【活用例付き】IoBとは?なぜ注目されているのか、IoTとの関係性も解説!
公開:2023年05月10日
スマートウォッチや顔認識システムなど、人とインターネットをつなげるテクノロジーとして、急速に注目を集める「IoB」。
ニュースなどで取り上げられることが多い一方、具体的にどのようなものなのか、分からないという方も多いのではないでしょうか。
本コラムでは、IoBの概要やなぜ注目されているのか、活用事例なども解説していきます。IoBに関する理解を少しでも深めていただければ幸いです。
このコラムを読んで分かること
- IoBとは何を意味している言葉なのか
- IoBの具体的な活用例
- IoBが持つ課題や想定されるリスク、予想される未来
【目次】
- IoBとは
- IoTとの関係性
- IoBの活用事例
- IoBの課題や今後の展望
- まとめ
IoBとは
IoBとは、「Internet of Bodies」と「Internet of Behavior」の略語で、1つの単語で2つの意味を持っています。まずは、それぞれの言葉の意味を解説していきます。
Internet of Bodiesとは
「Internet of Bodies」とは、「人間とインターネットをつなぐテクノロジー」のことです。
スマートウォッチなどのIoBデバイスを身に付けることで、心拍数や人の行動を測定し、データとして活用する技術が挙げられます。
例えば、これまではランニングをした際、距離や時間などを自身でノートなどに記録しておけば、あとで見返すことができましたが、そこまで管理するのは手間でもありました。しかし、IoBデバイスを使えば、走行距離や時間などの測定したデータはクラウド上に保存できます。
IoBの特長である「インターネットとつながっている」ことが、管理面における大きな利点と言えます。また、身体状態の把握や健康管理に役立てられるように、データを分析までできる点も大きなメリットといえるでしょう。
スマートウォッチのようにデバイスを身につける以外にも、心臓ペースメーカーなど体内にデバイスを埋め込むことも「Internet of Bodies」に分類されます。
Internet of Behaviorとは
一方、「Internet of Behavior」とは、直訳すると「行動のインターネット」といい、個人の行動データをもとに、より快適な生活を実現するための技術のことを指します。
例えば、上述したスマートウォッチなどのIoBデバイスを身に付け、個人の行動データを収集し、そのデータを生活に活かすという考え方です。
行動データには、位置情報や購買履歴、運動情報やWebサイトの閲覧履歴も含まれます。
身近な例ですと、商業施設などの入り口に設置されたカメラを用いた体温測定も、「Internet of Behavior」のひとつです。
IoBがなぜ注目されているのか
個人の身体的なデータや行動データなどに注目したIoB技術は、近年、世界中でニーズが高まっています。その背景には、2020年から流行した「新型コロナウイルス感染症」の感染拡大があります。
新型コロナが世界的に流行したことにより、私たちの生活は大きく変化しました。しかし一方では、変化した生活に適応するために、さまざまな技術が開発されました。
たとえば、マスクをしたままでも認識できる顔認識システムやカメラ付きの体温測定器、位置情報から感染者の感染経路を確認できるスマートフォンアプリなどです。
また、顧客ニーズの多様化により製品の生産方法が変わってきていることなどから、より顧客視点にたったマーケティングを行う必要があるという点も、IoB技術注目の背景と考えられます。
IoBの3つのフェーズ
人間とインターネットがIoT機器によってつながる技術であるIoB(Internet of Bodies)には、3つのフェーズがあります。
ここでは3つのフェーズについて、今現在はどの時点にいるかも含め、順番に解説していきます。
フェーズ1:ウェアラブル
第1フェーズは、「ウェアラブル」です。
ウェアラブル自体の意味は「身につけられる」ですが、身につけたモノによって数値を収集・測定し、数値の変化を捉える=定量化を意味します。
つまり、IoBデバイスを身につけることで、身体の状態を計測する段階が、第1フェーズの「ウェアラブル」です。
フェーズ2:体内化
第2フェーズは、「体内化」です。
IoBデバイスを体内に埋め込み、内蔵などの情報を取得して体調管理などを行う段階のことを指します。
機器を体内に埋め込むというと、ネガティブなイメージを持つ方も多いかもしれませんが、たとえば医療機器の心臓ペースメーカーもIoBデバイスのひとつです。
