社会保険の扶養手続でおさえたいポイント[まとめ]
被保険者の給与収入により生活している家族は、「被扶養者」として手続を行うことで保険料が免除されます。しかし家族であれば誰でも被扶養者になれるというわけではなく、条件を満たした家族に限られます。
そこで今回は人事労務担当者に向けて、社会保険における被扶養者と認定されるための条件を詳しくご紹介します。一部改正されている内容もあるため、この機会におさらいの意味も込めてチェックしてみてください。
社会保険における被扶養者の条件
社会保険の1つである健康保険は、日々の暮らしの中で自分あるいは家族が怪我や病気になった場合の治療費や生活費を支援してくれる制度です。国民の誰もが何らかの健康保険に加入しています。そして、家族のうち被保険者の給与収入により生活している方は「被扶養者」として、被保険者と同じ健康保険の給付を受けることができます。
しかし、被扶養者と認定されるためにはいつくかの条件を満たす必要があります。今回は、利用している方の多い協会けんぽ(全国健康保険協会)を例に挙げ、見ていきましょう。
範囲・続柄における被扶養者の条件
社会保険の扶養手続でまず理解しておきたいのが、被扶養者とみなされる家族の範囲や続柄といった要件です。被保険者と同居している必要があるかどうか(同居要件)により分類することができます。
(1)被保険者と同居している必要がない者(下記図のピンク枠内にあたる方)
• 配偶者
• 子、孫および兄弟姉妹(平成28年10月1日より兄姉の同居要件は廃止されています)
• 父母、祖父母等の直系尊属
(2)被保険者と同居していることが必要な者(下記図のピンク枠外にあたる方)
• 上記(1)以外の3親等内の親族(伯叔父母、甥姪とその配偶者等)
• 内縁関係の配偶者の父母および子(当該配偶者の死後、引き続き同居する場合を含む)
配偶者の父母や子の配偶者などの場合は、被保険者と「同一の世帯であること」が条件になりますが、この「同一世帯」とは被保険者と同居し家計をともにしている状態の家族を指します。つまり、実態として同じ住居で生活をしていなければなりません。また、二世帯住宅などで同居していたとしても、家計が別なのであれば同一世帯とはみなされません。
さらに、令和2年(2020年)4月1日より被扶養者の認定基準に以下の項目が追加されました。
(3)(1)または(2)の要件を満たす者で、日本国内に住所を有していること(国内居住要件という)
ただし、日本国内に住所を有していない方、例えば外国へ留学をしている学生である場合などは、被扶養者(異動)届または第3号被保険者関係届を届出ることで、特例的に被扶養者に認定される場合があります(海外特例要件という)。詳細については日本年金機構サイト内「従業員の家族が海外居住の場合の手続き」に記載されています。
収入における被扶養者の条件
被扶養者として認定できるかは、続柄だけでなくその家族の収入も要件となります。まず前提として「被保険者が生計の主であり維持されている状態である」ことが必要です。その上で、被扶養者として認定したい家族の具体的な年収金額や同一世帯であるかどうかによる条件が加わります。
(1)被扶養者の年収が130万円未満であること
※被扶養者が60歳以上若しくは障害者である場合には、年収180万円未満
かつ、
(2-1)同一世帯の場合は、被保険者の年収の1/2未満であること
(2-2)同一世帯でない場合は、被保険者からの援助よりも収入額が少ないこと
ここで計算される年収には、基本給に加え、通勤手当、休日手当なども含まれます。また、年間収入とは、被扶養者に該当する時点および認定された日以降の年間見込収入金額を指します。そのため、6月までに得た収入が80万円だったとしても、年間分に変換すると160万円となるため、適用条件から外れてしまいます。さらに、失業給付や傷病手当金も収入扱いとなるため、手続の際に見落とさないようにしましょう。
なお、同居・別居に関係なく後期高齢者医療制度の対象者である75歳以上(寝たきり等の場合は65歳以上)の方は、被扶養者にはなれません。
家族を被扶養者とする場合の手続の流れ
ここからは、従業員から「家族を被扶養者として加えたい」あるいは「家族を扶養から外したい」と相談された際の流れについてご説明します(ここでは、協会けんぽの扶養手続を進める流れについてご紹介します)。
まず、従業員(被保険者)に扶養者が加わる、もしくは異動が発生した場合は、原則として5日以内に「健康保険被扶養者(異動)届」を会社(事業者)に提出してもらいましょう。手続きを迅速に進めるためにも、従業員から早めに連絡していただくと共に、この後ご紹介する必要書類についてまとめた資料を準備しておくことをおすすめします。
なお、現在は健康保険被扶養者(異動)届と国民年金第3号被保険者関係届が一体化となった様式になっています。そのため、国民年金第3号被保険者関係届を別途作成する必要はありません。
次に、健康保険被扶養者(異動)届と共に提出する書類は以下の通りです。
書類の目的 | 添付書類 | 添付の省略ができる場合 |
---|---|---|
(1) 続柄の確認 |
次のいずれか
|
次のいずれにも該当する場合
|
(2) 収入の確認 |
年間収入が「130 万円未満」であることを確認できる課税証明書等の書類 | 次のいずれかに該当する場合
|
(3) 別居の確認 |
仕送りの事実と仕送額が確認できる書類
|
次のいずれかに該当する場合
|
なお、表内の※印部分について、障害・遺族年金、傷病手当金、出産手当金、失業給付など、非課税対象の収入がある方の場合は、金額が分かる通知書のコピーが必要です。
また、被扶養者となった日が健康保険被扶養者(異動)届を会社に提出する日よりも60日以上経過している場合には、以下の書類も提出してもらうようにしましょう。
|
健康保険被扶養者(異動)届ならびに必要な添付書類を確認したら、早めに日本年金機構へ提出しましょう。
まとめ
社会保険の扶養手続を進めるうえでは、被保険者と被扶養者が同一世帯であるかどうかや収入による条件など、様々な内容を確認する必要があります。特に収入条件については計算ミスをしやすい部分でもあるので、落ち着いて行うようにしましょう。
なお、「健康保険被扶養者(異動)届」は、電子申請による手続き可能です。時間を気にせずいつでも提出できるため、窓口が空いている時間までに・・・と慌てる必要もなくおすすめです。特にこれからの時期は年末調整などの準備も始まるため、多忙になりがちです。業務をスムーズに進め効率化を図るためにも、電子申請による手続きを考えてみてはいかがでしょうか。
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