IoTが牽引する「シェアリングエコノミー」

欧米などで流行し、日本でも広まりつつある「シェアリングエコノミー」という言葉をご存知でしょうか。これまでの"経済の当たり前"を革新的に作り変えようとしている新たな流れと、それを支えるIoT技術に注目します。

シェアリングエコノミーとは

シェアリングエコノミーとは、個人・企業が所有する遊休資産の貸出を仲介するサービスです。これまで必要なモノは購入して所有するというのが“経済の当たり前”でした。しかし、シェアリングエコノミーが普及すると限られた資源を共有する超効率化社会へと変化していきます。

シリコンバレーを起点に2000年代後半に始まったシェアリングエコノミーは世界中で広がりをみせており、世界市場規模は2025年には3,350億ドルまで成長する見込みです。日本でも2025年までには10兆円台の市場規模になる、と新経済連盟は試算しています。

生活に浸透しつつあるIoT技術を利用したシェアリングエコノミー事例

シェアリングエコノミーの普及を牽引しているのが、IoT技術です。IoTとは「Internet of Things」の略称で、機械やモノをインターネットに接続することを意味します。実際にIoT技術を利用している日本でのシェアリングエコノミーの活用事例を見ていきましょう。

・自転車シェアリング
最近では一般的になったカーシェアリングの自転車版とも言える「自転車シェアリング」。ステーションと呼ばれる専用駐輪場に用意された自転車を自由に貸出・返却できるサービスです。日常生活のちょっとした距離の移動から、観光客の移動手段の一つとしても注目されています。自転車シェアリングでは自転車がIoT化されていて、提供者側はオンラインで位置情報・アシストバッテリーの残量などを確認できます。利用者の移動情報を把握し、集積したデータを分析することで、新たなステーションを効率的に設置していくことも可能です。

利用者は事前に専用サイト上で会員登録すれば、ステーションの検索から決済まで一連の流れをスマートフォンなどからインターネット上で行うことができます。鍵はメールで送られてくる暗証番号を入力するか、交通系ICカードでタッチするだけで開錠でき、自転車は目的地周辺のステーションで返却可能です。

・スペースシェアリング
店舗の空きスペースや、使っていない提供者宅のクローゼットや物置など、さまざまなスペースを利用者とシェアリングできる「スペースシェアリング」。コインロッカーには入りきれない旅行中の荷物の保管といった数日の利用から、夏の間使わない冬物家電を数ヶ月保管するといった長期的な利用もできます。利用する際は、利用者と提供者が専用アプリ上で荷物の引き渡しの時間を決め、受け取り・返却を行っています。

試験的な取組として、シェアリングスペースにIoT化されたロッカーを設置し、提供者と対面せずに好きな時間に荷物の出し入れができるようなサービスも行われています。スマートフォンから電子キーの開閉ができるため、ロッカーを介して荷物の受け渡しができるだけでなく、宅配業者に電子キーを貸与してそのまま荷物を目的地に宅配できるなど、利用の幅が広がりそうです。

・工場シェアリング
近い将来に実現の可能性があるサービスとして注目されている「工場シェアリング」。工場の生産設備をIoT化することで、工場の稼働状況がインターネット上で確認できるようになり、工場内で稼働していない設備や時間帯に、他の企業が工場設備を利用できるサービスです。設備のシェアリングだけでなく、工場でのこれまでの生産ノウハウもIoTにより可視化できるので、蓄積した知識や技術もシェアリングサービスとして提供できる可能性があります。

信頼性の担保という課題

メリットの多いシェアリングエコノミーですが、普及拡大の障害となっている最大の理由が「事故やトラブル時の対応への不安」です。信頼性を高めて提供者と利用者がお互いに安心してサービスを利用するために、会員登録時の本人確認や利用評価制度などといった仕組みの整備が求められます。

すでにサービスを展開している提供会社の多くでは、独自の保証制度を設けており、万が一のケガや事故、荷物の紛失・破損に対応できるようになっています。一方、「提供した部屋に置いてあった備品を壊されてしまった」、「ものを盗まれてしまった」といった提供者側が被害を受けた場合に備え、賠償責任保険の販売も始まっています。

まとめ

日本でも急速に広まりつつあるシェアリングエコノミー。それを支えるのはモノとインターネットをつなぐ最先端のIoT技術です。これからも限りある資源を守りつつ便利で快適な生活を実現するために、IT分野の技術進歩に期待しましょう。

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