テレワーク導入後の就業管理・勤怠管理を円滑に行うポイント
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大によって、2020年から多くの企業に広がったテレワーク。通勤時やオフィス内での感染を防ぐため、また国の要請に従ってテレワークに踏み切る企業が増えました。しかし、テレワーク導入の本来の目的は、長時間労働の解消や多様な働き方による生産性の向上など「働き方改革の推進」における一つであり、新型コロナウイルスが蔓延する以前から求められていたものです。コロナ禍において、なし崩し的に導入されたテレワークが浸透してきた反面、従業員の労働時間の管理に課題を抱えている企業も多いのではないでしょうか。
そこでこのコラムでは、テレワーク導入後の勤怠管理をどのように行うべきなのか、ポイントを解説します。
勤怠管理が重要である理由
テレワークかオフィスワークかを問わず、元より勤怠管理は企業および従業員にとって極めて重要な役割を担っています。改めて、その理由を確認しましょう。
● 過重労働の防止や早期発見をするため
働き方改革によって長時間労働の是正が求められているなか、企業は従業員一人ひとりの労働時間を適切に管理しなければなりません。ご存知の通り、大企業が2019年4月から、中小企業も2020年4月から時間外労働の上限規制が罰則付きで設けられました。当然ながら企業には、時間外労働が上限に達しないよう管理する責任がありますが、それよりも大切なことは従業員が過重労働となる前に早期に発見し、対策を講じることです。
過重労働とは、残業や休日出勤、不規則な勤務が慢性的に多い状態のことです。このような働き方は従業員の身体的・精神的に多くの負荷がかかります。企業にとって大切な人材を過重労働によるリスクから守るためにも、勤怠管理は重要といえます。
● 本来の働き方改革を進めるため
働き方改革の本質は、働く人の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることです。そして、その実現に必要とされているのが「生産性の向上」です。
生産性と長時間労働には密接な関係があり、生産性の低い企業ほど長時間労働になりやすい傾向があると言われています。これは、生産性を高める仕組み作りを後回しにしたままで業務をこなさなければならなかった結果、労働時間でカバーをしないと業務が回らないという負の連鎖が生まれてしまうためと考えられます。
つまり、生産性向上が見込めているかどうかの指標のひとつとして労働時間を見る必要があるため、労働時間を適切に把握することが重要視されるのです。
● 適正な賃金を支払うため
企業で働いている労働者の賃金は、正社員やパート、アルバイト、そして派遣社員など、雇用形態を問わず労働時間に応じて計算されます。そのため、正確な勤怠管理が行われていない場合、正確な賃金を算出することができず、残業代の未払いや不正受給などが発生する可能性があります。残業代未払いが発覚した場合は労働基準法違反となってしまうだけでなく、トラブルに発展することも考えられるため、賃金算出の基本となる労働時間は適切に把握しましょう。
また、労働基準法では賃金台帳を作成し管理しなければならないと義務付けられています。人事労務における重要書類の1つである賃金台帳は、労働時間数だけでなく時間外労働・休日労働・深夜労働のそれぞれ時間数も記載漏れがないようにしなければならない法定帳簿です。記載事項に不足や不備があれば法令違反となってしまうため、台帳に記載すべき情報が正しく把握できるような勤怠管理が求められます。
テレワークの導入状況と勤怠管理における課題
新型コロナウイルスの影響も含めて、テレワークの導入状況はどのように変わったのでしょうか。また、それによって浮かび上がってきた勤怠管理の課題について解説します。
テレワークの導入状況
パーソル総合研究所が実施した「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」では、2020年4月に初の緊急事態宣言が発出された後、4月10日~12日時点でテレワークを実施した正社員の割合は27.9%に達したことがわかりました。3月時点では13.2%であったことを考えると、2倍以上に増えたことになります(図1)。
