企業におけるペーパーレス化の推進方法 ~事例とともにご紹介~
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大防止が最優先となったニューノーマル時代。私たちの働き方も大きく変わってきており、その象徴的な取組のひとつがテレワークです。しかし、従来のような紙媒体での社内外の手続きや業務は、テレワーク導入の妨げになりかねません。
そこで注目されているのが、「ペーパーレス化」です。ペーパーレス化は業務負荷の軽減や書類の紛失リスク抑制などの観点からみても、有効な取組のひとつであると言えます。
今回のコラムでは、ペーパーレス化のメリットや推進方法、有効なシステムなどをご紹介します。業務担当者はもちろん、経営層やマネジメント層の方にとっても役立つ内容ですので、ぜひ参考にしてください。
【目次】
- ペーパーレス化とは
- ペーパーレス化による働き方改革
- 企業がペーパーレス化を進める5つのメリット
- ペーパーレス化の3つのデメリット
- ペーパーレス化の推進方法
- ペーパーレス化に有効なITツール・システム
- ペーパーレス化に成功した企業事例
- ペーパーレス化のまとめ
ペーパーレス化とは
ペーパーレス化は、従来まで紙に出力していた文書・書類をできる限り電子データに変換(デジタル化)して運用・保存するための取り組みです。中小企業庁の発表(※)によるとコロナ禍以降「デジタル化に対する優先度が高い、またはやや高い」と回答した中小企業は全体の6割を超え、コロナ禍前より1割以上増加しました。コロナ禍を機に働き方改革が進んで業務効率化やリモートワークが普及した結果、ペーパーレス化に取り組む企業が増えたと考えられます。
ペーパーレス化が必要とされる理由
ペーパーレス化が必要とされる理由には、下記が挙げられます。
〇ビジネスの観点
現在ペーパーレス化の対象となっている書類は、ビジネス文書・会議資料・カタログ・販促物(チラシ・ポスター)などです。ペーパーレス化を進めることで業務効率を大幅に改善でき、セキュリティー向上やリモートワーク推進などにも役立ちます。大きな保管場所がいらなくなるため、空いたスペースを有効活用したりオフィス移転によって賃料・立地などの問題解決を図ったりすることも可能です。
〇地球環境保護の観点
ペーパーレス化は、地球環境保護の観点からも注目されています。紙の大量消費は紙の原料である木材の大量消費につながり、森林伐採が急速に進むことで温暖化や生態系破壊などのリスクが上がります。木材の消費を抑えるために再生紙を使う方法もありますが、再生紙の製造過程で化石燃料が燃やされCO2排出につながっていることも事実です。
〇SDGsの観点
SDGsに貢献するうえでも、企業のペーパーレス化は重要なポイントです。例えば作業効率向上は目標8「働きがいも経済成長も」に直結し、作業効率向上によって電力消費量が減れば目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」に貢献できます。また、紙の消費量削減と関わりが深いのは目標15「陸の豊かさも守ろう」と目標12「つくる責任 つかう責任」などです。
ペーパーレス化による働き方改革
ペーパーレス化で業務効率を上げることにより長時間労働の是正が図られ、ワークライフバランスの実現につながります。また遠くの人とスムーズに電子データをやりとりできれば、リモートワーカーもより快適に働けるでしょう。
働き方改革に関する法律として、2019年4月から「働き方改革関連法」が施行されました。働き方改革関連法の一つである「同一労働同一賃金」が大企業で2020年4月、中小企業で2021年4月から施行され、正規雇用者と非正規雇用者の不合理な待遇差解消が推進されています。ペーパーレス化によって非正規雇用者に偏りがちだったコピー・書類整理などの雑務の負担が減れば、仕事のやりがいも感じやすくなるでしょう。
また、ペーパーレス化に直結する次の法律も働き方改革への大きな追い風となっています。
e-文書法
2005年に始まったe-文書法では、会社の経営や財務・決算・税金などに関する文書・帳簿類について電子データでの保存を認めています。これらの文書・帳簿類はもともと紙で保管すべきものでしたが、電子データでの保存によって業務効率が上がり紛失・破損リスクも軽減できます。
ただし、船舶保管用の安全手引書などのようにいつでもすぐ読める状態にしておかなければならない文書にはe-文書法が適用されません。また、運転免許証や営業許可証などのようにデータそのものを携帯・掲示しなければならない文書についても同様です。
