年次有給休暇取得の基準日に要注意!取得状況を管理しやすく&取得しやすくする方法

2019年4月から全ての企業において、年間10日以上の年次有給休暇が付与されている労働者に対し、使用者が時季を指定して年5日の年次有給休暇を取得させることが義務付けられました。これを受け、従業員に対し、確実に年次有給休暇を取得させるための管理方法について悩んでいる人事・総務担当者の方も、多いのではないでしょうか。
このコラムでは、年次有給休暇取得義務化の概要や管理方法のほかに、従業員が年次有給休暇を「取得しやすくする」ための方法についてもご紹介します。

年次有給休暇取得が義務化されました

労働基準法改正を受け、2019年4月から「年5日の年次有給休暇の取得」が義務化されました。具体的な内容をおさらいしましょう。

  1. 労働者ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日について、取得時季を指定し取得させることを使用者に義務付ける。
  2. 対象者は、年に10日以上年次有給休暇を付与される労働者であり、管理監督者や有期雇用労働者も含まれる
  3. 時季の指定については、労働者の意見を聴取しなければならない。
  4. 労働者自らが既に5日以上の年次有給休暇を請求・取得している場合は、使用者からの時季指定は必要なく、また、することもできない。
  5. 使用者による年次有給休暇の時季指定を実施する場合は、就業規則へ対象となる労働者の範囲および時季指定の方法等について記載しなければならない。
  6. 使用者は、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければならない。
  7. 1あるいは5に違反した場合、労働基準法違反として30万円以下の罰金が科せられることがある。

厚生労働省が発表した「平成31年就労条件総合調査 結果の概況[労働時間制度]」によると、労働者一人あたりの年次有給休暇取得率は52.4%となっています。前年は51.1%だったため微増していると言えますが、大手旅行サイトが平成30年に実施した世界19ヶ国の年次有給休暇取得率の調査によれば、スペイン・ドイツ100%、韓国93%、アメリカ71%に対し、日本は50%(最下位)でした。日本の労働者の多くが年次有給休暇を取得することにためらいを感じており、また、そもそも休み不足だと感じていないことから、諸外国に比べて取得率が低いと考えられます。

昨今問題となっている、働きすぎによるメンタルヘルスの悪化や業務効率の低下を改善し、多様で柔軟な働き方を目指すため、政府が掲げたのが「年5日の年次有給休暇の取得」の義務化です。年次有給休暇を従業員が気兼ねすることなく取得することで、心身がリフレッシュされ、生産性の向上を図ることができ、ひいては「ワーク・ライフ・バランス」の向上にも繋げることが目的です。

年次有給休暇取得の義務化について、詳しくは「有給休暇取得の義務化のポイントと企業が取る対策について【2019年4月施行:働き方改革】」のコラムでもご紹介しておりますので、ご参照ください。

年次有給休暇取得の「基準日」とは

「年5日の年次有給休暇の取得」が義務付けられたことで、使用者は、年間10日以上年次有給休暇が付与された労働者に関して、年間5日について年次有給休暇を取得させる必要があります。ここで問題になるのが、「1年のうち何月何日から何月何日までの間で取得すれば良いか」という点です。これを明確にするためには、年次有給休暇を5日取得するべき期間の最初の日、つまり「基準日」を明確にする必要があります。

通常、労働者に対して雇い入れ日から6ヶ月経った日に10日間の年次有給休暇が付与されます(労働基準法第39条)。基準日とは、この年次有給休暇が付与された日を指すのです。例えばその年の4月1日に雇い入れられた労働者の場合、入社7ヶ月目の10月1日が基準日となり、その年の10月1日から翌年9月30日までの1年の間に年次有給休暇を5日取得させなければなりません。

基準日の設定例 出典:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説(厚生労働省)

なお、雇入れ日当日に年次有給休暇を前倒しで付与する場合、つまり、法定の基準日よりも前に10日以上の年次有給休暇を付与した場合については、雇入れ日から1年以内に5日の年次有給休暇を取得させる必要があります。例えば、2019年4月1日に入社し、入社日に年次有給休暇が10日以上付与された場合、2020年3月31日までに5日の年次有給休暇を取得させなければならないということです。

年次有給休暇を前倒しで付与した場合の考え方
出典:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説(厚生労働省)

年次有給休暇を管理しやすくするための方法とは

企業によっては、従業員を随時雇入れていることもあるでしょう。そのような場合、従業員ごとに基準日が異なり、その結果どの従業員がいつからいつまでの間に年次有給休暇を5日取得させる必要があるのか、個々に対応しなければなりません。管理が煩雑になり、管理簿などを付けても見落としが発生するなど、管理をする人事総務担当者の負荷ばかり増えてしまう可能性もあります。
そこで、基準日をある一定のルールに基づいて統一させ、統一的な管理を行う方法を、3つご紹介します。従業員規模や採用の行い方によって方法が異なるため、自分の企業ではどの方法がより適しているかを見定め、検討されることをおすすめします。