体内化することで、心臓の動きや血液状態などを常に精密に確認できます。つまり、体のちょっとした変化にあわせて、適切な医療処置を施すことが可能になると考えられています。また、得られた医療データをもとに、病気を未然に防ぐことに役立てたり、早期発見ができたりと、今後の医療分野の発展にもつながる可能性があります。
現時点では、この第2フェーズまでが実現可能となっています。
フェーズ3:ウェットウェア
第3フェーズは、「ウェットウェア」です。
脳に直接IoBデバイスを接続して利用する段階のことを指します。「ウェットウェア」と呼ばれる理由は、デバイスなどのハードウェアは、乾いているドライな状態であるのに対し、脳は常に血液(液体)で濡れているウェットな状態であるからです。
ウェットウェアに関しては、情報漏洩やサイバーテロによるリスクが高いため、現段階で実用化までは至っていません。しかし、研究は進められており、近い未来にはヘルスケア分野での活用が大いに期待されています。
IoTとの関係性
IoBと似ている言葉で「IoT」がありますが、ここからはIoTの概要や違い・関係性について解説していきます。
IoTとは?IoBとの違い
IoTとは「Internet of Things」の略語で、直訳すると「もののインターネット」です。
家電や自動車などのあらゆる物をインターネットに接続させることで、ユーザー情報を集め、生活をより便利にさせる技術のことを指します。
たとえば、車の自動運転はIoT技術を活用したものの1つです。また、外出先から自宅にあるエアコンをスマートフォンで起動させるなど、離れたモノを操作することもIoTにあたります。
IoTとIoBの違いは、「何をインターネットに接続するか」という点です。どちらもインターネットに接続して情報を取得・送信する技術ですが、接続先がIoTは「モノ」、IoBは「人」という点が大きく異なります。
IoTとIoBの関係性
これまでもIoTデバイスを通して、様々なデータが収集されてきました。そして、そのデータの中には人の行動や状態を伝えるデータも含まれており、ウェアラブルデバイスもIoTデバイスの1つであると考えられていました。それが2017年頃からIoBという言葉が使われるようになり、人に関するあらゆる情報や技術はIoBと呼ばれるようになりました。
IoTもIoBも、デバイスを使いインターネットを利用して情報をやり取りするという点では共通しており、技術面でも似た部分が多いと言えます。
IoBの活用事例
ここからは、IoBの活用事例をご紹介していきます。
(1)スマートウォッチなどのウェアラブルデバイス
IoBの活用事例として、代表的なのがスマートウォッチなどのウェアラブルデバイスです。ウェアラブルデバイスを装着することによって、心拍数や歩数、睡眠時間などを定点的に記録し、場所を選ぶことなく健康状態が確認できます。
簡単に身体状態を把握できるためセルフケアができるだけでなく、予防医療の観点からも重要とされています。
さらに、フィットネスアプリと連動させることもできるため、生活習慣見直しに役立つこともメリットのひとつです。
最近では、心電図や血中酸素濃度も図れるデバイスも登場しており、医療分野に革命を起こす期待が寄せられています。将来的には、衣服やファッション雑貨にもIoB機能が備えられ活用される可能性もあるでしょう。
(2)顔認識システム
すでに生活のさまざまな場面で活用されるシステムになっていますが、顔認識システムもIoBのひとつです。
たとえば、カメラで撮影された画像や映像から人の顔を認識・識別し、スマートフォンのロックを解除するといった便利な機能にも、顔認識システムが活用されています。また、コロナ禍になり、人物画像から体温を測定したりマスク着用有無を確認したりできるシステムも、街中で多く見るようになりました。
最近では、顔認証技術がマーケティングにも活用されています。たとえば、大型商業施設に来店した人の顔をデータ化し、性別・年齢などの属性分析や店の混雑度、商品の購入層などを分析し、今後の販売戦略に活用するといったことです。また、顔画像からヘモグロビン量とメラニン量を推定し、その人に似合う化粧品を提案するといったサービスも始まっています。
(3)カスタマーレビューの依頼やキャンペーンの通知
レストランで食事をした後、そのレストランからカスタマーレビューを依頼された経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は、カスタマーレビューの活用もIoBの活用事例のひとつです。
レビューによって、頼んだ料理や性別、年齢などユーザー属性や行動履歴をデータ化でき、今後の経営に役立つ情報や意見を入手できます。
また、スマホからの位置情報によって、自分が行ったことのあるレストランに近い場所にいた時に、お得なキャンペーンやクーポンが通知される仕組もIoBの1つです。
(4)自動車の運転情報取得
IoBは、自動車保険にも活用され始めています。
