BYODとは?導入メリット&デメリットと導入時のポイントを解説!
公開:2021年12月08日
近年注目されている「BYOD」。「BYOD」とは「Bring Your Own Device」の略であり、私物のパソコンやスマホなどの端末を業務で利用する方法です。国内でもBYODを導入する企業が増えてきましたが、BYODにはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
本コラムでは、BYODの概要や普及率、メリット・デメリットについて解説します。BYODを導入する際の課題やセキュリティー対策についても併せて確認しましょう。
このコラムを読んで分かること
- BYODについて、導入時のメリットとデメリット
- BYODを導入する際に押さえておくべきこと
BYODとは「私物端末の業務利用」のこと
「BYOD」とは、「Bring Your Own Device」の略であり、従業員本人がプライベートで利用している「私物端末」を業務で利活用する方法・考え方です。
BYODにおけるデバイスとは、基本的にインターネットによって職場の情報にアクセスできる機器のことであり、代表的なものには次のような機器があります。
BYODの「D(デバイス)」に含まれる機器の例 |
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スマホやタブレット端末が普及し、多くの人が普段から様々なデバイスを利用するようになりました。また、近年はリモートワークやテレワークなど、場所にとらわれない働き方を従業員が求める傾向も高まっています。
そんな中、例えば私物パソコンに対してセキュリティー対策を行えるようになったり、端末の種類に関係なく使用できるクラウドサービスが増えたことなどの技術面の進歩から、企業としても従業員の業務中における私物端末の利用に対して捉え方が変化しています。
日本国内におけるBYODの普及率
ビジネスにおいて近年注目を集めているBYODですが、総務省が発表したデータによると、2018年度における日本国内のBYODの普及率は10.5%となっています。
アメリカ(23.3%)やイギリス(27.8%)、ドイツ(27.9%)に比べると、日本は低い水準となっていることがわかります。BYODには様々なメリットがある一方で、デメリットやリスクもあることから、日本では賛否が分かれることもあり、諸外国よりも普及ペースが緩やかなのだと考えられます。
企業がBYODを導入するメリット5選
企業がBYODを導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、BYODを導入した場合に期待できる5つのメリットを紹介します。
メリット1:生産性が向上する
BYODを導入することにより、従業員がプライベートで普段から使用している端末を業務に活用できるようになります。使い慣れている機器であるため、同じ内容の業務でも端末操作に迷うことなく、効率的に業務を進めることが可能になるでしょう。
また、近年では働き方の多様化が進められており、「オフィスで業務に従事する」という概念が一般的ではなくなっています。何らかの理由により自宅やオフィス外で業務に従事しなければならないときでも、BYODを導入していれば企業側が端末を準備する手間なく、スムーズに仕事を進めることが可能です。
メリット2:ストレスの軽減・紛失防止につながる
BYODでは、従業員自身が使い慣れている私物端末を業務に利用できるため、同じ業務内容でもスムーズに操作を行うことができます。
加えて、職場用とプライベート用の2台の端末を持ち歩く必要がない点も、従業員にとって嬉しいポイントです。端末やバッテリー、付属品の管理も容易になるため、ストレスの軽減とともに紛失リスクの低減も期待できます。
メリット3:コスト削減ができる
従業員の私物端末を業務で活用するため、企業側がわざわざ情報端末を用意する必要がなくなります。端末の購入費用や月額利用料など、維持費・保守料といったコストを削減できます。
また、コスト面で限られた従業員のみしか情報端末を支給できていなかった職場でも、より多くの従業員にIT化を展開することができる点が、BYODのメリットでしょう。
メリット4:働き方の多様化に対応できる
電子メールやスケジュール管理、ファイル保管だけでなく総務・経理・人事系のサービスなど、社内で利用している様々な業務ツールが実はクラウドサービスである可能性があります。
クラウドサービスは、場所や端末を限定せずに利用できる点がメリットです。そして、BYODと親和性が高く、わざわざオフィスに通勤しなくても、自宅にあるPCやスマホからクラウドサービスにアクセスができれば業務を行うことができます。
つまり、多様なワークスタイルへの対応に、BYODは有効と言えます。
メリット5:シャドーITを防げる
「シャドーIT(あるいは、シャドーBYOD)」とは、企業でBYODを許可していないにもかかわらず、従業員の自己判断で私物端末を業務に利用することです。
もしも会社が把握していない私物端末に機密情報などが入っており、ウイルスや不正アクセスなどでその端末が攻撃されると、機密情報が漏えいする恐れがあります。また、ウイルスが私物端末経由で企業が管理しているサーバーに侵入してしまう危険性もあるでしょう。
万が一ウイルス感染や情報漏えいが起きてしまうと、企業活動自体が止まってしまう恐れや、企業の社会的信頼を損なうといった大問題となる可能性があります。
このように大きなリスクがあるシャドーITをさせないためにも、BYODは有効です。
企業がBYODを導入すれば、従業員が隠れて私物端末を使う必要もなくなります。また、管理方法や利用ルールをきちんと定めることにより、セキュリティーに関するリスクを下げることができるでしょう。
企業がBYODを導入するデメリット3選
BYODの導入は、企業側・従業員側の双方にメリットがありますが、デメリットやリスクも当然存在します。きちんと対策を講じることで多くの恩恵を受けられるBYODですが、デメリットのほうがメリットよりも大きいと感じられやすいことから、日本国内では導入が消極的であるとも言えます。