また、新型コロナウイルス感染症収束後も「テレワークを継続したい」と回答した人の割合は、2020年11月時点で78.6%にものぼり、調査を重ねるごとに割合が増していることも分かっています(図2)。
しかしその一方で、緊急事態宣言解除後にはテレワークから通常のオフィスワークに戻ったケースもあり、テレワーク実施者の割合は11月時点で24.7%とわずかにダウンしました(図3)。
テレワーク実施者がダウンした背景には、テレワークを実施してみたものの様々な課題がみえてきたことが要因として挙げられます。具体的には、「テレワーク制度が整備されていない」、「テレワークのためのICT環境が整っていない」という回答の割合が高く、このなかには勤怠管理に関連する課題も含まれていると考えられます。また、テレワークという勤務スタイルに慣れてきた一方で、「労働時間が長くなりがちだ」という課題を感じている人だけが増加傾向にあります(4月調査で21.2%、5月調査で23.2%、11月調査で25.5%)。テレワーク浸透にともなう長時間労働を、企業としてどう管理し対策していくかが問題とも言えるのではないでしょうか。
テレワークにおける勤怠管理の課題
ここからは、テレワークにおける課題の1つである勤怠管理について、内容を細かく分けて考えてみましょう。
● タイムカードや紙の出勤簿による打刻からの切り替え
オフィスに出社・退社するタイミングでタイムカードを打刻する、紙の出勤簿に出退勤記録を記入するといった運用は、当然ながら出社をしなければ打刻・記入ができません。自宅やサテライトオフィスなど、従業員が自由に働く場所を選択できるテレワークにおいては、場所にとらわれない労働時間の管理方法が求められます。
対応としてはメールや電話による自己申告、Excelに入力し管理するといった方法もあります。しかし、申告漏れや入力ミス、集計作業に労力がかかり業務担当者に負荷がかかってしまうといった課題があります。自己申告を受ける立場である上長の負荷も非常に多くなるでしょう。
勤怠管理の方法については、始業・終業時刻のルールづくりも含めた見直しが必要です。
● 従業員の過重労働が見えにくい
自宅で業務を行う場合、仕事とプライベートの境界線が曖昧になりやすいといった課題があります。管理をする立場ですと「部下がサボっているのではないか?」と考えがちですが、実は逆です。先程ご紹介したパーソル総合研究所の「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」においても、「労働時間が長くなっている」という割合が増加傾向であることから、業務負荷が高くなっている傾向にあると言えます。また、本当は残業を行なっているにもかかわらず「申告すると評価が下がるのではないか」、「申告しづらい雰囲気がある」などの理由から、正確な残業時間を申告しづらいケースも少なくありません。
相手が直接見えないテレワーク環境であるからこそ、従業員の健康確保という観点からも正確な勤務時間の把握が求められます。
職場環境と業務効率改善に有効な就業管理システム
ここまで解説してきたテレワーク導入時における勤怠管理の課題を解消し、さらに人事労務部門における業務効率の改善まで図れる有効な手段が、「就業管理システム」の導入です。ここでは、テレワークに最適な就業管理システムのポイントについてご紹介します。
就業管理システムの機能
一般的に、就業管理システムは主に以下のような機能があります。従業員の使い勝手という面だけでなく、管理者や人事労務担当者の業務効率を高める機能が備わっているかで、差別化されています。
打刻機能 | タイムカードに代わって出勤・退勤の打刻を行う機能。 パソコンやスマートフォンなどから打刻することができるため、テレワーク環境下でも利用できる。ICカードや生体認証による打刻ができるタイプもある。 |
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集計・管理機能 | 従業員ごと、または部署ごとなどに労働時間や残業時間を集計して、一覧で管理できる機能。部署ごとの労働時間が可視化できれば、業務負担が多くかかっている可能性のある従業員を把握するのにも役立つ。 |
ワークフロー機能 | 年次有給休暇の取得や休日出勤、残業に関する申請および承認を行う機能。事前申請制にすることで、適切な労働時間を管理することが可能となる。 |
