電子カルテとは。押さえておきたい概要と導入のメリット・デメリット

近年あらゆる企業や機関で進められている、文書や資料など紙媒体の電子化。医療機関においても、カルテを電子化する病院や診療所が増加しています。
電子カルテとは、患者さんの診療内容や経過などが記入された紙カルテを、電子データ化したもののことです。カルテを電子化することによって様々なメリットが得られます。

本コラムでは、電子カルテの概要や導入することで得られるメリットやデメリット、保存義務や普及率などについてもご紹介します。

このコラムを読んで分かること

  • 電子カルテの使い方、保存義務、普及率
  • 電子カルテ導入時に押さえておきたいメリット、デメリット

【目次】

  • 電子カルテとは?保存の義務や普及率
  • 電子カルテを使うメリット
  • 電子カルテを使うデメリット
  • まとめ

電子カルテとは?保存の義務や普及率

多くの方が耳にしたことがある「電子カルテ」。ここでは改めて、電子カルテとはどのようなものなのか、使い方や保存義務、普及率といった概要と併せてご紹介します。

電子カルテとは

「電子カルテ」とは、従来医師が紙のカルテに記入してきた患者さんの診療内容や経過などに加え、患者さんに関連する看護記録や検査結果、検査画像などの情報を電子データとして保存したものです。これら様々な情報を管理するシステム自体を、電子カルテと呼ぶ場合もあります。

電子カルテの保存期間

患者さんの大切な診療記録であるカルテには、保存義務が定められています。これは、電子カルテにおいても同様の義務が課せられており、「一連の診療が完結した日から5年間」となっています。
この保存義務は、治療を継続している間は含みません。治療が完結したその日から起算されるため、治療が長期にわたる場合でも過去の医療記録を消してはならないと定められています。なお、カルテ以外の情報、例えばレントゲン写真や処方箋については、保存期間は3年間となっています。

電子カルテの保存のポイント「電子保存の3原則」

医療に関する情報を安全に管理するべく、厚生労働省から電子カルテを使用する際には「電子保存の三原則」を満たす必要があると示されています。電子保存の三原則について、以下に記載いたします。

■真正性
真正性とは、正当な権限で作成された記録に対し、虚偽入力、書換え、消去及び混同が防止されており、かつ、第三者から見て作成の責任の所在が明確であることである。なお、混同とは、患者を取り違えた記録がなされたり、記録された情報間での関連性を誤ったりすることをいう。

■見読性
見読性とは、電子媒体に保存された内容を、「診療」、「患者への説明」、「監査」、「訴訟」等の要求に応じて、それぞれの目的に対し支障のない応答時間やスループット、操作方法で、肉眼で見読可能な状態にできることである。

■保存性
保存性とは、記録された情報が法令等で定められた期間にわたって真正性を保ち、見読可能にできる状態で保存されることをいう。

出典:医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5.2版(本編)(厚生労働省)

電子カルテの普及率

現在、厚生労働省による「医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ」の会合などでも、電子カルテの導入が推進されています。厚生労働省の医療施設調査による、電子カルテの普及状況は以下のとおりです。

「電子カルテシステム等の普及状況の推移」(厚生労働省)

令和2年(2020年)度時点での電子カルテの普及率は、一般病院が57.2%、一般診療所では49.9%となっており、年々普及率は上がっています。しかし、病床規模別でみると400床以上は91.2%とかなり高い普及率ですが、200床未満ではまだ48.8%となっており、規模が大きい病院に比べると伸び悩んでいることがわかります。
小規模の病院で電子カルテが普及しない原因としては、導入コストが高いこと、患者数が少ないため電子化しなくても不便に感じていないことなどが考えられます。

電子カルテを使うメリット

ここからは、実際に電子カルテを使用するメリットについてご紹介いたします。

情報管理・活用の即時性が高まる

紙カルテは、いくら整理をしていても探すのに時間がかかります。また、他のスタッフが使用していると閲覧も情報の編集もできません。しかし、電子カルテであれば、検索してすぐに該当のカルテを探すことができ、医師が入力した診療記録や看護師が入力した看護記録、検査結果など更新内容がリアルタイムに反映されるため、複数のスタッフと瞬時に情報を共有することが可能になります。

業務効率がアップする

紙カルテの場合、1枚で患者の情報を共有しているため、診察後も会計へ届くまでには時間がかかり、待ち時間が発生していました。しかし、電子カルテを導入すると、入力した情報は連携する部門で共有できるため、予約や受付、会計などの待ち時間もなくなり、業務全体の効率化に繋がります。
また、レセプトと連携できる電子カルテであれば、算定漏れ防止にもなります。
さらに、多くの電子カルテには入力補助機能や紹介状、診断書などの各種書類のテンプレートが用意されています。そのため、医師によるカルテの入力や書類作成などにかかる時間や負担を大幅に減らすことができます。