ここでは、BYODを導入することへのデメリット・リスクについて、代表的なものを3つご紹介します。
デメリット1:情報漏えいなどのリスクが高まる
従業員がプライベートで使用している端末は、利用場所が業務用端末よりも広範囲となります。そのため、職場内でしか使用しない端末と比べると、端末の盗難・紛失といったリスクが発生しやすくなるでしょう。
さらに私物端末は業務用端末に比べてインターネットでアクセスするサイトの範囲も広く、また様々なアプリがインストールされている可能性もあります。そのため、不正アクセスによって攻撃される可能性が高い点もデメリットのひとつです。適切な対策をすることで防ぐことはできますが、情報漏えいや情報改ざんといった危険性がゼロになるわけではないため、注意しましょう。
デメリット2:労務管理が複雑化する恐れがある
BYODは私物端末を活用することにより、移動時間や待ち時間などを利用して効率よく業務を進められるというメリットがあります。一方で、時間や場所を問わず業務を行えるということは、公私の区別がつきにくくなってしまうとも言えます。
その結果、隠れ残業の増加といった問題が起こりやすくなり、労務管理も複雑化する恐れがあるでしょう。
デメリット3:運用ルールの設定・セキュリティー教育が必要となる
BYODを導入する際には、情報漏えいなどのセキュリティーリスクを可能な限り低減し、適切な労働時間を守れるよう、運用ルールを適切に設定する必要があります。様々なリスクを考慮した上で運用ルールを定めなければならないため、実際に運用するルールを設定するまでに時間や労力がかかるでしょう。
また、設定したルールは従業員に広く周知し、セキュリティー教育を徹底する必要があります。定期的に研修を行う必要がある場合も多いため、教育面でも時間やコストがかかることに注意が必要です。
BYODを導入するときのポイント
BYODには、業務効率化や従業員満足度向上、働き方の多様化への対応が図れるなどのメリットがありますが、セキュリティー面や運用面でのリスクもあります。
そこで、ここからはBYODを導入する際に考えたい、セキュリティー対策を中心にポイントをご紹介します。
モバイル端末管理「MDM」やモバイルアプリ管理「MAM」を採用する
情報漏えいや紛失対策として、端末を管理する「MDM」や「MAM」の導入を検討しましょう。
「MDM(Mobile Device Manegement)」とは、端末の所在確認や遠隔操作によるロック、データ消去が可能なアプリケーションのことです。
MDMを導入すれば、万が一端末を紛失した場合も遠隔から対象端末をロックすることが可能となります。カメラや外部ストレージといったデバイス機能の利用制限や、指定したURLしかアクセスできないようにするWebフィルタリング機能などもあるため、盗難・紛失対策面だけでなく情報漏えい対策としても有効です。
「MAM(Mobile Application Management)」とは、端末内にインストールされているアプリを管理するアプリケーションのことです。MDMが端末そのものを管理するのに対し、MAMは端末内を管理するという違いがあります。
MAMを導入すると、使用禁止とされているアプリはインストールできないよう制限することや、業務用アプリで利用するデータのみを暗号化することが可能です。また、万が一盗難・紛失した場合でも、アプリやアプリ内のデータ削除もできます。
MAMでは、業務専用の領域を作りこの領域だけを企業側が管理することもできるため、プライベートの領域と切り離せる点もメリットです。
BYOD導入を検討されるのであれば、MDMやMAMといったセキュリティー対策もセットで検討されることをおすすめします。
情報が端末に残らないようにする
紛失や漏洩リスクを低減するためにも、業務で利用するデータやファイルなどの情報は、利用端末側に残さない、保存させない仕組み作りが重要です。
そこで、私物端末から遠隔地にある社内コンピューターやサーバーに接続して業務を行うVDI(デスクトップ仮想化)や、リモートデスクトップといったリモートアクセスの導入を検討しましょう。
また、盗聴や不正アクセスといったリスクを低減させるためにも、自社専用の仮想回線であるVPN接続を利用する、クライアント証明書を利用し証明書を持つデバイスだけがアクセスできるようにするといった対策も、合わせて行うと効果的です。
安全に運用するためのルールを定める
運用中のトラブルを防ぐためには、システム面での対策だけでなく安全に運用するための対策も欠かさず行いましょう。例えば、以下のような対策を行うことをおすすめします。
- 利用端末の範囲、用途、情報の保護範囲などを定めた運用方針を策定する
- ※運用ルールはシンプルでわかりやすいものが良い
- セキュリティー教育を定期的に、そして適切に行う
- テレワークでBYODを活用する場合の就業管理方法を明確にする
BYODを導入する際には、BYODのリスクを最小限にできるよう対策を行うことが大切です。適切な対策を行って慎重に導入を検討し、BYODのメリットを安心して受けられるようなシステム作りを心がけましょう。
まとめ
ここまで、BYODの概要やメリット・デメリット、導入時に押さえておくべきセキュリティー対策を中心に解説しました。改めて、今回のポイントをまとめます。
<このコラムのPOINT>
- BYODとは、従業員の私物端末(パソコンやスマホなど)を業務に利活用すること
- 日本におけるBYODの普及率は10%程度であるが、生産性向上やコスト削減などの様々なメリットがある
- BYODの導入には賛否があり、情報漏えいや労務管理の複雑化といったリスク対策がカギ
BYODのメリットを活かし、安心して安全に業務を行うためにも、セキュリティー面や運用面でのリスク・デメリットをきちんと把握した上で、リスクを最小限にとどめられるような対策を講じることをおすすめします。
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