(1)年始(1月1日)や年度初め(4月1日)に基準日を統一する

これは、基準日を全社もしくは事業場で1つに統一する方法です。従業員規模が大きい企業や、新卒一括採用を行っている企業に適しています。基準日が1つになることで、年次有給休暇の取得状況を把握しやすくなるメリットがあります。
仮に、これまでは従業員それぞれで基準日が異なっていたものを、年度初めに統一するよう変更した場合、5日の指定義務がかかる1年間の期間が重複するケースが生じます。重複したままでは基準日を1つに統一するメリットが得られないため、重複する期間に応じ、年次有給休暇日数を比例按分する方法が認められています。例えば2020年の4月から基準日を統一するのであれば、以下の例を参考にされてはいかがでしょうか。

5日の指定義務がかかる1年間の期間に重複が生じる場合の考え方
出典:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説(厚生労働省)
(2)基準日を年2回(4月1日と10月1日)に統一する

これは、10月1日から翌年3月31日の間に入社した従業員の基準日を翌年4月1日、4月1日から9月30日までに入社した従業員の基準日を10月1日と定める方法です。(1)でご紹介した1つに統一する方法に比べて、入社月による不公平感を減らすことができます。また、基準日も年に2回となるため、管理も煩雑になりにくいでしょう。

(3)基準日を月初などに統一する

これは、入社日が月の途中であったとしても、基準日を月初などに統一するという方法です。中途採用を積極的に行っている企業や、比較的小規模の企業・事業所に適しています。(2)の方法よりも、さらに不公平感を感じることはないでしょう。
この場合、例えば4月10日に入社したAさんも、4月20日に入社したBさんも、年次有給休暇の付与日を「基準日が到来する月の初日に統一」すると考えるため、両者とも10月1日が付与日ということになります。

基準日を月初などに統一する場合の考え方 出典:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説(厚生労働省)

年次有給休暇を取得しやすくするための取組

ここまでは、年次有給休暇を管理しやすくするための方法についてご紹介してきました。取得状況の管理をシンプルにすることも大切ですが、実際に年5日の年次有給休暇を取得してもらわなければ、意味がありません。そのためには、従業員が上司や同僚に気兼ねすることなく年次有給休暇を取得できる、ルールや職場作りが重要です。そこで、計画的に休暇取得日を割り振る「計画的付与制度」と、ユニークな休暇制度についてご紹介します。

・計画的付与制度(計画年休)
年次有給休暇の計画的付与制度(計画年休)とは、労働者と使用者間で協議し労使協定を結べば、付与されている年次有給休暇のうち5日を超える分について計画的に休暇取得日として割り振ることができる制度のことをいいます。休暇取得日を定めることで、労働者はためらいを感じることなく年次有給休暇を取得できる点がメリットです。また、管理する使用者側にとっても労務管理がしやすくなるだけでなく、この計画年休で取得した年次有給休暇も取得義務である5日にカウントして良いため、義務化への対応もできるという利点があります。
付与の方法としては、以下のような例があります。

  • 企業全体もしくは事業所単位で決まった日を休業(計画的付与日)とする
  • チームやグループ別に交替制で年次有給休暇を付与する
  • 閑散期に計画的付与日を設ける
  • カレンダーの飛び石休日の箇所に計画的付与日を設けることで休日の橋渡しをし、連休を作る(ブリッジホリデー)

自社の業種や業務内容にあわせて、最適な方法を選んではいかがでしょうか。

・ユニークな休暇制度
従業員の年次有給休暇取得率向上のために、ユニークな制度を設けている企業があります。例えば、以下のような例があります。

  • 家族や自分の誕生日、結婚記念日などに休暇を取得できる制度
  • 3連休のない月の第3金曜日に休暇取得を推進する制度
  • 自己啓発を目的とし、最高で5日間連続で休暇を取得できる制度
  • 失恋した場合に会社を休んでも許される制度
  • ずる休みしたい!と正直に申告すれば休暇を取得できる制度

かなり斬新な制度もありますが、従業員が「休暇を主体的に取得しても良いのだ」と思ってもらえることが、年次有給休暇の取得率向上につながるのではないでしょうか。

まとめ

年次有給休暇は労働者に与えられた権利であり、心身のリフレッシュとそれによる生産性の向上を目的としたものです。年次有給休暇取得にあたっては、「企業が今、繁忙期であるかどうか」、また「同僚への配慮」などの考慮はもちろん必要でしょう。しかし、「みんなに迷惑がかかるから」、「後で結局自分の首を締めるから」など、取得しづらい環境や雰囲気があっては、従業員の企業に対する満足度は低下する一方です。
「トップダウンで年次有給休暇取得を呼びかけ、企業全体で取得しやすい雰囲気をつくる」、「仕事を属人化せずチーム内で柔軟に対応できる組織作りをする」など、働き方全体を見据えた環境や制度作りの検討をおすすめします。

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