物理的スペースに余裕ができる

電子カルテの情報はサーバーに保管されるため、患者が増えても紙カルテのように保管スペースに困ることはありません。電子化以前の紙カルテも、紙での保存が必要なものだけを残し、その他を電子化してしまえば保管スペースを減らすこともできます。

間違いや事故を未然に防げる

紙カルテは、記入する医師によって書き方が違ったり、文字が読みづらかったりすることがあります。場合によっては、読み解くのに時間を要したり、誤読したりしてしまうリスクもあるでしょう。
電子カルテなら、文字も読みやすく指示を誤りなく理解することができるため、転記ミスや伝達ミスなどによる医療ミスを未然に防ぐことができます。

電子カルテを使うデメリット

次に、電子カルテを使うデメリットについて説明します。メリットと合わせてデメリットも把握しておくと、導入時のギャップやリスクを回避することができます。

活用するまでに時間がかかる

一般的な電子カルテは、直感的に操作できる画面設計になっていますが、機能がたくさんあるため、操作に慣れるまでに時間がかかるケースがあります。パソコンの操作自体に不慣れな人にとっては、はじめは紙カルテよりも時間がかかることもあるでしょう。
他にも、電子カルテと会計システムが別システムの場合、それぞれの画面操作や仕組みを覚える必要があるので、その分の手間がかかります。
電子カルテは機種によっても操作方法が異なるため、事前に研修期間を設けることが重要になってきます。

導入・運用コストがかかる

電子カルテは、導入費用はもちろん、毎月の運用コストも必要になります。無料で使える電子カルテもありますが、セキュリティー面に懸念がある場合などは、適正な費用をかけて機能や保証が充実した電子カルテを導入することをおすすめします。

現在、厚生労働省は電子カルテの導入を推進しており、電子カルテ未導入の中小医療機関を中心に補助金と診療報酬によるサポートが検討されています。
詳しく知りたい方は、厚生労働省 健康・医療・介護情報利活用検討会 医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ(第3回:2022年1月7日)にて議論されている「標準規格準拠の電子カルテ導入の推進策」をご確認ください。

停電すると使えなくなる

電子カルテは電子機器で構成されているので、停電時または電力供給が安定しない中では使用できません。電子カルテを使うのであれば、万が一の事態に備えて、一時的に紙カルテの運用に切り替える方法などを導入前に確認しておくことも大切です。

紛失や情報流出などセキュリティー面の不安がある

メールやWebサイトの閲覧によるランサムウェアの感染は、医療業界でも問題視されています。そのため、機器がオンラインで繋がっている場合などはウイルス対策ソフトをインストールし、最新の状態に保っておくようにしなければなりません。
また、情報がどこでも閲覧・確認できる反面、端末を紛失してしまうなどの物理的なリスクも考えられます。利用する職員に教育を行うなど、セキュリティー意識を高めることも必要です。
患者の大切な情報を適切に管理するためにも、セキュリティー対策は重要となります。

まとめ

今回は、電子カルテの概要や導入におけるメリットとデメリットなどについてお伝えしてきました。今回の内容を改めて以下にまとめます。

<このコラムのPOINT>

  • 電子カルテとは、患者さんの診療内容や経過、看護記録、検査画像などの情報を電子システムに置き換えて管理する電子データあるいはシステムのこと
  • 年々電子カルテの稼働状況は伸びているが、中小規模(400床未満)の医療機関での電子カルテの普及は伸び悩んでいる
  • デジタル化が進み、業務効率化の視点からも電子カルテへの切り替えは必要性が高まっている
  • 電子カルテのメリットは、情報管理・活用の即時性業務効率化、間違いや事故の未然防止など多岐にわたる

電子カルテは、導入・運用コストがかかったり、システムの使用に慣れるまで少し時間がかかったりなどのデメリットはありますが、業務効率を高め、間違いや事故を未然に防いでくれるものであり、医療現場などで働く人にとっては非常に便利なシステムです。

導入の際には、セキュリティー面や万が一の時に備えた対策も合わせて準備することをおすすめします。

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電子カルテで出力可能な診療情報提供書(紹介状)や訪問看護指示書、服薬情報提供文書など、病院や診療所・薬局様では管理すべき重要な医療文書が多く存在します。そして、その管理業務に負荷を感じている、紙での文書保存をやめセキュアな環境で保管したいとお考えの経営者様、スタッフ様も多いのではないでしょうか。

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また、2023年1月からは電子処方箋が本格的に導入されます。電子カルテで署名入りの電子処方箋を作成し薬局へ送信、薬局では電子処方箋を元に調剤、そして処方結果も電子データで受け取る。このように処方箋が電子化されることで、業務効率化に繋がるだけでなく、医療機関と薬局の情報共有が進むことでしょう。

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