Wi-Fi 6とは?次世代の高速Wi-Fi規格の特長から違い、5Gとの関係まで解説
公開:2021年07月14日
2019年1月、最新の高速無線通信規格として発表された「Wi-Fi 6」。現在では、Wi-Fi 6に対応した機器も数多く登場しているだけでなく、拡張版である「Wi-Fi 6E」の普及や、次世代規格である「Wi-Fi 7」の開発も見込まれており、無線通信規格は一層の高速化が進むと予測されています。
非常に身近な存在でもあるWi-Fiですが、Wi-Fi 6の名前やWi-Fi 6が最新規格であることは知っていても、Wi-Fi 6とは何か、従来のWi-Fi規格と何が違うのかを知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、Wi-Fiの基礎知識から、Wi-Fi 6の特長と導入するメリット、Wi-Fi 6と5Gの関係までを詳しく解説します。
このコラムを読んで分かること
- Wi-FiとWi-Fi 6の概要
- Wi-Fi 6導入のメリット
- Wi-Fi 6と5Gそれぞれの活用場所
Wi-Fi 6とは
「Wi-Fi 6」とは、2019年に登場した第6世代の最新Wi-Fi規格です。Wi-Fi 6は呼びやすいようにした略称であり、正式な規格名称は「IEEE 802.11ax」と表記します。
Wi-Fi 6が誕生した背景には、近年加速するデジタル化やDX推進の流れが関係しています。
以前からスマートフォンやタブレット端末など、我々の日常の中でWi-Fiを利用してきたかと思います。しかし昨今は、業務のデジタル化が進んでいるだけでなく、AI・AR・VRなど新しいIT技術をビジネスモデルに活用する企業が登場しています。つまり、様々なIoT機器がインターネットに快適に繋がる状態が求められているだけでなく、大量のデータを高速で通信・処理する状況が増えているのです。その課題を解決すべく、高速かつ利便性が高い通信の実現を目的として誕生した通信規格が、Wi-Fi 6なのです。
そもそも「Wi-Fi」とは?
そもそも「Wi-Fi」とは、相互接続できる無線LAN機器を認証するシステムのことを指します。
実は、無線LAN機器が登場した当初は、メーカーが異なる機器間では相互接続できない状況が多く発生していました。しかし、2002年にWi-Fiが誕生したことをきっかけに、現在のように相互接続できる無線LAN機器が一般的となりました。
Wi-Fiにより相互接続が保証されたことで、無線LAN機器の利便性は大きく向上し、普及も進みました。現在では、無線LANそのものが「Wi-Fi」と呼ばれることもあります。
Wi-Fiの規格名・周波数・通信速度・呼称の歴史
Wi-Fiの規格名・周波数・通信速度・呼称を、世代順にまとめてみました。
世代 | 規格名 | 周波数 | 最大通信速度 | 呼称 |
---|---|---|---|---|
第1世代 | IEEE 802.11 | 2.4GHz帯 | 2Mbps | - |
第2世代 | IEEE 802.11a | 5GHz帯 | 54Mbps | - |
IEEE 802.11b | 2.4GHz帯 | 11Mbps | ||
第3世代 | IEEE 802.11g | 2.4GHz帯 | 54Mbps | - |
第4世代 | IEEE 802.11n | 2.4GHz帯/5GHz帯 | 660Mbps | Wi-Fi 4 |
第5世代 | IEEE 802.11ac | 5GHz帯 | 6.9Gbps | Wi-Fi 5 |
第6世代 | IEEE 802.11ax | 2.4GHz帯/5GHz帯 | 9.6Gbps | Wi-Fi 6 |
Wi-Fiは世代を超えるにつれ、最大通信速度が大きく向上していることがわかります。例えば、第4世代(Wi-Fi 4)は最大通信速度が660Mbpsとなっており、1GB分のデータ転送に最速でも12.1秒かかっていましたが、最大通信速度が9.6Gbpsとなった第6世代(Wi-Fi 6)では、最速0.8秒で1GB分のデータが転送できるようになりました。
なお、第3世代以前のWi-Fiには呼称が存在しません。第3世代まではWi-Fiの正式名称である「IEEE」から始まる規格名が呼称となっていましたが、違いが末尾のアルファベットのみであることからわかりづらいと言われていました。このわかりづらさを改善すべく、第6世代は「Wi-Fi 6」と規定されました。なお、Wi-Fi 4とWi-Fi 5は登場時の呼称ではなく、Wi-Fi 6の登場にともなって呼称を付けたそうです。
~ちょこっとメモ:「IEEE」と「Wi-Fi Alliance」って?~
Wi-Fiには、IEEE(アイトリプルイー)とWi-Fi Allianceと呼ばれる2つの団体が関わっています。
● IEEE(アイトリプルイー)
IEEEとは、電子通信分野に関する規格を定めているアメリカの団体のことです。IEEEはWi-Fiの規格も定めており、Wi-Fiの正式名称には必ず「IEEE」が入ります。
● Wi-Fi Alliance
Wi-Fi Allianceとは、Wi-Fiロゴの商標権を持っている業界団体のことです。無線LAN機器の普及を目的としており、Wi-Fi規格に沿った無線LAN機器の認証を行なっています。
Wi-Fi 6の導入で得られる3つのメリット
最新のWi-Fi規格である「Wi-Fi 6」。ここからは、Wi-Fi 6を導入することで得られるメリットについて、Wi-Fi 5と比較しながら解説します。Wi-Fi 6対応機器の購入を検討している方は、現在のWi-Fi機器とどのような違いがあるかをチェックしてみましょう。
● メリット1:高速