電子帳簿保存法
1998年に施行された電子帳簿保存法もまた文書・帳簿の電子化を認める法律ですが、こちらは会計帳簿や国税関係文書・帳簿が対象です。2022年1月から施行される法改正により、電子取引に用いた国税関係書類は電子データでの保存を義務付けられます(令和4年度税制改正大綱で電子取引に関わる電子データの保存義務について2年の猶予期間が設けられました)。また税務署の承認なしで国税関係書類の電子化に対応できるようになるため、社内システムなどの整備が済めばスムーズにペーパーレス化へ移行できるでしょう。
国や政府は、これらの法律を通じて企業のペーパーレス化と働き方改革を推進しています。ペーパーレス化を検討している中小企業や小規模事業者は、IT導入補助金制度の利用も選択肢に入れてみましょう。
企業がペーパーレス化を進める5つのメリット
ペーパーレス化を通じて働き方改革を実現するためには、まず企業運営に関わるすべてのメンバーにペーパーレス化のメリットをきちんと知ってもらうことが欠かせません。企業のペーパーレス化によってもたらされる主なメリットは、次の5種類に大きく分かれます。
業務効率化
必要な紙文書を探す場合、きちんとファイリングされていればまだ見つけることは容易かもしれません。しかし、もし大量のファイルの中から探さなければならないとなれば、他の業務を圧迫してしまうほど非効率となるでしょう。
文書がペーパーレス化されデータ化されることにより、検索機能を使えば必要な文書をすぐに見つけ出すことが可能となります。また、文書の種類ごとにフォルダを分ければ、何がどこに入っているのかが明確になるでしょう。
書類を使った業務は部署によって異なりますが、特に人事総務部門の場合は社会保険や労働保険に関する手続き書類や給与明細など、人事業務に関わる重要な情報が未だに紙文書で管理されている企業も少なくありません。業務に応じたITシステムを導入すれば、ペーパーレス化を推進するだけでなく、業務効率化は大幅に果たされるでしょう。
書類の紛失リスク低減
そもそも紙がなくなれば、重要な書類を誤って破棄してしまったり、社外に置き忘れてしまったりするリスクを低減できます。また、データに閲覧権限を設定したりパスワードをつけたりすることで、情報漏洩が起きてしまう危険を少なくすることもできます。
リモートワーク対応
会社から物理的に離れた場所で業務を行うリモートワークやテレワークでは、そもそも必要な書類をどこからでも閲覧できなければ仕事になりません。
また、書類の捺印のために会社に行くことは、決して効率的とは言えません。ペーパーレス化は、これからの柔軟な働き方を実現する上で必須要素と言えるでしょう。
災害時の復旧対策(BCP対策)
紙の書類だと、仮に保管場所が災害にあった場合に紛失してしまう恐れがあります。しかし、資料や文書がデジタル化されており、かつ分散化やクラウド環境などに保管されていれば復元できます。万が一のリスクに備えるためにも、ペーパーレス化は有効です。
経費削減
書類を印刷するためのコピー用紙やトナー代はもちろんですが、書類のファイリングおよび管理するための人件費、保管場所代なども含め、様々な経費の削減につながります。
ペーパーレス化の3つのデメリット
様々なメリットがあるペーパーレス化にも、デメリットがまったくないわけではありません。しかし、これらのデメリットの多くは時間をかけてじっくり対応することで解消・回避できます。自社の状況をふまえつつ、無理のない方法でペーパーレス化を進めることが大切です。
投資や導入工数がかかる
ペーパーレス化によって十分に作業効率を上げるためには、ある程度まとまった初期投資が必要です。ペーパーレス化やリモートワークを進めるためには用途に応じた様々なツールやクラウドサーバー、そしてスキャナー・端末などのハードウェアが欠かせません。
また、新しいツールの検討・買い替え・試験運用などにも工数がかかります。これらの工数を考慮しつつ、余裕を持ってペーパーレス化推進の計画を立てることが重要です。
セキュリティの懸念
電子化したデータにはアクセス制限をかけることができ、また紙のように紛失・劣化するリスクも少ないため、情報セキュリティの強化につながります。ただし、ID・パスワード漏えいやメールの送信ミスなどによって重要な機密情報が外部に漏れるリスクはゼロとは言えません。また、ネット環境・クラウドサーバーや端末のトラブルが原因でデータにアクセスできなくなることもあります。さらに、保存しているサーバー自体が故障する可能性もゼロではありません。
