形骸化したQCサークル活動を見直すためのポイントとは

公開:2020年11月05日

更新:2022年01月31日

品質管理を改善・向上させるために実施する「QCサークル活動」は、企業の発展のためにも積極的に行いたいところです。しかし、導入したQCサークル活動が形骸化してしまい、品質管理向上の方法に頭を抱えている方も多いのではないでしょうか。
このコラムでは、形骸化してしまったQCサークル活動を復活させ、より効果的な活動を可能にする方法についてご紹介します。QCサークル活動の現状に悩みを抱えている方は、是非ご覧ください。

【目次】

  • QCサークルとは
  • QCサークルは時代遅れなのか?
  • なぜQCサークル活動は形骸化してしまうのか
  • 実のあるQCサークル活動の進め方
  • QCサークルの事例
  • QCサークルのまとめ

QCサークルとは

QCサークルとは、製造現場などの第一線で働く従業員たちが、品質管理(Quality Control)向上を目指し議論・行動していく活動です。従業員を小規模なグループ「QCサークル」に分け、自分たちが製造に関わっている製品の品質管理改善についてさまざまな案を出すことで、品質の向上を狙います。

QCサークル活動はアメリカで生まれた統計的品質管理の手法が基礎で、この手法に日本独自の改良が加えられたことで広まっていきました。QCサークル活動では、主に数値によって物事を判断するため、客観的な視点で自社の現況を理解できる点が特長です。
また、従業員たちが主体的に自社(製品)をどう改善していくかについて議論するため、「自分たちが企業を良くしているのだ」という意識から、仕事へのモチベーションが高まるだけでなく組織への帰属意識を高める効果も期待できます。
特に製造業の場合、自分の作業が組織にどう貢献しているかが見えにくければ、モチベーション低下につながりかねません。QCサークル活動を実施し、改善を目的とした話し合いの場を持てば、こうした従業員のモチベーション低下を防ぐこともできるでしょう。

QCサークルは時代遅れなのか?

近年、QCサークル活動はあらゆるビジネスマンに「時代遅れ」として見られ、衰退の傾向にあります。以前はQCサークル活動を熱心に行っていたものの、いつからか全く行わなくなった企業も多いのではないでしょうか。
QCサークル活動に時代遅れのイメージが付いて衰退した理由には、2つの原因が考えられます。

慣習として惰性で行われているため

QCサークル活動は本来、改善すべきテーマを見つけて議論し、改善を実施する活動です。しかし、実際には慣習として惰性でQCサークル活動を行うケースが多く存在します。
惰性で行うQCサークル活動では、価値のあるテーマが出てくることはほとんどありません。多くの従業員にとっては慣習としてやらされているだけであり、無駄な時間というイメージが付いてしまいます。

ノルマを課すことで自主性が奪われるため

活動期間が限られている中で行われる事が多いQCサークル活動では、従業員一人ひとりにアイデア発案や資料作成などのノルマが課されるケースは少なくありません。しかし、ノルマを課すQCサークル活動は従業員の自主性を奪い、活発な議論が行われなくなってしまいます。
ノルマを達成するために従業員の残業やサービス残業を発生させやすいことも、時代遅れのイメージにつながる要因です。

なぜQCサークル活動は形骸化してしまうのか

QCサークル活動にはさまざまなメリットがある一方で、「導入してみたものの形骸化してしまった」、「目標としていた効果が表れない」などの悩みを抱く企業も少なくありません。では、なぜQCサークル活動は形骸化しやすいのでしょうか。

考えられる理由として、「QCサークル活動そのものが目的となっている」パターンが挙げられます。本来、QCサークル活動は「商品あるいは業務の品質をより良くしていく」という目標へ近づくための手段です。しかし、QCサークル活動を行うこと自体がゴールとなってしまうことで、活動に生産性がなくなっているケースが考えられます。
QCサークル活動が自分たちの業務改善に役立っていないにもかかわらず、貴重な作業時間が資料作成などに割かれていれば、従業員たちのモチベーションも低下してしまうでしょう。
よい方向に進まない状況が続くと活動自体に参加する意識が薄れてしまい、結果的に行き詰まってしまう可能性もあります。QCサークル活動を導入・推進していくなら、なぜこの活動を行うのかや得られる効果などを明確にしたうえで、形骸化させない工夫をする必要があります。

実のあるQCサークル活動の進め方

QCサークル活動は、下記のような流れに則って進めることが重要です。

STEP1:テーマ選定
STEP2:現状把握と目標設定
STEP3:問題発生の要因解析
STEP4:改善案の立案と実施
STEP5:効果測定と共有

テーマ選定から始まり、改善の効果測定と共有まで進めることで、生産性があるQCサークル活動を行えます。

QCサークル活動を形骸化させず企業として実のあるものとするには、まず以下2つのポイントを意識することがおすすめです。その上で、企業独自の試みがあれば、適宜実施していきましょう。

