ICT活用が感染対策と現場改革のカギ!2021年介護報酬改正のポイント

公開:2021年02月17日

2021年1月18日、介護給付費分科会にて「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」が取り纏められ、2021年度の介護報酬改定の改定率が+0.70%となりました。これまでの介護給付費分科会を振り返ってみると、団塊の世代が75歳以上に達する2025年度に向けて、医療や介護、生活支援が包括的に確保される地域包括ケアシステムや、質の高い介護サービスを実現する自立支援について議論されてきました。令和3年度介護報酬改定の概要にはこれらの課題に加えて、新型コロナウイルス(COVID-19)をはじめとした感染症対策や、医療および介護のICT化なども検討され、介護報酬改正の大きなポイントとなっています。

そこで今回は感染症対策やICT化について、2021年1月18日に開催された第199回社会保障審議会介護給付費分科会資料などをもとに、詳しく解説します。介護スタッフの働き方や介護の仕方などに変化がもたらされようとしている今、介護業界の経営層の方や現場の管理者の方はぜひ参考にしてみてください。

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介護報酬改定の概要

介護

2021年1月18日の介護給付費分科会資料「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」に取り纏められた運営基準の改正内容について、5つのポイントに分けてご紹介します。

1.感染症や災害への対応力強化

今回の新型コロナウイルス感染症の拡大については、各事業所とも様々な工夫で感染症対策を行いながらサービスの提供をされているかと思います。しかし、今後も同様の感染症が発生したり大規模な災害が発生する可能性は、決してゼロではありません。
介護サービスは、利用者やその家族の生活を継続する上で欠かせないものです。そのため、感染症や災害が発生した場合であっても、利用者に対して必要なサービスが安定的・継続的に提供されることが重要であり、そのための取組や体制作りの必要性が、改正内容に盛り込まれました。

  1. 日頃からの備えと業務継続に向けた取組の推進
    • 感染症対策の強化(義務化)
    • 業務継続に向けた取組の強化
    • 災害への地域と連携した対応の強化
    • 通所介護等の事業所規模別の報酬等に関する対応

2.地域包括ケアシステムの推進

いわゆる団塊の世代の全てが 75 歳以上となっている 2025 年まで、あと4年。介護や医療のサービスが崩壊することなく、また国民ひとりひとりが住み慣れた地域でサービスを受けられる体制作りは、待ったなしの状態です。そのため、2021年度の介護報酬改定では、地域包括ケアシステムの取組をさらに推進するための7つの対策が盛り込まれることとなっています。

  1. 認知症への対応力向上に向けた取組の推進
    訪問系サービスでの認知症専門ケア加算新設、多機能系サービスでの認知症行動・心理症状緊急対応加算新設、介護に直接携わる職員が認知症介護基礎研修を受講するための措置を義務づける、など。
  2. 看取りへの対応の充実
    看取りに係る加算期間の追加(死亡日30日前よりも以前からを評価対象に)、訪問介護に係る2時間ルールの弾力化、など。
  3. 医療と介護の連携の推進
    短期療養における総合的な医学的管理の評価を追加、老健施設における所定疾患施設療養費の見直し、など。
  4. 在宅サービスの機能と連携の強化
  5. 介護保険施設や高齢者住まいにおける対応の強化
    訪問介護の通院等乗降介助について目的地間の移送についても算定可能とする、認知症GH・短期療養・多機能系サービスにおける緊急時短期利用の受入日数や人数の要件等見直し、など。
  6. ケアマネジメントの質の向上と公正中立性の確保
    ICT活用又は事務職員の配置を行っている場合の逓減制における適用件数の見直し、事業所間連携により体制確保や対応等を行う事業所の特定事業所加算を新たに評価する、など。
  7. 地域の特性に応じたサービスの確保
    離島や中山間地域等におけるサービスの充実を図るための加算対象追加、過疎地域等での小規模多機能型施設の登録定員等基準改正、など。
3.自立支援・重度化防止の推進

介護保険で提供されるサービスは、要介護状態等の軽減または悪化の防止に貢献するものでなければならないとされています。そのため、これまでの制度改定時にもプロセス評価やアウトカム評価の拡充、一般介護予防事業等の推進等を図る見直しなどが行われてきました。
2021年度の介護報酬改定にも、サービスの質の評価および「CHASE」や「VISIT」などを用いた介護データを活用しながら、科学的根拠に基づく質の高い介護サービスを提供できるよう、以下の3つの取組を推進する内容が盛り込まれました。