これらのトラブル防止に役立つ対策例は、次の通りです。
|
ペーパーレスに移行した際の作業効率低下懸念
ITリテラシーの低い人が多い職場では、ペーパーレス化を進めることでかえって作業効率が落ちる恐れがあります。この場合は焦ってペーパーレス化を進めず、できるところから少しずつ始めることがコツです。誰が見ても理解できるようなマニュアルを用意したり、教育期間やサポート部門を設けたりしてもよいでしょう。
文書の内容やサイズによっては、電子データにすると見にくくなってしまうこともあります。こうした問題は、大きくて見やすいディスプレイや高解像度スキャナーなどの導入によって解消できるでしょう。
ペーパーレス化の推進方法
ペーパーレス化に対応するためには、どのような手順・方法で進めるとよいのでしょうか。今回は一例として、ペーパーレス化に向けて準備するべきことや具体的な流れをご紹介します。
紙を用いて行っている業務や文書をピックアップする
まずは現在の業務の中で、紙を用いて行なっているものをピックアップします。ペーパーレス化が可能であるかを判断するためにも、その資料や文書を分類し、どんな目的で誰が使うための資料・文書なのかを洗い出しましょう。
ペーパーレス化が可能な業務を切り分ける
洗い出した業務の中で、ペーパーレス化が可能な業務とそうでないものを切り分けます。取引先や顧客とのやり取りで紙媒体の書類を使用している場合や、法律で書類の提出や保管が定められているもの以外は、社内での調整や業務フローを見直すことでペーパーレス化を実現できないか検討してみましょう。
ペーパーレス化に必要なツールやシステムを選定する
ペーパーレス化が可能な業務を割り出すことができたら、ペーパーレス化したい業務に対応できるツールやシステムを選定します。書類をPDF化し従業員が個別にデータを管理する方法もありますが、より業務効率化の効果を高めるのであれば、クラウドサービスや文書管理システム、業務に応じたITシステムを導入することをおすすめします。
意義や目的を社内へ周知する
ペーパーレス化の目的や意義に対する理解を従業員から得られてから実行に進まなければ、従来の慣れた方法に戻ってしまい、結局紙資料が無くならないということも考えられます。また、導入したツールを使いこなせず、かえって非効率になってしまうこともあるでしょう。
そのため、なぜこの業務をペーパーレス化するのか、目的やメリットを丁寧に従業員に周知しましょう。また、マニュアルの整備、教育の実施など、誰でもスムーズに利用できるよう支援も行いましょう。
効果を見える化する
ペーパーレス化を行うことで「生産性が向上する・効率化に繋がる」、と言われても具体的にイメージしにくいかもしれません。なるべく数値としてどのくらい効果があったのかを見える化し、従業員にも展開しましょう。効果を実感することで、ペーパーレス化の推進にもつながるはずです。
効果の見える化例 |
---|
|
ペーパーレス化に有効なITツール・システム
ペーパーレス化の実現に向けたITツールやシステムの導入は、有効な手段のひとつです。例えば社内決裁には電子決裁システム、社内文書の管理にはファイル共有システム、労務業務に関する手続きには電子申請システムといったように、用途に応じてシステムは最適化されています。
ペーパーレス化のITツール・システム導入には、少なからずコストがかかります。しかし、メリットや得られる効果などトータルで考えると、業務に精通したツールやシステムを利用したほうが効率的といえるでしょう。
ペーパーレス化を推進する上で特におすすめしたいITシステムの具体例として、当社ソリューションである「電子帳票システム e-image」と、「社会保険労務システム ARDIO」の2つをご紹介します。
電子帳票システム「e-image」
「電子帳票システム e-image」は、印刷データを取り込み、帳票の電子化やペーパーレス化を実現する帳票ソリューションです。
e-imageで管理している帳票データは、簡単に閲覧・検索・二次利用ができるだけでなく、高度な検索機能で必要な帳票をすぐに見つけることも可能です。また、閲覧権やアクセス権の設定機能、ログ管理機能なども充実しています。さらに、「請求書」や「納品書」といった種類別や、「担当者別」、「日付別」に書類を自動分類できる機能も搭載しています。
メール・FAX送信なども自動化できるため、業務が大幅に効率化されます。