たとえば、事前に自動車に設置したデバイスからドライバーの行動を監視し、日頃から安全運転を心がけている人には保険料を低価格で提供するといったサービスが登場しています。
また、IoB技術を活用し、事故が起きた時の状況把握や、誰の責任で事故が発生したのかを正しく特定するデータとして役立てています。
IoBの課題や今後の展望
今後さらにIoBが普及することで、より生活が豊かになることが想像できます。しかし、IoBにはクリアせねばならない課題もあります。ここからは、IoBが抱えている課題や今後の展望について解説していきます。
IoBの課題1:情報漏洩やサイバーテロのリスク
IoBが社会や生活に浸透するためには、利用者が安全に安心に利用できる環境の構築が必須要件でしょう。
そのためにも、IoBによって収集された情報の漏洩やサイバーテロの標的となってしまう可能性があることは、大きな課題です。
IoBはインターネットとつながりデータが収集され、蓄積されます。つまり、メールやサーバーに対して攻撃をしかけてくるように、IoBデバイスやデータベースにハッキングやウイルスをしかけ、外部に情報が漏洩する可能性があります。身体に関する情報をネタに身代金を要求されてしまうことも考えられるでしょう。
また、情報が漏洩するだけでなく、サイバー攻撃によりデータ改ざんやデバイスの不正動作を引き起こす可能性もあります。最悪の場合、身体に不調を及ぼす可能性も否定できません。
第3フェーズの「ウェットウェア」を実現させるためにも、セキュリティー対策の徹底が求められています。
IoBの課題2:トラブルが起きた時の責任の所在
別の課題としてあげられるのは、機器トラブルが起きた時の責任の所在です。
機器である以上、仮にメンテナンスを定期的に行っていたとしても、不具合や劣化などのトラブルが起こる可能性があります。また、インターネットに障害が発生した場合には、IoBのサービス自体が停止してしまう可能性もあるでしょう。
もしも、IoBデバイスに不具合がなくても、想定外の動作を起こしたりデータを蓄積し続けてしまったりした場合、どこに責任があるのかの断定が難しいケースもあるでしょう。
ヘルスケア領域での活用が期待されているからこそ、これらの課題にどう対処していくのかがIoBの普及・発展には重要であると考えられます。
IoBの課題3:プライバシー保護の観点
脈拍・体温などの身体情報や位置情報、行動・購買履歴など、様々な個人データを集めるIoB。これらのデータは、その個人のプライバシーに関するデータとも言い換えることができます。
そのため、データを分析し利用者にとって価値ある情報を提供するといった利便性の面と、プライバシー保護の面、両面を考える必要があるでしょう。
IoBの展望:人間の想像でモノを操作する
さまざまなリスクや課題はありますが、課題がクリアになり誰もが安心してIoBを利用できる未来には、どのようなものが待っているのでしょうか。
もしかすると、パソコンやスマートフォンのようなデバイスがICチップのように小型化されて、脳に埋め込むことで、電話やメール、書類の作成や家電の設定なども、すべて脳の指示で行えるようになる。目的地を頭の中で希望するだけで自動車の運転が可能になる。といったように、漫画やアニメで描かれてきたSFの世界がやってくるかもしれません。
まとめ
ここまでIoBについて、概要や注目されている理由、活用事例や今後の展望などについて解説してきました。本コラムのポイントをまとめます。
<このコラムのPOINT>
- IoBとは、「Internet of Bodies」と「Internet of Behavior」の略語で、人とインターネットをつなげて、身体から得られるデータや個人の位置情報、行動履歴などをもとに生活をより豊かにすることを指す。
- IoTとIoBの違いは、「何をインターネットに接続するか」であり、IoTは「モノ」、IoBは「人」に接続する。
- 情報漏洩やサイバーテロのリスク、プライバシー保護などの課題があるものの、将来的には人間が想像するだけで、モノを操作できるようになる可能性もある。
IoBは身体情報や人の行動をデジタル化し、そのデータを活用して生活を快適にする技術で、世界的にも注目を集めているテクノロジーです。
今の時代は、メガネや家電などさまざまなものがインターネットに接続できます。その次の段階には、モノではなく人がインターネットと繋がる未来が待っています。
数十年前では想像の世界だったことが、どんどん実現されていくことに、ただただ驚かされますね。
コロナ禍でさらに注目を集めたトレンド技術ですが、課題やリスクがあるのも事実です。IoBの展望や課題を理解し、今後の動向にも注目していきましょう。
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