  1. リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取組の連携・強化
  2. 介護サービスの質の評価と科学的介護の取組の推進
  3. 寝たきり防止等、重度化防止の取組の推進

上記の中でも特に注目したい点は、CHASEやVISITへの情報提供とそのフィードバックによる活用を新たに評価する内容が設けられることです。また、通所介護や特養等がICTを活用して外部のリハ専門職等との連携推進を図った場合についての評価区分が新たに設けられる点もポイントとなるでしょう。

~ちょこっとメモ~
令和3年度(2021年4月)から、「CHASE」と「VISIT」の統合にあわせてデータベースの名称を「LIFE(ライフ):科学的介護情報システム(Long-term care Information system For Evidence)」とする予定とのことです。

4.介護人材の確保・介護現場の革新

介護の担い手不足は以前から言われてきた課題であり、これまでも人材確保対策は講じてきたものの、残念ながらまだまだ改善されたとは言えない状況です。今回の改正にも、深刻化する介護従事者の確保および介護現場の生産性向上にむけた取組を、より一層推進するための内容が含まれています。

  1. 介護職員の処遇改善や職場環境の改善に向けた取組の推進
  2. テクノロジーの活用や人員基準・運営基準の緩和を通じた業務効率化・業務負担軽減の推進
  3. 文書負担軽減や手続きの効率化による介護現場の業務負担軽減の推進

介護職員の処遇改善については、介護報酬改正により経験・技能のある介護職員はそのほかの介護職員の「2倍以上」から「より高くすること」に見直されるほか、勤続年数の長い介護福祉士の割合が高い事業者を評価する新たな区分を設けることとなりました。

5.制度の安定性・持続可能性の確保

介護保険制度は、安定的でかつ持続可能でなければならないものです。しかし少子高齢化が進む日本では、介護に要する費用の確保という点が大きな問題となっています。そのため、必要なサービスは確保しつつもサービスの適正化・重点化を図り、制度の安定性・持続可能性を高めていくための内容が盛り込まれています。

  1. 評価の適正化・重点化
    評価や計算方法、基本報酬の見直し、ケアプランの点検・検証の仕組みの導入、など。
  2. 報酬体系の簡素化
    療養通所介護の報酬体系を日単位から月単位包括へと変更する、など。

評価の適正化・重点化については、様々な形態の介護サービスに応じて評価および計算方法を見直し、介護報酬改正によって利用者の公平性を担保するとしています。

第199回介護給付費分科会資料「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」:令和3年度介護報酬改定の概要
第199回介護給付費分科会資料「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」:令和3年度介護報酬改定の概要

「感染症や災害への対応力強化」として取り組むべきポイント

今回改正される運営基準のなかでも特に重要なポイントとして挙げられるのが、新型コロナウイルスなどの感染症および災害への対応力強化です。事業者に対して求められる具体的な取組内容について、詳しく解説します。

● 感染症対策の取組を義務化
新型コロナウイルスのような感染症が拡大した場合、介護サービスへの影響を最小限に留めるためにも、感染症対策の取組が義務化されます。具体的には、介護サービス事業者に以下の取組を義務付けることとしています。

施設系の介護サービス事業者 現行の委員会の開催、指針の整備、研修の実施に加え、訓練(シミュレーション)の実施を義務付ける
その他の介護サービス事業者 委員会の開催、指針の整備、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等

尚、こちらの対応については、3年間の経過措置が設けられる見込みです。

● 業務継続(BCP対策)に向けた取組の義務化
業務継続に向けた取組については、災害発生時においても介護サービスを継続的に提供するための計画策定・研修、および訓練(シミュレーション)の実施が義務化されます。こちらも感染症対策の取組と同様に3年間の経過措置が設けられる見込みです。
厚生労働省では、介護事業者向けに「社会福祉施設・事業所における新型インフルエンザ等発生時の業務継続ガイドライン」を公開しています。施設種別ごとに感染症の発生段階に応じた予防・対策における留意点などが示されていますので、参考にしながら具体的な対策を検討するのが良いでしょう。