またe-imageは、2022年1月に改正された電子帳簿保存法にも対応しております。電子帳簿保存法にスムーズに、かつきちんと対応できるシステムをお探しの企業様は、一度チェックしてみてはいかがでしょうか。
e-imageはリリースから20年という歴史があり、これまでに1,600社を超える企業に導入してきた実績を誇る信頼性の高いサービスです。JIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)認証を取得しているため、システムを導入した際のセキュリティやサポート体制が気になる企業様にも安心してお使いいただけます。
社会保険労務システム「ARDIO」
「社会保険労務システム ARDIO」は、社会保険労務に関する手続きを「もっとラクに、もっとセキュアに」をコンセプトとして作られた、社会保険労務に必要な機能を広範囲に装備したシステムです。
基本共通システムを中心として、社会保険システムや給与計算システム、労働保険システム、電子申請システムなどの機能が搭載されており、外部データやシステムとの柔軟な連携も可能です。さらに、データの安全を守るためのさまざまな機能を備えており、マイナンバーなどの情報漏えいリスク対策も万全です。
また、2020年4月から義務化となった社会保険・労働保険の手続きにおける電子申請手続きにも、ARDIOは対応しております。紙の申請書類を作成する必要もなくなるだけでなく、ハローワークへの移動時間、公文書の送付の手間などを大幅に削減できます。現時点で電子申請手続きの義務化は資本金1億円超などの特定の法人に対してですが、近い将来中小企業も対象となる可能性は十分にあるでしょう。そのため、今から備えておいてはいかがでしょうか。
1973年の発売以来、常に変化する社会保険労務の業務に迅速に対応するとともに、培われた社会保険労務の業務ノウハウをサポートに活かし、専門知識を持つシステムエンジニア、インフラエンジニアが、ARDIOの導入や初期設定、そして日々の運用までを丁寧にサポートいたします。
ペーパーレス化に成功した企業事例
最後に、ARDIOの導入によってペーパーレス化が大きく進んだ事例をひとつご紹介します。
世界最大級の特殊鋼メーカーであるA社では、雇用保険に関する手続きの多くを実務担当者2名による手作業でこなしており、非常に負担がかかっていました。そこで、業務効率化と電子申請への対応を見据えて、労務管理業務をシステム化、合わせて電子申請に対応することになりました。A社がすでに導入していた人事・給与システムとの連携が容易に行えるなどの理由から、「社会保険労務システム ARDIO」を採用しました。
ARDIOの操作性がシンプルかつ簡単であったため、実務担当者が業務に迷うことなく移行でき、本稼働から3ヶ月程で軌道に乗せることができました。また、ARDIOの導入により、手作業で進めていた業務の工数は半減。ハローワークとの書類のやり取りに要していた時間も、郵送で行っていた時は1週間ほどかかっていたのが、電子申請では手続きの翌日には戻ってくるなど、ペーパーレス化と大幅な業務効率化に成功しています。
ペーパーレス化のまとめ
ここまで、ペーパーレス化の推進方法について解説してきました。改めて、今回のポイントをまとめます。
<このコラムのPOINT>
- ペーパーレス化とは、従来まで紙に出力していた文書・書類をできる限り電子データに変換して運用・保存する取り組みのこと
- ペーパーレス化には業務効率化、書類の紛失リスク低減、リモートワークへの対応、BCP対策、経費削減などあらゆるメリットがある
- ペーパーレス化を進めるためには、自社に合った最適なITツールやシステムの選定が重要
ペーパーレス化の実現は、業務効率化や経費削減など様々なメリットがあります。これまで紙書類による申請が当たり前とされてきた社会保険業務や労務業務も、今後は電子申請が浸透していくでしょう。
ペーパーレス化を進めるためには、自社に合った最適なITツールやシステムの選定が重要です。今回ご紹介した「電子帳票システム e-image」と「社会保険労務システム ARDIO」は、ペーパーレス化に大いに貢献するシステムです。システムの導入や運用に関する不安があってもしっかりとサポートいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
メールマガジン登録
上記コラムのようなお役立ち情報を定期的に
メルマガで配信しています。
コラム(メルマガ)の
定期購読をご希望の方はこちら