インフルエンザによる欠勤・出勤停止時の勤怠処理について

通例ですと11~12月頃に流行が始まり、1~3月にピークを迎えるインフルエンザ。今年は、新型コロナウイルス(COVID-19)のと同時流行が懸念されていましたが、現時点では例年よりも大幅に罹患者が少ない結果となっています。しかし、毎年のように流行し感染力も高いインフルエンザに従業員が感染してしまった場合、あなたの企業ではどのような対策を立てていますでしょうか。
従業員がインフルエンザに感染した場合、企業としては従業員の健康と安全を守る観点から、適切な対応をとる必要があります。また、「休みをどのように扱うべきか」「休業に際して手当は必要か」など、人事・総務担当者として従業員への正しい説明と周知が求められます。
そこで今回は、従業員がインフルエンザにかかった際の企業側での対応や休業に関する取扱い、休業手当に関する注意点などについて解説します。
感染症への危機意識が高まっている今だからこそ、企業の人事・総務担当者はおさらいの意味もかねて参考にしてみてください。

このコラムでは、季節性インフルエンザをインフルエンザとして説明させていただきます。尚、説明の上で細かい分類が必要な場合は、季節性や新型など名称を付けてご説明させていただきます。

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インフルエンザにかかった場合の出勤可否

もしも従業員がインフルエンザに感染してしまった場合、出勤の可否について法的な決まりはあるのでしょうか。実は、インフルエンザに感染した際の扱いについて、幼稚園や小学校などの学校の場合は「学校保健安全法」によって登校してはならない(出席の停止)と定められていますが、企業には法的な基準がありません。

しかし、企業には全従業員に対して安全配慮義務があります。安全配慮義務とは、従業員が安全で健康に働けるように配慮することです。労働者がケガや病気にならないように、快適な職場環境が保たれるよう努力・配慮をすることが企業に求められています。
インフルエンザに感染している従業員が出社してしまうと、社内で感染が広がる可能性があります。そのため、企業としては集団感染を防ぐための対応が必要となるのです。現在、多くの企業では先程ご紹介した学校保健安全法の「出席停止の期間の基準」に準じて、以下のような就業規則を定めています。

インフルエンザ(特定鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)は「発症後5日間が経過し、かつ解熱後2日間」を出勤停止期間とする

あくまでこの期間は一例です。企業によっては異なる基準を定めていることもあります。
また、従業員やその家族がインフルエンザに感染した場合の会社への申告方法についても法的な決まりはないため、「口頭での申告」や「医師による診断書の提出」などのルールも就業規則等で定めておくと良いでしょう。

近年では、インフルエンザに感染して業務の遂行が困難な状態であるにもかかわらず、出勤や業務を強要する「インフルエンザ・ハラスメント」も報告されています。また、従業員本人がインフルエンザの症状を訴えており、医師による診断書を提出しているにもかかわらず出勤を強要した場合、「労働安全衛生法」や「労働契約法」違反に問われる恐れがあります。
従業員がインフルエンザに感染した場合には無理をせずに休養できるよう、また、感染している従業員自身が出勤をしてしまわないよう適切に対策を行う必要があり、企業としてルールや規則をしっかりと整備しておくことが大切です。

有給休暇?欠勤?出勤停止期間の扱いについて

従業員からインフルエンザに感染したという申し出があり休む際、その休んでいる間は就業規則上、有給休暇それとも欠勤、どちらで取り扱えば良いのでしょうか。
一般的に、従業員に有給休暇が残っている場合で、かつ従業員から申請があった場合には有給として扱うようにしましょう。このように従業員から有給休暇扱いとしたいと申請した場合、企業側が正当な理由なく拒むことはできません。労働基準法第119条の規定により、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科される恐れがあります。また、有給休暇はあくまでも本人の申請に基づいて取得すべきもので、従業員からの申請がないにもかかわらず、企業側の判断で有給休暇扱いにすることは違法となるため、注意が必要です。
もしも自社の就業規則に「病気休暇」や「インフルエンザ休暇」などの規定があり、規則に基づいて休暇の申請が行われた場合には、申請を受理しルールに沿って処理するようにしましょう。
なお、有給休暇が残っていなかった場合には、欠勤扱いとして処理して問題ありません。

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休業手当の支払いが必要なケース、不要なケースとは

従業員がインフルエンザに感染してしまった場合は、必ず出社せず休んで頂くのが一般的です。しかし冒頭でご説明した通り、季節性インフルエンザに罹患した従業員を強制的に休ませる法的根拠はありません。
ここで注意すべき点が、「休業手当」です。
休業手当とは、従業員を『企業の責任で』休ませた場合に、義務として支払わなくてはならない手当のことです。労働基準法で定められており、給与と同じように給料日に支払う必要があります。

(休業手当)労働基準法第二十六条
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。(※)

e-Gov法令検索」より参照

休業手当を支払うか否か、そのポイントは「使用者の責に帰すべき事由」つまり『企業の責任であるかどうか』です。では具体的に、インフルエンザの種類やケース別の休業手当の扱いについてご紹介します。

● 新型インフルエンザに従業員が罹患した場合:休業手当【不要】
労働安全衛生法や感染症予防法では、1類感染症~3類感染症や特定の感染症にかかった労働者の就業を禁止しています。この特定の感染症には新型インフルエンザが含まれており、法的根拠に基づいて就業制限などの予防措置を取ることができるため、休業手当は不要です。新型インフルエンザのほかに、特定鳥インフルエンザ、結核、流行性角膜炎なども同様に休業手当を支払う必要はなく、欠勤扱いとなります。

● 季節性インフルエンザに従業員が罹患した場合:休業手当【必要】
新型インフルエンザとは異なり、季節性インフルエンザは労働安全法や感染症予防法の就業制限の対象として扱われていません。そのため、従業員を強制的に休ませる法的根拠がなく、休業手当を支払う必要があります。

● 従業員の家族がインフルエンザにかかった場合:休業手当【必要】
従業員の家族がインフルエンザにかかっていた場合は、従業員本人も感染している可能性が考えられます。そのため、企業として就業制限や出勤禁止の措置を取るケースもあります。その場合は、労働基準法の規定に基づいて、休業手当の支払い義務が生じます。

一般的に、従業員に症状が出ていない場合は、業務を行うことが可能と考えられます。しかし、インフルエンザなどの感染力の高い病気の場合、社内で感染が広がる可能性は否定できません。他の従業員への感染防止の観点からも、事前に「家族がインフルエンザにかかった際の報告義務」などをルール化しておき、従業員に共有しておくと良いでしょう。

まとめ ~感染症対策への意識を高めることが重要~

毎年のように流行する傾向が高いインフルエンザ。従業員がインフルエンザに感染した場合、罹患した従業員の健康を第一に考えるとともに、社内での感染拡大や業務の滞りを防ぐなどの対応をとる必要があります。基本であるうがい・手洗いを徹底するよう従業員へ周知することはもちろん、従業員やその家族が感染してしまった際の対応や方針などを決め、周知することが大切です。もしも、インフルエンザに罹った際の出勤停止期間が定まっていない、報告義務がルール化されていない場合があれば、この機会に就業規則等を見直しておくことをおすすめします。
また、リモートワークや時差出勤の積極的な実施を推奨するなど、従業員を感染から守るための取組がこれからの企業に求められるでしょう。企業の危機管理という観点からも、検討されてはいかがでしょうか。

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