もっともわかりやすいメリットは、Wi-Fi 6の最大通信速度が9.6Gbpsと高速であることです。ひとつ前の世代であるWi-Fi 5は最大通信速度が6.9Gbpsですので、最大1.4倍向上していることがわかります。
1.4倍と聞くとあまり違いがないのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、情報を処理するスピードがWi-Fi 5よりもおよそ4倍近く速くなると聞けば、高速化されていることがおわかりいただけるのかと思います。通信速度が早くなれば、高解像度の映像も途切れることなく見られ、ネットゲーム中も遅延しなくなるでしょう。
また、Wi-Fi 6は2.4GHz/5GHz帯と2つの周波数に対応しています。5GHz帯のみ対応であったWi-Fi 5に対し、回線状況に応じて使用する周波数帯を手動で切り替えたり組み合わせたりできる点も、Wi-Fi 6の強みです。
● メリット2:混雑に強い
Wi-Fi 6は、回線の混雑に強いことも大きなメリットです。Wi-Fi 6にはOFDMA(直交周波数分割多元接続)と呼ばれる技術が採用されており、Wi-Fiルーターに複数の端末が接続していても安定した通信を行えます。
OFDMAを簡単に説明すると、「電波の周波数を細かく分割して、複数の端末に割り当てられる」技術です。つまり、パソコン・スマートフォン・カメラ・家電など、複数の端末へ同時にデータを送信できます。
Wi-Fi 5ではひとつの電波を端末ひとつだけに割り当てていたため、複数端末が接続した場合は通信の順番待ちが発生しやすくなっていました。Wi-Fi 6は同じ電波の中で複数の端末と通信することができるため、通信の順番待ちを防げます。
● メリット3:省エネ
Wi-Fi 6には、TWT(Target Wake Time)と呼ばれる技術も採用されています。TWTとは、Wi-Fiの親機側で通信するタイミングを調整して、通信を行う必要がないときは端末側の通信機能をスリープ状態にする機能です。端末のバッテリー消費を抑えることで、バッテリーも長持ちし省エネにつなげることが可能です。
Wi-Fi 5にもDTIMと呼ばれるパワーセーブ機能は存在したものの、複数端末を同時にスリープ解除してしまうため、逆に端末の電力消費が早くなってしまうこともありました。Wi-Fi 6のTWTは、端末ごとに親機から通信間隔を調整できるため、他の端末に影響されなくなります。
上記のように、Wi-Fi 6を導入することには多くのメリットがあります。ただし、Wi-Fi 6のメリットを享受するためには、Wi-Fi 6に対応した機器を用意する必要があります。スマートフォンは対応していても、Wi-FiルーターがWi-Fi 6に対応していなければ、Wi-Fi 6での通信を利用することはできません。尚、Wi-Fi 6はWi-Fi 5などの下位の規格とも互換性があるので、接続は可能です。
Wi-Fi 6と5Gの関係
「5G」とは、第5世代の最新移動通信規格です。移動通信はスマートフォンなどの携帯端末で使用される通信方式であり、基地局を経由することで携帯端末との無線通信を可能としています。
Wi-Fi 6と5Gは、共に2020年以降の無線通信を担う最新規格として登場しました。Wi-Fi 6と5Gの特長を比較すると、共通する点が多いことがわかります。
Wi-Fi 6の特長 | 5Gの特長 |
---|---|
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一方で、Wi-Fi 6と5Gは想定される活用場所が異なります。
Wi-Fi 6の活用場所 | 5Gの活用場所 |
---|---|
企業・施設・家庭内など屋内環境に適している | 屋外での通信や、移動時の通信に適している |
Wi-Fi 6は高密度な通信環境における対応力が強化されたため、Wi-Fiルーターの電波が届く範囲内に端末が多数存在するような屋内利用に適しています。一方、5Gは基地局によって広範囲をカバーできるため、屋外や長距離通信をおこないたい場合も5Gであれば通信できます。
Wi-Fi 6と5Gの活用場所が異なることは、どちらが優れているか・悪いかを示す材料ではありません。Wi-Fi 6が屋内ネットワークを担い、5Gは屋外ネットワークを担うといった、ネットワーク環境の住み分けができることを示しています。
Wi-Fi 6と5Gの普及が進むことで、デジタル化の流れはさらに加速するでしょう。機械・設備の遠隔操作や自動制御、産業用ドローンの実用化、没入感を高めたAR・VRサービスの実現も不可能ではありません。Wi-Fi 6と5Gが共存することで、場所を問わずネットワークに接続できる環境を提供し、将来的な社会インフラの発展にも貢献することが期待されています。
まとめ
今回は、Wi-Fi 6の概要と特長を中心にご紹介しました。
<このコラムのPOINT>
- Wi-Fi 6は第6世代の最新Wi-Fi規格
- 高速の無線通信が可能で回線の混雑にも強い
- Wi-Fi 6は屋内ネットワーク向きであり、屋外を担う5Gとともに社会インフラ発展の貢献が期待されている
昨今話題になった5Gと比較すると、Wi-Fi 6の詳細を知らない人も多かったのではないでしょうか。Wi-Fi 6と5Gはそれぞれの目的や役割があり、今後も両者共に進化していくことが予想されている通信技術です。
Wi-Fi 6は、Web会議やテレワークを推進する企業を中心に普及が進んでいます。オフィスや工場などのネットワーク環境に課題を感じているのであれば、Wi-Fi 6が解決に役立つかもしれません。
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