データ帳票出力機能 | 就業・勤怠管理の情報をExcelやCSVなどのデータ形式で出力する機能。遵法管理に必要な帳票類が出力できれば、人事労務担当者の業務負荷も大幅削減できる。 |
他のシステムとの連携機能 | 人事管理、給与計算などのシステムとの連携機能を備えているものもある。人事労務担当者の業務効率化・負荷軽減が可能。 |
就業管理システムの選び方
(1)マルチデバイスに対応しているか
テレワークに対応した就業管理システムを導入する場合は、パソコンだけではなくスマートフォンやタブレット端末など、多様なデバイスから打刻を行うことができる就業管理システムが不可欠です。また、客観的な記録としてパソコンのログオン・オフの時間を取得し、自己申告した時間と労働時間の乖離・差異もしっかりチェックできるシステムを選ぶことをおすすめします。
また、オフィスワーク時には正確な在場時間を取得するために、入退室管理システムの入退室時間を取得し客観的な記録として用いる、物理的なタイムレコーダーからの打刻情報をシステムに取り込むことができる、といったマルチデバイス対応のシステムを導入すれば、より自社のニーズに沿った就業管理ができるでしょう。
(2)法令を遵守できる仕組みか
就業管理の重要な目的の一つとして、労働基準法を遵守した労働時間の管理があります。就業管理システムには36協定に則した遵法管理のもと、労働状況の分析や予測ができるものがあります。例えば、時間外労働や連続勤務の状況を分析するだけでなく、時間外労働の上限規制である月45時間よりも前に「しきい値」を設け、しきい値を超える前に注意喚起ができるシステムもあります。
また、労働基準法の観点だけではなく、労働安全衛生法の観点からも数値集計が可能なシステムを選ぶことで、健康管理面のサポートも可能となるでしょう。
(3)使い勝手の良さ
就業管理システムは全ての従業員が利用するため、使い勝手が良く誰もが簡単に利用できることが大切です。初めて利用する場合でも迷わず操作できる画面のデザインと操作感などをポイントとして押さえると良いでしょう。
また当然ながら、自社の勤務体系や制度に対応したシステムを選びましょう。テレワーク・在宅勤務だけではなく、シフト制・フレックスタイム制・変形労働時間制などの勤務体系にも対応できているシステムを採用すれば、より効率的な就業管理が実現できるでしょう。
~ちょこっとメモ:テレワークの導入に向けた支援体制について~
政府ではテレワークの導入を促進するため、様々な補助金や助成金を設けています。21年度予算案には、人材確保等支援助成金(テレワークコース)[厚生労働省]、サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)[経済産業省]が盛り込まれており、IT機器・システムの購入や就業規則等の作成・変更に関する取組に対して支援を受けることができます。
公募開始日や支援の詳細については、以下のサイトで確認することが可能ですので、利用を検討されている場合には、定期的なチェックをおすすめします。
- 一般社団法人日本テレワーク協会:https://japan-telework.or.jp/
- ミラサポplus:https://mirasapo-plus.go.jp/
まとめ
働き方改革の実現と新型コロナウイルス感染拡大の抑制という2つの目的のために、現在も多くの企業にテレワークの実施が求められています。テレワークが徐々に浸透していても、勤怠管理や労務管理などに課題を抱えている企業、テレワークを実現できていない企業もいまだに多いのが現実です。
当社では複数の時間管理と遵法管理に強みをもつ就業システム「ALIVE SOLUTION TA」を提供しています。オフィスへの入退室、パソコンへのログオン・オフなど客観的な労働時間の記録が可能なため、申告時間との乖離チェックや差異理由チェックも可能です。企業毎の36協定に則した管理だけでなく、時間外労働の予測機能により過重労働の防止を支援します。
就業管理に課題を感じている人事労務担当者様、ICT化を進めたいけれど誰に相談したら良いのかお困り企業様、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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