TQM視点での目標を設定する

QCサークル活動は、企業のなかで小規模なグループを作り改善点を議論していく活動です。しかし、各グループが思い思いの目標を立て改善していった場合、個々の目標は達成できるかもしれませんが、企業としての成長や改善とはならない可能性もあります。理由は、企業として考える成長や経営目標が個々の目標とリンクしていないためです。
そこで取り入れたいのが、TQM(Total Quality Management)視点での目標です。TQMは「総合的品質管理」とも言われており、企業全体で取り組む品質管理を指します。まずは企業トップが経営目標を定め、その後、品質目標、顧客満足度視点での目標とブレイクダウンさせ、その目標を達成するためにどのような活動が必要かをQCサークル活動で議論しましょう。
そうすることで、サークル活動の目標の意義や重要性が実感できるだけでなく、自分たちが行う活動が企業活動や経営に繋がっていることが理解できるようになります。結果として、企業に貢献したという達成感やQCサークル活動へのモチベーション向上も期待できます。

経営層・マネジメント層からのフィードバックを得る

QCサークル活動を形骸化させないため、意識しておきたいのが経営層・マネジメント層からの定期的なフィードバックです。よく聞かれるのは、活動の取組が終わってから発表会のような形で報告を行うという方法です。
しかし、報告のみしか経営層やマネジメント層が関心を示してないのではないか、という気持ちを従業員達が抱いてしまっては、QCサークル活動に対するモチベーションも低下し、形骸化につながってしまいます。
そこで、ぜひ経営層やマネジメント層は、頑張った成果だけでなく過程についても関心をもち、積極的に活動に関わっていく姿勢を見せましょう。また、その際には経営目標を立てた際の考えや想い、現場の改善活動に期待していることなどを話すとよいでしょう。
自分たちの意見や改善活動を期待してくれていることが伝われば、従業員たちのQCサークル活動に対するモチベーションも向上していくはずです。

QCサークルの事例

最後に、実のある活動ができているQCサークルの事例を2つ紹介します。

射出成形メーカーのA社

A社の検査課が行ったQCサークル活動の目標は、製品ケースへの合格判の押し忘れ防止です。押し忘れを防止するためにはハンコを押した回数が確認できたほうがよいと決まり、合格判として使用するハンコの上部にアナログ数取器を設置しました。
続いて、暗所での使用も考慮して、ハンコを押す手元は明るくできたほうがよいという声が出ます。改良を重ねて、ハンコにLEDライトを設置しました。
さらに、毎日使うものなので壊れにくいものにしたいため、ハンコに使用する部品点数を増やして、数取器とLEDライトの接合をより強固にします。以上の改善により、強固で使い勝手がよく、合格判の押し忘れが防止できるハンコを業務で使用するようになりました。

部品製造メーカーのB社

B社の製造課が行ったQCサークル活動の目標は、加工機近くの階段での転倒防止です。部品加工後の加工機周辺は切削水で濡れており、階段も濡れていて滑りやすくなっています。
階段床には滑り止めの網目が付いているものの、表面に水が溜まって滑り止めの効果が出ていませんでした。
QCサークル活動で出た改善案は、階段床の表面を金網にして、水が溜まりにくくなるようにすることです。階段床の加工には製造時の端材を使用して、費用をあまりかけない方向にしました。表面が金網になった階段は靴底のグリップ力もよくなり、部品加工後も滑らない安全な作業現場が実現できています。

QCサークルのまとめ

ここまで、QCサークルの見直すためのポイントについて解説してきました。改めて、今回のポイントをまとめます。

<このコラムのPOINT>

  • QCサークル活動とは、製造現場などの第一線で働く従業員たちが、品質管理(Quality Control)向上を目指し議論・行動していく活動のこと
  • QCサークル活動そのものが目的となってしまうと、活動が形骸化したり、思った効果を得られなかったりする
  • QCサークル活動を形骸化させないためには、TQM視点での目標を設定する、適切なフィードバックを返すことが重要

近年ではデジタル化や働き方改革などにより、品質管理に必要なデータをシステム管理し、管理帳票や検査報告書の出力をシステム化することで、現場の負荷を軽減し生産性向上に向けた施策に注力できる仕組み作りが求められています。こうしたデジタル化の流れをいち早く察知し、自社に活かしていく意識が製造現場の品質改善にもつながるのではないでしょうか。

おすすめ製品

製造現場の品質管理を向上させていくうえで、QCサークル活動とその見直しが重要な役割を果たすことをご紹介しましたが、加えてシステム面の見直しも図れば、より品質管理の向上が見込めるでしょう。そこでおすすめなのが、品質管理システム「HYPERSOL QMS」です。
システムを活用することで、各種帳票のワンタッチ出力、検査データのCSV又はExcel出力などが可能となり、品質管理業務における各工程の省力化が期待できます。さらに、システムのログインユーザーやパスワードについても制御が可能であり、「いつだれがどのような処理を行なったか」を可視化。これにより、データ改ざんのリスクを軽減できます。そのほか、4種類(パレート図、ヒストグラム、管理図、散布図)の管理帳票がテンプレート化されており、導入後すぐにご利用いただけます。

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