ 医療×IT技術の「メドテック(MedTech)」
「メドテック」は、「Medical(医療)」と「Technology」の造語です。インターネットによる受診予約、電子カルテが代表例で、ペーパーレス化や人件費削減につながるだけでなく、センサーを使って取得した人体データをビッグデータで分析して、新薬の開発を推進することなども期待されています。
【主な事例】
 ・電子カルテ
 ・薬歴保存システム
 ・診察のオンライン予約

■ 教育×IT技術の「エドテック(EdTech)」
「エドテック」は、「Education(教育)」と「Technology」を掛け合わせた造語で、教育を支援する仕組やサービスを指します。オンライン授業やタブレット端末を使ったペーパーレス授業だけではなく、授業支援システムや学習支援システムも当てはまります。教育分野における教育・学習スタイルが進化し、新しい教育・学習スタイルを確立させうるポイントになるでしょう。
【主な事例】
 ・eラーニング
 ・オンライン授業
 ・VRを活用した教材/カリキュラム

■ 人材×IT技術の「HRテック」
「HRテック」は、「Human Resource(人材)」と「Technology」を掛け合わせた造語です。人事の業務は事務作業も多く煩雑なことから、クラウドやビッグデータ解析などを導入することで、デジタル化や自動化がダイレクトに業務環境改善やコストの削減につながっています。
【主な事例】
 ・勤怠管理システム
 ・採用管理システム
 ・タレントマネジメントシステム

■ 農業×IT技術の「アグリテック(AgriTech)」
「アグリテック」は、「Agriculture(農業)」と「Technology」を掛け合わせた造語です。高齢化が進み人手不足が叫ばれている農業分野では、AIやIoTなどのIT技術を導入することで作業の効率化を図っています。
【主な事例】
 ・ドローンによる農薬の散布
 ・気温や温度などのデータの見える化
 ・無人の農業機械

今後の「クロステック」の動向

多くの分野でクロステックの活用が進んでいる現在、これまでになかった新しい仕組みや新しいサービスが誕生しています。ここまでクロステックが台頭した背景にはどういった理由があるのでしょうか。
冒頭でもご紹介したように、AIやクラウドなどのIT技術そのものが以前と比べて飛躍的に進化したことで、複雑なデータ処理が可能になったことが要因の1つです。また、クラウドサービスが広く普及したことで安価にかつ気軽に必要なサービスを使うことができるようになり、ITをビジネスに取り入れやすくなった点も要因と言えます。さらに、一般の消費者の間でスマートフォンやタブレット端末の普及が進み、企業がユーザーとの接点を持ちやすくなったことも背景にあるでしょう。

2020年7月、政府が決定した「骨太方針2020」(※)の中で、社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)実装を加速化するよう促しました。DXとはIT技術を活用しデジタル化を通して新たな価値やサービスが生まれたり、社会の課題を解決するための取組が推進されることを意味しており、DXの推進が様々なクロステックが生まれた要因とも言えます。
民間企業へDXを浸透させる取組を行う一方で行政のDX化も始まっており、自治体における基幹業務の共通クラウド化を進めることを発表しています。また、マイナンバーカードを健康保険証と一体化するためのシステム開発や、農業に関わる様々なデータを集約・統合し活用するためのプラットフォーム整備なども進んでおり、政府もクロステックを推進していることが分かります。

今後、IT技術を取り入れたサービスは加速度的に増加すると予想されます。また、DXやクロステックをサポートするスタートアップ企業の増加も見込まれます。IT技術の導入は業務効率化や生産性向上につながり、最終的に企業の生存競争を勝ち抜くためのカギにもなり得るでしょう。

まとめ

今回はクロステックの概要や、各分野の事例などをご紹介しました。今、新型コロナウイルス感染症対策としてオンライン化を急がれる業務はこれまで以上に増えています。業界・業種問わずIT技術を導入することが急務と言ってもいいかもしれません。まずは、現状を把握した上で課題を洗い出し、課題解決のための新しい技術を取入れてみてはいかがでしょうか。
業務を効率化するシステムをお探しの場合は、三菱電機ITソリューションズの各システムを是非ご検討ください。長年にわたり様々な企業様の業務をITで支えてきたサービスが揃っています。貴社の課題やニーズに合ったシステムがきっと見つかるはずです。

「ITトレンド」の最新記事

このカテゴリの記事一覧を見る

メールマガジン登録

上記コラムのようなお役立ち情報を定期的に
メルマガで配信しています。
コラム(メルマガ)の
定期購読をご希望の方はこちら

メールマガジン登録 お客様の課題解決に導く情報をいち早くお届けします! メールマガジン登録 お客様の課題解決に導く情報をいち早くお届けします!