介護人材の確保・介護現場の革新のために

深刻化する介護人材の確保に向けて、社会保障審議会介護給付費分科会ではテクノロジーを活用した業務効率化・改革を提言。21年4月の介護報酬改定にも、推進を後押しする内容が含まれています。ここでは、その中から注目すべき3つのポイントをご紹介します。

(1)見守りセンサー・インカムの導入、記録のICT化
利用者の徘徊や転倒などによる事故防止の観点から、見守りセンサーが有効なICTツールとして注目されています。特に夜間など施設にいるスタッフの人数が限られている場合に有効とされており、見守りセンサーが設置されていたことで夜間業務時間が減少したという実証結果もあります。さらに、センサーがあったことで、スタッフの心理的な負担軽減にもつながったという意見もありました。

見守りセンサー・インカムの導入、記録のICT化

また、迅速な情報伝達や情報共有を可能とするインカムやスマートフォンなどの通信機器の導入も、介護現場で様々なプラスの変化が生まれることがわかっています。例えば、利用者をケアしながらでも、何か気になる点があれば専門スタッフにすぐ相談ができるため、移動時間の短縮やケアの中断を最小限に抑えることが可能です。経験の浅いスタッフは業務に不安を抱えている場合も多いため、スタッフ同士のフォローやサポート体制構築にも重要な役割を果たします。

さらに、スタッフの大きな負担の1つとされている介護記録。特に日々のケア内容の記録や、利用者のバイタル、食事などの状態を記録する作業は、重要であることを理解しつつも記録することが重荷と感じることもあるでしょう。このような事務作業の負荷軽減には、記録や文書作成といった作業をICT化する介護記録ソフトの導入が効果的です。文例をタッチパネルで選択していくだけで介護記録が書けるタイプや、体温や血圧などの測定結果がシステムと連携し自動で記録できるソフトもあります。記録漏れ、転記ミスといった業務のムリ・ムダを減らしたことによる効果は、決して小さくはないはずです。

テレビ会議システムの活用

(2)テレビ会議システムの活用
今回の新型コロナウイルスの感染拡大によって、対面したくても難しい状況が生まれたのではないでしょうか。そのような影響から今後、医療や介護といった非IT分野においても、テレビ会議やテレビ電話の導入が進むことが予想されます。

今回の法改正では、原則的には医療・介護の関係者のみが参加する会議での利用が前提ですが、利用者等の同意を得ればテレビ会議等を通じたコミュニケーションがとれるようにもなります。テレビ会議やテレビ電話の導入は、感染防止や多職種連携促進、過疎地域へのサービス提供の観点など、多くのメリットがあるはずです。

文書負担軽減

(3)文書負担軽減
昨年から急速に進む、行政手続きの脱ハンコへの流れ。この流れは、介護業界にも良い影響を及ぼしています。今回の法改正では、利用者本人または利用者の家族からの同意書についてはデジタルデータの交付を行い、署名・押印不要を原則認めました。また、介護記録などのデジタルデータ保管を可能としました。

行政へ提出すべき書類の簡素化や標準化、民間同士の取引における契約のデジタル化など、まだまだクリアすべき課題はあります。しかし、紙に記載してファイリングする手間や、FAXや郵送による書類のやり取りなど膨大な事務コスト軽減は、人手不足の介護事業者にとっても大きなメリットとなるでしょう。

これら様々なICTツールの導入は、業務効率化・スタッフの負担軽減というメリットだけではなく、今まで以上に適切できめ細やかなケアを実践できるといったメリットがあります。多くの介護スタッフは、自分の行ったケアによって利用者が笑顔になること、元気になることがモチベーションUPにつながっています。ケアの質とスタッフのやりがい、両者が高まるような仕組み作りが、介護現場に求められているのではないでしょうか。

まとめ

2021年度の介護報酬改正は、新型コロナウイルスなどの感染症対策や、介護従事者の働き方改革および人手不足に対応するためのICT化推進が大きく反映された内容であることが、お分かりいただけたかと思います。
介護サービス事業者を始め、多くの非IT分野の企業においても急速にICT化が進んでいます。介護従事者の業務負担を軽減し、できるだけ多くの人材を獲得するためにも、ICT化を実現して労働環境の改善に役立ててみてはいかがでしょうか。

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