【2019年】次期薬機法改正、薬剤師が押さえておきたい3つのポイント

2019年3月19日に国会へ提出され、継続審議中となっている薬機法改正案。秋の臨時国会以降での成立を目指すこととなりました。改正案の中では、薬剤師が調剤時だけでなく、継続的な服薬状況の把握及び服薬指導を行うことを義務化することなども盛り込まれており、この法案が成立となれば薬局そして薬剤師のあり方も変化することが予想されます。
そこで今回は、薬機法改正案が提出された背景および、改正案の内容について3つのポイントをご紹介します。「薬局関係者を取り巻く状況がどう変化するのか」を、改めて確認しておきましょう。

今回の改正に向けた動きの背景

2013年(平成25年)の薬事法改正から5年が経ち、医薬品や医療機器などを取り巻く状況が変化したことを受け、2019年3月19日に新たな薬機法改正案が国会に提出されました。この改正案の中では、住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使えるよう「薬剤師・薬局の在り方を見直す」ことについて触れられています。

医薬分業が進み、処方箋受取率は70%を超え、薬局数及び薬局で勤務する薬剤師数はいずれも増加しています。しかし、患者が医薬分業に伴う負担、例えば利便性や費用増に見合うだけのサービス向上や、分業の効果などが実感できないとの指摘もあります。

このような声を受け今回の法改正では、「患者本位の医薬分業」を推進するための内容が盛り込まれています。つまり、地域包括ケアシステムの中でかかりつけ薬局が服薬情報の一元的・継続的な把握を行う責務を果たすなど、患者のニーズに応じ、薬局も生まれ変わる必要性があることについても述べられています。
では具体的にどのような施策が進められる予定なのか、解説していきます。

改正案のポイント1:特定機能を備える薬局の認定制度導入

改正案の中では、「特定の機能を持つ薬局」に対し都道府県知事が認定する制度について触れています。
この機能別薬局とは、

  • 入退院時や在宅医療に他医療提供施設と連携して対応できる薬局:地域連携薬局
  • がん等の専門的な薬学管理に他医療提供施設と連携して対応できる薬局:専門医療機関連携薬局

の2種類とされています。

「地域連携薬局」とは、医療提供施設と連携し、その地域において薬剤の適正な使用の推進や効率的な提供を行える薬局を指します。地域連携薬局については、24時間対応や在宅患者への調剤などに対応することが盛り込まれており、地域包括ケアシステムの中で重要な役割を担うことができる薬局であることが求められています。
一方、「専門医療機関連携薬局」とは、医療機関と提携し、専門的な薬学的知見にもとづく指導を実施するのに必要な機能を持つ薬局のことです。専門的とは、がんやHIV、難病のような疾患のことを指し、傷病の区分ごとに認定を受けます。専門医療機関連携薬局を称するには、傷病の区分をはっきり示す必要があります。
なお、認定を受けていない薬局は、「地域連携薬局」や「専門医療機関連携薬局」と称することはもちろん、それに似た名称を使ってはならないとされています。また、認定は1年ごとの更新制となる方向です。

実は、この地域連携薬局と専門医療機関連携薬局については、2015年(平成27年)に厚生労働省が策定した「患者のための薬局ビジョン」の中で、「かかりつけ薬剤師・薬局」ならびに「高度薬学管理機能」と記されていた内容とも言えます。既に制度化されている健康サポート薬局も含め、立地で選ぶ時代から、患者は機能や目的・役割で薬局を選ぶ時代へと変わりつつあることが分かります。

改正案のポイント2:服用期間中のフォロー

改正案では、患者への服薬指導についての記述もあります。薬剤師は患者に対し、調剤した際だけでなく、必要に応じて服薬状況の把握や指導を実施することが義務づけられます。
また、患者の薬剤等の使用に関する情報を、他の医療提供施設の医師等に提供することを努力義務にする方向です。
厚生労働省の「平成 29 年(2017)社会医療診療行為別統計の概況」によると、調剤報酬明細書1件における使用薬剤の薬剤種類数が75歳以上の患者の場合、「7種類以上」の割合が他の年代よりも高く、約20%近い高齢者の方が1回の処方で多くの薬剤を受け取っていることが分かります。
重複投薬の防止や残薬解消を進め、薬物療法を安全・有効に進めていくためには、薬剤師が継続的に服用のフォローをすることが求められているのです。

また最近では、がんなどの治療も通院での薬物療法を実施する医療機関が増えています。自宅にいながら安心して治療を行うためにも、地域に密着した薬剤師と医療機関が密に連携・対応できる体制づくりが求められていることが、今回の改正案にも強く反映された形といえるのではないでしょうか。

改正案のポイント3:対面指導の例外 ~テレビ電話等による服薬指導~

これまで、薬剤師による服薬指導は対面によって行うことが法律で明記されており、テレビ電話などを使っての服薬指導は、医療資源が乏しい離島やへき地などの「対面での服薬指導が行えない患者」のいる国家戦略特区を除き、認められていないのが現状です。
今回の改正案の中には「対面での服薬指導義務の例外」が含まれており、この項目が改正薬機法に盛り込まれた場合は、国家戦略特区以外の地域でもテレビ電話などによるオンライン服薬指導を行うことができるようになります。
具体的な要件や方法は省令で定められることになりますが、全面的な解禁ではなく緊急時などの限定的な運用からまずは始まる見通しです。ICTの活用は、在宅医療を支えるためのツールの1つです。オンライン診療と同様、患者の安全性の確保と利便性のバランスをどのように図っていくのか、今後の動向に期待しましょう。

まとめ

今回提出された薬機法改正案では、機能別薬局の認定制度導入や、継続的な服薬状況の把握及び服薬指導の義務化、一定のルールの下でのテレビ電話等による服薬指導の導入など、薬局や薬剤師のあり方が見直される内容が盛り込まれています。これまでの対物業務を中心としたものから、患者が医薬分業のメリットを実感できる対人業務中心へとシフトするだけでなく、薬剤師の業務が専門的で意義のあるものだと理解してもらうきっかけになるでしょう。

引き続き国会の動向に注目し、この機会に薬局・薬剤師としてのどのように患者と向き合っていくべきかを、改めて考えてみてはいかがでしょうか。

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